ReoNaデビュー後初ワンマン「Birth」レポート

「それではおやすみなさい」――10代最後の集大成“絶望系アニソンシンガー”ReoNaさん ワンマンで見た希望のヒカリ

2018年10月19日(金)、東京・渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにてシンガー・ReoNaさんのワンマンライブ「Birth」が開催された。

「Birth」は8月29日にリリースされたデビューシングル「SWEET HURT」(『ハッピーシュガーライフ』ED)後初となるワンマンであり、ReoNaさんの10代最後の日という節目でもあり、オフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」の発足日でもある。特別な「Birth」に立ち会うべくファンが集結(チケットは即日ソールドアウト)。全18曲を堪能した。

ReoNaさん初ワンマンライブ「Birth」レポート

満場のファンの前にバンドメンバーと共にライダースジャケット姿のReoNaさんが登壇。息をたっぷり吸い込みはじまったのは、神崎エルザ starring ReoNaの「ピルグリム」。中性的な響きを持つ伸びやかな歌声で、高らかに"はじまりの合図"を送る。

ここで少し驚いたのは、ほとんどの観客が着席しながら彼女を見守っていたこと。キラーチューンがくればバッと立ち上がってペンライトを振るのがアニソン界隈では一般的ではあるが、開演前のBGMで流れていたクラシックを聴くかのように、音楽そのものを噛み締めている様子。

もちろん曲によっては立ってペンライトを振るファンもいれば、手を上げたり、ハンズクラップでエールを送ることもある。一定のマナーを守りながら、それぞれが思う心地のいいスタイルでライブを楽しんでいた。デビューからわずかの間に、そういった世界観が浸透しているのは凄いことだと思う。

「ありがと」。歌い終わったあとの情感たっぷりの言葉に拍手が沸く。

「Birthへようこそ。今日という日をずっと心待ちにしてきました。みんなもずっとおんなじ気持ちでいてくれてたかな。今日ここにきてくれたみんなと、記憶に残るBirthが作れますように」

客席を見渡し「それではみなさん、おやすみなさい」という言葉と共にはじまったのは、デビューシングルに収録されていた「おやすみの詩」と、彼女にとって初のオリジナル曲である「怪物の詩」。

同じ作家が出がけているこの2曲は、2つで1つ(彼女曰く"兄弟"のような存在)。<愛をもっと>……切実な心の叫びが繋がり、よりエモーショナルに響いてきた。

そこから続いたのは、デビュー前のオリジナル曲「Let it die」。未音源化の曲の為詳しい歌詞は分からなかったが、ギターのリフから始まる美しい曲で、サビで描かれる壮大なサウンドスケープが美しく聴き入ってしまう。さらに彼女が数年前から歌ってきた「季節は次々死んでいく」(amazarashi)、「Starduster」(ジミーサムP)とカヴァーを届けた。

10代最後の集大成的な選曲に、自然と歌声の熱が帯びる。「ライブの短い時間にこの10年間がどれだけ詰め込められるかは分からないんですけど、詰め込めるだけ詰め込みたい」とインタビューで答えていた彼女は、その言葉の通り、この10年間歌ってきた"おうた"をセットリストに組み込んできた。

デビュー前に歌ってきたオリジナル曲、カヴァー曲も

「私はいままで自分のおうたを形に残せたことがなくて。そんな私が今年の7月4日に、初めてReoNaとして、音が、声が、おうたが、形に残って。生まれた日とはまた違う誕生日になりました。今までずっと好きで、憧れてきたアニメ。その劇中歌のなかでうたった曲。いろいろな顔を持った色とりどりの7曲がギュッと詰まった一枚。そのなかでも"戦いを彩る"2曲をお届けします」

神崎エルザ名義のなかでもひときわ盛り上がったのが、ここで披露された「Disorder」「Independence」だ。エネルギッシュな歌声が放たれると、その声に突き動かされるように次々と拳が上がる。熱狂するオーディエンスの様子を見て、ReoNaさんも嬉しそうな表情を浮かべていた。

激しい燃え上がりから一転、彼女のウィスパーボイスが活きたアコースティックが個人的な白眉。「心做し」(蝶々P)、「生きてることが辛いなら」(森山直太朗)のカヴァーは、うっすらとした照明がつくまでは、まっくらな場内でライトはひとつだけという状態で歌われた。暗闇のなかで歌声に包まれているような、まるで"自分だけ"に歌われているような感覚にさせられる。彼女の"生"に対する思い、歌に込めたメッセージが特にまっすぐ伝わってきたのが、この中盤だ。

「私が言っている"絶望系(シンガー)"って……どんなふうに感じているのかな? 私は……自分に重ね合わせられる曲がなかなか見つからなくって。失恋つらいよね、とか、遠くにつれてってあげるよ、みたいな曲はありふれてたけど、家族との確執とか、孤独とか、絶望感……身近な苦しみのはずなのに、代わりに言葉にしてくれるひとがなんでこんなに少ないんだろうって。

(中略)

いろいろな形が音楽にはあって、何を聴くかも、何を歌うかも自由ななかで"おうたをうたってもいいよ"って言ってもらえて。いろいろな絶望に触れてきた私が歌うことで、今少し傷ついて、悲しんで、苦しんでる人たちに、少しでも癒しになればいいなと、そう思っています。今日はBirth。誕生日ってひとつではないと思っていて、もしかしたらこういう誕生日もあるのかもしれないよね。ふたつめの誕生日も」

そこからすぐにはじまったのは、"ふたつめの誕生日"という言葉が出てくるオリジナル曲「トウシンダイ」。爽やかな曲のなかに潜む絶望感。そして絶望のなかに希望のヒカリが刺すようなミディアムナンバー(改めて聴きたいので、ぜひ音源にして欲しい)。

「明るすぎて眩しいもの。まっすぐすぎて、こわいものからは、目をそむけたくなる。なにが正しいか、なにが幸せかは人それぞれで、押しつけられると、逃げたくもなってしまう」。そんな言葉から導かれたミディアムナンバー「カナリア」。

センチメンタルなメロディをなぞるアコースティックギターに合わせて、柔らかく、時に儚げな歌声が伸びる。物語に導くMCは、まるで"こえにっき"のようで(ツイッターで公開している音声のみの動画日記)、そんな言葉も含めて心地が良い。時折、讃美歌や子守歌を聴いているような気分にさせられたのは、私だけだろうか。

いよいよラストスパート 神崎エルザの曲が続く

ゆっくりと丁寧に、1曲1曲を紡いできた "Birth"もラストスパートへ。バンド形式に戻って、カバーの「決意の朝に」(Aqua Timez)を挟み、「ヒカリ」「step, step」「レプリカ」「Rea(s)oN」と、神崎エルザ名義の曲を。だんだんと晴れていくかのように、目覚めるかのように、明るい曲調が重なっていく。

「いろいろなものから逃げて、逃げて。その果てに生きる理由を見つけられました」と言ってはじまった「Rea(s)oN」は特に心に響いた。<そしてあなたがいるただそれだけで 命は輝くから>と、感情を振り絞るように歌う姿は、彼女の生き様を見ているようで眩しい。

ここで「今日はBirthにくることを選んでくれて、ホントにありがとうございました。楽しかったです」と最後のMC。ひとつひとつの言葉を放つたびに、客席のあちこちを見て、視線を合わす。

「今日みんなの記憶のなかに、わたしは少しでも残れましたか。命の形っていろいろあると思ってて。"命を捧げる"方法もいろいろあって。例えばお金とか、文字通り命とか、かけがえのない大事なものとか。幸せのなかで、"時間"もまた命だと思っています。今日みんなと過ごしたこの時間も、私にとっては大事な命です」

客席が少し明るくなった状態で、<この愛をくれたあなた>に「SWEET HURT」を捧げる。ReoNaさんから"あなた"に送る深い愛の曲。間奏パートで感謝の気持ちを伝え、「また来てくれますか?」の問いかけに大きな拍手が沸き笑顔を見せる。バンドサウンドが鳴り終わるころには、ひとまわり大きな喝さいと希望のヒカリが会場を包み込んだ。

アンコールはなし。しばらく「おめでとう!」、「ありがとう!」の声が飛び交うという"Birth"ならではの終わり方となった。きっとこの日のライブは、それぞれの明日への糧となっているはずだ。

Birthを経て、翌日20歳を迎えたReoNaさん。来年には全国ワンマンツアー「ReoNa Live Tour 2019 "Wonder 1284"」が決定している。新しい年は、どんな世界を見せてくれるのだろうか。今からわくわくして仕方ない。

[文/逆井マリ]
ライブスチール:山本哲也

「ReoNa Live Tour 2019 "Wonder 1284"」ライブ情報

【概要】
■2019年2月23日(土)大阪・BananaHall(OPEN 17:00 / START 17:30)
■2019年2月24日(日)愛知・E.L.L(OPEN 17:00 / START 17:30)
■2019年3月1日(金)福岡・DRUM Be-1(OPEN 19:00 / START 19:30)
■2019年3月9日(土)東京・東京キネマ倶楽部(OPEN 17:00 / START 18:00)
■2019年3月10日(日)東京・東京キネマ倶楽部(OPEN 16:00 / START 17:00)

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