『薄桜鬼』『神なる君と』などで知られるmaoの素顔に迫る！

　「やっと音楽と仲良くなれた気がしたんです。やっぱり私、歌うことが大好きなんですよね」──と、どこかスッキリとした穏やかな表情で語ってくれたのは、『ドラえもん』『薄桜鬼』をはじめ数々の人気タイトルの主題歌を歌ってきた実力派シンガー・maoさん。彼女が前作から約2年振りとなる2ndアルバム『FOReST』をリリースした。

　今作はアニメ『薄桜鬼 碧血録』ED「茜空に願ふ」やPSP用ソフト『神なる君と』OP『キミのそばで』、PS3用ソフト『メルルのアトリエ』ED『メトロ』などのタイアップ曲10曲＋書き下ろし新曲3曲が収録。maoさんの瑞々しい歌声と強いエネルギーが光った傑作となっている。

　等身大の素直な気持ち、リスナーへの感謝の想い、歌うことに対する決意をこの作品で形にしたというが──この2年間でどんな気持ちの変化があって、「ここ」にたどり着いたのだろうか。　maoさんにロング・インタビュー！

maoさん

●「歌以外のことで気づいたことが歌に繋がっていった」

──前作『toddle』の発売から約2年、待望のニュー・アルバムがリリースされます。この2年間はmaoさんにとってどんな期間だったんでしょうか。

maoさん(以下、mao)：1stアルバム『toddle』のときは「アルバムを出せる」って喜びが大きくてガムシャラに駆け抜けたんですけど、それから2年経ってたくさんの曲に出会い、たくさんのアーティストさんと話させてもらい、いろいろ刺激を受けて、音楽と前向きに向き合えるようになったというか──音楽と仲良くなれた感覚が何度もあって、私の音楽を形にしたい！って思いが強くなったんです。

──「音楽と仲良くなれた」っていうのはどんな瞬間に感じたんですか？

mao：やっぱり歌うことが好きなんだなぁって思ったんですね。去年3ヶ月連続で「Talk&Live」って自主イベントを開催したんですけど、今まで喋ることって苦手だったんですよ(苦笑)。

　でもファンの方がありのままの自分を受け入れてくれたり、「(maoさんの)あの曲を聴いて元気になりました」「この曲を聴いてがんばろうと思いました」って声をかけてくれたりして、私自身も歌うことで元気をもらったり、がんばろうって思ったりしてるんだなって気づいたというか。

　今まで自分は与える側の人間なのかなって勘違いしてたところがあったんですけど、実は自分が一番音楽に勇気付けられてるんだなって気づいたときに、音楽と仲良くなれたような気がしたんです。

──音楽とずっと向き合ってきたからこそ、その答えが出たんですね。

mao：そうですね。音楽と向き合うことで苦しくなることも、自分のイヤな面が見えたり、もう歌えないかもなぁ……って思ったり、いろいろ考えさせられたんですけど、そういう思いすら浄化されたというか。すべてムダじゃなかったんだなぁって。結局、歌以外のことで気づいたことが歌に繋がっていったんですよね。

──うんうん。歌以外のmaoさんのパーソナルな部分が実は歌を作っていたんですね。

mao：まさにその通りで。私意外と泣き虫なところもあるんですけど、そんな弱い自分を肯定することが苦手で。それで隠したり、飾ったりしがちになっていたと思うんですけど、結局そういう姿が歌にも出てたんじゃないかなって。だから弱い自分も肯定してあげようって……。ありのままの自分を認めてあげることができたっていうのは、アーティストとしても、歌い手としても大きなターニングポイントだったように思います。

──そういう意味でも、今回のアルバムはmaoさんの生き方が出たアルバムになったんですね。

mao：本当にそうですね。1stアルバムのときは「これは名刺代わりです」ってことをよく言ってたんですけど、今回のアルバムはmaoという歌い手・アーティスト・人間はこういうことを考えて、感じて、伝えたいんだよっていうことを詰め込められたんじゃないかなって。もっとパーソナルな部分が見え隠れする作品になったと思います。


●「私もみなさんと同じように音楽に助けられてきてる」

──最初にできた曲はどの曲になるんでしょうか？

mao：「茜空に願ふ」(アニメ『薄桜鬼 碧血録』ED曲)が最初かな？　で「今日の永遠」(PS2用ソフト『薄桜鬼 黎明録』ED曲)、『カケラ』(PSP用ソフト『神なる君と』ED曲)……って順序だったんですけど、『カケラ』を録ってるときくらいに、さっき話したようなことに気づいてレコーディングにすごく力を入れるようになったんです。

　『神なる君と』は、ある日突然愛する人が神様になってしまって一緒にいれなくなる……ってストーリーなんですけど、一緒にいれるはずだった人といれなくなってしまうってすごく悲しいことじゃないですか。で、今までのmaoだったらその悲しみを仰々しく表現してたんですけど、スタッフたちと「悲しみの種類にもいろいろあるよね」っていう話になって。で「本当は泣きたいんだけど涙も出ないような悲しみ」もあるんじゃないかっていう結論になって、この曲では淡々とその悲しさや切なさを歌うことにしたんです。

　『神なる君と』ってゲームに参加させてもらったことで引き出しが増えた気がしています。その後に『祈り降るなら』(ニンテンドーDS用ソフト『薄桜鬼 黎明録 DS』ED曲／10曲目収録)、『桜花の如く』(PSP用ソフト『薄桜鬼 ～幕末無双録～』OP曲／5曲目収録)、『闘花伝』(PSP用ソフト『薄桜鬼 ～幕末無双録～』挿入歌／6曲目収録)……などを録音してるんですけど、そのあたりの曲でもそのときに気づいたことが影響してると思います。でも逆に感情をバーン！と爆発させたほうが伝わるときもあるので、そういうときは思いっきり炸裂させてますけどね(笑)。

──思いっきり爆発させた曲が『桜花の如く』『闘花伝』ですよね(笑)。物凄くロックで勢いのある楽曲で、このアルバムのなかでは異色な曲です。

mao：ハイ。かなりスパークしてますよね(笑)。これはスタッフに「好きに歌いなさい！　自分を解放しなさい！」って言われて歌った曲で(笑)。だから好きなように歌ったんです。もしかしたら悪い顔して歌ってたかもしれません(笑)。

──アハハ(笑)。逆に新曲の『I'll be there for you』(1曲目収録)は物凄くポップで爽やかな曲で。これはどんな思いで作った曲なんですか？

mao：『I'll be there for you』は、私のパーソナルな部分を知ってもらえるような曲を作りたいなと思って書いた曲なんです。作曲は事務所の先輩である大好きなrinoさん(CooRie)がしてくれたんです。rinoさんに「感謝の気持ちを述べるような曲にしたい」っていうことと、「FOReST(アルバムタイトル)って曲にしたいんです」ってことを相談をしたら、すぐに曲をあげてきてくれたんですね。

　その当時アルバムの制作も佳境に入っていて、かなり混沌とした毎日を過ごしてたんですけど(苦笑)、この曲を聴いた瞬間にあまりにも感動して涙が止まらなくなってしまって……そっから泣きながら歌詞を書いて、明け方4時くらいに曲ができあがって(笑)。あまりにも主観的な歌詞なんじゃないかなとも思って起きたときにもう1回見直したんですけど、私がこの2年間で感じたこと全てが集約されている歌詞だなって思ったんです。だからもうこれで行こう！って。結局曲のタイトルは『FOReST』ではなくなったんですけどね(笑)。

──新曲の『詩音』(8曲目)にも今おっしゃってたような想いや、音楽への愛情があふれた曲になってますよね。音楽に対するラヴソングというか。「メロディ　上手に歌えなくても／今のわたしにしか／歌えない詩(うた)がある／届けたくて／もっと／飾らずに伝えたい」って一節に特にグッときました。

mao：そうですね。私自身が音楽に助けられたときの思いを描いた曲です。悲しくて泣けないのにうまく泣けないってときに音楽を聴いたらワッと泣けたりしたり、がんばれって応援歌を聴いて「また明日からがんばろう」って思えたりとか……私もみなさんと同じように音楽に助けられてきてるんですよね。

　それで、今度は私がみんなの背中を押せたらいいなって純粋に思って歌詞を書いたのが「詩音」なんです。実は最初に話したようなことを気づく前に書いた歌詞なんですけど、この歌詞は私の素直な気持ちだったりします。

──『詩音』から『メトロ』(PS3用ソフト『メルルのアトリエ』ED／9曲目)への流れも良いですよね。

mao：そうなんです。『メトロ』も周りの人たちへの感謝を歌った曲なので、この流れは最初の段階で思いついたアイディアで。『メトロ』は他の曲に比べるとかなり可愛らしく歌っているんですけど、作詞をしてくれた柳川(和樹)さんからのリクエストで「可愛く歌ってください」と。で、振り付けもつけてくれて(笑)。そんなこと普段やらなそうなすごく紳士な方なんで、「分かりました！」って(笑)。

●「私は音楽で生きていくんだって改めて強く思えた」

──ラストの『森の向こう　光のさき』(13曲目)がとてもドラマティックな、このアルバムを象徴するような曲で。どんな想いで歌われたのか教えてください。

mao：この曲は霜月はるかちゃんが曲を書いてくれたんです。はるかちゃんはレーベルのイベント「TEAM Entertainment Live Act 2010、2011」でご一緒させていただいたのをきっかけにプライベートでも仲良くさせてもらってるんですけど、「今度アルバム出すんだけど曲を書いてくれないかな？」って聞いたら、「いいよ～」って快く返事してくれて。

　この曲は最後に持ってくることは決めていたので、はるかちゃんには「今のmaoが奏でる音楽の森をテーマにしたい。希望の見える曲にしたい」って話をしたんです。大きなメロディーラインがあって、風が吹いてて、緑があって、手を広げてて──みたいなイメージも一緒に伝えて。そしたらすぐ曲をあげてきてくれたんですけど、もうほんっとにイメージ通りだったんですね。しかも私らしさも、はるかちゃんらしさもあって……。

　それですぐ歌詞を書きました。はるかちゃんはすごく忙しい方なんですけど、レコーディングもガッツリ付き合ってくれたんですよ。しかも、間奏のコーラスを急遽はるかちゃんが歌ってくれることになって、さらに戸田さん(アレンジャー)も参加してくれることになって。今までこんなに1曲に向き合ったことってないんじゃないかっていうくらい、時間を掛けてみんなで作っていったんです。

──「迷いの森でも　ずっとわたしは歌うから」という、maoさんの歌に対する決意を感じるような歌詞も印象的です。

mao：ハイ。これからも歌っていく決意が固まったというか……。アーティストとしての活動の広がりを切り開いていきたいなって思える2年間を過ごせたので、それを歌詞にしたいなって。このアルバムの名前は『FOReST』(森)だけど──「森の向こう　光のさき」ってタイトルにしたのは、この森にはもう先があるんだよってことをみんなに伝えたかったんです。

──では改めてアルバムタイトルの由来を教えてもらえますか？

mao：実はダブルミーニングなんですよ。maoが奏でる音楽の森って意味がひとつ。森ってジメジメした沼みたいなところもあれば、光が差したオアシスみたいな場所もあって……いろいろな表情を見せるじゃないですか。人生も音楽もそういうモノだと思うんですよね。それをmaoなりに奏でましたっていうことですね。

　あと、『FOReST』っていうスペルをバラバラにすると「FOR」があなたへ、「ReST」が休息って意味なので……「maoの森のなかであなたにとっての休息が取れたらいいな」っていう意味も込めているんです。これを思いついたときはかなりテンションあがりましたよ(笑)。夜中にスタッフに一斉送信で送りました(笑)。

──このジャケットも良いですよね。

mao：ジャケットについてもみんなでたくさん考えて。ジャケ写に写ってる森はジオラマなんですよ。で、川のせせらぎも出したくて……コンビニで売ってる飲むタイプのゼリーをのせたんです(笑)。そしたら見事なせせらぎ感と良い香りが出て(笑)。この目線も凄く気に入ってます。

──ジャケも中身も自信作になったということですね。

mao：ハイ。このアルバム1枚のなかにいろいろな経験といろいろな想いと未来への希望を詰められたと思います。私は音楽で生きていくんだって改めて強く思えたアルバムなので……。アーティストとしてのmaoも人としてのmaoも知っていただけるようなアルバムになると思います。

──では最後に今後のライヴについて教えてください。

mao：初めての関西でのイベントがあります。インストアイベントって普通のイベントと違ってすごく距離が近いじゃないですか。だから私自身大好きなんですよ。ひとりでも多くのかたとお会いできたら嬉しいですね。

2ndアルバム『FOReST』／mao
発売日：2012年6月27日(水)
価格：3150円(税込)

【イベント情報】

maoニューアルバム「FOReST」発売記念イベント開催決定！


・7月21日（土）
会場：阪急西宮ガーデンズ（兵庫）　４Ｆスカイガーデン 木の葉のステージ
http://nishinomiya-gardens.com/
開演　：16：30

・7月22日（日）
会場：あべのマーケットパーク（大阪）　キューズモール ３Ｆ スカイコート
http://qs-mall.jp/
開演　：13：00

・7月22日（日）
会場：ミドリJR尼崎駅店edion studio AMAGASAKI（兵庫）
http://event.edion.jp/
開演：17：00


【CD情報】

◆2ndアルバム『FOReST』／mao
発売日：2012年6月27日(水)
価格：3,150円(税込)

【収録曲】
01. I'll be there for you
02. キミのそばで　…　(PSP用ソフト『神なる君と』OPテーマ)
03. 想い出回廊　…　(PSP用ソフト『薄桜鬼 ～幕末無双録～』挿入歌)
04. 今日の永遠　…　(PS2用ソフト『薄桜鬼 黎明録』EDテーマ)
05. 桜花の如く　…　(PSP用ソフト『薄桜鬼 ～幕末無双録～』OPテーマ)
06. 闘花伝　…　(PSP用ソフト『薄桜鬼 ～幕末無双録～』挿入歌)
07. キミがくれたモノ　…　(PSP用ソフト『神なる君と』真EDテーマ)
08. 詩音
09. メトロ　…　(PS3用ソフト『メルルのアトリエ』EDテーマ)
10. 祈り降るなら　…　(ニンテンドーDS用ソフト『薄桜鬼 黎明録 DS』EDテーマ)
11. カケラ　…　(PSP用ソフト『神なる君と』EDテーマ)
12. 茜空に願ふ　…　(アニメ『薄桜鬼 碧血録』EDテーマ)
13. 森の向こう 光のさき



>>mao Offical Web Site


［インタビュー＆文・逆井マリ］