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『フリクリ プログレ』福山潤インタビュー

劇場版『フリクリ』公開記念連続インタビュー企画 Vol.2『フリクリ プログレ』福山 潤さんインタビュー

2000年にGAINAXとProduction I.Gの共同制作によるOVAシリーズとして発表された『フリクリ』。鶴巻和哉さんが監督、キャラクターデザインは貞本義行さんという、後の『新世紀エヴァンゲリオン』の主要スタッフさんが手掛け、ポップでスタイリッシュな映像とスピード感あふれるアクション、作中で流れるthe pillowsの楽曲などで一躍話題になり、国外でも大ヒット。現在でも伝説のアニメとして語り継がれています。

そんな『フリクリ』の続編が『オルタナ』と『プログレ』として劇場公開され、『オルタナ』は現在上映中、『プログレ』は9月28日より全国公開がスタートします。

当サイトでは劇場版公開記念インタビューをお届けしていますが、第2弾は『プログレ』で井出 交役を演じる福山 潤さんです。

『プログレ』は「Don’t think,feel」で臨もうと。印象は真っすぐなボーイ・ミーツ・ガールもの

――前作である、OVA『フリクリ』をご覧になったことはありますか?

井出 交役・福山 潤さん(以下 福山):僕は見たことがありませんでした。もちろん今回『プログレ』に参加するにあたって、PV、OPやED、文字情報などを見て、どんな作品なのかを最低限のことを調べましたけど、演じる前にOVAを見ないほうがいいと思って。

『プログレ』の設定や資料をいただいた時、今まで自分がやってきた作品とテイストがあまりにも違っていたし、アトムスクなどOVAから引き続きの設定を、井出はわかっていないポジションなので、OVAを見てから収録に臨むことがプラスになると思えなくて。変に前作のテイストに合わせようとしたり、足かせになるのも嫌だったので、『プログレ』が完成してからOVAを見ようと思ったんです。今日完成した『プログレ』を見られたので、やっとOVAを見ることができてうれしいです(笑)。

――『フリクリ プログレ』の脚本や資料をご覧になったうえでの本作の印象をお聞かせください。

福山:まず『フリクリ』の用語集や世界観などを説明した結構な分量の設定書をいただいて。もはや冊子のような(笑)。それを全部見たうえで、シナリオを読んで、「これはDon’t think,feelでやったほうがいいな」と思いました。突然、頭から芽が生えてくるし、NOという言葉が説明もないまま、バンバン出てくるし(笑)。頭を空っぽにして演じてもストーリーはわかったし、おもしろく楽しめたので不思議だなと。またシナリオを読んで多感な時期の少年少女の出会いからお互いをどう感じて、感情が変化していくのかをストレートに描いているので、こっちが恥ずかしくなるほど真っすぐなボーイ・ミーツ・ガールものだなと思いました。

井出は見た目と行動にギャップ。イメージは「昭和時代のバイタリティ少年」

――演じる井出 交というキャラクターの印象についてお聞かせください。

福山:まず設定の絵で見た時、キリっとした表情で学生服を着ているものとタンクトップ姿のもの、そしていくつかの表情が描かれたものだけだったので、どんなキャラなのか、わからなくて。その後にシナリオを読んだら意外に遊びがある子なんだなと。そしていざ演じてみるとバイタリティがすごくあって、見た目と中身の印象が全然違いました。

何回かに分けて収録しましたが、最初はキャラに合わせようとか、探っていこうという感じでしたが、回を重ねるごとに井出の表情と行動がなじんできている感覚になって。自分が思っていた見た目からの印象と実際に演じてみた印象が違うはずなんだけど、違和感があまりなかったなと。また家が貧乏で、ジャンク屋で働きながら学校に通っているのにまったく悲壮感がなくて、チャラいところがあったり、女の子に対して貪欲だったりするところは昭和時代のバイタリティのある少年だなと思いました。

――井出も、ヒロインのヒドミも中学生なんですよね。

福山:そうなんですよね。演じる時にはあまり意識していなかったけど、会話が完全に中学生そのものだったので、自然とそう見えるんじゃないかなと思います。

手探り状態のキャスト陣を勇気付けてくれたラハルのセリフ

――収録時にディレクションはありましたか?

福山:特になかったです。「作品全体としてどういうテイストでやっていきましょうか?」「思い切りやっていきましょう」くらいで。(ラハル役の)林原(めぐみ)さんと(ジンユ役)の沢城みゆきちゃんはデリケートなやり取りが多かったし、ヒドミも各話の冒頭の夢シーンはいろいろパターンがあったので、ディレクターと丁寧に作っていった感じで。僕らは世界観をどう踏襲するかよりもキャラをどう前面に出していくかを大切にしていました。井出に関しては学校にいる時とそれ以外の時の落差を、へたに考えずにストレートに出していこうと思って演じました。

――収録時に印象的だったエピソードはありますか?

福山:収録時はまだ絵が完成していない状態で、僕らもまだ手探りの状況の中、ラハルのセリフがいきなり出てきて。裏で監督と林原さんが打ち合わせをしていたんじゃないかと思うくらいの確信を持って。そのおかげで僕らも「迷っている場合じゃないな」と覚悟が決まったし、「疑問に思う必要はないな」と勇気付けられて。この収録は一緒に体験できてよかったなと思います。

三者三様の魅力を持つ女性キャラのラハル、ジンユ、ヒドミ

――同級生のヒドミ、ハル子から分裂したラハルとジンユ、それぞれのキャラの魅力とは?

福山:それぞれのキャラは三者三様でおもしろいなと思いました。ジンユが一番天然キャラで、いきなりカッコよく現れるけど、カッコいい人なのかどうかは別として(笑)。ラハルは井出達の先生として登場するけど、正体を現してから生徒達を洗脳するという奇想天外なキャラで。授業での発言内容も理屈じゃないことを理屈っぽく言っているだけで、何となくわかった気になれるのは不思議ですね。この2人に関しては考えるだけムダだろうな、そういうものなんだと思うしかないなと(笑)。林原さんと沢城さんの硬軟の交わり方、掛け合いは小気味よくて、収録時の林原さんのセリフだけでもしびれっぱなしでした。

ヒドミは今風のかわいらしい女の子だなと。着ていたパジャマもあのブランドだし。最初、無感情、無感心に見えて、その実態がつかめなくて。見ている夢も殺伐としたグロテスクだけど、終盤に近付くにつれて、序盤から夢の中ではヒドミが本来の彼女としてしゃべっていたんだなと思えるようになって。家庭のことで悩んだり、コンプレックスを持ったりするごく普通の女の子なんだなと。

アイパッチのシーンがお気に入り。遊びのあるシーンも重要!?

――印象的なシーンを挙げていただけますか?

福山:大好きなのはアイパッチがしきりにチャンプになれると口にするところ。「何でここで?」というシーンで言ったり、後で意味が出てくるのかなと思いきや、全然効いてこなくて(笑)。ただ無駄な会話で、天丼(繰り返しで笑わせる)で楽しめるのが好きです。

あと「フニクリフニクラ」をもじって「フリクリフリクラ」とみんなで歌ったシーンは僕も参加していますが、脳汁が出るかなと思いました(笑)。バックで薄く流れるのかなと思ったらガッツリ流れていて。どこかにトリップしちゃうような、「Don’t think,feel」なシーンの数々はやっていても、見ていてもおもしろかったです。ただこういうシーンは重要だと思っていて。前作を見ていない人は突然、アイロンが出てきたり、メディカルメカニカなどのワードが出てきたら真剣に考えちゃうと思うけど、ああいう遊びがあったり、けむに巻くことで、意味がわからなくても何となく楽しめちゃうし、受け入れることもできる。最後まで見てみると本筋以外のシーンも重要だったなと改めて思いました。

6人の監督が担当することで、各話が違ったテイストに

――『プログレ』は6話に分かれ、それぞれ違う方が監督をするというスタイルについてどう思われましたか?

福山:最初に思ったのは制作が大変だからかなと(笑)。完成形を見てみたら、それぞれのお話で映像表現を変えていて。いわゆる皆さんがイメージするアニメーションから大胆なデフォルメを施したものもあれば、水彩っぽい色合いにしてちょっと動くたびに線がズレるようにして、動画もわざと枚数を減らして印象付ける演出にしたり。そういうことを各話でやってくれることで、短い期間で起こったことをすんなりと受け入れさせてくれている気がしました。あと映像表現だけで、見る人によって好きな話数が違うかもしれません。
個人的にヒドミの夢の中でのゾンビのシーンの絵柄が好きです。エグいところも普通にやるんだなと。

――全体的にポップな絵柄も印象的な作品ですが、登場するメカも独特ですよね。

福山:元々、前作で主人公のナオ太の額から出現したカンチも独創的なデザインでしたが、ヒドミの最終形態もカンチの流れを汲んでいるようで、新しい洗練された部分もあって。またジンユが乗っているアメリカの旧車も、(『マクロス』の)ガウォークからヴァルキリーになるような変形を見せたり、遊びもふんだんに入っているので、メカ好きな方にも楽しんでいただけるのでは?

――ラハルが振り回すベースやラハルが乗っているベスパなど、面白いアイテムもたくさん出てきますね。

福山:ベスパはいまだによく見かけますし、僕らの世代はTVドラマの『探偵物語』で主人公の工藤が乗っていたので、スクーターに乗るとしたらベスパがいいなと思うくらい、学生時代から憧れでした。ただ価格がスクーターとしてはすごく高いですけど(笑)。

ただシンプルに楽しさを追求し、ひかれた80年代のアニメの懐かしさも

――前作やいろいろな作品のオマージュも詰め込まれていて。

福山:情報量がとても多い作品なので、マニアックな人や拾いたい人には存分に楽しめる作品だと思います。あと70年代や80年代に造詣が深い人にはたまらない部分もたくさんありましたね。

――『オルタナ』の上村監督は、『フリクリ』シリーズの中で『オルタナ』は一番わかりやすいかもとおっしゃっていましたが、『プログレ』は難しめかもと思いました。

福山:僕は『プログレ』って純粋に懐かしいなと思ったんですよね。僕が小学、中学時代にいちアニメファンとして見ていた頃って、極端な話、細かい設定はどうでもよくて、行われているドラマや会話に魅かれるかが重要で。80年代のOVAなんて、ほとんど説明しないじゃないですか? 3本で完結という作品がたくさんあったし、1本でやりっぱなしで終わった名作もあったし。作品のおもしろさって整合性以外にも存在すると思っているので、『プログレ』は難しいかもしれないけど、初めて『フリクリ』に触れる人、またアニメに初めて触れる人がどう感じてもらえるか、興味津々なんです。たぶん初めて触れる方にも心配ないと思います。頭を空っぽにして映像を見ていれば、わかることがいっぱいあるので。

――絵や世界観だったり、音楽だったり、入口が多い作品ですからね。

福山:いろいろなものがてんこ盛りなので。人間の機微や設定などにおもしろさを感じる前のお子様は音から楽しむという話も聞きますし、この作品ではシンプルなものも難解なこともいろいろな手法で見せていますから。

またこの作品はスピード感があって、劇場版は6話をまとめていますが、約2時間があっという間に感じさせるほどの疾走感と、6人の監督によるテイストの変化もあるので見やすくて。難しいように見えて、実は『フリクリ』やアニメ初心者の方を手厚く、おもてなす準備もされていると思います。

気になる大スクリーンで見た時の皆さんの反応。改めて感じるthe pillowsの楽曲の存在感の大きさ

――『フリクリ』シリーズと言えば、主題歌や作中で流れるthe pillowsの楽曲ですね。

福山:the pillowsの曲は何度か聴いたことがありましたが、今回、本作に関わったことがきっかけで、いっそう興味が湧きました。収録時の映像にも既にthe pillowsの曲も入っていて、リハーサルなどで聴くたびに昔から聴いていたような既視感を感じました。

――18年前、そして現在聴いても古く感じないのがすごいですよね。

福山:アニメや映画に流れる曲はその時々の流行りなどが反映されることが多いけど、いつ聴いても色あせないなんですよね。『プログレ』の中で流れるthe pillowsの曲にもそう感じたし、作品の中で音楽が占める表現の割合が大きいことを実感できて。だからシーンや世界観とメロディがマッチして、スムーズに耳に入って、残るんでしょうね。

――そして今回の劇場版で、ラハルやジンユのアクションシーンなど大スクリーンで見られることもファンにとってはうれしいことです。

福山:すごく丁寧に描いているところほど、グロテスクなシーンが多いので、それを皆さんが大画面で見た時、どういう反応をするのか、気になります(笑)。遊園地での不思議なシーンは空気感として伝わっている人とポカンとする人がいると思うけど、一緒に見ることで、共有する波長があるんじゃないかと個人的に期待してます。

井出とヒドミの言葉ではない心の交流を感じてほしい

――OVAシリーズでは各巻やBOXがリリースされるたびにネット上がにぎわって。今回も見たら誰かに語りたくなると思います。

福山:見てくださった方の数だけ解釈や見どころがあると思うし、それを語り合うこともアニメの楽しみ方だと思うので、お友達と一緒に見て、アフタートークに花を咲かせていただけたらうれしいです。

――本作の見どころの1つは井出とヒドミの関係性と心情の変化かなと思います。

福山:ヒドミのことをずっと名字の「雲雀弄(ひばじり)」と呼んでいるんですけど、その名前を呼んでいる時はいつも井出がひどい目に遭っていたり、全力疾走したり大変なシーンばかりという(笑)。実は井出とヒドミはお互いのことをどう思っているのか全然話していないんですよね。手をつないだり、抱き合ったり、それぞれの状況や環境で触れ合うことで、何を感じ、思うのかが重要で。言葉じゃない通じ合いを皆さんはどう感じてくれるかなと。

未体験の方には衝撃を! そして振り切った&全開の福山さんの演技に注目!!

――改めて『フリクリ』がたくさんの人をひきつける魅力とは?

福山:アニメ作品だけどサブカルチャーというよりポップカルチャーの印象があって。当時、雑誌などでビジュアルを見るとおしゃれ感があるけど、とっつきにくさもなくて。また今回の劇場版のキービジュアルもそうですが、何となく目をひいてしまう、理屈とか関係なく、感性に訴えかけるものが画面から自然と出ているのかなと。そして『フリクリ』というタイトル。意味がわからないから気になるし、調べてもハッキリしない、それが考えたり、想像したりする余白を与えてくれて。そんな自由度の高さも魅力なのかなと思います。

――当時ご覧になっていた皆さん、今回初めてご覧になる皆さんへメッセージをお願いいたします。

福山:2001年にOVAシリーズが完結して、新作発表が2016年3月、そこからまさか新作が『オルタナ』と『プログレ』の2作も制作されるなんて想像できた方はほとんどいなかったのではないでしょうか? 新作発表からのすごい盛り上がりを感じるし、OVAシリーズが日本だけでなく、海外でもカルト的な人気を博している、そんな伝説的な作品に参加できて、シビレました。
『プログレ』は『オルタナ』、そしてOVAシリーズとは違ったテイストで楽しんでいただけると思います。まだ見たことがない方は今までになかった衝撃を受けると思うし、おもしろいと感じてもらえると思うので、ぜひ触れていただけたらうれしいです。
最後に僕、体力的にもすごく頑張ったので、見てくれた方はほめてください(笑)。

上映情報

劇場版『フリクリ オルタナ』は絶賛公開中
上映時間:135分
劇場版『フリクリ プログレ』は9月28日(金)公開
上映時間:136分
配給:東宝映像事業部

劇場版『フリクリ オルタナ』公式サイト
劇場版『フリクリ プログレ』公式サイト

(C) 2018 Production I.G / 東宝
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