【今週のアニメ『キングダム』の話題は？】第10話「犬戎の末裔」熾烈を極める戦場！ 謎が多い犬戎についても史実に基づいて解説！

『キングダム』のアニメ第6期 第10話「犬戎の末裔（けんじゅう の まつえい）」が、12月7日（最速）に放送開始となりました。

今期は、“主人公 信（しん）が「王騎（おうき）の矛（ほこ）」をどこまで使いこなせるようになるのか？　秦（しん）が本格的に中華統一に向けて動き出す”、が見どころで、作品全体の中でもひとつの起点になるシーズン。

現在、秦は「鄴（ぎょう）攻め」の真っ最中で、あの李牧（りぼく）率いる趙（ちょう）軍を相手にしています。

そんな中、「犬戎（けんじゅう）」という新たな脅威の登場です。こちらでは、この第10話のあらすじを、振り返っていきたいと思います。

　
※以下、第10話のあらすじを含みます。

第10話「犬戎の末裔」あらすじ

第10話は、王賁（おうほん）から始まります。朱海平原（しゅかいへいげん）の秦軍右翼です。

この朱海平原の戦いは、王翦vs.李牧の直接対決で、秦軍の布陣は、総大将の王翦（おうせん）が中央、蒙恬（もうてん）が左翼です。そして現在、左翼の蒙恬は作戦を見事に遂行中です。

家柄と経験：王賁vs. 馬南慈

さあ、右翼の王賁です。命令を無視して勝手に戦闘に参加、右翼を率いる亜光（あこう）の軍が正面の趙軍と戦っているところを、左から突こうとしている趙の馬南慈（ばなんじ）を止めようとしているのです。

馬南慈は、趙で匈奴（きょうど）との戦いを数えきれないほどこなしてきた人物です。いわば叩き上げですね。それに対して王賁は、名家のおぼっちゃま。現に今「賁さまを守れっ」と声が飛んでいます。とはいえ、王賁は家柄だけで今の地位にいるわけではなく、努力も人一倍してきた槍の名手です。

この正反対の境遇の二人、早々に直接対面してしまいます。王賁の槍と馬南慈の鉄槌の対決です。

その頃の中央、王翦が信に指令を出します。
「左の戦場へ割って入り…　お前が紀彗（きすい）の首を取って来い！」

左翼の蒙恬のところに行けということですね。しかも、趙右翼を率いる紀彗の首を取れとは、すごい命令です。信はかなり驚いたようですが、きっと信なら、蒙恬の助けとなりうるでしょう。紀彗の首は、どうやって取れるものなのかわかりませんが……。

舜水樹。そして「犬戎」

同時刻、朱海平原の南西にある橑陽（りょうよう）城付近。楊端和（ようたんわ）軍は、ここ橑陽の軍と戦闘中です。楊端和率いる山の民は、屈強な体の持ち主。趙軍をどんどん押し込みます。このままでは簡単に勝てるのでは？

と思ったら、趙軍に舜水樹（しゅんすいじゅ）が到着。舜水樹は李牧の側近で、橑陽戦の大将を任された人物で、白い髪が特徴的です。

この舜水樹、山の民を引きずってきて、楊端和の前で殺したのです。これは明らかな挑発行為でしょう。

怒りにふるえる楊端和は、全軍を率いて前に出ます。しかし趙軍は、舜水樹の「撤退」の指示により、後ろに下がっていきます。秦軍はそのまま進み続け、橑陽城の目の前まで来てしまいました。趙軍は攻城戦に持ち込みたかったのか？と思いましたが、どうやらそうではないようです。

楊端和は、何かの気配を感じ取っています。
「全軍停止　敵の突撃に備えよ」「来るぞオ」

犬戎です。狼の皮をかぶった大きな獣のような群衆が、垂直な崖を一気に下り、山の民に向かって襲いかかります。

楊端和は自ら、メラ族を連れて脇にある山を獲りにいきます。下から駆け上がり、上から来る犬戎を力で蹴散らすと、頂上を獲得。ここから、犬戎に向かって一斉に矢を降らせます。さすがは楊端和！　ここから趙軍を上下に挟み撃ちにできれば勝てるか？　しかし、犬戎は、まだうじゃうじゃいます。しかも、犬戎の王 ゾロも舜水樹も、楊端和の首を狙うと言うのです。

楊端和は渡さないぞ！　がんばれ、山の民！

犬戎とは？

得体の知れない獣のような怖さとして登場した犬戎ですが、彼らはどんな人たちなのでしょうか。

舜水樹の解説によると

舜水樹によると、犬戎とは、“500年前に時の周王朝を滅ぼした騎馬民族” とのこと。

“定住に失敗して中華世界の北にいたものの、北の地は匈奴のものとなりその姿は消えた。純粋な生き残りが密かに太行山脈に定住。李牧が趙に取り込むために、彼らに橑陽を与えた” そうです。

また、犬戎は使う言語も違います。趙軍内でのコミュニケーションは、舜水樹が通訳をしています。

舜水樹がなぜ犬戎の言葉がわかるのかは謎です。彼が犬戎の王 ロゾとの会話の中で、“今あなたと話している言語は「（犬戎語ではなく）匈奴の言葉だ」” と言っているシーンがあります。これを踏まえると、舜水樹は匈奴出身ということになりますが、真相は原作でも、2025年12月現在、まだ明かされていません。

史実によると

歴史的な事実の中で、「犬戎」はどのように理解されているのでしょうか？

彼らについては、はっきり言ってよくわかっていません。

遊牧騎馬民族である彼らは文字を持たないため、自らの記録を残していなのです。ですので、彼らの姿は中華世界の文字資料からわずかに窺い知れるだけです。

いちおう、“中華の北方に、匈奴以前にいた民族” ということになっていますが、モンゴル系・トルコ系・チベット系など、さまざまな部族・民族が遊牧騎馬生活を送っていたのが実態だろうと考えられています。そして、彼らが匈奴に追いやられて消えてしまったのか、彼らそのものが匈奴になったのか、これもまたよくわかっていません。

『史記』には、『キングダム』より500年ほど前、紀元前770年頃、最後の周王 幽王（ゆうおう）を倒すのに、犬戎が時の太子の母に協力したことが書かれています。ただし、周の滅亡の原因は犬戎というよりも、内部の権力争いが原因とみてよいでしょう。これで周は滅び、王家だけが西と東に分かれて存続し続けますが、権威はあれども支配力はなしです。

その後、前264年に秦が西周を滅ぼし、前255年に同じく秦が東周を滅ぼしています。

しかし、そもそもの話、殷を滅ぼして中原の地と漢字を手に入れた周も、犬戎と同系統なのではないかという説があるくらいで、西北から来た民族です。農耕定住民中心の中華世界と、北の遊牧騎馬民族の間には、交易や王家同士の交渉など、そのときどきで関わりを持ちながら歴史を歩んできたのだと思われます。

次回は、第11話「必殺の別働隊」

今回の第10話は、「犬戎」の得体の知れない大きさが怖かったですね。楊端和があんなに必死な表情を見せたのは、初めてではないでしょうか？　「山の民」にはいつも活躍を見せられていましたから、舜水樹に殺される場面はショックでした。

また、戦（いくさ）は殺し合いなのだ、と改めて心に留める回でもありました。

そして、信の動きも楽しみです。ちょうど、信たちが秦左翼にたどりついた所で終わりましたので、次回どう突っ込んでいくのか、早く続きが見たいです。

また、個人的にではありますが、今回の話はちょっと頭を使って見る必要がある、とも思いました。誰がどこにいて何をしているのか、頭の中に地図がないとわかりにくいような気がしたのです。もう一度第9話などに出てくる地図を見てから、第10話を見るとわかりやすいかもしれません。

とはいえ、この難しさは「戦争講座」のようで、おもしろい！とも感じます。個々の兵士のぶつかりあい、作戦全体の勝敗、戦争の決着の付け方、国のあり方、歴史の流れ。視点をどこに置くのかで、戦いの解釈が違ってきますからね。勉強になります。

さて、次回は第11話「必殺の別働隊」です。

信たちが左翼でどんな動きを見せるのか？　蒙恬の楽華隊と信の飛信隊が協力しあうところが、見られるかもしれませんね。

SNSの反応

SNSには、「王賁、努力だけではどうにもならないものを越えられるか」「楊端和さまが今日も麗しい」「犬戎きたー」「心理戦と戦略がおもしろい」などの声が上がっていました。