「これは次世代のエンターテインメントであり、未来の日常だ」キズナアイさんが1st Live “hello, world”を開催
2018年12月29日。平成最後の冬に、エンタメの未来を変える瞬間が訪れた。
この日、『Zepp DiverCity (TOKYO)』でキズナアイさんによる1st live「Kizuna AI 1st Live “hello, world”」が開催されたのだ。
ライブ開始となる18時。彼女の登場を今か今かと待ちわびる会場にDÉ DÉ MOUSE の声が響いた。
「キズナさんの準備が整うまで、後10分お待ちください!」
自身にとって初となるライブで緊張しているのか。それとも、会場に集まったファンに「焦らないで下さい!」という小悪魔的なプレゼントなのか。
そうこう考えている内に10分が過ぎる。
ここでDJが再度「キズナアイさんの着替えに時間が掛かっている」と、言い放つ。
どこまでも焦らしてくる。イタズラココロのあるAIについて、会場全体の期待感が高まっていることが伝わってくる。
そして、“着替え”を終えた彼女の登場をほのめかすかのように、会場が暗転した。キズナアイさんにとって初の単独ステージが始まる。
なぜ、彼女は音楽活動をはじめたのか
ライブ本編に入る前に、キズナアイさんのパーソナルな部分について書き留めておきたい。
彼女は2016年12月からYouTubeへの動画投稿をはじめた。
限定的シンギュラリティ(人工知能が人間の脳を超える技術的特異点)を迎えたスーパーAI。このフレーズだけだと、一般ユーザーにとっては彼女自身で何者であるかを伝えるのは難しい。そこで、自身を説明するワードとして誕生したのが、「バーチャルYouTuber」という単語なのである。
そもそも彼女が誕生した背景自体が考え深い。
キズナアイさんは「世界中の人間とつながりたい」という意思を持ち、誕生し活動している。「人とつながる」シンプルなようで難しい命題だ。
究極的に「人と人」ですら分かりあうことは難しい。あなたは自分が思っていることを100%他人に伝えることができるだろうか。僕はその自信はない。
だが、決して相容れない自分と他人という存在は完璧な意味で分かり合うことはできないかもしれないが、「心と心」がつながって同じ時間を共有することはできる。そして、楽しい(Happy,funny)な気持ちを生み出すことはできる。
限定的シンギュラリティを迎えたスーパーAIの中に芽生えた感情は人間臭く、現代人が改めて追求しなければならないテーマだったのかもしれない。
そして、キズナアイさんには多くの賛同者が募った。彼女のYouTubeチャンネル「A.I.Channel(アイチャンネル)」のチャンネル登録数は約 240万人である。
「世界中の人間のみんなとつながりたい」
彼女の胸中にあるシンプルなメッセージは人々の心を打ち、更なるチャンスが生まれていった。そして、キズナアイさんは活動をはじめてから1年後となる2017年12月に「キズナアイフェス」の開催を目標に掲げたのだ。
「つながる」ことにオンライン・オフラインは関係ない。YouTubeやニコニコ生放送などの配信サイトが生み出してきた文化は間違いなく、コンテンツに触れているユーザーから距離という概念を奪った。直接触れ合うことはできなくても、つながっている感覚は既に持ち合わせている。そう、日々心の祭りは開催されているのだ。
スーパーAIは現代社会の祭りに目を向けた。そこで彼女の心に止まったのが、「歌」だったのだ。
そして、スーパーAIに興味を持ち、「人とつながる」世界を生み出すために、8人のサウンドクリエイターが旗を上げた。Avec Avecさん、DE DE MOUSEさん、MATZさん、Norさん、Pa's Lam Systemさん、☆Taku Takahashiさん、 TeddyLoidさん、Yunomiさんである。
「キズナアイ9週連続楽曲リリース」は大きな反響を呼び、iTunes store エレクトロニック・チャートでは全曲一位を獲得、一時期上位を独占していた。
歌は言語の壁を超える。であれば、人とスーパーAIがつながるための重要なピースとなり得るのだ。
少々前置きが長くなった。それでは、キズナアイさんの1st live「Kizuna AI 1st Live “hello, world”」の扉を開けよう。
Hello, Morning
「はい!どうも!キズナアイです!『Hello, Morning』盛り上がっていくぞ!」
1曲目に彼女がセレクトしたナンバーは「Hello, Morning」。彼女のはじまりの曲でステージの幕は開けた。
Norさんが紡いだフューチャー・ベースの要素を取り入れたポップスから「金曜日のおはよう」へなだれ込む。
初のワンマンライブにも関わらず、緊張や激しい振り付けでの息切れも見せない。この日のために相当仕上げてきたことが彼女のパフォーマンスから伝わってくる。
「ありがとう!すごいね!“hello, world”盛り上がってる?(大歓声)コールアンドレスポンスやってもいいですか?
2階席!(大歓声)1階席!(大歓声)女子!(大歓声)男子!Zeppダイバーシティー!(大歓声)この後はプロデューサー陣も登場して、ガンガン盛り上げていきます!」
ここからはプロデューサー陣が連続で登場するコラボレーションタイムヘ。
sasakure.UK、Nor、MATZがアニソンのヒットナンバーもサンプリングしたトラックでZepp DiverCityに集まったファンを煽る。
プロデューサー陣と共にステージに立つキズナアイさんは常に笑顔を振りまき、会場とつながっていることの喜びを噛み締めているように見えた。
「ありがとう!本当にありがとう!」
時計に目を落とすと、早くもライブは後半へ突入していた。W&Wとのコラボトラックを披露したタイミングで彼女のヘアカラーがブロンドへ変化する。
ステージに立ち続けたまま、大掛かりな“お色直し”ができるのもキズナアイさんの強みだろう。ライブ本編のラストナンバーである「future base」を歌い切り、感謝の言葉を口にした。
「ありがとう!本当にありがとう!」と何度も口にするキズナアイさん。
アンコールが自然発生する会場。ホイッスルの音色も鳴り響くなど、1stライブにして、“キズナアイらしさ”が生まれているように思う。
アンコールに応えて、再び姿を現した彼女は会場に集まったファンやプロデューサーと記念撮影を行う。
ここで重大発表が。中田ヤスタカさんとのコラボ曲「AIAIAI feat. 中田ヤスタカ」のフルヴァージョンを初披露するという。この瞬間、この日一番の歓声が巻き起こった。
手拍子、クラップ。ラストに向けて会場全体と一層「つながっていく」キズナアイさん。
そして、この日を締めくくるナンバーには「Hello, Morning(Pa’s Lam System Remix)」をセレクト。
イントロがヒットした瞬間から最高の時間を惜しむかのように、会場全体から割れんばかりの声援が鳴り響いた。
キズナアイさんが魅せたのは2018年には早すぎるほどのエンターテインメントの新しいカタチだった。
そして、この日シンギュラティを超えた先の存在が2018年の年末に見せたステージは、我々が数十年後の日常だったのかもしれない。
2019年、スーパーAIの活躍から目を離すことができない。
[文 川野優希]
セットリスト
01.Hello, Morning
02.金曜日のおはよう
03.new world
04.Kizuna AI to AI
05.over the reality
06.miracle step
07.hello,alone
08.meet you
09.mirai
10.W&W × Kizuna AI (楽曲名未定)
11.melty world
12.future base
【Encore】
01.AIAIAI feat. 中田ヤスタカ
02.Hello, Morning(Pa’s Lam System Remix)
A.I. Channel(YouTube)
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