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映画『ジェミニマン』声優・江原正士&山寺宏一インタビュー

映画『ジェミニマン』2人のウィル・スミスを演じる江原正士さん&山寺宏一さんインタビュー|おふたりが感じる吹き替えの魅力、そして“声の仕事”に対する想いとは?

山寺ウィルVS江原ウィルのポスタービジュアル裏話

──山寺さんと江原さんが向かい合っている『ジェミニマン』のポスターもすごく良いですよね。

江原:本当に不思議な感じです。

山寺:あのビジュアル……(笑)江原さんは二枚目なのでいいと思うんです。“昔の”二枚目のようで(笑)

江原:ちょっと! 昔のって(笑)

一同:(笑)

▲ウィル・スミスが写っているポスター

▲ウィル・スミスが写っているポスター

▲山寺ウィルVS江原ウィルのポスター

▲山寺ウィルVS江原ウィルのポスター

山寺:僕はメガネをかけなかったら誰だかわかりませんし、メガネをかけたウィル・スミスなんていない!と思って。日本語の吹替版をフィーチャーして宣伝してくれるのは本当にありがたいですけど、ありがた迷惑だってお伝えしたんです(笑)

一同:(笑)

山寺:あんなビジュアルにして興ざめだろう!と。

江原:山寺は今や国民的アイドルだよ?

山寺:何言っているんですか(笑) 僕、実はあのポスター、メガネですごくこだわったんですよ。メガネなしで映ると誰だか分からなくなりますし、横顔なんてやめてくださいよ、と(笑)映画を観ていただく際に、顔を思い浮かべてほしくないじゃないですか。

江原:そういう意味では、僕たちみんなそうだよ。

山寺:映画を観ているとき、絶対に顔を気にさせないようにする自信はありますが……でもあのビジュアルは、本当にありがたいですけど悪ノリだと思っています。メガネ問題で相当揉めました(笑)

江原:そうだったんだ(笑)

山寺:だって『ジェミニマン』がメガネをかけているってマヌケに見えそうで。

江原:僕は前日の夜に黒いシャツをあわてて量販店で買ってきました(笑)

山寺:江原さん量販店に行かれるんですね!

江原:だって夜の8時近くに開いているのは量販店の路面店に限られるし、黒いシャツを持っていなかったので、必死に探し回りました(笑)

山寺:あの1枚を撮るために苦労なさったんですね。

江原:そしたら「山ちゃん、そのまんまじゃん!」と(笑)

山寺:(笑) でも、絶対にあのポスターを見た人は「2人が演じるのは楽しみですけど、この写真は笑っちゃいます」というネット記事が上がるんじゃないかと思って、あえて気にしないようにしました。

──すごく話題になりましたよ!

山寺:そうなんですか?

江原:えっ、話題になったんですか?

──はい! SNSでも結構拡散されていましたし、「面白い!」「この作品気になる!」と評判でした。

江原:(嬉しそうに)へぇ~!(山寺さんに)面白かったって!

山寺:本当にやめてよ~という感じでしたけど(笑)

江原:このポスターをきっかけに観ていただけるのなら嬉しいです。でも、再びやることになった際には、ポスターの下に“※ギャグです”と入れてもらわないといけませんかね(笑)

一同:(笑)

山寺:僕はイラストにしてもらおうっと。

江原:それはずるい(笑) でも本当に、あのポスターを最初に見たときは笑っちゃって。えーっ!と思いました、照れ隠しですが。

山寺:でも吹替版で注目していただけるので、本当にありがたいことですよね。

江原:うんうん。“変なおじさんたち、頑張っているなぁ~”って注目していただけると(笑)

山寺:そうですね。2人ともウィル・スミスより年齢は上ですから。

江原:昔から言われていることですが、役者年齢は役柄より少し上のほうがいいんです。舞台でも同年齢になるとだいたい若く見えて軽くなっちゃうので。

たとえば、おおざっぱに言えば20代の役なら30歳以上のほうが舞台映えして若さが表現できます。映像の場合は逆に、役柄よりも少し若い人のほうがいい感じがしますが、声の場合は舞台に近いところがあって。

そういう意味では、(山寺さんは)声が若いですし、これからどんどん役がやってくると思います。

山寺:いや、逆に減ってきてますよ?(笑)

江原:これからだよ! 体調によっては喋り口調が変わるだけで、みなさんもそうですが声質はそんなに変わらないんです。

ただ、筋肉ですから使っていないとどんどんかすれていきますが……すみません、余計な話でした(笑)

山寺:いえいえ、今のお話は極意です。

──本当に! 貴重なお話です。

江原:今では裾野がどんどん広がっていますが、僕らの時代も先輩から「君らは人(声優)が増えてかわいそうだね」と言われていたんです。

多少年代は違いますが、僕らはこの業界でいろいろな吹き替えをお互いにやってきた仲間。その頃でさえもそのように言われていましたが、今はもっと(声優人口が)増えています。

山寺:すごいですよね。何倍にもなってる。

江原:ね。そういう世界で僕らはやっているので。良い時代を過ごさせていただきました(笑)

山寺:あはははは(笑)

江原:これからも頑張っていかないといけないですね。

山寺:そうですね。頑張っていかないといけませんね。

江原:そういう意味では、今回の『ジェミニマン』で良い機会に巡り合わせていただいたなと感じています。

吹き替えは諸刃の刃!?

──改めて、吹き替え版だからこその魅力を教えてください。

山寺:字幕を読まなくていいことです。

江原:(拍手)

山寺:(笑) 一時期、“本物の俳優の声を聞かなきゃニュアンスがつかめない”、“映画通こそ字幕”、“吹き替えは高齢の方や子供だけ”と思っている方がいましたが、最近はネットで見られますし、逆に気にしない方が増えてきていると聞きました。

ただ、同じ業界で育ってきているので字幕を否定しているわけではありません。1つ言えるのは、良い吹き替えは楽しいけど、ダメな吹き替えはダメ。

字幕だったら翻訳の仕方によって違うかもしれませんが、オリジナルの声が聴けるので安定感はあると思います。

吹き替えは役者の表情や隅々まで見られるので、すごく映像が見やすい。けれども、ダメな吹き替えはすべてを台無しにしてしまうので、ある意味、諸刃の刃だと思います。

なので、吹き替えだったら何でもいいとは言えません。

──“良い吹き替え”ですか。

山寺:はい。常にそうでありたいと思っていますし、僕もひどい吹き替えをすることがあるかもしれません。それはみなさんに判断していただくしかないと思っています。

江原:ほとんど言ってくださったのですが、字幕と吹き替えは、意思を伝えるということでは同一なんですけど同一と思っていただきたくないところもあります。

意味を伝えるということでは同じものですが、それぞれ違う見方や楽しみ方もありますが、字幕をなぞってしゃべるだけではドラマにならないんです。

吹き替えでは、僕たちの慣れ親しんでいる日本語に置き換えた、起伏のあるニュアンスにとんだ表現、言語感覚を味わっていただけたらと思います。

その表現を、僕たちも間違うこともあれば成功するときもありますが……大先輩の吹き替えを今になって聞くと、心に染み渡るものがあるんです。

山寺:(深くうなずく)

江原:口がセリフに合っていなくても、心や体に自然と染み渡る、そんな吹き替えもあるので、そういう見方、感じ方をしていただけたらと。

今は技術が向上して口パクが合うようになっていますが、その奥にあるものを表現しようと僕らも頑張っているので、ぜひ劇場でご覧いただければ幸いです。

──おふたりから吹き替えに対する熱い気持ちが伝わってくるようです。

江原:やっぱり、どこかに“熱”がないと面白くないんですよね。音楽もドラマも生命力というか、そういうようなものを感じていただけたらと思います。

山寺:江原さんのすごいところは、そのために自分でものすごい工夫をなさるんです。僕はどちらかと言うと、“この人が日本語を喋るとこんな感じかな”と考えますが、江原さんはその先をいつも見据えていて。

どうすればこの表現が日本語でもっと豊かになるのかということを、いつも模索しているんだなと感じます。

江原:嬉しいことをおっしゃってくれましたが、僕がやっていることは(山寺さんも)やっていることです。そのように作るのは当たり前で、彼は“スタンス”がすごい。

ある時期、彼は連日主役級ばかりを担当していて、とてつもないスケジュールだったんです。

山寺:洋画劇場など日本でたくさん洋画が放送されていた時期ですね。

江原:僕らの仕事は、素材をもらって絵を見て現場で合わせないといけません。アナログ時代ですから、何より音が絵と合っていなければならないんです。

彼がすごかったのは、とにかく画と音がばっちり合うこと。これはみんな引いていました。

一同:(笑)

江原:どのくらい練習したのか不思議なくらい、まさに“天性”だな、と。あれだけのスケジュールをこなしながら、本当にすごい。

主役が引っ張らないといけないので、ほかのキャストに迷惑をかけないことが第一。あれだけの仕事量をこなしながら、ピタッと合わせるのはとんでもないことなんです。

その頃は若かったし体力もあったからだと思いますけど、合わせるのは本当に大変で……すみません、つい燃えてきちゃいました(笑)

一同:(笑)

山寺:江原さんの熱量はすごいんです。

江原:2人でたくさん喋る役者の吹き替えを結構担当しましたね。ジム・キャリーとか。大変なセリフ量の役者を僕たちでシェアしていました。セリフが多い役者さんの吹き替えは、落とし込むまでがとても大変で、汗が止まらなくなることもあったよね。

山寺:はい。とにかく寝る時間を計算して、それ以外の時間に練習するという感じでした。でも、これは当然なんです。

先ほど、“熱”が必要と江原さんがおっしゃったように、たとえば、今回の『ジェミニマン』でもウィル・スミスは叫んで走ったり、汗をかいてアクションもやっています。

それを僕たちは空調がきいたスタジオの中で吹き替えをしているわけです。

俳優さんたちは命がけでお芝居をしているわけですから、こちらもスタジオの中で気持ちを高めないといけない。たとえ、しっとりとしたシーンでも俳優さんたちと同じ何かを持っていなくてはいけません。

しかも映画の吹き替えは1日で録るので、いろいろなシーンをどんどんやるわけです(笑)

江原:そうそう(笑)

山寺:なので、自分の内にも何かを持っていないと吹き替えはできないと思います。

江原:「あと1日、2日あれば……!」と思う気持ちもありますが、そんな吹き替えを厳しいスケジュールの中でこなしていかなければなりません。

僕もびっしり詰まったスケジュールで毎日声を張り出していた時期がありましたが、「山寺はいつも大変だろうな」と思ったくらいです(笑)

一同:(笑)

江原:そのくらい、(山寺さんは)目の前にある仕事を1つずつ、さらに早くこなすことができていたんだと思います。仕事をこなすのは本当に大変です。体力だけじゃなくて精神力も必要。結局、彼はアスリートなんですよ。

山寺:でも、そういう時期もあったおかげでいろいろと学びました。今回、女優の菅野美穂さんとご一緒させていただきましたが、声優をやっている人とは違う刺激を受けます。こんな表現もあるんだ、と。

江原:ニュアンスとかね。

山寺:はい。自分でこれでいいと思ったことでも「もっと違うやり方があるかも?」と思ったり。

江原:日々勉強とよく言いますが、本当にその通りなんです。

▲菅野美穂さん演じる潜入捜査官・ダニー

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