紆余曲折を経てたどり着いた新境地――「ヤサシイセカイ」は新たなチャレンジが詰まった豊かな作品に・田所あずささんインタビュー

声優・アーティストの田所あずささんが約1年ぶりにニューシングルをリリースする。

タイトル曲「ヤサシイセカイ」は、自身が主人公リョウマ役で出演するTVアニメ『神たちに拾われた男』のオープニングテーマ。作品の世界観に寄り添った、やさしく温かなバラードとなった。今作には、さらにカップリング曲「New-me」、「Visual Vampire」（アーティスト盤のみ）を収録。

どちらも “タドコロック”のイメージとはまた違った、表情豊かな歌声を楽しむことができる曲で、彼女の新たな決意も息づいている。さまざまな変化があったという1年を振り返りながら、シングルに込めた想いを紐解いていった。

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今作から、ほぼセルフプロデュースに

――アニメイトタイムズでは前回のシングル『RIVALS』（TVアニメ『神田川JET GIRLS』ED主題歌）ぶりの取材となります。約1年経ちますが、田所さんにとってどんな時間でしたか。

田所：もう1年くらい経つんですね。それにまずビックリしています。すごく時間が経ってるように感じます。今は信念を持ち、自分が軸となって（音楽活動を）やっていこうという覚悟がつきました。

――何かキッカケがあったのでしょうか。

田所：実は私をずっとプロデュースしてくださっていた方が会社を辞めてしまって。それもあって“田所まわり”がグラついてしまった時期があったんです。ここは私が頑張るべきだし、私が先陣を切るしかないって。最初は不安だったんですけど、今は自分のなかで腑に落ちてきたというか……。

――ではチーム田所が再度作られていったんでしょうか？

田所：そうですね。でもほぼセルフプロデュースに近いです。

――改めてそういう体制になったときに、きっと音楽の在り方、これからやりたいことなどと向かい合ったと思うんですが……

田所：そうですね。そのときに改めて自分を見つめなおしました。いろいろな楽曲を歌ってきて、いろいろな人たちがついてきてくれるようになって、じゃあこの先私は何をやっていくべきなんだろうか。私の声が活かせるような楽曲ってなんなんだろう？　ってたくさん考えて。

自分の声を分析して、透明感がある、爽やかな感じがする、ウェットな感じがする……そういったことを書き出して、今までだったら恥ずかしくてできなかったけど、私の良さを分かってもらわなきゃ！　と思って、周りの方にアプローチしました。

――前回取材させていただいたときに、今後の展望として「私は“こういうことを思っている人間なんです”ってちゃんと言葉にして、伝えていきたいなと思っています」とおっしゃっていましたが、奇しくもその直後に。

田所：はい（笑）。今までもプロデューサーさんに自分の考えをぶつけることはあったんですが、こうした状況になるのは意外ではありました。

――今の立場になってみていろいろと思われることはあると思うんですが、そのあたりはいかがですか？

田所：いろいろな思いがありますね。責任もあるし、孤独も感じるし、私はこう！　って信念を持ってやっているけど否定されることもあるし、それで誰かが離れていってしまうんじゃないか……って不安もあるし。

なんていうんだろな…… “やらせてもらっている立場”のようなものが染みついている分、発言することに対して恐怖もあるんです。そこに対する気持ちは3曲目（「Visual Vampire」）に入っています。

――こんな言い方も失礼かもしれませんが、紆余曲折を経て強くなったんですね。前回の取材のときは、雑談で「どうやったら自信ってつくんですかねえ」って話をお互いにしてて（笑）。

田所：あーっ！　そうでしたね！（笑）　いろいろなことがあって、確かに変わったのかもしれません。

――田所さんの音楽はロックの印象がありますが、今作は豊かな表情や声が楽しめるシングルになっていると思ったんです。それは、今おっしゃってた田所さんの想いとリンクされてるんでしょうか。

田所：そうですね。ロックは大好きだし、私の意思でもあるんです。その音楽性が好きでついてきてくれる方もいて、ライブで歌っていてもすごく楽しくて。

でも、セルフプロデュースとなったときに、ロックだけじゃなくて、声を活かすような曲も歌ってみたいなって思って。ロックで今まで駆け抜けてきたからこそ、一回立ち止まったときにそう思えたんですよね。

もちろん現段階の私の想いだからこれから変わっていく可能性もありますけど。