アニメ『魍魎の匣』DVD発売記念イベント開催！京極夏彦氏、中村亮介監督、京極堂役の平田広明さんが参加してのトークで最終回の秘密が明らかに！？

　それは事件かはたまた魍魎の仕業か？！

　“憑き物落とし”と呼ばれる祈祷師・京極堂が怪奇事件に挑む。
2008年10月より、日本テレビ系（一部地域を除く）で好評放送された『魍魎の匣（はこ）』のDVD発売記念イベントが、2月1日、東京銀座のホールで開催された。

　出演は、原作者の京極夏彦氏、中村亮介監督、京極堂役の平田広明さんが参加。『魍魎の匣』にまつわるさまざまなトークを繰り広げた。

　『魍魎の匣』は京極夏彦氏の長編小説で、累計500万部を超える人気作「百鬼夜行シリーズ」の第2弾作。元映画女優・美波絹子の妹・加菜子は、親友の頼子とともに深夜、電車に乗って湖を見に行こうとした際、何者かに駅のホームから突き落とされ、轢かれてしまった。偶然、車両に居合わせた木場刑事は、この事件の捜査に乗り出すが、厳戒な警備にも関わらず加菜子は、搬送先の病院より姿を消してしまう。時を同じくして八王子で起きるバラバラ殺人事件。2つの事件が結びつこうとする時、“憑き物落とし”の京極堂が、怪奇事件の真相に迫る。

　穏やかにゆっくりと流れるような作風にあって、目に飛び込むのは衝撃的な出来事の数々。イベントも淡々と流れるトークの中で、なぜ本作がこれだけ多くの人を惹き込んでいくのか？真相に迫る出演者によるトークが繰り広げられた。さっそくその時の模様を紹介していこう。

●『魍魎の匣』DVD購入者へたむける作品の魅力とは？

　小林治氏の司会でスタートしたトークイベント。ステージには京極氏、中村監督、平田さんが顔を揃えた。まず語られたのは、TVアニメという形で再現した『魍魎の匣』という作品の印象について、「作品についてはよく自分の子と言いますが、アニメはもうひとの子なんです。お宅の子は面白いねという思いで見させていただきました」と京極氏。

　「筋は分かっているんです（会場笑）。でも毎週、次はどうなるんだろうとハラハラさせて楽しませてくれました」と語っていった。これを受けて中村監督は、アニメの映像化が難しいとされた本作について「一見、映像化のハードルが高いように見えても、それに加える演出を考えるのがすごく楽しくて、こういったアニメもありだなと思ってもらえる一作に仕上げました」と返した。

　イベント中には、実際にアニメの映像をみながら作品を振り返る場面も届けられたが、そこでの京極堂が事件の真相を語るシーンで、会話が続く場面にもかかわらず、お茶の湯のみが置かれていたり、（飲むために）取り上げられていて机だけが映されていたり、和菓子のアップがあったり、会話でもアップがあったり引きがあったりと、見ていて飽きさせない、否むしろ惹き込まれて見てしまう映像が印象的だった。

　5話より登場した京極堂。「主人公なので1話、2話で顔見せだけでも言われましたが、あえて登場させずに途中から出てくる原作の面白さを生かした」と監督が語る京極堂について、平田さんは「最初、1クールの作品で5話から登場する人物だと聞いていたので、主役ではないと思っていた」とエピソードに触れた。ところが登場してみるとこれでもかというくらいに、台本をめくってもめくっても尽きることのない京極堂のセリフの長さにはさすがに平田さんも驚いたようで「魍魎の説明が始まるあたりから、合いの手が1つ2つ入る程度であとは京極堂のセリフで埋められていました」と振り返る。「できれば無口な男の役を演じたい（笑）」と言っていた平田さんにとって、役者人生の中でもなかなか他に類を見ない主人公であったことが印象的に語られるのだった。

　長セリフが特徴でもある本作。この長セリフについて京極先生は「小説ではセリフではないんです。説明の部分と会話の部分が分けられていて、それらすべてで小説なんです」と語る。「ただ読者への配慮からページにまたがって1つの会話がまたがるようなことはしなかった」という小説に対してアニメでは「CM明けからラストまで、すべて京極堂のセリフだった」ことにはさすがの先生も驚き、「でもここまで喋り倒すのは見ていて気持ちがいい」と平田さんの演じる京極堂を絶賛した。


●長セリフを喋る京極堂の魅力を追求。アフレコ時のエピソードも紹介

　トークはアフレコ時のエピソードにも及んでいく。

　あれだけの長いセリフに挑んだ平田さん。NGは出さなかったのか？との問いに「とんでもない、たくさん出しましたよ」と平田さん。ただ音響監督の指示が独特だったとのことで、例えば榎木津を演じた森川さんに出された「そのセリフから炭水化物を2グラム引いてくれ」などは会場の笑いを誘った。「そこに浮かんでいるイメージをどう掴ませるか」言葉にはできないビジョンを伝えたかったのではないだろうかと平田さんは振り返る。そんな長セリフを喋る京極堂について中村監督は「京極堂の魅力で大事にしたことは、榎木津や木田や関口が、自然に集まってきてしまう引力を持った男である」とコメント。平田さんも「京極堂はカッコいいし、ただのいい人になってしまっただけではつまらないと思い、自分なりに彼の持つ人間らしさを出せるよう意識して演じた」と言葉を添えた。そして京極先生も実はアフレコに参加していたということで感想を「別の作品で書いた言葉がセリフとして入っていたのが印象的でした」と一言。物語を締めくくる重要な1コマとして演じていたことが紹介された。

　さらにトークはアニメのラストにも及び、「最終話の絵コンテを描いている段階で、ラストシーンを迎える前にすでに5分オーバーしていました」と中村監督。でもどうしてもラストシーンを入れたかったので、「アフレコ直前まで編集してラストシーンを入れました。台本の方が間に合わなかったのでラストシーンだけは別紙でお願いしました」と切迫した状況を語った。

　そこまでこだわって作ったことについて監督は、「小説を読み終えた後の読後感とアニメのラストの余韻を近づけたかったので、原作をそのまま映像化するのではなく、感じ方を共有できればと思い作りました」と語る。その監督のこだわりは例えば1話の月光の下で美波加菜子と楠本頼子の2人が踊るシーンなどでも表現されていたことが映像でも紹介され、そこには監督の「観ている人がどうすれば今後起きる悲劇に対して2人に感情移入できるかを意識をした」という思いが込められていたことが明かされた。

　最後に3人の好きなキャラも大発表！！「原作ではたいして活躍もしないオヤジだった笹山をナイスミドルに描いてくれたので嬉しかった」という京極先生。「寺田というキャラは心情的にも感情移入できる部分が多く大事にした人物です」と中村監督。監督にとって、寺田はミニ京極堂的なポジションにいたのだと言う。そして「やはり京極堂が好きだ」という平田さん。京極堂以外では彼の飼っている猫の柘榴が特に気にいっていたようだ。


●プレントの豪華さにサプライズ。イベントもエンディングへ

　この後、イベントはサイン入りアフレコ台本が全13話分、13名の方に当たる抽選会へと進む。抽選カードを引く入れ物も“匣”と称され、最終話は別紙もつけられる凝った内容で先生、監督、平田さんによって抽選が進められた。

　そして残念ながら抽選に漏れた方にも、ビックなサプライズが……。京極先生、平田さんのサイン色紙が全員に贈られた。色紙にはサインはもちろんのこと、“魍魎”“匣”と言った京極先生直筆の一言コメントも。それらはすべて筆で書かれたファンとっては貴重な一品となったに違いない。そして色紙は京極先生、平田さんよりファンに直接手渡しされ、思い出の品とともに感動的なひとときが届けられていった。

　終演後の出演者のみなさんがメッセージを寄せていただいた。そのコメントも紹介しておこう。


平田広明さん：緊張しました。大勢の方に集まっていただいて、皆さんが今まで経験のしたことのないような集中力で監督の話に聞き入っていたのがとても印象的でしたね。もうこれでおしまいになってしまうのは少し寂しく感じますが『魍魎の匣』締めの一区切りに参加させていただいき感謝しています。

京極夏彦さん：僕にとっては十数年前に終わっていた作品なのですが、アニメになることでまだ続いているんだなという実感がこみ上げてきました。またファンのみなさんがとても熱心なんですよね。強い集中力をもってアニメを見ていると思うと、監督さんや声優さんは大変なんだなと改めて思いました。
　『魍魎の匣』はこれでおしまいと言いますが、作品はずっと残ります。その責任はやはり重いなとイベントを通して強く思いました。そのイベントには多くの方がが集まってくださり、感謝の気持ちで頭が下がる思いです。

中村亮介監督：何かを作ることへの責任というものを強く感じたイベントになりました。、観てくださるファンの方と会うのは初めてで、みなさんの熱心な視線にあらためて作品づくりへの思いを強くしました。
やはりイベントはいいものですね。ちょっと感動をしてしまいました。


DVD『魍魎の匣』
第一、二巻　発売中　各\3,150（税込）
第三巻　2月25日発売　\4,725（税込）
第四巻　3月25日発売　\4,725（税込）
第五巻　4月22日発売　\4,725（税込）

※Blu-ray BOX　2009年5月発売予定！