今、再び、ボカロを振り返る――映画/アニメ/コミック/小説化されたボカロ楽曲をまとめてみた

　2007年、音声合成ソフト「VOCALOID」より初音ミクが誕生以降、一般ユーザーが手軽に自らの楽曲を配信できるとして、ニコニコ動画を中心に初音ミクが歌っているという形あるいは題材とした楽曲が多数登場。その後も、男性音声KAITOやMEIKO、鏡音リン・レンなどが登場するとともに、ボカロ楽曲は爆発的ブームを巻き起こしました。
　その勢いは未だ衰えることなく、2015年10月に初音ミクを使用した楽曲「桜ノ雨」を題材にした映画化キャストが発表されると、瞬く間に話題を集めています！

　本稿では、今なお多くの注目を集める「桜ノ雨」を始め、小説/舞台/アニメ/コミックとなったボカロ楽曲たちを振り返って見ようと思います！

　

　2008年2月に森晴義さん(halyosy)が発表した楽曲で、初音ミクの公式設定が16歳となっていたことから、「卒業」をテーマに製作。その楽曲に共感した多くの学校の生徒や先生から卒業式で歌いたいとのオファーが集るようになり、2009年には音楽情報サイトBARKSで行われた「卒業式で卒業ソングを歌ってほしいアーティスト」のアンケートで、10代20代、特に現役の高校生世代から大きな支持を集め、GACKT、コブクロに次ぐ3位にランクインした経歴を持つ世間的にも認知度の高い楽曲。今回、映画版のキャストとして『暗殺教室』の茅野カエデ役などを演じた、注目の若手俳優の山本舞香さんが主演を務めることが発表され、さらなる話題を集めています。これまでに、「桜ノ雨」を題材にした小説も刊行されています。

>>小説「桜ノ雨」公式サイト
>>映画「桜ノ雨」公式サイト



　2012年8月に行われた、レコチョクによる「好きなボカロ曲ランキング」調査において、1位を獲得した黒うさPによる人気楽曲。今作は加藤和樹さん主演でミュージカル化、AKB48の石田晴香さんと市川美織さんが劇中歌を歌ったことでも話題になりました。さらに、同曲をモチーフとして制作された「小説 千本桜」(著/イラスト・一斗まる)は2013年春にオリコンの文芸部門1位を記録。この小説を原作とした石見翔子さんによる漫画版が、『MIKU-Pack music & artworks feat.初音ミク』（KADOKAWAアスキー・メディアワークスBC）第9号より連載されています。他にも、大江戸温泉物語やジョイポリス、トヨタ・アクアのCMにピアノバージョン（ピアノ演奏：まらしぃ）として採用されています。

>>小説「千本桜」公式サイト
>>ニコミュ「千本桜」公式サイト



　2009年7月にDixie Flatiineが投稿した巡音ルカオリジナル楽曲。同曲は、かつて愛し合った人との過去を思い返しながらも、前へ進もうとする男性の恋愛ソング。公開直後から多大な人気を集め、2015年現在280万回以上再生しています。2012年には、アフターソングとなる「アンサー」が公開。ちなみに、「弱虫ペダル」東堂尽八役や、「FAIRY TAIL ～フェアリーテイル～」ナツ・ドラグニル役などを演じる声優の柿原徹也さんが同曲をカバーしたことがあることを知っていましたか？

>>小説「Just Be Friends」公式サイト



　ニコニコ動画ユーザーに多大な人気を誇るボカロプロデューサー悪ノP(mothy)。物語調のメロディアスな楽曲を得意とし、「悪ノ娘」「悪ノ召使」などボカロP名の由来にもなっている「悪ノ娘　シリーズ」を多数製作、ミリオン突破しています。2010年８月には「悪ノ娘　黄のクロアテュール」、2011年３月には第2弾「悪ノ娘　緑のヴィーゲンリート」を執筆。発行部数シリーズ累計30万部を達成するほどの話題作となりました。

>>「悪ノ娘」特集ページ



　ニコニコ動画に投稿された楽曲の関連動画再生数が1000万を超える超人気クリエイター・じん（自然の敵P）。2011年9月に発表された3作目の「カゲロウデイズ」は、とある夏の日に出会った少年少女たちが、思いもよらず手に入れてしまった「目」にまつわる能力を武器に、この世界の謎に挑む様を描いた楽曲で、ニコニコ動画では翌2012年1月までに100万回以上の再生数を記録する大きな人気を集めた話題作。2012年５月にはじんPが自ら執筆し小説化。「カゲロウデイズ」など全ての関連楽曲を繋ぐ物語が明かされます。

　さらに、コミック化もされており、原案をじんP、キャラクター原案をしづ、わんにゃんぷー、作画を佐藤まひろさんが担当。月刊コミックジーン(毎月15日発売)にて好評連載中、現在第7巻まで刊行しています。2014年には『メカクシティアクターズ』と題してアニメ化。メカクシ団の団長・キドを甲斐田裕子さん、メカクシ団員No.2・セトを保志総一朗さんなど豪華声優陣が出演しています。制作はシャフト、「荒川アンダー ザ ブリッジ」「さよなら絶望先生」などで著名な新房昭之さんが監督を勤めています。

>>「カゲロウプロジェクト」公式サイト



　2008年2月に黒うさPが発表した「KAITO」と「初音ミク」のデュエットソング。カンタレラとは、中世にイタリア貴族ボルジア家が政略に用いたとされる毒薬の名前で、兄弟の愛を描いた禁忌的なラブソング。2012年にはミュージカル化されており、「ミュージカル　テニスの王子様」などに出演の兼崎健太郎さんや齋藤ヤスカさん、渡辺大輔さんが演じています。
また、ミュージカルの曲本を務めた石薫夏さんが執筆の小説「カンタレラ -禁断ノ愛ハ毒トナル-」、ミュージカルを原作とした坂本あきらさんによるコミカライズ「カンタレラ-背徳ノ愛ト毒ノ果テ-」、曲を原案とした壱加さんによるコミカライズ「カンタレラ～碧の毒薬～」が発表されています。

>>「カンタレラ-背徳ノ愛ト毒ノ果テ-」公式サイト
>>ニコミュ「カンタレラ」特集ページ



　2008年3月にトラボルタにより発表された楽曲で、その解釈の幅広さにファンによるアンサーソングが多数製作されています。「ココロ」は、孤独な科学者に作られたロボットが、数百年の後に未完成だった「ココロ」のプログラムを知ることを願いそれを得る物語が描かれています。2009年に茨城県水戸市の演劇フェスティバルでボランティア演者がコメディ調に演じ話題に。その後、2010年にはキャストを一新して東京にて、2011年にはドワンゴ主催のミュージカルとしてと3度に亘って舞台化されています。PHP研究所から小説「ココロ」が3部作として刊行されています。

>>小説「ココロ」特集ページ
>>ニコミュ「ココロ」公式サイト



　音楽ユニットLast Note.のオリジナル楽曲シリーズで、GUMIを使用して製作。組曲の名の通り、11曲もの楽曲がリリースされています。また、2015年2月25日には、その集大成となるアルバム「ミカグラ学園組曲」がリリースされました。また、同作の世界観を下に、2013年７月にLast Note.が小説を執筆。2013年には、『月刊コミックジーン』にてコミカライズされています。さらに、2015年4月から6月までアニメ化されており、主人公・一宮エミヤ役を木村珠莉さん、主人公の従兄・二宮 シグレ役を島﨑信長さんが演じました。登場人物全員にテーマソングがあることでも話題に。

>>「ミカグラ学園組曲」公式サイト



　プロのミュージシャンとしても活動している家の裏でマンボウが死んでるPの代表曲「粘着系男子の15年ネチネチ」「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」の2曲が、「ネチ×クワ」という一つの作品として2013年に舞台化。ボカロ楽曲を舞台化することで有名な劇団ブリオッシュが演じました。
また、「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」は、家の裏でマンボウが死んでるP自ら小説化。講談社BOXより刊行されています。

>>「講談社BOX」」公式サイト
>>「劇団ブリオッシュ」公式サイト



　オワタP(ガルナ)作曲の同作は、VOCALOID「鏡音リン」への愛がとどまることを知らない迷曲。ネタを提供したsezuさん、PVイラストを担当した田村ヒロさんによって生み出された愛らしいイラストと、中毒性の高い楽曲は100万回以上の再生数を突破しています。2014年には一迅社にて「リンちゃんなう！SSs」として小説化。2013年にはコミカライズされています。

>>一迅社「リンちゃんなう！」特設サイト

　ボカロ楽曲の枠組みを超え、様々な形で人々の心に訴えかける楽曲たち。あなたも今一度、彼女たちが紡ぎ出す音色に触れてみてはどうでしょうか？