漫画『とつくにの少女』ながべ先生＆担当編集・新福氏対談インタビュー｜単行本第1巻表紙デザインの苦労話など、今だからこそ話せる内容が満載

『とつくにの少女』の良いところが詰まっているシーン

──第8巻初回限定版にはWIT STUDIO制作による短編アートアニメも付属していますが、こちらの制作段階でながべ先生から何かオーダーされたことはありますか？

ながべ：僕からは何も言っていないですね。アニメにはアニメのプロの方がいらっしゃって、僕は漫画のプロではありますが、アニメに関しては素人なので、そこはプロの方にお任せしようと思ってました。

新福：短編アートアニメはお二人のディレクターにご担当いただいたのですが、お任せする前段階として作品の根幹に関するお話を重ね、意思の疎通を図ったうえで制作に入っていただいたので、こちらのイメージと違ったということはありませんでした。むしろ「そんなにこの作品のことが好きなのか！」というくらいで（笑）。

ながべ：特にビジュアルに関しては僕の想像していた以上のものを描いていただき、安心してお任せすることができました。

　

──アニメの中で特にお気に入りのシーンを教えてください。

ながべ：TwitterでもGIFアニメを投稿させていただいたのですが、せんせとシーヴァが料理を作っているシーンの動きがとても自然で魅力的に描かれていて、「いいなあ……」と思いながら何度も見ています。

新福：あのシーンには『とつくにの少女』の良いところが詰まっていますよね。僕は最後の舟を漕ぎだす一連のシークエンス美しくて好きですね。漫画はイラストでカラーを描くことはできても、展開として色を置くことは難しいので、そこを表現できるのは映像のメリットだなと思って見ていました。

皆様にご納得いただけるようなラストを

──2020年9月には連載5周年を迎えられましたが、そこを経て見えてきた新たな目標などはありますか？

ながべ：これまでは『とつくにの少女』のように絵に重きを置いた作品を描くことがなかったのですが、ありがたいことに5年間続けさせていただいたことで、読者の皆様が思った以上に絵を見てくださっているという実感があって。今後もその“絵が持つ魅力”を大切にしていきたいというのと、そのうえでシナリオの面白さや感情移入できるキャラクターといった“漫画的要素”をどれだけ入れられるかということを考えていきたいと思っています。

新福：僕はながべ先生に健やかに作品を描いていただくことを第一に考えていて、絵の部分に関して編集者ができることは少ないのですが、ストーリー作りに関してはお役に立てるのかなと思っていますが、いかがでしょうか？

ながべ：ありがとうございます。頼りにしております（笑）。

新福：そんな頼りにされる人間であることを目標にしつつ（笑）、『とつくにの少女』に関しては今の流れを崩すことなく読者の皆様にお話を届けられるようにしたいなと思っています。

──そして2021年4月9日にはいよいよ最終巻が発売となりますね。

ながべ：ここまできたからには「やりきろう！」という感じです。

新福：連載当初はどれくらいの巻数になると思っていました？

ながべ：僕としては4～5巻くらい出すことができたら嬉しいなと思っていたので、その倍以上の巻数を出させていただくことになるとは当時想像もしていなかったですね。だからこそ頑張りたいという思いと、読者の方に作品の魅力を最大限伝えられるよう、残ったわずかな時間を有意義に使いたいなと思っています。

──最後にながべ先生から読者の皆様へメッセージをお願いします。

ながべ：『とつくにの少女』をお読みいただきありがとうございます。しんどい展開が続くので、心が折れている方もたくさんいらっしゃるのではないかと思いますが、皆様にご納得いただけるようなラストを用意しておりますので、最後までお付き合いいただければと思います。よろしくお願いいたします。

（インタビュー・文：吉野庫之介）

「とつくにの少女」原作情報

単行本1～10巻発売中
最終11巻　2021年4月9日（金）発売

長編アニメーション「とつくにの少女」作品概要

あらすじ

昔々、遠く遥けき地に二つの国ありて──。 世界は「内」と「外」に分断、呪いをもたらす異形が棲まう地は“外つ国”と呼ばれ、人々から恐れられていた。

ある日、人住まう地“内つ国”との国境で一体の異形が打ち捨てられた死体の中から一人の少女を拾う。 少女は自らを「シーヴァ」と名乗り、自身を拾った異形を「せんせ」と慕った。

相容れぬ者同士が出会ったのち紡がれる、密やかな調べ――。 これは朝と夜、その宵に佇む、ふたりの為の物語。

スタッフ

原作:ながべ「とつくにの少女」(ブレイドコミックス刊)
監督/脚本/キャラクターデザイン:久保雄太郎 / 米谷聡美
美術監督:竹田悠介(Bamboo)
撮影監督:横井武尊(WIT STUDIO)
編集：齋藤朱里(三嶋編集室)
音楽:Schroeder-Headz
音楽制作:フライングドッグ
音響監督:はたしょう二
音響効果:出雲範子
音響制作:サウンドチーム・ドンファン
アニメーション制作:WIT STUDIO
製作:とつくにの少女 製作委員会

キャスト

せんせ:福山 潤 / シーヴァ:高橋 李依

公式 Twitter:@totsukunishoujo
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