新型と旧型のロボット対決は“あの作品”があったから!?　Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』入江泰浩監督インタビュー│監督が考える、ロボットと人間の共存する未来は“ギブアンドテイク”が必要

現在、Netflixにて好評配信中のNetflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』。

本作は、アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』を手掛けた入江泰浩氏を監督に迎え、原案・プロデューサーはジャスティン・リーチ氏、キャラクターデザインは川元利浩氏など豪華スタッフ陣が集結。2体のロボットの元で育った少女サラが世界に立ち向かう、新たなSFファンタジーの物語が紡がれます。

主人公のサラを演じるのは、本作がアニメ初主演となる高野麻里佳さん。サラを育てる2体のロボットは、父親的存在のE92を伊藤健太郎さん、母親のような優しさがあるA37を氷上恭子さんが担当。ロボットだけが暮らす世界の指導者ロボット・ゼロを山寺宏一さんが好演しています。

今回は、そんな注目の作品を手掛けた入江監督にインタビュー。すでに配信が始まっているということで、作品の誕生秘話から具体的なシーン、演出などより深くお話をうかがいました。

※本インタビューには内容のネタバレがありますので、ご注意ください。

ストーリー

何千年もの先の未来に、ゼロという指導者ロボットが率いるロボットだけが暮らす世界「エデン3」があった。農業用ロボットとして暮らしていたE92とA37はある日、サラという名の赤ちゃんが入ったカプセルを偶然発見し眠りから目覚めさせてしまう。人間が悪者であるとされているこの世界では、サラが危険だと考えた2体は、エデンの外へと彼女を運び出し、安全な場所で密かに育てていく。2体の元ですくすくと成長したサラは、ある日遠くから自分を呼ぶ声に気づく。それはあのロボットしかいないはずの「エデン3」からだった─。

ロボットの歴史という土台を作って物語を構築していく、そのアプローチが面白い

――インタビューするにあたり『エデン』を拝見したのですが、1本の映画を見ているようで引き込まれました。完全新作である『エデン』は、どのような着想から制作を進めていったのでしょうか？

入江泰浩監督（以下、入江）：完全新作とはなっていますが、ジャスティン・リーチの書いた膨大なテキストが根幹になっています。なので、ゼロから作り上げたのではなく、ジャスティンが書き起こした世界やロボットたちを土台として、主人公のサラやキャラクターのイメージを膨らませていきました。

――ジャスティンさんのテキストを最初に見た時は、率直にどう感じましたか？

入江：とても興味深い内容だなと思いました。どのようにしてロボットだけの世界「エデン3」が作られていったのか――それを歴史という形で土台を作って物語を構築していく。自分はあまりそういう作り方をしたことがなかったので、アプローチの仕方が面白いなと。

そして、ロボットだけの世界に1人の小さな人間の女の子が放り込まれたら、どういうリアクションをして、どう育っていくのか。こういうジャンルは自分にとって初めてでしたので、（同じジャンルの）ほかの作品とは違うアプローチ、違う作品として確立させるにはどうしたらいいんだろうとも考えました。でも、初めてのことができるのは、とても興味を惹かれることでしたね。

――内容についてはいかがですか？

入江：内容に関しては、もともと“ロボットの歴史”がメインになっていて、その大きな土台の中でサラをより活発に活躍させたいと思いました。テキストはすごく膨大な量でしたが、その中で（サラを）自由に活躍させられる懐の深さを感じたんです。

――ちなみに、作品のジャンルは広義のSFに属すると思いますが、入江監督は小さい頃からSFが好きだったとか興味があったりはしたのでしょうか？

入江：SFに関してはかなり素人というか、ジュール・ヴェルヌや今日泊亜蘭の『光の塔』を読んだぐらいです。『光の塔』は大好きで、小さい頃に読んだだけでなく大きくなってから文庫を買ってまた読みましたが、それ以外のメジャーなSF小説は読んでいなくて。

『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』といったスペースオペラに属する作品の方が好きでしたね。なので、ハードなSFに触れた経験はあまりなかった、というのが正直なところです。

――人類が滅んだ後を描くような、いわゆるポスト・アポカリプス系のSF作品に馴染みがあったわけではないのですね。

入江：そうですね。ピクサーやブルースカイ・スタジオの作品もそうですけど、SF作品の設定部分よりも、その中でキャラクターがどういうやり取りをするのか。そのコミュニケーションの方に興味が惹かれるタイプでした。