声優
『ちえりとチェリー』で高森奈津美さんがリアルな子供の役作りに挑む

3年間、リアルな子供の役作りを研究しました──長編パペットアニメーション『ちえりとチェリー』ちえり役・高森奈津美さんインタビュー

 7月30日より劇場公開がスタートした、“いのち”と“想像力”の大切さをテーマにした長編パペットアニメーション『ちえりとチェリー』。

 本作は、監督にロシアの人気キャラクター“チェブラーシカ”の映画を日本で復活させた中村誠氏、キャラクターデザイナーにオリジナル版『チェブラーシカ』や『ミトン』の美術監督であるレオニード・シュワルツマン氏と『ジュエルペットてぃんくる☆』などで知られる伊部由起子氏、脚本は多くのアニメ作品を手掛ける島田満氏が監督の中村誠氏と共に担当。豪華スタッフが顔を揃えたことに加え、クラウドファンディングによる展開も実施したプロジェクトという点でも注目を集めました。

 キャストは、幼い頃に父を亡くし母と二人暮らしの少女・ちえりを高森奈津美さん、ちえりの話し相手であるぬいぐるみのチェリーを星野源さんが演じているほか、尾野真千子さん、栗田貫一さん、田中敦子さんといった多彩な方々が『ちえりとチェリー』の世界を彩っています。

 今回、不思議な体験を通じて成長していく“ちえり”を見事に演じた高森さんに、作品のことや演じる上で意識したことなどお話をうかがいました。

<ストーリー>
幼い頃に父を亡くし母と二人暮らしの少女・ちえり。
忙しく働く母に変わる話し相手は、ぬいぐるみのチェリーだけ。空想の中でチェリーに話しかけ、何でも相談していました。
そんなちえりとチェリーは、父の法事で祖母の家にやってきます。しかし、いとこたちにチェリーのことをからかわれて意地になってしまったちえりは、法事に出席せず1人留守番することに。
古いお屋敷で、ちえりとチェリーの不思議な冒険が始まります……。


■ ちえりが現実にいると思ってもらえるように

──『ちえりとチェリー』には初期の頃から関わられているそうですね。

高森:パペットアニメーションの映像を撮る前の、絵コンテ段階に声をあてる“パイロット版”の収録から関わらせていただきました。それが2011年頃ですので、もう5年ぐらい前になります。


──最初にストーリーを読んだ時の感想はいかがでしたか?

高森:すごくテーマが深いと感じました。ちえりは小学6年生ですが、私の中で小学生ってすごく子どものイメージがあったんですよ。そんな子が“人の生き死に”に直面しているのは、すごい作品だなって。多くの小学生はそういうことを考えていないと思いますが、ちえりは作品内の数時間にギュッと詰まった冒険で向き合えるようになるのがすごいと思いました。


──ちえりは物語の最初と最後でかなり印象が違います。どのように演じようと思いましたか?

高森:最初の頃のちえりはすごく閉鎖的で、心を開いているのはチェリーだけなんです。お母さんのことは好きだし大事に思っていますけど、心は開いていなくて。まだ子供ですし、寂しさや「自分だけが悲しいんじゃないか」という気持ちもあったと思います。そんなちえりが、物語の中でねずざえもん(ねずみ)やレディ・エメラルド(猫)など自分以外の命や、犬さんの出産に出会い、最後は心を開くようになるんです。私は細かな演じ分けが出来るタイプではないですけど、“心が開いているか閉じているか”がちえりの成長度合いだと思って演じました。


──役作りということで意識した点はありますか?

高森:パイロット版を収録してからパペットアニメーションが完成して本番のアフレコをするまで3年ぐらい時間がありましたので、その間にいろいろ考えました。パペットアニメーションに初めて関わらせていただくということもあり、より等身大と言いますか現実にいる子供のように演じたいなと。そういう意味では、ちえりは(私ではなく)子役さんがやってもおかしくないと思っていたんです。


──感覚としては実写映画のように?

高森:そういう思いがありましたから、役作りとして3年の間に子役さんが演じている作品や、子供がいっぱい喋っている作品をたくさん見ました。中村監督からはパイロット版を収録した時に、「ちえりは(本編でも)高森さんにお任せする可能性が有る」とふわっとお伺いしていましたので、もし私がちえりを本当に演じる日がくるのなら……と思って、子供の研究をしていたんです。


──2Dセルアニメとの違いはかなり意識されたんですね。

高森:アニメ(2Dセルアニメ)は、絵がやってくれるところがあるんですよ。私が可愛いことをしなくても、絵や演出、エフェクト、効果音が補完してくれて。どちらかと言うとファンタジー(非現実的)に作ってくださいます。でも、この作品はよりリアルに、本当にちえりという子がいるのではと思ってもらいたいと考えていました。


──中村監督は高森さんにお願いした理由として「高森さんは可愛い声をしているんですが、そこはかとない悲しさや寂しさが混じっている」とおっしゃっていました。

高森:自覚したことはないですけど、監督がそう感じてくださるということは、きっと“私の中に息づいている悲しみ”のようなものがあるんでしょうね(笑)。


──ちえりはただ可愛いだけでない奥深さがありますからね。

高森:普通の小学6年生に比べたら抱えているものが大きい子だと思うんですよ。私自身は両親の死に直面していませんので、私よりもむしろちえりの方が抱えているものが大きいかもしれません。ですので、子役さんよりもいろいろな経験をしてきた大人の方が、ちえりの悲しみを出せるのかもしれないとは思いました。

■ 2Dアニメにはない“空気感”や動物たちの毛並みを感じて欲しい


──パイロット版から3年をかけてパペットアニメーションが出来たわけです。本作のパペットアニメーションとしての魅力はどこでしょうか?

高森:この作品には(2Dの)アニメでは感じたことのない“空気”があるんです。光に透かして舞っているホコリや、おばあちゃん家の古い建造物独特の光、蔵もそうです。ちえり目線で作られているので、実際にはあんなに大きな家じゃないのかもしれないですけど、ちえりからしたらすごく広くて大きな家で。1人で居ると怖くなってしまうような空気感があって、子供が感じる空間の奥行きをすごく感じられます。


──登場する動物たちも魅力的です。

高森:そうなんです。みんな毛並みがちゃんと違うんですよ。レディ・エメラルドは上品な毛並みをしているし、チェリーはちょっとボサボサですし。そういうところもリアルに感じられると思いました。


──特に印象的だったシーンはありますか?

高森:水の中のシーンは感動しました。空のシーンもそうですが、パペットアニメーションとCGを融合させて作られているんです。


──これまで日本で作られたパペットアニメーションとも雰囲気が違いますよね。

高森:私が今まで見てきたパペットアニメーションは、数分の映像で定点カメラの映像が多いイメージでした。でもこの作品は実写映画のようなカメラワークで、車が走っているシーンはすごく世界が広く感じますし、セットがセットのように感じないのはすごいなと思います。

■ 私も小さい頃はぬいぐるみに名前をつけて連れていました

──アフレコは皆さん一緒にやられたのでしょうか?

高森:ほとんどの方が揃って行いました。


──他の方の演技を聞いていかがでしたか?

高森:星野さんのチェリーの第一声を聞いた時に驚きました。今まではチェリーのことを「頼れるお父さんのように全面的に引っ張ってくれる存在」だと思っていたのですが、星野さんのチェリーを聞いたらそうではなくて「一緒に並んでくれる親友」だと感じて。私の中で路線変更が起こりました。具体的に言うと、「ねぇねぇチェリー、これってどうしたらいい?」と甘えて頼るような感じで臨もうと思っていたのを、「ねぇチェリー、これどう思う?」と友達に話す感じにしたんです。最初に思っていたのとは違いましたけど、友達感覚のチェリーと作品を作るんだと思ったら、すんなり路線変更できました。それがアフレコで一番驚いたことですね。


──やはり1人で作り上げるだけでなく、人とやることで変わっていくのですね。

高森:そうなんです。人と演じることでこんなにも変わるんだなって改めて思いました。


──ちなみに、高森さんは子供の頃にチェリーのような存在はいましたか?

高森:ちえりほどではなかったと思いますが、私もぬいぐるみに名前をつけていてお気に入りの子がいたんですよね。その子は常に持ち歩いていました。名前は単純に「うさこちゃん」でしたけど(笑)。


──うさぎだったんですね!
※チェリーは元々何の動物だったかすらわからないが、見た目はうさぎに近い。

高森:本当だ! 言われてみれば、うさぎでしたね(笑)。うさこちゃんとは一緒に寝ていたし、出かける時も連れて行っていました。思い出してみると、チェリーのような存在が私にもいたんですね!


──最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

高森:この作品を見ていただけたら、生きている人たちのふれ合いってこんなにも温かくて優しくて、でもちょっぴり悲しいこともあるものだと、自然と感じていただけると思います。ぜひ、感じたものをそのまま大事にして欲しいです。もちろん1人で見るのもいいですが、誰かと一緒に観てもらいたいと思っています。お友達でも親子でも、ご夫婦でもいいかもしれません。そうして感想を話し合っていただけたら嬉しいです。

[取材・文・撮影/千葉研一]


■『ちえりとチェリー』『チェブラーシカ 動物園へ行く』作品情報

7月30日(土)より、ユーロスペースにて夏休みロードショー



8月20日(土)より、シネマート心斎橋【大阪】
8月13日(土)より、名古屋シネマテーク【愛知】
8月20日(土)より、塚口サンサン劇場【兵庫】

日本発!心温まる傑作パペットアニメーション二本立て!

◆『ちえりとチェリー』

声の出演:高森奈津美、星野源、尾野真千子、栗田貫一、田中敦子、伊達みきお(サンドウィッチマン)、富澤たけし(サンドウィッチマン)ほか
原作・監督:中村誠
脚本:島田満、中村誠
キャラクターデザイン:レオニード・シュワルツマン、伊部由起子
音楽:大谷幸 主題歌:Salyu 「青空」(作詞&作曲 桜井和寿 編曲 小林武史 )(Courtesy of OORONG-SHA MUSIC PUBLISHER)
製作:『ちえりとチェリー』製作委員会
配給:協同組合ジャパン・スローシネマ・ネットワーク
配給協力・宣伝:マジックアワー 

◆『チェブラーシカ 動物園へ行く』

【日本語吹替え版】
声の出演:折笠富美子、土田大、チョー ほか
【ロシア語版日本語字幕】
声の出演:ラリーサ・ブロフマン、ガリー・バルディン、ドミトリー・フィリモーノフ 
原作:エドゥアルド・ウスペンスキーによるチェブラーシカシリーズを元にしたオリジナルストーリー
監督:中村誠 / 脚本:中村誠、エドゥアルド・ウスペンスキー、ミハイル・アルダーシン
製作:株式会社フロンティアワークス
配給:協同組合ジャパン・スローシネマ・ネットワーク
配給協力・宣伝:マジックアワー


>>『ちえりとチェリー』公式サイト
>>『チェブラーシカ 動物園へ行く』公式サイト

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(C)『ちえりとチェリー』製作委員会
(C)2010 CMP/CP
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