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声優・小林裕介さんが語る、役へのアプローチと作品の想い出

「自分に一番近いのは『SHIROBAKO』の平岡です」小林裕介さんが語る、役へのアプローチと作品の想い出【連載第2回】

 『アルスラーン戦記』のアルスラーン役から、リゼロこと『Re:ゼロから始める異世界生活』のナツキ・スバル役まで、様々なタイプの「主役」を演じることにこだわる声優、小林裕介さん。

 前回は声優への想いや、芝居への取り組み方について語っていただきましたが、今回(連載第2回)は小林さん流の役へのアプローチの仕方と、出演作品の想い出について伺います。演じやすい役、難しい役、自分に近い役といった話から、一番思い入れが強い作品、共演した声優さんとの逸話まで、今回もファン大注目の内容です!


▲小林裕介(こばやし ゆうすけ)
3月25日生まれ。東京都出身。主な出演作は『ウィッチクラフトワークス』多華宮仄役、『アルスラーン戦記』アルスラーン役、『コメット・ルシファー』ソウゴ・アマギ役、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』奥間狸吉役、『ブブキ・ブランキ』一希東役、『Re:ゼロから始める異世界生活』ナツキ・スバル役、『この美術部には問題がある!』内巻すばる役、『モンスターストライク』焔レン役ほか。ゆーりんプロ所属。

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    □連載 第1回:声優を目指したキッカケとは
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役へのアプローチ

――小林さんといえば『アルスラーン戦記』のアルスラーン役が、作品のヒットと併せて強く印象に残っており、その後も線は細いけれど芯の強いリーダータイプのキャラクターをいくつも演じられています。ご自身でも、その辺りが自分の得意分野かもしれないという感覚はありますか?

小林裕介さん(以下、小林):周りから言われるからそう感じているだけで、自分ではどうなのかな?といまだに思います。僕自身は、軽いノリの兄ちゃんが一番やりやすいんですよ。振られる役のわりには地声は低い方なので、この声が活かせて、かつ自分が一番やりやすいところだと、きっちり喋る役よりも、かる~く受け答えするようなチャラ男が合っていると思うんです。

――たくさんいるとは思いますが、好きなキャラクターは?

小林:もちろんアルスラーンは、自分が関わった作品の中でも話数が多いこともあって、あれこれ考えて寄り添い、付き合いが長いイメージがありますね。でも一番は『ウィッチクラフトワークス』の多華宮仄なんですよ。それだけ思い入れが強いんです。劇中ではみんなから「多華宮くん」と名字で呼ばれているんですけど、僕だけは「仄」と名前で呼んでいるという、変なこだわりもあるんです。

あとは『SHIROBAKO』という作品で演じた平岡大輔が、今まで演じた中では自分に一番近いと思いますね。普段の家での僕は、あんな感じです(笑)。別に外でいい顔をしているとは言わないですけれど、家だと「あー、別にいーじゃん」みたいな、そういうキャラなんですよ。だからすごく演りやすかったですね。

それまでは大人しい、気が弱い、どこか儚げなキャラが多かった中、平岡を演じたおかげで「あ、こういう芝居もできるんだ」というのをスタッフさんにも知っていただけた、いい機会にもなったんです。だから「こんな役を急に僕に振るなんて、すごいな水島監督!」と思いましたね。

――イライラさせられる、嫌われ者キャラを演じる小林さんは新鮮でした。

小林:でも最近は多いんですよ。『クロムクロ』という作品で、少しネジの飛んだ高校生の茅原純大という役を演じているんですけど、あれは役を離れて観ていたら「うっわムカツク! イライラすんなこいつ!」って思うし、『リゼロ』のスバルだって最初はみんな「なんか鬱陶しいな」って感じるキャラだったと思うんです。意外と増えてきましたね。

――まぁスバルは途中で「お前、人としてダメだろう!」という状態にまで堕ちますからね。もっとも、それだけ小林さんの下種キャラ芝居が見事だったわけですが(笑)。

小林:そう言っていただけると恐縮です(笑)。スバルはあの節回しで、相手に好まれるように芝居するのはおかしいはずだから、どうやったら相手に気分悪く聞こえるのか、人はどういう言い方をされたらイラッと来るのかはけっこう考えました。

――2016年10月から12月にかけて放送された『DAYS』『ブブキ・ブランキ 星の巨人』『SHOW BY ROCK!! #』についても伺います。『ブブキ・ブランキ』の一希東も、小林さんらしい役という感じがしますね。

小林:実は今まで演じた中で、一番難しい役だったんです。喋っているセリフとしては、ちょっと頼りなくて、でもどこか引っ張っていく力があるみたいな感じなんですけど、セリフがあまりにも少ないんですよ。しかも自分の中でキャラを解釈して、心にストンと落とし込んだ時に、浮かんだセリフが台本上に出てこないことが多過ぎて……。

さっきまでこういう気持ちだったはずなのに、急にこうなっている。でもそれは何も考えずにやっているわけじゃない。あのキャラはしっかりと考えた上で行動するので、そこに至るまでを自分で考えなきゃいけないんです。そういう意味ではキャラ作りもすごく大変でしたね。やりようによっては、ただの「何を考えているのかわからない不思議系」で終わってしまうので。その要素はありつつ、でもどこか人間味を感じさせなきゃいけない。この話は彼の成長物語でもあるわけですから、どこでどう変わるのかはしっかり表現したいし、「こういうキャラだったら、この場合は……」と毎回悩まされました。

『DAYS』の平源一郎も難しいんですよ。表情がいつも同じで、何を考えているのかよくわからないキャラなので。最初は「この表情だし、こうなのかな」と思って演ったら全然違っていて、最後の最後で「あ、そういうことだったんですか」とわかった感じでした。それだけに「もう少し早くわかっていればな」という悔しさはあります。

逆に『SHOW BY ROCK!!』のチタンはわかりやすい(笑)。

――むしろサンリオ作品は、作品そのものが理解を超えてカオスな場合もありますが(笑)。

小林:でもそっちに振り切れている分、ノリやすいんですよ。特に周りの方のテンションに乗せられて、「じゃあ俺もやっちゃお!」ってなることが多いですね。クロウ役の谷山紀章さんなどが、もうすごいノリと勢いで、かつ説得力のある芝居をされているのを見ると、自分も鼓舞されて「やらなきゃ!」という気分になるんです。

――『SHOW BY ROCK!!』では、劇中ユニットで歌も歌われています。これまでもキャラクターとしての歌唱はされていますが、自分名義のオリジナルをやる予定は?

小林:ないですけど、自分名義のほうが気が楽だなとは思います。キャラソンの場合、みなさんが思っている「このキャラ」というイメージがあるじゃないですか。でも僕がやる役って、歌わなそうなキャラが多いんですよ。それなのに激しい曲だったりすると、なおさらキャラがわからなくなってしまうことが多いんです。その点、個人名義だったら「僕はこう歌いたい! 僕だからこう歌うんだ!」というのを出して構わないと思うので、そちらのほうがいいかな。

――役に対するアプローチと重なりますね。自分ならこう演じるというスタンスと同じように、歌も自分で行きたい感じですか?

小林:僕はキャラを作る時には、キャラの性格があって、その流れに沿うセリフがあるから理解できるんですよ。ところが歌となると、歌ならではの歌詞ではキャラを保つのが難しい。また声のトーンも含めてのキャラなので、歌もキーが高かったりすると「これでこのキャラに聴こえるかな……」という心配も出てきます。歌っていても、常に疑問符がついてしまうんですよ。

――『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』関連の曲のように、歌そのものがネタで振り切ってしまえば大丈夫?

小林:ああもう、あれだったら(笑)。でもあれも最初は奥間狸吉のキャラで歌おうと思ったら、「これはカオス状態になっているので、別にキャラとか気にしなくていいです」と言われて、もはや何だかわからないテンションで歌ったんです。そうしたら「狸吉じゃなくない?」という声も多いし、ちょっと複雑(笑)。まぁでもあそこまでブッ飛んだ作品なら、悪ふざけもできますし、吹っ切ってやれますね。

それと『SHOW BY ROCK!!』の場合は、キャラクターたちがアーティストとして歌っていますから、僕もキャラソンというよりもJ-POPだと思って歌っているんです。だから「こういうアーティストが表現したいのは、きっとこういうことだ」という世界観作りや、歌詞から受けた率直な印象を大事にしました。アーティストでも、普段の会話での喋り方と歌う時ではキャラが変わることがよくあるじゃないですか。その感覚に近いですね。

出演作品について

――ゲームのお仕事もされていますが、出演したゲームを遊んだり、シリーズ物なら前作まで遊ばれたりされますか?

小林:いただいたものは、なるべくプレイするようにしています。ただ、シリーズ物の前作までとなると、そもそも僕はコンシューマゲームの仕事をあまりやっていないんですよ。アプリ物が多いんです。

――新しいところで、信濃藤四郎役で出演された『刀剣乱舞』は?

小林:『刀剣乱舞』もどちらかというと、女性向けじゃないですか。だから実は遊んでいないんです……。

――刀に興味は?

小林:それはあります! 剣道もやっていましたし、ラジオの収録の帰りに刀剣博物館を見つけた時には入ってみました。そこで「信濃藤四郎ないかな?」と思って探したんですけど、なかったですね(笑)。

僕、殺陣とかも好きで、舞台でも殺陣を何度かやっているんですよ。だから剣を持ったりすること自体には興味があるんです。

――それでは、そんな小林さんにこれを構えていただきましょう!

▲『刀剣乱舞』の信濃藤四郎は短刀ということで、小林さんに短刀を構えていただきました!

▲『刀剣乱舞』の信濃藤四郎は短刀ということで、小林さんに短刀を構えていただきました!


小林:すっごいワクワクしますね! 元々刀剣に興味はあったので、『刀剣乱舞』に出演できたことは嬉しいんですよ。

――アニメも人気ですし、もしも2期があるなら当然、信濃藤四郎も出てくるでしょう。そうなると、ステージで殺陣を見せるようなことがあるかもしれませんね。

小林:やりたいですね! だったらもうちょっと、アクロバットとか練習しておかないとな。僕、スタントとかもやりたくて、アクロバット教室に通おうかと調べたこともあるんですよ。教室の場所が遠いので諦めたんですけど。

――『ウィッチクラフトワークス』以降、主演作も一気に増えましたが、これを観てほしいという作品はありますか?

小林:『コメット・ルシファー』という作品があるんです。僕はロボットアニメが好きで、この作品が初めて出演したロボットアニメだったんです。しかも、ロボットに意思があるタイプなので、僕が大好きな『魔神英雄伝ワタル』や『魔動王グランゾート』系なんですよ。だからすっごい楽しかったんです! キャストもみんなテンション高かったですね。

あの作品は特に、子供がいる人に観てほしい。子供が「うわぁ!」って興奮して、かっこいい、楽しいと思える作品だと思うんですよ。僕が小学生や中学生だった頃に観て感じたものを感じ取れるんです。それにロマン・ヴァロフ役の寺島拓篤さんとも「30代の俺たちにメッチャ刺さるよね!」って話していたんですけど、親世代にもぜひ観てほしいですね。

――『アルスラーン戦記』でダリューン役を演じた細谷佳正さんとの共演も最近増えていますが、ファンの間では細谷さんのキャラが登場すると、一斉に「ダリューン」と囁き始める面白い状況になっています。

小林:細谷さん、どこの現場に行っても僕のことを「殿下」って呼ぶんですよ。まぁナルサス役の浪川大輔さんや、ほかの人たちもそうなんですけど(笑)。だからちょっと恥ずかしいんですよね。しかも声が大きいから、この前も全然別の現場で「あっ、殿下!」とか呼ばれて、みんなに注目されてしまって。「細谷さん、ちょっと勘弁してほしいな……」って頼んだんですけど、「すいません殿下!」って。「殿下」は変わらないんだなと。

でも、そういうふうに接してくださるのは嬉しいですよね。最近細谷さんとは仲良くさせていただいて、身近で尊敬する声優さんの1人でもあるので、そういう人と濃い話ができるのはありがたいです。

――芝居の話とかをされるのですか?

小林:芝居の話もしますが、「人生とは?」みたいな話もするんですよ。けっこう悩み多き方なんです。僕は昔はネガティブでしたが、今はサバサバしているので、「だったらこうじゃないですか?」ってスパッと言うことを意外と気に入ってくださるみたいで、「殿下は男らしいですね! 僕もそうなりたい!」ってよく言われます。

――ちゃんと主君の威厳を保っているじゃないですか!(笑)

小林:そうですね(笑)。

――そんな感じで、ほかの声優さんからいただいて大切にしている言葉などはありますか?

小林:大塚明夫さんが出された本で「声優だけはやめておけ」というキャッチコピーの『声優魂』という本があるんですけど、それを読んで「あっ、俺は声優をやってもいいんだな」という自信をもらったんですね。

僕は「主役をやりたい!」とずっと言っているんです。普通なら、外画をやりたい、ナレーションもやりたいというように、いろんな声優の仕事に興味を持つべきなのかなとも思うんですけど、何が一番やりたいかと聞かれたら「主役です!」と即答するくらい、こだわりがあるんですよ。本当はもっと脇の芝居も勉強するべきなんですよね。

でも大塚さんが本の中で「主役をやりたいとか目立ちたいとか、そういう強気な心があったっていいじゃないか」みたいなことを書かれていて、「あっ、大塚さんがいいと言うなら、これでいいんだな!」という自信になったんです。

「役者は職業じゃなくて、生き方だ」みたいな言葉も好きですね。いつまで作品に関われるかはわからない。じゃあ声が潰れたらそこで役者を辞めるのかと問われたら、大塚さんは「声を失った男の役とか、声が出せないからこそできる役をやるだろう」というようなことを書かれていて、どんな状況でも「芝居をしたい!」という心だけはなくさないようにしなければ、役者は続けられないんだなと思ったんです。

だからこの先、仕事がなくなる時があったら、それはそれで時間ができたと思って「じゃあ舞台をしよう!」というように、芝居をしたい心だけは忘れないで、ずっと役者を続けていきたいですね。


編集:柏村友哉、設楽英一
インタビュー&文:設楽英一
撮影:山本哲也
ヘアメイク:you

 

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