
「ひとりぼっち」のみんなが集まったら、ひとりぼっちじゃない──ReoNaさんが語る、Cheer Concert「ReoNa -よりみち-」=寄り添い合う道の原点。そしてこれから【ロングインタビュー】
「その時期を生きている人にとって、ふと立ち寄れる場所になれたら」
── 一連のお話を聞いていると、「よりみち」という言葉と場所に込められた思いが、より深く見えてくる気がします。
ReoNa:小学校や中学校の頃って、登校中につらくなってしまって、家にも帰れない、学校にも行けないことがあると思うんです。でも、学校が開いている時間に、そういう子を受け入れてくれる場所って、意外とないんですよね。
だからこそ、学校でも家でもない場所、行かなければいけない場所ではないけれど、ふと立ち寄れる場所があることって、すごく大切なんだと思います。「よりみち」という言葉には、私自身のそういう想いや経験もあるのかなと。
──子どもの頃は、学校や家庭など、自分ひとりの力では変えられない環境の中で苦しくなることもありますよね。だからこそ、そこから少しだけ離れられる場所があることも大切なのかなと感じました。
ReoNa:そうですね。そこから一歩出れば、意外と世界って自分で選べるんだよ、ということも、感じてもらえたらいいなと思います。それこそ、音楽が好きということが趣味になれば、家族でもない、学校の友達でもない、ライブのときだけ会う仲間ができるかもしれない。それって、まぎれもなく、あなただけの居場所だと思うんです。
例えば……美容室もコミュニティだなと思うんです。ネイリストさんもそうですし。友だちでもない、家族でもない、仕事の仲間でもない。何の脈絡もないけれど、ただ“私”という存在を知っていて、定期的に会うことができる。なんとなくお互いの愚痴を言い合ったり、聞き合ったりする。意外と、自分のコミュニティって、いろいろなところにできていくものなんだなと、私自身あらためて思うことがあります。
──今回のライブは、子どもたちにとってすごくいい居場所になりそうですよね。普段のライブとは違って、チケットを自分で買って行くことがまだ難しい子どもたちも、こうして集まることができる。
ReoNa:第1回を開催させてもらったからこそ、もっとその世代の子たちが気軽に参加できるようにするにはどうしたらいいんだろうとか、どうしたらもっと居心地よくなるだろうとか、私だけではなく、あの日一緒に「ReoNa -よりみち-」を作ってくれた人たちみんなの頭に浮かんでいるような気がしています。学校に行っているかどうかだけではなく、その時期を生きている人にとって、ふと立ち寄れる場所になれたらいいなと思います。
松原:今回の「ReoNa -よりみち-」は、年齢としては高校生までの方とその同伴者を対象にしていますが、豊島区在住であれば、学校に通っていない方や通信制の学校に通っている方にも参加していただけます。いわゆる“学校”という枠だけで区切るのではなく、この街で過ごしている子どもたちが立ち寄れる場所として、継続的に音楽鑑賞の機会を開いていけたらと考えています。
──豊島区に住むひとりの親として、とてもありがたい企画だと感じています。それにしても、「シマユイあまみ」に「ReoNa -よりみち-」と、ここ最近は10代の方たちがReoNaさんのお歌に触れる入り口も、少しずつ広がっているように感じます。
ReoNa:本当に自然と、10代の子たちとの距離が、少しずつ近づいていたのかもしれません。「シマユイあまみ」では、ちびっこたちが一緒にステージに立ってくれたりしました。
──さきほど話題に挙がっていた「Annacoto」のイベントにもゲスト参加されたとか。
ReoNa:「シマユイあまみ」の翌日に、学生団体「Annacoto」の主催するイベント「AGC」があったんです。島の子たちがランウェイを歩いたり、のど自慢大会をしたり、ビートボックスを披露したり、学生さんが生演奏をしたりするイベントで。その締めくくりの場で、3年生の卒業に向けたサプライズとして、「Annacoto」のテーマソングを作りたいという話が、実は内々で進んでいました。
──それがAnnacotoのメンバーが作詞に挑戦したという「Annacoto~Islanders~」なのでしょうか?
ReoNa:はい。チームReoNaの総力を挙げて、(ハヤシ)ケイさん、Panさんにも参加してもらい、学生の子たちとリモートや対面でやり取りもしながらサポートさせてもらったんです。その楽曲を3月8日にお披露目できて、私も実際に参加させていただきました。ただ、あくまで主役は「Annacoto」の子たちなので、私はお歌の初披露の場として、一緒に歌わせていただいたという感覚でした。
明日からの生活により輝きや希望をもたらしてくれるように
──開演前からは高際区長からもメッセージが届いていましたね。
ReoNa:はい。さまざまな体験の機会を作っていく仕組みを、豊島区としてもいろいろと進めていらっしゃるというお話がありました。「アニメ、ゲーム、コスプレの聖地として」という言葉もありましたけど、その中で音楽体験として、学生さんに向けて、アニソンというものがひとつの接着剤のような存在になれたらいいなと思いましたし、ReoNaとしてそこに関われたらすごくうれしいなと思いました。
──客席には、初めましての方、さらにはライブが初めてというお子さんも多かった一方で、ReoNaさんをご存知の方もいました。
ReoNa:いろいろな方に来ていただき嬉しかったです。飼っている猫のことを知ってくださっている方や「ガジュマル ~Heaven in the Rain~」のことを聞いてくださった方もいました。さらにはライブが初めてという方も多くて。本当にありがたいなという気持ちと、やっぱり責任重大だなという気持ちがありました。
せっかく来てくれたからには、「来てよかったな」と思ってもらえたらいいなって。「よりみち」から、それぞれの旅路に帰っていって、もうすぐ学校が始まる子たちもいるでしょうし……。家に帰って、お父さんお母さんや家族に、少しでも話したくなるような日であってくれたらいいなと思っていました。
──MCでは客席とのやり取りも多く、質問コーナーではかなり近い距離で会話されていたのが印象的でした。なかには「どうして歌手になったんですか?」といった直球の質問もありました。良い質問でしたよね。
ReoNa:まっすぐでしたね。本当に気になったことを聞いてくれたんだなと感じました。本当だったら、一人ひとりに向き合って、その人にオーダーメイドした答え方ができたら良かったのかなとも思うんです。
「どうして歌手になろうと思ったんですか?」という質問の中にも、もしかしたら、その子自身が歌手になりたくて悩んでいるのかもしれない。将来の夢が、まったく別のものとして確かにあって、「どうやって目指したんだろう」と聞いてくれたのかもしれない。あるいは、まだ将来が全然決まっていないから聞いてくれたのかもしれない。
ただ、それでも、素直に打ち返そうと思ったんです。こちらも素直な気持ちで、なるべく伝わるように。嘘なく、過不足なく、まっすぐ答えようと。質問を受け取る以上、そこは決めていましたし、ちょっと覚悟もしていました。
──あの場にいた子どもたちに、まっすぐ届く言葉だったと思います。
ReoNa:もしかしたら今日明日には一度忘れてしまうかもしれなくても、いつか自分の将来の夢を考えたときに、言葉のかけらだけでも思い出してくれたらいいなと思います。
この日のお歌も、明日からの生活を急に大きく変えるものではないかもしれないけれど、ふとした瞬間に「あの日、少し立ち止まってもいいって言ってもらえたな」と思い出してもらえたらいいなと。開演前のメッセージで、高際区長が「明日からの生活により輝きや希望をもたらしてくれることを期待しています」とおっしゃっていましたが、本当にそうなっていたら嬉しいです。
──余談なのですが、私自身、小さい頃にチャリティーコンサートのようなものへ連れて行ってもらったことがあるのですが、「受け取らなければいけないもの」として感じてしまって、その輪の中にうまく入れなかった記憶があります。
ReoNa:それこそ本当に話がよりみちしちゃうんですけど……実は私も小学生のときに、チャリティー系のイベントを観に行ったことがあったんです。何組か芸人さんが出ていて、ある芸人さんが客席いじりをされていたんですよ。
途中で退出する人がいたり、携帯のアラームを切り忘れて鳴ってしまったり、チャリティワンマンライブだったら本来ノイズになってしまうような出来事もあったんです。でも、それを全部巻き込んで、笑いに変えていたんですよね。私にとって、そういう形のイベントを観に行った経験はそれくらいしかなかったんですけど、そのときに「同じ空間にいるんだな」という感覚がすごくあって。一方通行ではないものを感じたんです。
振り返れば、そういう経験を通して、皆さんに当事者であってほしい、1対1であってほしいという思いは、ずっと持ち続けてきたものなのかもしれません。ReoNaと初めましての人や、これからどんなお歌が歌われるのかわからない人たちにも、その感覚が少しでも発揮されてくれたらいいなと思っています。
「子ども扱いされたくなかった」あの日の思い
──では具体的にライブを振り返っていけたらと思います。今回は3人によるアコースティック編成でしたが、メンバーや編成はどのように決められたのでしょう。
ReoNa:アコースティックで3人編成にしようというのは最初に決めていて、今回はいつもお世話になっているバンドマスターの荒幡亮平さんと、佐々木“コジロー”貴之さんにお願いしました。実はコジローさんとはライブでご一緒するのが初めてだったんです。
レコーディングでは「HUMAN」などにも参加してくださっていますし、スタジオで楽器レコーディングをされているところを拝見することもあって。ものすごくあたたかさがあって、ちゃんとお歌を聴きながら演奏してくださっていることが、すごく感じられる方で。今回「ぜひに」とお願いしました。
──実際、荒幡さんとコジローさんとの3人編成はいかがでしたか。
ReoNa:本当に、「ライブでご一緒するのは初めてだっけ?」と思うくらいでした。まずコジローさんが、すごく曲を聴き込んできてくださっていたんだと思います。プロフェッショナルな技術を持って、歌詞の言葉も聴いてくださっているし、私の声の温度も聴いてくださっている。さらに荒幡さんの音色も聴きながら、コジローさんご自身が培ってこられた経験や技術を、すごくハートフルに投入してくださっていることが、最初から伝わってきました。「この3人だったら、本番も安心だな」と思えました。
──セットリストはどのように決められていったのでしょうか。
ReoNa:候補曲はたくさんあったんです。ありがたいことに、今回が最初で最後ではないので、続けさせてもらえるのであれば、まず今回やってみて、そこからきっとまた学んでいくことがあるだろうなと。そうした前提があった上で、第1回目にふさわしいお歌って何だろうと考えました。
──子どもたちに向けた場ではありましたが、決して目線を下げるのではなく、相手にちゃんと届く形を探しながら、言葉や音楽を手渡しているように感じました。
ReoNa:まさにそれは意識していたところでした。セットリストを考えているときに、自分が子どもの頃、あまり子ども扱いされたくなかったことを思い出して。もちろん年齢的には子どもなんですけど、子ども扱いされすぎたくはなかったので、難しい言葉は、難しい言葉のまま使ってほしかったし、わからないことがあれば自分で調べていました。そうした自分の想いも一匙、今回のセットリストに加えています。
それこそ「ANIMA -Naked Style.-」や「メメント・モリ」を頭に持ってきたことにも意味があって。あくまでもReoNaのコンサートである、というところは大事にしたまま、「よりみち」したいなと。
──傘村トータさんの楽曲も多く含まれていました。今回のライブを経て、傘村さんの楽曲には、悩んだり迷ったりしている学生の方たちに寄り添う言葉がたくさん詰まっているのだと、改めて感じましたね。
ReoNa:傘村トータさんとお話ししていて思うのは、互いに、いちばん無力感を感じた時期の年齢が近いんだろうなということなんです。15歳前後の、100パーセント子ども扱いはされないけれど、まだ大人にもなりきれていない時期。けれど、何か自分にできそうな気もしてしまう年頃。その時期の心の振れ幅の大きさが、ちょっと似ているんじゃないかなと思っていて。
だからこそ、ReoNaがそういう子たちに寄り添いたいと思い選んだお歌に、トータさんの言葉がすごくぴったりだなと感じていました。
──中盤に、傘村トータさんの「さよナラ」がありました。絵本の読み聞かせのような語りから始まることで、客席にいた子どもたちも自然と物語の中に入っていけたように感じます。一方で、描かれている内容は決して軽いものではなくて。今回の「よりみち」でこの曲を届けようと思ったのは、どんな理由からだったのでしょうか。
ReoNa:楽曲ができて、(MVで使用している)絵本ができた時点で、いつかお歌を歌いながら物語を読み聞かせるようなことを、小学生くらいの子たちの前でできたらいいなと思っていました。今回はお歌としてお届けしましたけど、いつかは本当に、絵本のなかの、おおかみの「ナラ」と、にんげんの「さよこ」を、読み聞かせのような形で届ける機会も作りたいなと思っています。
──話が少し脱線してしまいますが、ReoNaさん自身も絵本を読んだり、図書館に行ったりする機会は多かったのでしょうか。
ReoNa:図書館、大好きでした。繰り返し本を借りて、中学生くらいまで図書館に通っていましたね。絵本も大好きで、小さい頃は『はらぺこあおむし』をよく読んでいました。
それこそ「地球が一枚の板だったら」や「生きてるだけでえらいよ」、「猫失格」も、いつか絵本みたいに、絵と一緒に届けてみたいなと思っています。少し先のお話にはなるかもしれないですけど、「よりみち」の旅路の中で、どこかで実現できたら素敵だなって。
──ぜひ実現して欲しいです。

































