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『葬送のフリーレン』岡本信彦インタビュー

「人間って美しいんだな」作品が教えてくれた“言葉”の美しさ──アニメ『葬送のフリーレン』ヒンメル役・岡本信彦さんインタビュー

全体として100を目指している作品

──収録現場ではほかの声優さんともお話をされたり?

岡本:勇者パーティーの声優さん方と一緒に録ることが多いので、ハイター役の東地宏樹さん、フリーレン役の種﨑敦美さんともお話します。僕としては、現場は勇者パーティーの空気感だったんじゃないかなと思っていて。勇者パーティーはめちゃくちゃ仲が良いかと言われると分からないところがあるじゃないですか。

──仲良しとはちょっと違いますよね。

岡本:彼らが相談しあったりする描写って意外となくて、それぞれが自身の役割を全うしているんですよ。ハイターはずっとお酒を飲んでいたり(笑)。

──(笑)。

岡本:ヒンメルは魔王を倒すという目的のもと旅をしていて、その中でフリーレンと出会って。彼女に対していろいろな感情を寄せつつ、旅路であったり、人が幸せになる方法を考えていたりと、超絶ポジティブ人間なんですよね。

アイゼンに関しても、寡黙ながらも自分にできることをずっと考えています。フリーレンはフリーレンで人間って面白いな、みたいに人間との感覚のすり合わせをしていたんじゃないかなと。そんな風に交わっていなくても、喋らなくても間が持つ友達みたいな関係性なんじゃないかなと思っていて。

──自然と勇者パーティーの空気感になっていたんですか?

岡本:なっていたら良いなと思います。でも最初は本当にヒンメルを演じることに必死で。ずっとどういうテイストで作っていくんだろうと考えていました。

──ほかにオーダーなどはありましたか?

岡本:一番びっくりしたのは、作品のテイストはファンタジーであるものの、ナチュラルな演技を求められたことです。ファンタジーでこのオーダーはなかなか珍しいんですよね。

──少しオーバー気味に演じるわけではなく?

岡本:そうです。音的には抑揚をつけない。そして、そうするには、どうすればいいのか考えなくてはいけなくて。

初回のヒンメルは、魔王を倒した後の人生に期待を寄せていたので、戦いの荷が降りた感覚はどうなんだろう?とイメージを膨らませました。そうしたところ、「自分が声優業を引退したら?」と自分と重ね合わせて考えるようになって。結果、「次になにをするかを見付けるところから始めるんじゃないかな?」という結論にたどり着きました。

ヒンメルたちもきっと、そんな感覚を抱いたまま、やりきった思いを持って凱旋したんじゃないかな、と。

だから、魔王を倒すまでの時間がどれだけ素晴らしくて、宝物になり得る濃厚な時間だったか、という部分をフリーレンたちと別れるまでの時間で反芻しながら演じていて。ずっと穏やかな空気を噛み締めているのかな?というイメージが抑揚のなさに繋がれば良いなと思っています。

逆に難しかったのは、「僕はイケメンだろ?」とかっこよく言うシーンです。ここは「やりすぎないでください」と言われたんですけれど、それを聞いてアニメっぽくない、生きた人間を作りたいのかな?と感じて。

ファンタジー作品は現実世界とは違うキャラクターを任されるので、原色で潰すようなイメージで演じることが多いです。

加えて、そういった世界のキャラクターたちは一挙手一投足が色濃いものになるんじゃないかなと思うので基本的には足して演技をします。でも今回は現代に生きているのと変わらないくらいの感覚でお芝居をしていて。

──珍しいことなんですね。

岡本:ファンタジーでは見たことがないですね。魔法を使う世界観だと色が濃くなる芝居を求められることが多いですから。

もしかしたら、声の説得力というものを削ぎ落として薄めにすると、絵のインパクトに負けていくのかもしれないですね。だからこそ、ゆっくりとした『葬送のフリーレン』は、色濃くないほうがマッチするんだろうなと。それはPVを見て強く思いましたね。

──短い尺ではありつつも、作品の魅力がふんだんに詰まっていました。

岡本:劇伴を手掛けられているEvan Callさんの音楽が交わると、音の情報量的に、声優が色濃くしすぎるとトゥーマッチになってしまって。それは曲を聞いてわかりましたね。そして、改めて全体として100を目指している作品なんだと思いました。

──たくさんのお話ありがとうございます。最後に、放送を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。

岡本:長い人生の中、紆余曲折があって苦しんだり、楽しいことがあったりすると思いますが、この作品は人の生き死にが描かれたうえで、“人の生がどれほど価値のあるものか”、“生きるにはどうしたら良いか”みたいなメッセージが散りばめられています。

ぜひ見ていただいて、少しでも皆さんの心が癒やされればと思います。現代社会に疲れた人ほど見てほしい、そんな美しい作品です。「金曜ロードショー」の後も見ていてくださるとうれしいです。

──ありがとうございました。

【取材・文・撮影 MoA】

アニメ、VTuber、TCGが好きなアラサー男子。執筆、撮影、動画制作などやっています。

この記事をかいた人

MoA
アニメ、VTuber、TCGが好きなアラサー男子。執筆、撮影、動画制作などやっています。

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『葬送のフリーレン』作品情報

葬送のフリーレン
作品名 葬送のフリーレン
スケジュール 2023年10月6日(金)~2024年3月22日(金)
日本テレビ系ほか
あらすじ 勇者ヒンメルたちと共に、10年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらした魔法使いフリーレン。

千年以上生きるエルフである彼女は、ヒンメルたちと再会の約束をし、独り旅に出る。それから50年後、フリーレンはヒンメルのもとを訪ねるが、50年前と変わらぬ彼女に対し、ヒンメルは老い、人生は残りわずかだった。

その後、死を迎えたヒンメルを目の当たりにし、これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し、それを悔いるフリーレンは、“人を知るため”の旅に出る。

その旅路には、さまざまな人との出会い、さまざまな出来事が待っていた―。
話数 全28話
キャスト フリーレン:種﨑敦美
フェルン:市ノ瀬加那
シュタルク:小林千晃
カンネ:和氣あず未
ラヴィーネ:鈴代紗弓
ヴィアベル:谷山紀章
ユーベル:長谷川育美
デンケン:斉藤次郎
ラント:小松昌平
リヒター:花輪英司
ラオフェン:石上静香
エーレ:伊藤かな恵
ゼンゼ:照井春佳
ゲナウ:新垣樽助
ゼーリエ:伊瀬茉莉也
ヒンメル:岡本信彦
ハイター:東地宏樹
アイゼン:上田燿司
スタッフ 原作:山田鐘人・アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
主題歌 OP:「勇者」YOASOBI

OP2:「晴る」ヨルシカ
ED:「Anytime Anywhere」milet
電子書籍 『葬送のフリーレン』電子書籍(コミック)

(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
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