
『楽園追放 心のレゾナンス』11.13公開前リレーインタビュー連載 第5回:アニメーションスーパーバイザー・荻田直樹【前編】|3DCGアニメの“硬さ”を崩す鍵は「タメツメ」と顔
水島精二×虚淵玄 再び。『楽園追放 -Expelled From Paradise-』(2014年)のその先の物語を描く続編『楽園追放 心のレゾナンス』が11月13日に公開されます。アニメイトタイムズでは、公開まで、さまざまな主要スタッフへのインタビューを敢行! その成り立ちから物語に至るまで、多角的に迫っていきます。
連載第5回は、アニメーションスーパーバイザーの荻田直樹さん。作画アニメでいう総作画監督というポジションなのですが、作画に対するこだわり、『楽園追放 心のレゾナンス』に懸ける想いを聞きました。前編は『楽園追放 -Expelled From Paradise-』(2014年)についても語っていきます。
『楽園追放』は、当時のセルルックCGアニメの中で抜けていると感じていた
――アニメーションスーパーバイザーは、どんなことをするポジションなのかを教えてください。
荻田直樹さん(以下、荻田):アニメを観ている方にわかりやすく説明すると、総作画監督のようなポジションになります。画面の構成を含めた絵の最終チェックをするのですが、今回の『楽園追放 心のレゾナンス』だと、アニメーションスーパーバイザーのほか、3Dモデルのスーパーバイザーとエフェクトのスーパーバイザーがいるので、スーパーバイザーの中の「絵をチェックする部門」と思っていただければと思います。
それと今作は、外部のいろんな方に協力していただき制作をしているので、それぞれのクオリティの凸凹をなだらかにする仕事というのもありますね。それがわりと大きな役割かもしれません。一部だけクオリティが高すぎてもいけないし、低すぎてもいけないので……。そのほかには、監督や演出さんと話して、ここはこうしたら良いのではないかと提案することもあります。
――作画監督はペンで修正すると思うのですが、それをソフトでやるということですか?
荻田:そうですね。絵に対してペンを入れて、「もっとこういう感じで」と指示することもありますし、我々が使うのは3DCGなので、3Dソフトでいじって、「こうしたほうがタイミングがカッコよくなるよ」とか「こうしたらもっとかわいくなるよ」というのを具体的に指示していくこともあります。
――データで修正すると、そのまま納品もできそうですが。
荻田:最終段階ではそうなりますね。ただ、時間があればリテイクをします。作業者に戻せるというのは3Dのメリットですし、それをしないとアニメーターの方も成長できないと思うんです。それに、そこで吸収することで、長い作品だと特に、後半の質が高くなっていくと思うんです。そのためになるべくリテイクはお伝えして、自身でやっていただくようにしています。
――確かに各自に戻せるというのは利点かもしれないですね。
荻田:自分のスタイルが、何秒のうちの何フレームをこうしたいではなく、印象として「ここの間隔がこう足りないから、こういう理屈で、こうしてほしい」という戻し方をするんです。その1カットだけのリテイクって、あまり効果がないと思っているので、理屈として考えるということを、リテイクと共にお伝えするのが、自分の信念ですね。
――それは物語の流れとか、キャラクターの心情を考えた上で、ここはこうなるでしょということとは別に?
荻田:はい、それもありますが、それよりは動きの理屈です。どこに体重が乗っているから、こういう動きをするとか。人間はそんなところで曲がらないよ、とか。話しかけられたら、いきなり振り向かずに、最初に気づきのアクションがあるよね、とか。
――アニメ制作のドキュメンタリーでも、原画をパラパラめくって、動きの不自然さを指摘するシーンがありますよね。人間の構造から考えた重心移動や力の入り方、芝居の部分など、いろいろ見ているのですね。
荻田:3Dは、アニメ作画に比べたらスタジオでまとまって進行できるので、対面で話ができるんです。なので目の前で演技指導ができるのは大きいです。
――ただ、それを全部のカットでやるとなると、結構大変な気がします。
荻田:映画は大変ですね(笑)。でも、何とか終わらせられるように、今頑張っています。
――先ほどの話だと、後半は少し楽になっていたりもするのですか?
荻田:これがそうとも限らないんですよ(苦笑)。シーンによって難度が違うので……。クライマックスってあとに残りがちなんですけど、クライマックスはまた別の大変さがあるんです。
――確かに。ここから少し、荻田さん自身について、経歴や影響を受けた作品について伺っていきたいのですが。
荻田:この業界に入ったのが、18年か19年前なのですが、何社かを経て、ここ(東映アニメーション)が3社目になります。直近は『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』に関わらせていただきましたし、その前はグラフィニカにおりまして、そこでは『HELLO WORLD』という映画や、『ラブライブ!』シリーズのアニメーションPVなどを作っていました。
――なぜ、3DCGアニメーターになろうと思ったのですか?
荻田:スタートはだいぶ邪な考えなのですが、大前提として勉強が嫌いだったんです。中学の普通科に行きたくなくて、最初はプログラマーをやろうと思い、そちらに進み始めたのですが、子供の頃から絵を描くのが好きだったので、その道を諦めきれず、結局はそちらの専門に行き、アニメや映画や映像が学べればいいなと思っていました。どこか良い就職先はないかなと考えていたとき「CGとかいいじゃん!」となり、その道に進んでいったという感じですね(笑)。
――当時、CGは過渡期だったと思うのですが、その未来に可能性を感じていたんですね?
荻田:そうですね。で、一番最初の会社の後、次を探していた時『楽園追放 -Expelled From Paradise-』(以下、『楽園追放』)が公開されたんです。その当時だと、CG会社としてサンジゲンさんやオレンジさんの名前をよく見かけていたんですけど、『楽園追放』は当時セルルックのCGアニメとしては、頭ひとつ抜けていると感じて、「これは間違いない!」と思い、制作をしていたグラフィニカに入りました。
――最初の会社では、基礎などを学んでいった感じなのですか?
荻田:当時、3DCGだけのアニメってあまりなかったんですけど、『おはスタ』で3Dアニメ枠があったんです。自分はそればかり作っていて、とにかくスピードを求められる仕事だったので、そこで基礎を叩き込まれたところはあります。
――そこから、自分がやりたいアニメを制作できる環境へ進もうと思ったのですね。でも、いろいろできる環境は大事ですよね。
荻田:そうですね。働き方改革もあって、良くも悪くも、今だとできない働き方をしていたと思います(笑)。それはグラフィニカ時代も同じで、当時は自分が頑張ろうと思えば頑張れる時代だったので、そこで自分もCGディレクターなどをやらせていただき、無理矢理自分を叩くことができたんですよね。それがあって、何とか今の自分があると思っているんです。
――自分にも身に覚えがありますが、当時は働きたければ働ける環境でしたよね。それが今はどうなるのでしょうか。
荻田:自分が教える側になって、それが今後の課題ですかね。


































