きらら作品は第2,第3の青春を経験できる場所――冬アニメ『恋する小惑星』桜井美景役・東山奈央インタビュー【連載第3回】

〈うつむく〉に込められた前向きで『恋アス』ならではの想い

――OPは東山さんが担当している主題歌『歩いていこう！』ですが、最初にOP映像をご覧になったときはいかがでしたか？

東山：とても素敵な映像になっていて感動しました！　アニメのOPは作品の顔にあたる部分だと思うので、責任重大だと思うんです。だからこそ自分の歌がOPとして流れてくると、光栄な気持ちもありつつ、どこか緊張してしまいますが、キャラクターたちが石や星を愛おしそうに見ている姿や、日常が美しく描かれているシーンが、すごくいいなと思って感動しながら観ていました。

実は『歩いていこう！』のデモには2パターンあって、しっとりしたミドルテンポのものと、もうちょっと明るくてポップなおもちゃ箱みたいなアレンジのものがあって、両方に仮歌を入れさせていただきました。

――OPに使用されているミドルテンポの方が採用されたわけですね。

東山：はい。私はてっきりポップな方が採用されるんだろうなと思っていましたが、蓋を開けてみたらミドルの方に決まったので、少し驚いたんですよね。でも、そこで「『恋する小惑星』はこういう方向性を目指していくんだな」と、先ほどお話したことに繋がっていくんです。

夢との向き合い方はみんなそれぞれあって、ポジティブにルンルンで向かう子もいれば、まだ夢に対してぼんやりとした輪郭のまま不安な気持ちを抱えている子もいて。だからどんな人が聴いても、夢という存在に希望を持てるような歌にしたいと思い、優しいボーカルを目指して歌っていきました。

――なるほど。あと既に今の『歩いていこう！』に慣れ親しんでいるためか、別バージョンの曲調はあまり想像がつかないですね……。

東山：ポップな方は本当におもちゃ箱みたいな曲調で「きららっぽい！」と思っていたんですよね。どっちもすごく良かったので、いつかライブやイベントがあったときに、こっちのポップバージョンも披露できたらいいなと思います！

すでに自分のオフィシャルクラブイベントのライブやリリースイベントなどで歌わせていただいていますが、みなさんいろんな表情で聴いてくださっていて。楽しそうに聴いてくださる方もいれば、泣いてくださるかたもいらっしゃるんです。それぞれのかたによって色んな受け止めかたをしてくださっているんだと思いましたし、早くも『歩いていこう！』という曲がみなさんの中で育っているんだと感じています。

――先行上映会で披露されたときも、背景の星空と相まってとても素敵でした。

東山：私もあとで写真を見て、星空がすごく綺麗だなって思いました！　劇場もちょうど暗い空間だったので、ちょうどみんなが星空、宇宙の中にいるような雰囲気でしたよね。

▲第1話先行上映会より

＜うつむいた先にも見上げている先にも＞というフレーズがありますが、“うつむく”ってネガティブなワードに聞こえますが、長い目で人生を見るとうつむくことは決して悪いことだけではないと思っていて。うつむいたから新しい頑張り方を見つけられたり、誰かに対して優しくなれたり、人の弱いところにも共感できるようになったりと、良いこともいっぱいあると思うんです。

それに『恋アス』的に考えれば、うつむくのは地質のこと、見上げるのは天文のことという、両方ともワクワクを見つける行為なんですよね。そんなダブルミーニングも歌詞には込められているので、レコーディングのときも＜うつむいた先にも＞という部分は明るく歌おうと思って臨みました。

また、＜輝く意志を拾い集めて＞というフレーズも、CDがリリースされるまでは、“意志”ではなく“石”だと思われている方もいらっしゃったみたいで。たしかに『恋アス』から入るとそう脳内変換されちゃうよね、と（笑）。そんなダブルミーニングも踏まえて歌詞を書いてくださった川嶋あいさんには感謝しかありません。

――MVはどのような経緯であの内容になったのでしょうか？

東山：MVは私から提案させていただいたところが多かったんです。このゆったりとした曲調に対してどんな映像作品にしていこうか、映像で見たときにも見ごたえのあるものにしようと思っていて。元々ライブではダンスを披露する機会がありましたが、この楽曲で踊るとしたらコンテンポラリーダンスが合うのではと提案したら採用していただきました。

実際にやってみて、陽の光や指先、スカートの翻りで、曲の持っている優しい雰囲気や、その中に意志がちゃんと秘められている感じを、シーンに込めて伝えることができたと思うので、やって良かったと思っています！