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TVアニメ『生徒会にも穴はある!』河野ひよりインタビュー【連載第3回】

一人の“オスガキ”が「ぼくは可愛い」に至る過程の繊細さ──「そこがすごく人間臭いんです」『生徒会にも穴はある!』尾鳥たん役・河野ひよりさんインタビュー【連載第3回】

「ぼくは可愛い」に至るまでの“順番”

──アフレコでの印象深い思い出を教えてください。

河野:台本を開くたび、毎回新鮮だったんです。「この音域がたんだから」ではなく「このシーンにおいては誰にスポットが当たっているのか」を毎話考えることができました。

たんって、意外と引くときは引ける男だと思うんですよね。ずっと「ぼく! ぼく!」ではなく、その方が面白いと思ったときはちゃんと引くことができる。お話やシーンによって、今回のたんはこういう部分を重視して演じようと考えていました。じっくり期間をかけて録っていたのも、手癖で演じずに済んだと言いますか。

ていうか! 私以外のキャストの人が本当に上手くて! もう脇汗びしょびしょになってしまって、こまめにトイレに行きながら深呼吸してました。

──そんなプレッシャーを感じさせない、たんのテンション感が心地良いなと思っていました。

河野:私、結構緊張しいで……。アフレコの前は、文字を読んだら自分の声が聞こえてくるぐらい、台本に対してのアプローチをしていたんです。その次は絵に対して、空間に対して、と何回かレイヤー分けしてお芝居を作って、自分の声を録って聴いて録って聴いて。それをアフレコ日までに何回も何回も繰り返していました。

でも回を追うごとに、その準備をすると逆にみなさんに追いつけないんだとわかって、肩の力が抜けたと言いますか。ある意味「やったるで」という気持ちが序盤のたんにおいては活きていると思う反面、後半は変わってきたんです。自分のセリフについてみちみちに書き込みをするよりも「梅はどういう気持ちの流れでここは喋ってるのかな」「有栖はどう思いながら話しているのかな」と、他のセリフのチェックにだんだん時間を割くようになっていきました。全員分のセリフのタイムを取ってみて、どのぐらいの尺でこのセリフ言っているのかを考える。その考えを元に、ボルテージの上げ方を想像する、のような流れですね。

──生徒会の中での、たんの在り方を捉えていくような。

河野:だんだん掴めてきた感覚でしたが、たんって自分の欲求と同じぐらい「人が何を求めているか」にも敏感だと思うんです。「ここにいてもいいって心から思いたい」という欲求が根底にすごくあるのに、それを素直に発露できないからオスガキな接し方をしてしまう。仲良くしたいのに、あえて人にしばかれるような言葉遣いをする。その素直になれなさを心地良く感じるようにカスタマイズされていて。

普通、素直になれないって苦しいことじゃないですか。でもそれを楽しんでるような気もするというか。「ここでからかったらどんな顔をするんだろう」と思いながら行動するけれど、本当に人が嫌がることはしない……試している感じがするんです。

──有栖や梅らに対して。

河野:「有栖にこういうことをして、でも許されるぼく」「ってことは、ぼくは可愛いんだ!」と。「ぼくが可愛いから有栖は許してくれる」とは逆で「こういうことをしても許される。ってことは、ぼくは可愛い」の順番な気がするんですよね。それは彼の弱さでもあり、だからたんのことをみんなが可愛いって思えるのかなって。その自信の持ち方って繊細な気がするんです。

だからたんを演じる今回のアフレコでは、意外にも人を窺っていました。「どういう気持ちでこのセリフ喋ってるのかな」に対して「このぐらい言っても許されるだろ!」のようなあざとさもポイントです。

──わがままに見えるたんですが、良いヤツであると感じています。

河野:「自由でいたいけど人には愛されたい」って、みんなが持っている感覚だと思うんですよね。たんは感覚がぶっ飛んでいるように思われるかもしれませんが、その動機が伝われば、共感できるキャラクターなんじゃないかなって思います。

──「これぐらいいいのかな」というボーダーが目に見えてわかれば、それほど楽なことはないのかなとも思います。

河野:だからこそ「しばいてくれるって愛があるんだ」って思いました(笑)。思い切り壁にめり込ませてくれないと収集がつかないイジりもあるので、愛の応酬だなって思います。

──ちなみに、たんについてSNSなどでの反響はご覧になりますか?

河野:どこかで見たコメントで「たんは社会人になったら、仕事はできるけど職場で素が出せなくて生きづらくなるタイプのキャラ」「ふと学生時代の生徒会のやり取りを懐かしく思いそう」って書かれていて、なんてたんを理解したコメントなんだ、よくわかってる! と(笑)。そういう男なんですよね。

──生徒会にいるからこそ素が出せる、と。

河野:本作の世界のルールとして「みんな、欲求に素直」があると思っています。あれを言いたい、これをしてみたいという欲が全員均等に素直だから「えっ……?」って引くキャラがいないんですよね。

「ぼくって可愛いでしょ?」には「はいはい可愛い」と返す。「え、ぼくって可愛いとか普通言う?」のような反応は存在しない。だからめちゃめちゃ気持ち良いのかもしれないですね。欲望をさらけ出すことは、社会を良くするのかもしれません!

「できることからしていきましょう!」

河野:そういえば、内山(夕実)さんのインタビュー記事を読みました! 「私のこと褒めてくれてる……!」と思って嬉しかったです。

──ありがとうございます! ちなみに、先生と生徒会メンバーのみなさんにお話をお伺いする中で「アフレコは河野さんのエピソードトークから始まっていた」という気になるお話が寄せられているのですが……。

河野:「そうだっけ!?」と思ってます(笑)。何を話したかほとんど覚えてないんですけど、録り終わった日のお風呂では「喋りすぎたかも……」って反省していたんです。毎回現場に行くまで「今日こそはあまり喋りすぎないでいよう」って思うんですけど、行くとキャストのみなさんが笑いながら聞いてくださるって、それが気持ち良くて!「ウケたい!」という想いで色々な話をしてしまいました。なのでみなさんが「面白かった」って言ってくださることが誇りです!

くだらないことをみんなで共有する時間があって、そこに生徒会を感じて、楽しかったですね。

──温かい雰囲気と、学校のような空気感があったのかなと想像しています。

河野:録っている最中も面白かったのですが、録っていない間の時間も同じぐらい楽しかったです。だからアフレコが終わっちゃったときは寂しかったですね。

人によってお芝居のアプローチは違うと思いますが、私はマイクの前に立っているときは自分を尾鳥たんだと思ってお芝居をしていました。準備段階でも「たんはどういう人間なんだろう」と時間をかけて考えていたこともあって、もう一人の自分がいなくなってしまったような気持ちになって……。「こういう暮らしをしてもいい」って許可を与えられていた尾鳥たんバージョンの河野ひよりが、収録が一段落ついたことによってなくなってしまったような。すごい喪失感でした。だから早く2期を作りたいです!

──ファン全員の願いです。

河野:なので今年の年末は宝くじを買おうと思っています。

──河野さんが出資を!?

河野:莫大なお金を(笑)。といっても現実的ではないと思いますので、Blu-rayを買っていただけたらより現実味が増すと思います。できることからしていきましょう!

──そんなBlu-rayの特典もとても豪華ですよね。

河野:誰かが「あれ(抱き枕カバー)を干しておいたら泥棒が入らない」って言っていて、そんな防犯もあるんだなと思いました。だから全部コンプリートするべきだと思いました。

──たしかにズラリと6人分の抱き枕カバーが並ぶとオーラがありそうです。そしてその6人目はファンからの投票で決まるとか。

河野:防犯の面から考えると投票先のキャラクターの幅が広がるかもしれないですよね。校長先生とか。

(C) むちまろ/講談社・アニプレックス
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