
Vシネクスト『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』柴﨑貴行監督インタビュー|“かっこいい大人”へと踏み出す、絆斗の一歩を描きたかった
「怪物=悪」ではない
ーーTVシリーズで残った要素という点では、リゼル・ジャルダックの登場も大きなポイントです。「取り残されたグラニュート」としての彼女、甘根幸果との交流をどのように描こうと思われましたか?
柴﨑:ヴラムの時もそうでしたが、幸果は「みんなに笑顔になってほしい」というスタンスのキャラクターです。今作においては、リゼルとのやり取りが上手くいかない中、関係性を繋ぐ存在になっています。
もちろんガヴの大事なレギュラーメンバーですから、幸果がどんな役割を果たすのかというのも大きな見せ場です。川沿いで石を食べながら話すシーンは、おそらくラキアに言ったようなことを伝えているんでしょうね。
ーー幸果があいだに入ってくれることで、関係が円滑になった印象もありました。
柴﨑:そうですね。リゼル自身もツンデレですし、作品全体で「見た目が違う存在」をどう受け入れるかということは大事なテーマでした。つまり「怪物=悪」という単純なカテゴライズではないと示したかったんです。
リゼルはグラニュートであり、人間から見れば“怪物”ですが、ショウマやラキアの時もそうだったように、可哀想な側面を持っている。見た目や出自ではなく、その人の中身や行動で良し悪しが決まるという点を描いています。
ーーそれに加えて『仮面ライダーガヴ』では“食べる”こともテーマのひとつなので、より複雑なドラマを描いていると感じます。
柴﨑:人間界にバイトに来ていたグラニュートは人間を襲う存在なので、人間から見れば悪に見えます。ただ、人間だって牛を食べますし、ライオンが牛を食べたからといって「ライオンは悪だ」とは言いませんよね。グラニュートが人間を食べることが種としての生存行為であるなら、それは“食性”です。
『ガヴ』の設定では、そこがとても難しい部分でした。食物連鎖に結びつけず、「必要ないのに食べる」という嗜好性の領域にもっていく必要があり、その辺りは序盤から話し合っていました。
ーー今作から登場する狩藤(演:新木宏典さん)も、両方を区別せずに助けるという点で、監督のお話と繋がるように感じました。
柴﨑:結果的にはそうですね。狩藤というキャラクターは「新木くんならできるだろう」というビジュアル的な印象もありました。
絆斗はかわった科学者との縁が多いキャラクターなので(笑)、ミスリードを誘いつつ、ギャップを描けたのは面白かったです。「見た目や立場だけで判断しない」という部分にも繋がっているかもしれません。
ーー今作では「かっこいい大人」という言葉が重要なキーワードになっています。監督が考える“かっこいい大人”とは、どんな存在でしょうか。
柴﨑:なんでしょうね……僕はいつまでも子供でいたいとも思ってしまいます。
ーーその気持ちもすごく分かります。
柴﨑:でも、やっぱり“責任を取れる人”じゃないでしょうか。全て自由にさせる訳でも、管理する訳でもない。大人の仕事というのは、自由にやらせるにしても、最後に責任を取ることだと思うんです。なかなか難しいバランスですけど、それが“かっこいい大人”の在り方だという気がします。
『仮面ライダー』シリーズへの想いを語る
ーー『仮面ライダー』シリーズへの思い入れや、監督として携わるやりがいについてお聞かせください。
柴﨑:『仮面ライダー』に限らず、ずっと特撮の現場で続けてきたことについては、冒頭でもお伝えしたように「子供たちが見る作品」という意識があるからです。今作もそうですが、特に映画に関しては、「初めて映画館で観る」という子供たちにとっての“最初の体験”になるかもしれません。そういう意味での責任感と誇りを持っています。
「最初に観た作品を好きになった」という経験が、その子にとっての“出会い”になるんです。今の映画産業は、全盛期に比べて勢いが落ちています。だからこそ、また盛り上げたいし、特撮やアニメも含めて、日本の映像コンテンツがもっと面白くなってほしいなと。
子供のうちに体験していないと、大人になって「デートで映画に行こう」「家族で映画を観よう」という発想には繋がらないですよね。
ましてや今は「映画を作りたい」という若者も減っています。少し大げさに言えば「僕たちはそれを左右する作品に携わっている」という自覚があって、それがここにいる理由になっています。ここにこだわっているのは、やはり“子供たちに届く作品”を作れる現場だからでしょうね。
ーーご自身のキャリアの中で、転機だったと感じる作品はありますか?
柴﨑:ライダーの映画を最初に撮ったのは『劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』でした。
2011年は東日本大震災の年で、作る側としても色々と考えさせられました。映画というのは、究極的には衣食住に関係ない“なくても生きていけるもの”です。でも、あの時に「そうじゃない」と思えた。もちろん作品人気もありましたが、震災直後の興行としては、かなりヒットしたんですよ。そこで、みんなが“求めてくれていた”と実感できたと言いますか。当時は「映画を作っている場合なのか」と葛藤した時期もあったんです。その中で「自分たちができることをやろう」という想いで制作を続けました。僕一人で作ったわけではないですが、あの経験が今も続く原動力になっているかもしれません。
みんなで『仮面ライダークウガ』から続けてきたシリーズも25年になります。続けること自体に大きな力があるし、これだけ長く愛され、応援され続けるシリーズになったということに改めて価値を感じますね。
ーー最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
柴﨑:『ファイナルステージ』からしばらく経ちましたが、Vシネクスト『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』は映像としての一つの区切りになると思います。キャスト・スタッフ全員が“集大成”の気持ちで取り組みました。これまで応援してくださった皆さんはもちろん、“ガヴロス”の方々も含めて、ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。
[インタビュー/小川いなり]
『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』作品情報
上映情報
新宿バルト9ほかにて
全国期間限定上映中
パッケージ情報
2026年6月10日(水)Blu-ray&DVD発売
あらすじ
なんでも屋「はぴぱれ」では、人間界に残ったグラニュートたちに仕事を斡旋し、【人間とグラニュートの共存】は、少しずつ実現へと向かっているはずだった。ある日絆斗は、街で出会った傷ついた少女たちとともに「狩藤医院」を訪ねた。
そこは、表立って病院へ行けない事情のある者たちを診ている怪しげな病院だったが、医師・狩藤の腕は確かだった。
治療を受けた少女たちの日常が気になり、ひそかに尾行すると、彼女たちのグループには、なんと、あのリゼルがいた。父・ボッカを亡くし人間界に残されたリゼルは、今では不良少女たちの用心棒のような存在となっているらしい。
さらに、グループの中にひとり、若い男性がいることが気になった絆斗は、今度は彼を探ることに。
男の正体は、グラニュートだった。闇菓子をふたたび流通させようとたくらんでいるようだ。
複雑な心境の絆斗を、胸の激痛が襲う。かつての改造手術が、彼の身体に著しく影響を及ぼしていた。
さらに、ボッカに恨みを抱く、グラニュートのイジークまで出現して……!
キャスト
(C)2025 石森プロ・ADK EM・バンダイ・東映ビデオ・東映(C)2024 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映































