
25周年の節目を経て魅せる「暁の星」での新たな挑戦と、変化し続ける歌の現在地|水樹奈々さん 44thシングル「暁の星」ロングインタビュー
門Dストリングスとの五重奏で作り出した「聖域」のような緊張感
── チェリーボーイズの皆さんとのアコースティックコーナーも恒例ですが、今回は門Dことバイオリンの門脇大輔さん率いるカルテット「門Dストリングス」も加わっての編成となりました。
水樹:このアコースティックコーナーは私も大好きで、毎回「ぜひ音源化してほしい!」と思っています! それぞれの曲でリーダーを決めてアレンジしていただいたのですが、どれも素敵で!
特に「シャレード」のアレンジがめちゃめちゃ大人っぽくてかっこよくて! アレンジはチャンプ(佐藤雄大さん)が担当してくれたんですが、弦パートは門Dだからこそトリッキーで難易度の高いアレンジを書いても大丈夫だろうという信頼関係のもとに作業が進んでいったそうです(笑)。
そして、当日のMCでもお話ししていましたが、「奈々さんはただのアレンジじゃ満足しないから、ちょっとトリッキーなものを取り入れよう」とのことで……、チェリボの皆さんは私のことをよく理解していらっしゃっているなと(笑)。
また、格さんがアレンジしてくれた4曲、「光」「空時計」「フリースタイル」「7COLORS」もそれぞれ魅力的で。門Dストリングスがいたからこそ生まれたふくよかな表現で、どれも感動的な仕上がりになっていたと思います。「フリースタイル」や「7COLORS」は、まさしく秋空に爽やかに響き渡るような構成で、歌いながらウキウキが止まりませんでした!
── 中でも「innocent starter -MUSEUM STYLE-」は、水樹さんと門Dストリングスのみ、5人だけのステージで。
水樹:「-MUSEUM STYLE-」としてはライブ初披露でしたが、門Dが精鋭部隊を連れてきてくださったおかげでめちゃめちゃ素敵な仕上がりになって、もう痺れました! ……緊張感はとってもありましたが(笑)。
── 曲の雰囲気もありますし、ファンの皆さんとしても初めての「-MUSEUM STYLE-」だからこそ、「聴き入らなきゃ」とより集中して、息を呑むような空気感が生まれていましたよね。
水樹:あの瞬間、会場全体がシーンと静まり返って、まるで聖域に足を踏み入れたような厳かな雰囲気で。そこには5つの音、私の声と四重奏しか存在していなくて、ちょっとした息遣いや揺らぎすら伝わる世界。もうどの曲よりも集中して臨んだと思います。曲の世界観に没入し、その場のセッションを楽しむところもあれば、音をしっかりキャッチしながら、どうやって4人の音と融合していこうかを考えたり。リズム楽器もないので、全員がボーカリストのような感覚なんです。
ただ、曲に入り込みすぎると崩壊してしまうので、しっかり私がブレない芯を作って先導していかなくてはならない。考えることが多すぎる反面、考え過ぎても硬い歌になってしまうので、考えすぎないようにして……と、シンプルだからこそ一番歌っていて丸裸になる瞬間で、そういった意味でも痺れましたね(笑)。
── 構図的には『NANA MUSIC LABORATORY 2019 〜ナナラボ〜』でのチェリボとの1対1のセッションを彷彿としましたが、規模などもまた違う分、別の緊張感があったと思います。
水樹:そうなんですよね! みんなが息を止めて見ているような、その気持ちすら伝わってくるような、リハーサルでは想定していなかった緊張感で。ライブ中盤にしてオープニングのような緊張感で歌っていました(笑)。とても歌い慣れた曲だけどアレンジも全然違いますし、あの空間で歌うことが何より特別な経験でした。
── ちなみに、藤野さんのMCもすごく印象的でした。Day1のMCで流れるように始まった中華料理屋の一幕は小噺のようで、まさかの大オチには大盛況で(笑)。
水樹:事前に打ち合わせは全くしていなかったんですよ!(笑) オーケストラの皆さんがステージに入るまでに少し時間がかかるので、ステージの前の方でインタビューさせてくださいという段取りだったのですが、始まってみたらすっかり藤野さんの独壇場。もう噺家さんみたいで(笑)。
「えっ、このお話はどこに着地するんだろう!?」と思いつつも、舞台監督が袖で「スタンバイOKです!」って合図を出しているのも見えていたので、「どうしよう、これ途中で切っちゃいけないやつだ!」って内心すごくハラハラしていました(笑)。でも最後には綺麗にオチまでついていて、「さすがだな!」と私も笑ってしまいました。
MV2本分の撮影!? 24時間かけて挑んだ『LIVE GRACE』ならではの幕間映像
── 今回の幕間映像は、OPムービーから地続きのストーリーで、バンド・ダンサーと共にMVさながらの「Dancing in the velvet moon」をフル尺で披露されていました。これまでのライブにはない試みだったと思いますが、どういった経緯で決まっていったのでしょうか?
水樹:いつも私の誕生日付近の1月開催だったのですが、今回は初めての秋の開催。また、季節的にハロウィンに向かっていくタイミングだったので、これまでの『LIVE GRACE』とは違う表現ができたらいいなと考えたんです。
そこで、秋といえば「薔薇」と思いつき、薔薇をモチーフにしたロゴや舞台にしようと考えたときに、『眠れる森の美女』が自分の中で浮かびました。そして、薔薇と言えば美しさと棘という二面性があり、ハロウィンが近い……というポイントから私の妄想力が爆発しまして(笑)、某ホラーなマンション風の映像を作るのはどうかとなりました。
お昼は美しい館だけれど、夜になるとそこでパーティーを繰り広げているゴーストたちが現れる。そこに迷い込んだ主人公・ナナが参加して踊っちゃう……マイケル・ジャクソンの『スリラー』みたいなイメージが浮かび、ストーリー仕立てのMUSIC CLIP風の映像を撮りたいなと。
そして、ハロウィンと言えば『ロザリオとバンパイア』のEDテーマである「Dancing in the velvet moon」がぴったり!と思い、幽体離脱をしたナナがゴーストになり1曲踊るというストーリーが完成しました。
朝になってゴーストたちが消えたら自分も元に戻っていて、でもどっちが本当なのかな……?という意味深な結末を迎える……というストーリーです。
── ファンの間でも「ぜひMUSIC CLIP化してほしい!」「どこかで見たい!」という声がSNSで多く上がっていました。
水樹:本当にそうなんですよ! ライブだけなのがもったいなくて! 当日のMCでもお話ししましたが、24時間かけて撮りましたからね!(笑)
撮影自体、時間がかかるものではありますが、ストーリー仕立てだったこともあり、やっぱりカット数が多くて。監督のLuCYさん(今井"LuCY"淳也さん)からは「実質MUSIC CLIP2本分なので2日かかります」と(笑)。「そこをなんとか1日で!」とお願いして、1日にギュッと詰め込んだ結果、丸1日がかりの撮影になってしまいました。
でも映像チームの皆さんがこだわり抜いて作ってくださったので、本当に素敵なものになりました。きっといつか皆様のもとにお届けできる日が来ると思いますので、楽しみにしていただけたらと思います!
ライブ歌唱における“力強さと優しさ”の変化
── 『LIVE VISION』や今回の『LIVE GRACE』を拝見していても、水樹さんの歌唱が、力強さの中に優しさや柔らかさを内包しているような歌い方に変化しているように感じました。ご自身で意識されている部分もあるのでしょうか?
水樹:もしかしたら、より多面的に曲を見られるようになってきたのかなと思います。私、もともと猪突猛進型なので、昔は「おりゃー!!」ってストレート一本勝負みたいなタイプだったんです(笑)。でも、より視野が広がって、遊び心みたいなものが増えてきたんだと思います。
生真面目な性格なので「きっちりやらなきゃ」って肩に力が入っちゃうタイプだったんですけど、少し前から「レコーディングはきっちり正確に歌を意識するけれど、ライブはその瞬間を楽しんでいいんだな」と思えるようになって。だからこそ、そのときに「こう歌いたい!」と思ったものを素直に表現して、「やってみたい」というチャレンジも積極的に取り入れていいんじゃないかなって、自分の中で選択肢が広がった感覚があります。
── ご自身の中で枷が外れたような。
水樹:「こうでなくてはいけない」「きっちりしなくてはいけない」と自分で縛っていた枷が外れたなと、ここ数年は思っていて。そういった考えの変化によって肩の力が抜けたことがきっかけで、もしかしたら柔らかさみたいなものが出てきたのかもしれません。































