
他の国へ引っ越すことは、少し「異世界転生」にも似た経験でもあると思うんです――『この外国人がオタクすぎて夢が叶えられない』作者りにあ・かたや先生インタビュー
漫画家を志すきっかけとなった『東京ミュウミュウ』との出会い
──ニューヨークご出身とのことですが、りにあさんはニューヨークでどうやって少女マンガと出会ったのでしょうか?
りにあ:子供の頃にアメリカのテレビで『東京ミュウミュウ』を見たのが最初のきっかけです。アメリカのカートゥーンとは全然違うし、絵がとても可愛くて、その時は「こんなアニメは見たことがない!」と驚きました。当時のアメリカには「魔法少女」のようなジャンルの作品がほとんどなかったので、すごく憧れるようになりました。
その後、『東京ミュウミュウ』の英語版のマンガがあることを知って、誕生日プレゼントとして買ってもらい、それからはずっと少女マンガを読み続けています。
──『東京ミュウミュウ』以外にも好きな作品はありますか?
かたや:ずっと前から「なかよし」の魔法少女系のマンガが大好きだったので『美少女戦士セーラームーン』『カードキャプターさくら』『しゅごキャラ!』なども好きです。
最近では、アメリカン・コミックス(アメコミ)業界で働いている人の中にも、日本のマンガに憧れている人がたくさんいるんですよ。
──たしかに、最近はアメコミでも少女漫画風の表紙を描くアーティストが出てきた印象があります。少女マンガがポピュラーになるきっかけが何かあったのでしょうか?
りにあ:90年代頃から『美少女戦士セーラームーン』などは人気でしたが、その人気が爆発的に広がったのはコロナ禍の時期かもしれません。コロナ禍では外に出られなかったので、アメリカでも多くの人が日本のアニメやマンガに接するようになrました。それで、昔よりも多くの人が日本のアニメやマンガのことを知るようになったのだと思います。
私が高校生の頃は、まだあまり知られていないニッチな趣味でしたが、Netflixなどのストリーミングサービスのおかげで、最近は本当にポピュラーになりました。
──高校時代のお友達や同級生も少女マンガが好きな方はいましたか?
かたや:少女マンガに限らず、普通に日本のアニメやマンガが好きな友達がいたので、みんなで集まって観賞会をしたりしていましたね。
家の近くの日系スーパーにポッキーやメロンパンが売っていたのですが、アメリカ人にとっては珍しい食べ物なので「アニメで見たことあるから買ってみよう!」となったりして。高校生の頃は、みんなで放課後にメロンパンなどを買ってアニメを見ていました(笑)。
あと、あまりアメリカ人は日本風のカレーを作ったりはしないのですが、友達と一緒に日本の「ゴールデンカレー」のルーを使って料理したこともあります。このインタビューを受けていて、久しぶりに当時のことを思い出して懐かしいです。
──少女マンガのどんなところに、そこまで影響を受けるくらい惹かれたのでしょうか?
りにあ:一番はキャラクターが可愛いからですね。私が高校生の頃のアメリカのカートゥーンとは全く違っていて、絵の綺麗さや可愛らしさに自然と惹かれて憧れるようになりました。
──りにあ先生が最も影響を受けた作品や漫画家さんを挙げるとしたらどなたですか?
りにあ:それは選ぶのが難しいですね(笑)。昔から「なかよし」で連載されていた漫画家さんが好きだったので、その中でも遠山えま先生やPEACH-PIT先生は大好きです。
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──りにあ先生の作品からは、勝手に「百合」の要素も感じているのですが、百合というジャンルもお好きだったりはしますか……?
りにあ:可愛い女の子を描くのが好きなので、自然と百合作品も好きになりました。イラストや世界観がとても好きでよく読んでいますね。
──ちなみに「百合」というジャンルは、英語でも「Yuri」で通じますか?
りにあ:そうですね、みんな「Yuri」と言っています。
──りにあ先生の好きな百合のマンガをお伺いしてもいいですか?
りにあ:最近だと『今日はカノジョがいないから』『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』『あくまであまい私の彼女』など、たくさんの作品を読んでいます。
🎉「今日はカノジョがいないから」
— 岩見樹代子 (@okome103) June 17, 2026
2026/6/17
5周年を迎える事ができました🎂
本当に本当に、読んで下さった皆様、支えて下さった編集部の皆様のおかげです。ありがとうございます✨
これからも可愛いクズ女達をよろしくお願いいたします✧#今日はカノジョがいないから #クズ百合 pic.twitter.com/qQaeF9xjhf
──作品名がスラスラ出てきて、日本人と話しているような感覚になってきます(笑)。ちなみに、ご自宅には何冊くらいマンガがありますか?
りにあ:日本に来てから、マンガだけで100冊以上は買っていて、それに加えて同人誌も集めています。同人誌って1冊は薄いんですけれど、家にあるのを積み重ねるとかなりの量になりますね。(両手で本を積んだイメージをジェスチャーしながら)日本に来てから買った量は、ちょっと自分でもヤバいかもしれないです(笑)。
──同人誌といえば、日本ではコミティアやコミケ(コミックマーケット)といったイベントが毎月のように開催されていますが、アメリカにもそういったイベントは頻繁に開催されているのでしょうか?
りにあ:アニメのコンベンションはありますが、そこでは皆さん主にファンアート(イラストグッズ等)を販売していて、同人誌という文化はあまり大きくありません。
アメリカからだと日本の同人誌を通販するのは難しいので、昔から日本の同人誌の文化に憧れていて「日本に来たからにはたくさん同人誌を買いたい!」と思っていたくらいです。
──りにあ先生がアメリカにいた頃は、紙の同人誌はあまり作っていなくて、どちらかというとオンラインで発表されていたということですか?
りにあ:実は、アメリカにいた頃も紙の同人誌を作ったことはあるんです。ただ、アメリカでは紙の同人誌自体が珍しいので、アニメコンベンションに持っていってもあまり売れなくて……。でも、自分は同人誌という文化が好きだったから頑張って作っていました。
りにあ先生と音楽、ファッション、アイドル
──りにあ先生の作品はファッションも印象的ですよね。ちょっとロリータチックな可愛らしさがありますが、ファッションの参考にされているものや、描く上で大事にしていることはありますか?
りにあ:昔から、いわゆる「J-Fashion」と呼ばれる日本独自のファッションが好きで、大学生の頃はロリータファッションにはまったり、今でもゴシック系や地雷系とかロリータなどは好きです。
そういった服は描くのも楽しいので、キャラクターをデザインする時も、自分が描いて一番楽しめる服や着せたいものをデザインしています。
──いま身に着けている指輪も『NANA』などで目にするヴィヴィアン・ウエストウッドですか?
かたや:あ、そうですね! 昔から『NANA』もすごく好きで、作中に出てくるアーマーリングにずっと憧れていたんです。『NANA』のファッションも本当に素敵で最高です。
──矢沢あい先生のファッションセンスは、多くの女性に影響を与えていますよね。
りにあ:アメリカでも矢沢あい先生はすごく人気のある漫画家さんです。アニメやマンガが好きなアメリカ人なら、みんな矢沢あい先生のことを知っていますよ。
──りにあ先生といえばアイドルの話題も欠かせないかと思います。マンガだけでなく、日本のアイドルもお好きなんですか?
りにあ:はい! アメリカにいる頃からずっと聴いていました。中学生の頃、アニメコンベンションに行ったのですが、実はそこでAKB48がライブをしていたんです。当時はまだ大ブレイクする前で、私もその時はAKB48を知らなかったのですが、それを観て「かわいい!」と一気にハマりました。
『ラブライブ!』のようなアニメも好きだったので、それもあって今でも色々なアイドルグループのライブを見に行くようになっています。
──最近のお気に入りのアイドルグループはどなたかいますか?
りにあ:最近は「NANIMONO(なにもの)」というグループが、とても可愛くて好きになりました。時間があれば地下アイドル系のライブにも足を運んだりしているんです。
──りにあさんご自身もアイドルとして活動されていますよね。実際にステージに立ってみた感想はいかがですか?
りにあ:とても楽しいけど、同時にすごく怖かったです。
アメリカに住んでいた頃は、基本的に引きこもり気味だったので……(笑)。ステージで歌ったりダンスをすることには全然慣れていないんです。ただ、いつかこの体験を生かして面白いマンガを描けるかもしれないと思って、アイドル活動を続けるようになりました。
また、アニメーターや漫画家として仕事をしていると日常的に運動する機会がないので、アイドル活動のおかげで筋トレや運動を始めるようになったんです。少しずつ体力がついてきたので、それは良いモチベーションになっていると感じています。
りにあ先生の“これからの夢”は?
──次回作のお話もお伺いできたらと思いますが、次に「こういう作品を描きたい」といったイメージはありますか?
りにあ:これからも漫画賞に挑戦してみたいと思っているので、色々なテーマのマンガを描いていきたいです。もちろん、自分の経験を活かして「外国人としての視点のマンガ」も作っていきたいですね。
講談社 編集担当:実は、既に『魔法少女OL』というタイトルの作品を描かれているんです。そちらは「Kodansha Manga Academy(以下、KMA)」というプラットフォームの「KMA AWARD: MANGAKA DISCOVERY」というマンガ賞に応募していて、今は審査待ちです。
この「KMA AWARD: MANGAKA DISCOVERY」は、講談社が初めて実施する海外のクリエイター向け新人賞なんです。海外出身のアーティストだけが応募できる賞なので、りにあさんの魅力をより多くの方に知ってもらう機会になればと思い、応募していただきました。
──結果発表はいつ頃ですか?
講談社 編集担当:第1次審査の結果発表が9月で、最終選考が10月予定となっています。
──ドキドキしますね。応募作品の『魔法少女OL』は、どのようなストーリーなんですか?
りにあ:世の中に普通に魔法少女が存在している世界観で、歌舞伎町のような場所で魔法の道具を買えたりします。会社で働いている魔法少女が主人公なので、例えば社長がパワハラをしてきたら「それ、やめてください!」と魔法ブラストで消せるような、そういったマンガです(笑)。
──今後、りにあさんとして日本で叶えたい夢や目標があれば教えてください。
りにあ:まずは、漫画の連載を持ちたいです。そしてアイドル活動の方は、もっと体力をつけて、たくさんの人と出会って友達になりたいですし、いつかオリジナル曲もリリースできたらと考えています。
──先生の日本での活躍を見て「自分も日本で漫画家になりたい!」と思う海外の方もいると思います。そういった方々に向けて先生からアドバイスを贈るとしたら、どんな言葉をかけますか?
りにあ:以前も似たような質問をされたことがありますが、私からは「海外にいても漫画は描けるよ」と伝えたいです。
実際、私もアメリカに住んでいた頃からウェブトゥーンやマンガをネットに投稿していましたし、最近では「KMA AWARD: MANGAKA DISCOVERY」のように海外に向けて開催されるコンテストも増えてきています。これから、もっと多くの海外出身の漫画家が登場すると思いますので、そういったコンテストに積極的に参加してみてほしいです。
そして、もし「日本に引っ越して挑戦したい」と思うのであれば、働きながらマンガを描かなければならない場面も出てくるので、その忙しさに対する「覚悟」も必要になるかと思います。
──それでは最後に、アニメイトタイムズの読者に向けてメッセージをお願いします。
りにあ:日本にいる間、一生懸命頑張りますので、応援していただけたら嬉しいです!
取材・記事:岩崎航太、写真:佐藤ポン



































