
「あのとき見たかった絵が自分で作れる」キングギドラ登場の裏側――『ゴジラ-0.0』監督・脚本・VFX 山崎貴さんインタビュー前編
タブーに手を染めざるを得なかった人々の物語
──前作の続きの物語をどう構築されたのですか?
山崎:前作のラストで、典子の首に痣が出現するという描写は、撮影中に現場で思いついたんです。使うかどうかわからないけれど、一応撮らせてもらったものでした。周りのスタッフはみんな「何を始めたんです?」という感じで(笑)。現場の進行を止めて、皆さんに迷惑をかけながら撮ったのですが、結果的に、あのカットを使うことになって、本当に撮っておいて良かったなと。まさかあれが続編の種になるとは思ってもみませんでした。何が幸いするかわからないですよね。それをどう活かすかを物語の根幹にして、脚本を構築していきました。
その痣は、彼女の命を救ってくれた福音であると同時に、彼女の人生を変えてしまう呪いでもある。それに対して、敷島がどうふるまうか。そしてキングギドラをどう絡めるか。いろんな要素を箇条書きにしていきました。本作のおもな登場人物は、必要に迫られて、タブーに触れてしまう人たちなので、なかなか幸せにはなれないのですが、タブーに手を染めざるを得なかった人たちの苦悩と、それを乗り越えていこうとする空気感は出せたと思っています。キングギドラとの戦いについては、前作で海神作戦の企画立案をしてくれた後藤一信さんに今回もいろいろなアイディアをいただき、細部を詰めていきました。
──新キャラクターとなる天才気象予報官・青山眞琴役の長澤まさみさんについて、オファーの経緯をお聞かせください。
山崎:今回の物語にはいくつかの軸があって同時進行するなかで、その軸を担う女性が典子以外にもう一人いるといいなと思い、長澤さんにお願いしたいという話になりました。長澤さんは、顔立ちや振る舞いにどこか昭和的な雰囲気をお持ちだなと思っていたんです。
ちょうど、阿部(秀司)プロデューサーのお別れ会のときにお会いしていて、「機会があればご一緒したい」と言っていただいていたので、お言葉に甘えて、「あのとき『機会があれば』と言いましたよね?」と(笑)。誰もが一度は仕事をしてみたい役者さんですし、ここでゴジラと長澤さんの揃い踏みというのもいいなと思って、お願いしたら出ていただけることになりました。実際にご一緒すると、本当に素敵な方で、皆がなぜ仕事をしたがるのも良くわかりました。周りへの細やかな気配りも素晴らしいし、作品への取り組み方もストイックですし、なにより的確なお芝居をしてくださっています。
──敷島家のシーンを久しぶりに演出されていかがでしたか?
山崎:明子(永谷咲笑さん)の成長が著しくてびっくりしました(笑)。前作では、幼すぎてお芝居のコントロールはできなくて、明子のタイミングに周りが合わせてリアルなリアクションを撮って、物語に落とし込んでいたんです。今回、連投してもらいたい気持ちはすごくありましたが、お芝居をしたことがなかった子が、2年たってお芝居ができるようになっている保証はない。でも、いざ演技を見せてもらったらものすごく成長していて。しかもいかにも練習してきたというお芝居ではなく、ナチュラルさを残しながら的確なお芝居ができる女優さんになっていました。泣くシーンでは本当に涙を流していますし、その成長に感動しましたね。
ゴジラとキングギドラの造形
──ゴジラの造形も監督が担当されていますが、前作から変わった部分を教えてください。
山崎:僕が勝手に唱えている「マジンガーZ進化論」というのがあって、2作目になるとだいたい尖ってくるんですよ。「マジンガーZ」の2作目「グレードマジンガー」が出てきたときに、各パーツが尖っていて、「うわ、かっこいいな」と思ったんです。だから、今回のゴジラを考えたときに、恥ずかしげもなく尖らせようと思って、いろんなところが尖っています。特に特徴的なのは肩ですね。前作のゴジラがなで肩に見えるくらいに尖っていますし、背びれも大きくなっている。より戦闘向けの体になっていて、自分の中では好きなフォルムです。しっぽの先に大きな背びれがあって、物語に沿ったデザインになっています。
ゴジラの背の高さは、前回も今回も50.1メートルの設定で変わっていないのですが、顔が小さくなっているので小顔効果で少し大きく見えています。前回は地上の人間の視点からゴジラを見ていたので、ゴジラの顔が遠くにあって、あの大きさでちょうどいいバランスだったのですが、今回はカメラが上にあることが多いため、少し小さくしました。
──ゴジラやキングギドラのシーンで心掛けたことは?
山崎:撮り方というか、イマジナリーラインのコントロールが難しかったですね。そこが整理されていない映画には僕はしたくなかった。今回は大きい怪獣と小さい人間がいて、その上で飛行機も飛んでいる。どこから撮れば混乱しないか、カメラ位置を決めるのがすごく難しいんです。その中で、今どこに誰がいてどちらに向かせたら自然になるのか。人間越しに怪獣を収めるのはサイズ的に無理なので、位置関係を維持しつつ、何とか画面を見たときに違和感がないように撮らなければならない。現場で自分自身、何度も混乱しました(笑)。
──キングギドラ周りの効果音についてもお願いします。
山崎:キングギドラ感を出しながらリアルさも欲しくて、いろいろオーダーを出しながら、ブラッシュアップしてもらいました。今までの映画のキングギドラは特徴的な高い音を出していましたが、今回はゴジラのように唸ったりもしながら、キングギドラ感もある音を作るのが大変だったと思います。しかも3本の首で少しずつ音が違ったり、吠えるときだけでなく何かをかじるときの音も作ってくれて、それがキングギドラのリアリティを上げてくれました。
──佐藤直紀さんによるキングギドラのテーマも耳に残ります。
山崎:佐藤直紀さんとはもう何作も一緒にやってきていますが、今回も最初に聴いたときはびっくりさせられました。キングギドラのテーマの「タラララ~」という音が、音楽というよりも効果音に近くて、「また何かを仕掛けてきた!」と。劇中では途轍もない量の効果音が入るので、ああいうシンプルな、耳をつんざくような音が入る構成は素晴らしいですし、あの曲が鳴ると一瞬で「キングギドラが来た」という感じになる。今回もさすが佐藤さんだと思いました。
[編集/小川賢人]
作品情報
全国東宝系にて公開中
































