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松本零士「オズマ」リレーインタビュー第4弾は、高橋良輔総監督

松本零士さんの幻の作品「オズマ」のテレビアニメが好評放送中! 当サイト独占リレーインタビュー企画の第4弾は高橋良輔総監督が登場!!

 「銀河鉄道999」、「宇宙戦艦ヤマト」、「宇宙海賊キャプテンハーロック」などを生み出したマンガ&アニメ界の巨匠・松本零士さんの幻の作品「オズマ」が、WOWOW開局20周年企画としてアニメ化され、WOWOWプライムにて現在好評放送中! 

 「オズマ」は、松本さんが1980年代に執筆したまま未公開だったシナリオで、砂漠化した未来の地球を舞台に、謎の超巨大移動物体・オズマを巡る壮大なSFストーリー。

 アニメの放送スタートを記念して、当サイト独占の出演キャスト&スタッフへのリレーインタビュー企画を展開中! 第4弾は「太陽の牙 ダグラム」、「装甲騎兵ボトムズ」、「ガサラキ」などの数々の名作を手がけ、今作では総監督を務める高橋良輔さんにお話をうかがいました。

●20年前に地球の危機を提示していた松本零士さんのすごさ

――松本零士さんの「オズマ」を手がけることになった時の感想をお聞かせください。

高橋良輔総監督:松本零士先生の作品は、OVA「ザ・コクピット 鉄の竜騎兵」など節目節目で携わることができてご縁があるなと。昨年に「装甲騎兵ボトムズ」関係の仕事が終わって、今は来年発表の映像作品の作業に入っているんですけど、今年、ちょうど良いタイミングで作品に携わることができました。

――「オズマ」の世界観や設定についての印象は?

高橋総監督:20年以上前に書かれた作品とのことですが、「オズマ」が世に出るにはそれだけの年月が必要だったんじゃないかなと思いました。今は地球と人類の文明がギスギスしている状態で、人類はあと100年もたないという説を発表する学者さえいて。地球に負荷を与えているのは人間であり、人間の進歩がどういう環境をもたらすのかということを、松本先生が20年以上前に提起していたのがすごいです。僕はここ数年、アラスカに行っているんですけど、アラスカ石油の資源採掘の影響で道路が作られ、自然にも変化が現れ始めてきて。そういうことを僕はいろいろなところで感じてきましたが、松本先生は20年前に違和感や危惧をこの作品に記していたんですね。

――地球の砂漠化など20年前ならSFだったことが今は近未来の出来事としてリアルに見えますね。

高橋総監督:時代の2歩先を行くと早すぎるので、1.5歩先を行く感覚ですね。みんなが今、「地球、ちょっと危ないんじゃない?」と感じていることを、ドラマの形で先取りする。僕らが映像を作る上でも、それが大事じゃないかという気がするんです。

●松本零士アニメの名作達の魅力を踏襲している「オズマ」

――今作ではオズマという謎の物体が人間の前で猛威を振るいますが、「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」などの作品で問題提起されていたことと似ている気がしました。

高橋総監督:似ていると言えば似てますが、「ヤマト」は外敵によって地球が危機に陥りますが、「オズマ」は地球を守るべき人間によって侵食されています。また、「ヤマト」は宇宙に助けを求めますが、「オズマ」は地球内にいる巨大な人工物が地球を救うポイントになっていたりするところが大きく違いますね。

――またクローン人間の登場も松本零士作品らしいなと思いました。

高橋総監督:松本先生は「999」で人工物と素の生物をいつもぶつけていましたよね。松本先生の作家としての核なんじゃないかなと思います。それをロマンとして包み込むことでアニメ作品として昇華されていく。そんな松本先生の核とロマンを、見事に再現した過去の名作のように、僕らも「オズマ」で再現するというのが大きな目標です。

――主人公のサムが少年というところも、ジュブナイル作品としても魅力的だった松本零士アニメを踏襲している感じがします。

高橋総監督:今作を含め、少年が主人公の作品が多いのもマンガ家としての根幹なんじゃないかと思います。

●池添隆博監督の演出力が作品の速いテンポ感と高いクオリティを実現!

――松本さんは劇場用を想定して原作を書かれたそうですが、全6回でのTV放送という形についてはどう思われますか?

高橋総監督:僕自身はテレビシリーズでだらだら長いのが好きなのですが、映画として再編集版でまとめるといい長さだと思うんですけど(笑)。

――作品を観て、ナレーションからキャラのセリフ、画面上の情報量など、かなりぎゅっと詰め込まれていると思いました。

高橋総監督:監督をしてくれている池添隆博さんの演出家としての力や若さが、作品のテンポを良くしているんでしょうね。僕が現場演出をやると、もっとゆっくりしちゃって、「6本じゃ足りない!」とワガママ言うと思うんです。池添さんで良かった(笑)。

――スケールが大きな作品なので絵のクォリティも高いものを求められますよね。

高橋総監督:僕は絵が苦手なほうですが、池添さんは絵を作っていた人で、演出をやりたいと入ってくれた人なので頼りにしてるんです。池添さんの中でしっかりしたイメージができているので、いい絵作りができていると思います。

――WOWOWでの放送ということで、HD画質で観られるため、映像美には毎回感動します。

高橋総監督:本当に隅々まで見えちゃうんですよね(笑)。美術ボードの段階でもいいものができていて、そのまま映像に定着できれば間違いなくいいものができるという確信があります。皆さんにも映像の美しさを堪能していただけたらいいですね。

●バランスの良いキャスト陣の熱演! 人物配置はシェイクスピアが参考!?

――キャスト陣には若手とベテランの配置のバランスがいいなと思いました。サムやミメイ、マヤなどの少年少女達を若手が演じ、バイナス、ノグチ、ギドなどの大人をベテランが演じて。

高橋総監督:そうですね。池添さんがキャスティングしていますが、決定したキャストを知らされた時、もっと若手が多くなるかなと思っていたのでちょっと驚きました。後、今回女性が出ているじゃないですか。僕の作品は女性がほとんど出ないからキャスティングは池添さんにお任せしてしまいました(笑)。

――登場人物が多いわけではないんですが、それぞれのキャラが密接に絡み合う人間関係もおもしろいですね。

高橋総監督:僕はアニメーションも好きだけど、芝居も好きなんです。芝居の世界に行こうかなと思ったくらい。実際、虫プロを辞めて、アニメの世界に戻るまでは行ったり来たりしてました。だから芝居の中の登場人物の構成のイメージがあって。シェイクスピアなどの芝居に、キャラクターを当てはめていく作業を脚本の武上純希さんと一緒に考えていきました。

――4話以降はそれぞれのキャラ同士が線でつながっていくスピードが速くて。

高橋総監督:そうですよね。「太陽の牙ダグラム」は72話あったので余裕があったけど、この作品は6話なので、短い間に人間関係を構築していかなきゃいけない。そこは武上さんが今のアニメに慣れているので、いい形でできているかなと思います。

●見どころは史上初の砂の中の潜水艦戦!

――高橋総監督監督が今作でこだわった点があれば教えてください。

高橋総監督:「砂の中での潜水艦戦が成立するかどうか」です。僕は作品を作る時、自分達で新しく生み出すものを常々取り入れたいと考えています。今回は、砂の中の潜水艦戦は、たぶんまだ誰もやっていないだろうと思って。そこを観てほしいというのが僕の欲ですね。池添さんをはじめとするスタッフは魅せるための具体的な工夫を凝らしてくれているので、僕も観てくれる方と同次元でドキドキして作品を楽しんでいます(笑)。

――砂中でバルダノス(味方戦艦)が敵艦からの攻撃を受け艦内の温度が限界まで上昇してしまい、浮上するかしないかの選択を迫られるシーンは手に汗を握る緊迫感でした。さすが「ダグラム」で砂上の戦いを描いてきた高橋総監督らしいなと。

高橋総監督:あまり「ダグラム」とは関係ないんですけど(笑)。「ダグラム」は僕が初めて原作と監督を手がけた作品で、途中から僕は原作に専念したんですが、最初は自分でスタイルを作らなきゃいけないわけです。その時に参考にしたのが松本先生の「戦場まんが」シリーズで。ナレーションの入れ方や世界の作り方など、たくさん勉強させていただいて、いまだに影響を受けてます。

●後半に突入する4話からより派手にドラマチックに!

――松本零士「オズマ」の魅力を挙げていただけますか?

高橋総監督:松本ロマンに包まれているけど、松本先生の作家としての嗅覚は人間に向かっていると思うんです。僕自身も人類のほうが危ないんじゃないかと感じていて。僕が生まれた時、20億前後だった人口が今は70億を超え、あっという間に100億に到達しそうで、それほどの人類が生きていけるのかという疑問は、ひょっとしたら地球が壊れることと同義語なのかもしれない。そんな怖さが作品の中に潜んでいて。でも再生のため、人間があるべき姿がロマンの中で見えてくるといいなと思って作っています。

――この記事が掲載される頃、いよいよ後半に突入します。見どころを教えてください。

高橋総監督:砂の中の潜水艦戦が盛り上がってきますので注目していただきたいです。また「何で潜水艦戦を砂の中でやらなくてはいけなかったのか」という部分が「砂の中に何が含まれているのか」という物語の核心につながっていきます。そこを楽しみにしてください。

――最後にメッセージをお願いします。

高橋総監督:まず1話からご覧になっていただいている方には「えっ?」と驚く部分があると思いますが、視聴者の方の思惑の1歩でも2歩でも先の物語作りができていればいいなと思っています。この記事を読んで作品を知った方は後半からになりますが、これから絵的にも派手で、ドラマチックになる、まさに見どころから始まりますのでご覧になってください。そして後でもう一度、1話から観ていただけたらと思います。

TVアニメ WOWOW開局20周年記念番組 松本零士「オズマ」はWOWOWプライムにて毎週金曜深夜0時より放送中!

<再放送>
5月2日(水)午後3:00~ 全6話一挙放送
5月22日(火)深夜1:00~ 第1話~第3話放送
5月23日(水)深夜1:00~ 第4話~第6話放送
※全てWOWOWプライム

>>『松本零士「オズマ」』公式サイト

原作「オズマ」(C)2012 松本零士 (C)2012 オズマ製作委員会
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