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最新作公開を前に『カーズ』を振り返る──山口智充さんインタビュー

メーターと共に歩んだ11年。最新作公開を前に『カーズ』を振り返る──山口智充さんインタビュー

 ディズニー/ピクサーのタッグが送る人気シリーズ『カーズ』。7月15日より、待望の最新作『カーズ/クロスロード』が劇場公開されます。すでに北米映画興行収入ランキングでは初登場首位をマークしており、その出来栄えは折り紙付きです。

 アニメイトタイムズでは、日本での公開を前にシリーズ全作でメーターの吹き替え声優を担当している山口智充さんにインタビューを行いました。本作で劇場アニメも3作目ということで、これまでの『カーズ』シリーズを山口さんの心境と共に振り返っていただきました。

大好きな車の世界に入り込めるという興奮
──まず最初に、『カーズ』への出演が決定した時はどのように思いましたか?

山口智充(以下、山口):もともと車が大好きだったんです。雑誌だったかなぁ、次のディズニー映画は「車の世界だ」というキャッチフレーズを目にしたんですよ。それを見たときに「絶対観よう! この映画、絶対観に行く」と思っていました。それまでのディズニー/ピクサー作品も全作観ていまして、次は車がキャラクターになっているなら「もう絶対観よう」と思っていたわけです。

その1週間後くらいに、マネージャーから「『カーズ』という作品の声のお仕事が来ているんですけど」と連絡があって。「え~!?」って。「どのキャラクター?」って聞いたらこの『メーター』だったんですよ。

僕、『カーズ』のポスターでも一番最初からメーターのことを見ていたんですよ。自分が声優をするならとか、そういうことではなくて「メーターかっこいいなあ」「渋いレッカー車を持って来たな」という単純な好みですね。他にもいろんなマニアックな車がポスターに載っていたので、「本当に車が好きな人が作った作品なんだな」と感じたんです。それで「メーター絶対面白いわぁ」と思っていたら僕が演じることになったので、感動も増しましたね。興奮しました。


──その興奮のまま収録に入るわけですね。

山口:そのままでしたね。だから、自分の中でもすごくノッていました。


──収録はやはり、楽しい気持ちが大きかったですか?

山口:大きな作品で、しかもディズニー/ピクサーですからね。とにかく興奮していました。ディズニー/ピクサー作品に携われるわけですからね。しかも、シリーズ初めての作品でもありましたし。

メーターというキャラクターの声は、日本では僕が初めて吹き込んだので、僕によってメーターくんの命が吹き込まれたわけですよ。収録では、僕がたった今収録したシーンを「一回ちょっと聞いてみます」ってスタッフさんが再生することが何度もあったんですけど、そこに僕の声が当てはまっているだけで興奮しましたよ。「うお~!」と。そういう興奮した経験がパート1でしたね。

そこから、映画が公開される前のキャンペーン稼働も、新シリーズということもあってかなりやらせていただきました。頭にメーターの被り物を被ったりしていましたね(笑)。

その結果なのか、作品の素晴らしさなのか、世間の反響が大きかったのを覚えていますね。「『カーズ』すごい」という声をよくいただいたんです。僕は「そりゃそうだ! 俺だってすごく良いと思ってたもん!」という感じでした。これで僕が「いや~、大したことないね」と思っていたらあれですけど、「それはそうでしょ! だって俺、絶対これ観るもん」と思っていた作品なので、世間に響いたことを知って嬉しくなりましたね。その1作目の自分の興奮と、世間の反響というのは今でも忘れられません。

『メーター』として存在できる嬉しさ
──そこからだいぶ期間が空いて『カーズ2』も公開されました。「自分に声がかかるかな?」とは思っていましたか?

山口:2作目までに5年間あったんですけど、その5年の間にメーターくんだけの『メーターの世界つくり話』シリーズにずっと関わらせていただいていたんです。ちょこちょことメーターの声をやっていたので「みんなに忘れられてないな」というのはずっとありましたね。

そして、あれこれしているうちに『カーズ2』の噂が出てきたんです。そこからは多少は緊張がありましたね。「2で声変わっていたらどうしようかな」って。でも、「メーターはぐっさんで」とおっしゃっていただけて、5年後にスクリーンに帰って来たのが『カーズ2』でした。


──『カーズ2』は特にメーターが大活躍でした。収録も大変だったんじゃないかなと思うのですが。

山口:時間はかかりましたね。でも、何より自分の声がスクリーンでたくさん流れるというのは、僕にとってすごく幸せでした。キャンペーンもいろいろ稼働したんですけど、あれだけスクリーンにメーターの映像と声がたくさん出てるのに、『カーズ2』が終わってからもまだ、僕がメーターの声をやっていることを知らない人がたくさんいたんです。これは嬉しかったですね。


──嬉しかったんですか?

山口:「『カーズ』は1も観ているし、『メーターの世界つくり話』シリーズも観ている」という方が僕の周りにすごくたくさんいらっしゃったんです。『カーズ』の話になるたびに、「ありがとうございます!」と僕が言ったら、「え? なんでですか?」みたいな返事が返ってきて。「僕がメーターの声なんですよ」って言うと「えぇ~!?」ってみんなに驚かれましたね。

それは僕にとっては本望というか。声をやっていて、作品の中で僕の存在が消えているのは、すごくありがたいことですよね。僕ではなく、ちゃんとメーターとして存在しているんです。それが『カーズ2』で特に印象に残っています。

『カーズ/クロスロード』で感じる生き方への課題
──そして、3作目となる『カーズ/クロスロード』がついに公開されます。今回はどういう気持ちでしたか?

山口:「3作目は必ずある」と僕も信じていたので「よっしゃ! また次があった!」という気持ちが大きくかったですね。単純に、また『カーズ』に携われるということが嬉しかったです。

今回はマックィーンがメインのお話なので、どこか嫉妬はありましたけど……(笑)。メーターの声の収録も「今回は1日で終わります」と言われて、ちょっと寂しさはありましたね(笑)。

でも、作品を観ると、そんな気持ちが吹っ飛ぶくらいにすごい作品だったんです。

1作目から数えて11年という月日が、良い意味でキャラクターにもちゃんと描写されているんです。2も今回も、マックィーンやメーターが何も変わらずに登場する、というわけではありません。

それと同時に、「じゃあ僕も1と同じ声が出せてるのか?」を考えました。僕の中でも11年が経ってるので、変化もあると思うんです。でも、時間の経過が『カーズ』という作品にも、自分自身にも、マイナスではなくプラスになっているのかなと感じました。作品を通して、一緒に歩んでいけているものがあるのはすごいな、と。11年前に携わらせていただいた仕事に、今も変わらず携わらせていただけているのは、改めて、ありがたいことですよね。

今回の『カーズ/クロスロード』を観た人が、メーターを好きになって「メーターって、ぐっさんがやってるんだ」という認識が植え込まれ(笑)、そこでまた思い出になっていくと思うんです。今では、1をリアルタイムで観ていた子どもたちが11年経って大きくなって、仕事で一緒になることもあるんです。「実は、カーズ観てたんです」とか「その時何歳だったんです」とか言われて、ビックリしますよ。そんな会話をしていると、1つの作品の中に歴史を感じるというか。良い仕事に携わらせていただいたなと改めて思っています。


──作品と一緒に年齢を重ねていることは、素敵なことですね。

山口:そうですね。マックィーンのように、歳を重ねることを否定せずに、向き合うことは、すごく大事なことだと思いますし、僕自身もそういう生き方が好きなんです。

「何歳ですか?」「何歳に見えますか?」というのは、いちばん無駄な返しだと僕は思っていて。「○歳です!」といくつになってもはっきり言える人って、かっこいいですよね。決して自分が生きてきた過去を否定しない。人生のすべてに対して、しっかりと向き合っていける人というのは、すごく素敵だと思うんです。老いていくのは当たり前、いつか死ぬのは当たり前という中で「さあ、どう生きますか?」ということが、僕らに与えられた課題だと思います。

作品も人間も、車もそうですけど、どんなに古くなってもかっこいいものはいっぱいあります。月日の経過というものをいかに楽しめるか、どう生きるのか。今回の作品ではそれを非常に感じました。

『人生折り返し地点』という言い方があると思うんですけど、僕は、折り返すことって絶対にないと思うんです。人生は、ずっと登って、進んでいくものだと思うので。歳をとって、もうヨボヨボになっても、折り返すことはない。先輩を絶対抜けないのと一緒ですよ。一個上の先輩は一生一個上ですから。だからそう思うと、折り返しはないんですよね。ただずっと、自分がその時その時を楽しめるかが課題になってくる。僕はそう思いますね。

公開はしますけど後悔はしません
──今作でマックィーンは人生の岐路に立たされます。長年マックィーンの親友・メーターとして歩んできた山口さんから見て、今回の作品でマックィーンが苦しんでいる姿、負けないで努力している姿はどのように映りましたか?

山口:マックィーンは速くてかっこよくないといけないキャラクターなんです。やっぱりスターであり、ヒーローですからね。逆にメーターは、錆びていても、ピカピカ輝いてなくてもいいんですよね。

それはメーター自身が「それがいい」と思っているし、「マックィーンにはなれない」と分かっているからなんです。だからマックィーンに憧れているんだと思うんです。でも、マックィーンは憧れられながらも、それをキープしなきゃいけない、かっこいいやつでいなきゃいけないキャラクターです。だからこその葛藤だと思います。「もっと自由に生きられたら、俺ってもっと楽なのにな」って思いたいのにマックィーンにはプライドがあるんですね。

だからマックィーンはメーターに憧れるんですよね。お互いが自分の生き方を誇りに思いながらも相手を尊重し合えるっていう関係性がすごく好きです。


──マックィーンが今作の中で、再び走り続けるのか、どうするのかという人生の選択を迫られますが、山口さんご自身も今までそういった経験はありましたか?

山口:僕は毎日が岐路のような仕事なので、「どっちに行く?」っていう選択が2つなのか、3つなのか、10個なのか、といろいろある中で生きていると思っています。その選択を「こっちにする」というきっかけが自分の意思なのか、周りの意見なのか、そのとき置かれた環境なのか、判断しながら毎日生きていますね。

記憶にある「あそこがターニングポイントだったのかな?」というものはありますけど、明日どうなっているのかわからないのがエンターテイメントの世界ですし。毎日選択しながら生きていける立場の仕事っていうのはすごく貴重だなって思います。こっちに行くことによって「うわあ、こうなった」のかと、そこを楽しんでいます。毎日クロスロードですね。


──最後に映画を楽しみにしているファンのみなさんにメッセージをお願いします。

山口:まずは映画館でご覧いただいて、レースのシーンの臨場感や迫力を味わってください。『カーズ』は、車しか出てこない作品ですけど、車たちがだんだん人間に見えてくるんです。僕は、この生々しいくらいの人間くささが大好きなんです。人間くささを味わいながら、「自分は一体『カーズ』の中の誰なんだろう?」「自分はこのキャラクターになったらどうなるんだろう?」ということを噛み締めながら劇場で思いっきり楽しんでいただければと思っております。公開はしますけど後悔はしません。そういう作品になっておりますので、みなさんよろしくお願いいたします。


[インタビュー/石橋悠]

『カーズ/クロスロード』公開情報

タイトル:『カーズ/クロスロード』
公開表記:7月15日(土) 公開
配給表記:ウォルト・ディズニー・ジャパン

『カーズ/クロスロード』トレーラー


前2作を監督したジョン・ラセター氏も太鼓判
ジョン・ラセター氏:ライトニング・マックィーンは最高だ。物語はとても感動的で『カーズ』に少し似ていて、さらに深い感情に入り込んでいくものなんだ。『カーズ/クロスロード』はとても特別なストーリーで、感動的で、マックィーンとドック・ハドソンの関係や、彼のドック・ハドソンの思い出も描かれているんだ。

>>『カーズ/クロスロード』ディズニー公式サイト

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