マンガ・ラノベ
BLにおける「攻めの事情」【アニメイト編集部BL塾・応用編】

【BLのことさらに知ってみませんか?】令和最前線の「攻めの事情」! 攻めは設定も攻めている!? の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】

時代とともに変化した「攻め」

阿部:BLコンテンツ自体が増えている一方で、「俺様攻め」は減少傾向にあります。対称的に増えている攻めもいる。時代の流れで変化した「〇〇攻め」をいくつかピックアップしたので、一つずつ教えていきますね。

石橋:ありがとうございます!

阿部:まずBLの攻めの源流といっても過言ではない「俺様攻め」から。

阿部:私が読んだことのある作品のキャラクターを例に挙げているので、照らし合わせてもらえたらうれしいです。

石橋:このセリフ(「お前(受け)は俺のモノだ」)、聞いたことある!

僕が初めてちゃんと読んだBLマンガ『ファインダーシリーズ(※3)』の麻見はまさにですよね。あいつ、日常生活にいたらめちゃくちゃですもん(笑)。


※3:ファインダーシリーズ

リブレ出版の『Be x Boy GOLD』にて連載中のやまねあやのさんの漫画作品。フリーカメラマン・高羽秋仁と実業家兼裏社会の実力者・麻見隆一の関係性を描いた作品。まるで接点も共通点もなかった二人が体を重ねる度に心が惹かれ合っていく描写が巧妙に描かれる。


阿部:ははは(笑)。でも、やるときはやる、カッコよさを持っていますよね。

石橋:なるほど、分かりやすい攻めだ。減ってきているんですね。

阿部:そうなんです。一方で、「俺様攻め」と似て非なる「強気攻め」は増加傾向にあります。

石橋:「強気攻め」……?

阿部:「強気攻め」も“男らしさ”はありますが、「俺様攻め」よりもマイルドな性格ですかね。

人を振り回すようなめちゃくちゃな性格ではないけど、相手(受け)にグイグイいける、リードできるタイプのキャラクターです。

石橋:なるほど……? 早速難しくなってきた……!

阿部:ただ“強い”とか“男らしい”だけの攻めではなくなってきているんですよね。

その理由の一つにあるのが、2008~2009年くらいに流行り出した「草食系男子」。ここから世の中的にジェンダーが多様に変化してきました。

石橋:たしかに変わってきました。

阿部:こういったジェンダーの多様化がBL作品のキャラクターに反映されてきたと考えています。

そんな「草食系男子」特有の、やさしい・穏やか・消極的などの要素が反映された攻めの代表例を3つピックアップしました。「ワンコ攻め」「健気攻め」「ヘタレ攻め」です。これらの「攻め」は年々増加している印象があります。

石橋:「ワンコ攻め」「健気攻め」「ヘタレ攻め」……この並びを見ると、武道の型に見えますね……。

阿部:(笑)。

石橋:あと、僕がステレオタイプの人間からだからなんでしょうけど、正直ピンときていないので、ここは詳しくお願いします!

阿部:はい! まずは「ワンコ攻め」から。

阿部:自分の感情を素直に表現していくタイプですね。

石橋:なるほど。相手に対してはあざといのに、ほかの人に対する態度が違うってギャップがある感じ。これは好きな人が多そう。

阿部:「ワンコ攻め」のギャップはたまらんですよ……。

先日、石橋さんに宿題として読んでいただいた『同級生(※4)』の草壁くんは「ワンコ攻め」だと思っています。相手へ自分の好意を隠さずに伝えられるキャラクターですよね。


※4:同級生

茜新社の『OPERA』にて連載されていた中村明日美子さんの漫画作品。男子校に通うバンドマンの草壁光と優等生の佐条利人の甘くて酸っぱい青春ラブストーリー。2016年に劇場アニメ化。現在はふたりのその後を描く『blanc』が『OPERA』で連載中。


石橋:草壁くんはたしかに犬みたいな子でした。『同級生』を履修しておいてよかった……。陽キャっぽい感じですよね。

阿部:そんな感じの「ワンコ攻め」もいます。逆に、寡黙なタイプの「ワンコ攻め」もいるのですが、共通して言えるのは受けに対して忠犬のように従順です。「待て」ができない場合もありますけど……。

続いて、「健気攻め」です。尽くし系。

石橋:これちょっと難しいな……。いい子なんだろうなってことは分かるけど、今まで出会ったことがない。

阿部:たしかに分かりづらいですよね。なので、作品を読んで理解を深めてほしい!

『初恋、カタルシス。(※5)』の唐木田さんは徐々に「健気攻め」に片鱗していきます。好きな子に嫌われないために尽くせる、我慢できる攻めです。


※5:初恋、カタルシス。

 
pixivに投稿されていた鳩川ぬこさんの漫画作品。ノンセクシャルの青年・月島一騎とその元恋人・唐木田 透真との関係性を描いた作品。愛に体の繋がりが必要なのか、考えさせられる感動作。


石橋:なんだか、オカンみたいな人ですかね。

これ、僕の課題点だと思うのですが、ステレオタイプなのかもしれない。攻めといったら“男らしい”“強い”印象がある。だから「どうやって攻めるんだ?」って思ってしまっています。

どういう感じなのか気になるので読んでみます!

阿部:ぜひ!

そして、みっつ目の「ヘタレ攻め」。

石橋:どういう人かはなんとなく分かりました。でも、「ヘタレ攻め」がどうやって受けの人と結ばれるのかが分からない……。

阿部:基本的に「ヘタレ攻め」の相手(受け)は積極的だったり自分の意志が強かったりしますね。

受けの尻に挿入はするけど、受けの尻に敷かれるタイプです。

石橋:騎乗するわけですね。……って、なるほど! 僕、「攻め」「受け」の文字面に騙されていました。

一番最初に阿部さんが質問してくれた基礎問題が抜け落ちていたんです。応用問題を入試で間違えるのと一緒ですね。

攻めは性行為のときに挿入するだけであって、精神的上位ではないのか。

阿部:そうですそうです! 石橋さんがしっくり来ていない理由がようやく分かりました。「攻めなのに、なんで性格が男らしくないの?」というモヤモヤがあったわけですね。

石橋:そうそうそう。九州男児のよくない部分が出ました(個人差があります)。「男は攻めるもの!」みたいなイメージがどうしても強くて……これは僕の考え方なので、読者のみなさんも誤解されないように。

いやぁ、勉強になるな。「ガッテン!」ですよ(笑)。

阿部:よかった!(笑)

石橋:読者のみなさんにもぜひその考えを念頭に置いてもらいつつ、これまでの流れがわからなかった方はもう一度読み直していただきたいです。

となると、「ヘタレ攻め」の作品も読んでみたいですね。

阿部:このように一見穏やかな攻めが増加傾向にありますが、それ以外で年々増えているのが「執着攻め」です。

石橋:「執着攻め」!?

阿部:「この人さえいてくれれば、自分の世界は完成される」と思っているタイプの人です。「ワンコ攻め」や「健気攻め」が過剰になると、「執着攻め」に行きつく気がします。一途なあまり嫉妬深く、束縛してしまう。

『抱かれたい男1位に脅されています。(※6)』の東谷くんは「ワンコ攻め」の皮を被った「執着攻め」だと思っています。

そしてもうひとつ、『カラーレシピ(※7)』の福介くんはすごい……。典型的な「執着攻め」です。あまり説明するとネタバレになってしまうので、とにかく読んでほしい。やばいやつ。


※6:抱かれたい男1位に脅されています。

 
リブレの『MAGAZINE BE×BOY』にて連載中の桜日梯子さんの漫画作品。「抱かれたい男ランキング」1位を5年連続獲得している俳優・西條高人とそのランキングの座を奪った新人俳優・東谷准太がとあるきっかけで体を重ねてしまい、恋愛に発展していくストーリーが描かれる。2018年にはTVアニメ化も行われた。

※7:カラーレシピ

 
新書館にて刊行されたはらださんの漫画作品。腕はいいが愛想が悪いスタイリスト・笑吉の働く美容室に正反対の性格のスタイリスト・笑吉が入社してきた。そこから、笑吉の身の回りで不可解な出来事が起こり始める。


石橋:ちょっと怖いですね……。でも、絵が綺麗。

阿部:前回、宿題で読んでいただいた『ワンルームエンジェル(※8)』の作者・はらだ先生の作品です。全くテイストが異なる作品なので、ふり幅の大きさを感じると思います。「執着攻め」を知りたい人はこれを読め! という感じ。


※8:ワンルームエンジェル

 
祥伝社の『onBLUE』にて連載されていたはらださんの漫画作品。惰性的な日常を送る幸記(30代)と記憶喪失の「天使」は奇妙な同棲生活を始める。アパートのワンルームで繰り広げられるハートフルストーリー。


石橋:ヤンデレ(※9)みたいな人なんですかね?


※9:ヤンデレ
キャラクターの性格を表現する言葉。好きな相手を思うあまり、精神的に病んだ状態の人。異常な愛情表現を行う。


阿部:行き過ぎるとヤンデレになりますね。

石橋:(険しい表情)でも、ヤンデレみたいなキャラクターを好きな人って多いですからね。怖いもの見たさで勉強したいかも。読んでみたい。

阿部:さらに、「執着攻め」と似て非なる「鬼畜攻め」というのもあります。

石橋:とんでもねぇことが書いてありますよっ!

阿部:分かりやすいように極端に書いていますが(笑)、要するにサディスティックな人ですかね。相手の嫌がる姿を見て楽しむような感じです。

石橋:単純な疑問で悪気は一切ないんですけど、「鬼畜攻め」を好きな方はどんなところに魅力を感じているんですか……?

阿部:私は、受けが攻めの手によって徐々に堕ちていく姿や、心に闇を抱えている攻めが受けの影響で人間らしさを取り戻していく姿に「良い!」と思うかもしれません。

石橋:あぁー、何となく分かります。今日初めて「鬼畜攻め」の存在を知ったので、どういう世界なのかちょっと気になりました。

阿部:例で挙げている『In These Words(※10)』は「鬼畜攻め」がかなり分かりやすく描かれていると思うので、ぜひこれを読んでいただければ!


※10:In These Words

 
リブレのビーボーイコミックスデラックスにて刊行されているGuilt|Pleasure(マンガ&イラストの咎井 淳と原作のNarcissusのユニット)の漫画作品。連続殺人犯の篠原憲司とプロファイリングを極秘に要請された精神科医の浅野克哉の関係性を描く官能BL。


石橋:表紙は見たことがあります! 読んでみたくなりました。

阿部:重厚なミステリー作品なので、物語としてもおもしろいですよ。

あと「鬼畜攻め」で有名な『鬼畜眼鏡(※11)』というBLゲームが2007年に発売されました。ゲームが販売された前後の時期(00年代後半~10年代前半)は、「鬼畜攻め」をよく見かけていましたが、現在は「俺様攻め」同様に減少傾向です。

というのも、以前は「俺様 + 鬼畜」のセットが割と多くて。でも、「俺様攻め」自体が減っているので相対的に「鬼畜攻め」も減っているのかなと。

その代わり、「ワンコ + 執着」のセットがかなり増えている。時代性によって攻めキャラクターの内面的な特徴が変化しているように感じますね。


※11:鬼畜眼鏡

 
Sprayから発売されたBLアダルトゲーム。原画をみささぎ楓李さんが、シナリオをTAMAMIさんが担当。気弱な性格の佐伯克哉がメガネをかけると鬼畜な攻めに変身するという異色の「眼鏡着脱変身系アドベンチャーゲーム」。


石橋:先程紹介してもらった『恋人たちの森』のような源流から比べると、今の作品は全然違いますもんね。この変化の仕方、おもしろいな。

阿部:一方で、外見的な部分で変わらずに人気のある攻めもいます。それが「黒髪攻め」です。

「黒髪=男性的」という印象は、未だに根付いているのかもしれません。リアルの男性も髪を染めている人より黒髪の人が多いですし。シンボルマーク的な感覚で使われてきているのかなと。

石橋:アイコンってことですよね。BLが好きな既存読者に分かりやすくしている側面もあるのかも。

阿部:あると思います。「黒髪攻め」の相手(受け)となるキャラクターは色素の薄い髪色で描かれることが多いんです。攻め、受けをキャラクターとして分かりやすく表現している部分はありそう。

全体数として「黒髪攻め」は多いものの、「ワンコ攻め」「ヘタレ攻め」といった草食系の攻めは色素の薄い髪色が多い。内面的な部分を外見に表現している点はあると思います。

石橋:阿部さんは「黒髪メガネ受け」が好きじゃないですか。「黒髪攻め」はどうなんですか?

阿部:うーーーん、読みますけど……受けが「黒髪」または「メガネ」だとありがたいですね(笑)。

石橋:あはは(笑)。阿部さんの中では「黒髪受け」の方が重要な要素なんですね。

阿部:「黒髪受け」の持つ内面が好きなんだと思います。硬派や真面目なタイプが多いんですよ! 好き!! 語り出すと長くなりそうなので、ここらへんで(笑)。

石橋:まじで好きなんですね(笑)。

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