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『渋谷隔絶 東京クロノス』発売記念!著者・小山恭平さんインタビュー

小説『渋谷隔絶 東京クロノス』発売記念インタビュー!著者・小山恭平さん「本編を越えて欲しい」という熱意に応えるために

2019年7月19日に講談社タイガから刊行された『渋谷隔絶 東京クロノス』。VRミステリーアドベンチャー『東京クロノス』のスピンオフノベルである同作。おそらくVRゲーム発となるIPがノベライズ化されたのは、日本の歴史上初の出来事だと言える。

今回、『渋谷隔絶 東京クロノス』の著者を務める小山恭平さんにインタビューを実施した。

小山恭平さんは、2014年に『「英雄」解体』で第25回「BOX-AiR新人賞」を受賞し、同年に、「秘蹟商会」で第6回小学館ライトノベル大賞審査員賞を受賞した人物である。

その後、『飽くなき欲の秘蹟』と改題し、作家としてのデビューを飾った。2018年には『我が姫にささぐダーティープレイ』を刊行するなど、小説家としても活躍する一方で、『東京クロノス』のメインシナリオライターを務め上げた。

今回、『渋谷隔絶 東京クロノス』についてや小説家を目指した理由、作家として大切にしていることを聞いた。

穏やかな表情を浮かべつつ言葉を紡いでいく小山恭平さん。取材は「本編を超えて欲しい」と打診された時のエピソードからはじまった。

単体の物語として最高のものに

――『渋谷隔絶 東京クロノス』の話はいつ位から出ていたんですか?

小山恭平さん(以下、小山):『東京クロノス』のプロジェクトがスタートした段階から、「ノベライズをやるかも」という話はうっすらと伺っていました。そこで、企画書はいくつか製作していましたね。

僕としては『東京クロノス』の設定だけを引き継いだ、本編とは全然別のエモい話をやろうと思っていたので、神谷才の過去譚をやることが決定したのは完全な予想外でした。

――そうだったんですね。実際、どのような打診があったのでしょう?

小山:執筆にあたり、岸上総合Pからは3つの注文を受けました。「決してただのファングッズにしないで欲しい」、「本編を越えて欲しい」、「それ単体でIPになるような強度をもったものを作って欲しい」と。

――ハードル上げすぎてますね(笑)。

小山:はい(笑)。ただ、期待の裏返しだと思って、深呼吸しながら企画書を作り始めました。

実際は、『東京クロノス』を手がけたMyDearest、講談社、三木一馬さんが代表を務めるストレートエッジ。3社からの強力なサポートがあることも分かっていましたので、きっとなんとかなるだろうと楽観していた部分もあります。

――講談社タイガからの刊行ということで、小山さんの中で意識したことはありますか?

小山:せっかく講談社タイガで書籍を刊行するからには、普遍性を持ったミステリを発表したいと思いました。

そうですね...。作品については、普遍性を持たせるために、話の骨の部分はいくつかの神話から借りてきました。その骨に、ミステリやデスゲームのギミックという肉をつけ、最後に戯曲的な皮をかぶせる。といった製作をしたつもりです。

帯のコメントを下さった朴璐美さんが「まるで現代のギリシャ悲劇」と評して下さって本当に嬉しかったです。骨の部分をくみ取っていただけることは、創作者としてこの上ない喜びです。

後は、作品の体裁として、スピンオフがどうとかはあまり考えないようにしていました。とにかく単体の物語として最高のものに仕上げる。考えていたのはそれだけです。

幼い才。美しく、清廉な兄

――では今回、小山さんがご執筆された『渋谷隔絶 東京クロノス』とはどんな作品でしょうか?

小山:はい。隔絶された渋谷の中で、政治の一族神谷家には選挙による殺し合いというミッションが課せられる。生き残ることができるのはたったの一人。神谷家の次期当主である神谷才(10歳)は、大切なものを守るため、『大人』になることを決意する。

というのが大まかなあらすじとなっております。選挙によるデスゲームが繰り広げられます。ただでさえ選挙に長けた強敵ばかりが揃っているのに、才にとっての選挙戦は理不尽なまでに不利な状況からスタートします。勝ち続け、生き残るには起死回生の一手を打ち続けなければいけません。ですが、子供の才にはそれは決して不可能です。

そこで、才はある人物を頼ります。

それが才の兄である神谷衣緒です。生まれながらにして高い能力を持ちながらも、神谷家にはそぐわない優しさ故に廃嫡されてしまった悲劇の青年。公には存在を抹消されていますが、神谷家の真の長男です。

無力で、幼い才。美しく、清廉な兄。二人は手を取り合いながら、その手を血に染めていきます。一人で汚れるのは辛いけど、二人なら耐えられる――といったお話です。

――『東京クロノス』本編とはかなり雰囲気の違う作品に仕上がっていますね。事前に作ったプロットから試行錯誤した点などはありましたか?

小山:はい。当初の予定では神谷才が中心となって選挙を勝ち抜いていく話になる予定でした。ただ、10歳の子が閉鎖空間で活躍する、という筋にはリアリティーがなく、考え初めてすぐに「この道は間違っている」と方針を転換しましたね。

そこで生まれたのが神谷衣緒です。朝方に『東京クロノス』の総合プロデューサー・岸上さん(岸上健人さん)にキャラ設定をお送りしたところ、「このキャラは最高です!!!!」とやたらと『!』の多い熱い激賞を受けまして(笑)。これでいこうと決意しました。

神谷才の成長譚

――シンプルに『渋谷隔絶 東京クロノス』を語るのであれば、どんな作品になると思いますか?

小山:『渋谷隔絶 東京クロノス』は神谷才という少年の成長譚です。しかし『成長』という言葉が必ずしもポジティブな意味を持つとは限りません。成長とは変化であり、変化とは不可逆なもの。

血に染まり、泥にまみれて、行く手には手招きしている闇がある。逃げたいが、逃げたら大切なものを守れない――初っぱなから才はこんな状況に追い込まれます。そこからの才の決断と悲嘆を楽しんでいただければ幸いです。

――「息をつかせぬノンストップダークサスペンス」と銘打ち、本編とは異なる雰囲気となった『渋谷隔絶 東京クロノス』ですが、物語の着想やアイデアの源泉を生み出す上で、どんなエピソードがあったのでしょうか?

小山:『渋谷隔絶 東京クロノス』に限らず、講談社ノベルス、メフィスト、ファウストの神々のごとき作家が綴られた美しいミステリこそが僕の執筆の源泉であり、作家人生の支えになっています

今回、政治一族神谷家を創っていくにあたり、強く影響を受けたのは森博嗣の四季シリーズで描かれる、とある一族の在りようです。

ネタバレになってしまうので詳しく説明できず歯がゆいのですが...。両方読んだ方は、ああ、この部分を参考にしたんだなと、お察し頂ければ幸いです。皆さん、森博嗣を読んでくださいね。

作家としての骨と肉

――『「英雄」解体』、『飽くなき欲の秘蹟』 、『我が姫にささぐダーティープレイ』など様々な作品を執筆されてきた小山恭平さんですが、小説家を志したキッカケをお教え下さい。

小山:物語を創る人、に強烈に憧れ始めたきっかけは高校三年生の受験後に友達のすすめで観た『秒速5センチメートル』です。人生であれほど心動かされた経験はそれまでになく、あまりにも美しい体験にしばらく動けなくなりました。動けるようになった瞬間に、そこにあったペンとノートを手に取り、物語を書き殴った記憶があります。

「小説家を目指そう」と決意したのは、大学入学後に西尾維新の戯言シリーズを読み始めてからだったと記憶しています。言葉の流れそのものの面白さの虜となり、文章を綴るという行為の可能性は無限なのだと思い知らされました。

――今後、小説家として目指す目標やこれから小説家として成し遂げていきたいことをお聞かせ下さい。

小山:そうですね。最近はあまり、成し遂げたい目標を考えないようにしています。人間としての欲望は淡泊であった方が仕事はしやすいですし、文章はすんなり出てきます。

ただ、技術的に到達したい目標は小刻みに定めています。「あの作家の構成力を手に入れる」、「あの作家のフレーバーテキストの感じを掴む」、「あの作家の企画の作り方を真似る」みたいな感じに、人の持つ能力を修得していきたいと思い、日々勉強しています。つまり、技術者として生きてます。

この時代にビジネスマンとしての戦略を持たずに生きることが、どれほどリスクの高い行いなのかは理解しているつもりですが、そのリスクすらもねじ伏せられるような高い技術力を手に入れるのが目標です。

僕は典型的な実戦で成長するタイプなので、これからも媒体を問わず、あらゆる経験を積んでいきたいと思います。しかしアイデンティティーは『小説家』の部分にありますので、最終的には全ての経験を小説に集約していきます。

――なるほど。実戦で実力を伸ばして、本業の小説に活かすということですね。では、小山さんが作品のアイデアを出すために行っていることなども合わせてお教えください。

小山:アイディアを出していくために、インプットの量にだけはこだわっています。「イマジネーションとは記憶である」とジェームズ・ジョイスも言っておりまして、記憶野に限界まで創作物を詰め込むようにしています。

また、できるだけ様々なところに出向いて、たくさん恥をかくようにしています。『恥』は一番強烈で人間的な感情なので、心が波打ち脳が踊ります。

大量のインプットと脳の発火が重ねれば、自然と物語は生まれてくるようになります。それに加えて夜寝る前は必ず古典的な神話や民話、さらにシェイクスピアの戯曲をちょっとずつ読むようにしています。

普段のインプットや執筆が作家としての『肉』を鍛えるトレーニングなら、寝る前のこれらのトレーニングは、作家としての『骨』を形成していくための栄養摂取と位置付けております。

――作家としての肉と骨。非常に勉強になります。最後に『渋谷隔絶 東京クロノス』を楽しみに待っていたファンにメッセージをお願いします。

小山:『東京クロノス』というIPは、ゲーム本編発売前から、ファンの方々の熱い応援の声に支えられたコンテンツであると認識しています。
今回はファンの皆様への恩返しのつもりで、ゲーム本編の執筆時以上の熱を込め、閉鎖空間で奔走する神谷才の物語を書き綴りました。

これまでのクロノスファンの皆様にも、これからファンになって下さる方々にも届く作品になったと確信しています。これからも、『渋谷隔絶 東京クロノス』だけでなく『東京クロノス』というIPそのものを愛し続けて下さればこの上ない幸いです。

――ありがとうございました!

取材・文 川野優希

小山恭平さん&LAMさんのWサイン本プレゼントキャンペーン

アニメイトタイムズと東京クロノスのTwitterアカウントをフォローし、以下のツイートをRTしてください。抽選で5名様に著者・小山恭平さんと表紙のイラストを手がけたLAMさんのWサイン本をプレゼントいたします。※当選は東京クロノスのTwitterアカウントからDMにてお知らせいたします。
(キャンペーン期間:2019年7月19日(金)〜8月2日迄)


 

アニメイト渋谷とコラボレーション実施中

『渋谷隔絶 東京クロノス』の刊行を記念し、2019年7月19日(金)からアニメイト渋谷にてコラボキャンペーンを開始しています。

【詳細はこちら】
・書籍販売コーナーでのポスタージャック
・エスカレーター脇新刊棚上などに複製原画や「東京クロノス」のイラスト・画像を展示
・書籍販売コーナーの一角でモニター動画配信
・書籍販売コーナーの音楽ジャック
・朴璐美さんのサイン入りポストカード抽選



著者・小山恭平プロフィール

2014年に『「英雄」解体』で第25回「BOX-AiR新人賞」を受賞。同年に、「秘蹟商会」で第6回小学館ライトノベル大賞審査員賞を受賞し、『飽くなき欲の秘蹟』と改題。作家としてのデビューを飾る。2018年には『我が姫にささぐダーティープレイ』を刊行。

>>小山恭平さんのTwitter

『渋谷隔絶 東京クロノス』あらすじ

「君を守る、たとえこの手を血に汚してでも」
渋谷の異空間に隔離された政治一族・神谷家。そこは投票で選出された人を殺す、残酷な 剪定選挙 が支配する空間だった。冷徹な父を嫌悪する才は愛する咲恵を守るため、選挙に参加するが。完璧な兄、不穏な叔父、奔放な姉貴分、そして最愛の人 あなたは誰を殺しますか? 大人気VRゲーム「東京クロノス」完全新作ストーリー。

商品概要

・作品名:渋谷隔絶 東京クロノス
・著者:小山恭平 (東京クロノス メインライター)
・Illustration:LAM
・発売日:2019年7月19日(金)
・サイズ:文庫版型
・レーベル:講談社タイガ

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