音楽
『小林さんちのメイドラゴンS』OPに込めた切実な想い fhánaインタビュー

10周年を迎えたfhánaが贈る愛のうた──『小林さんちのメイドラゴンS』の幕開けをにぎやかに彩る「愛のシュプリーム!」について4人に訊く

 

「うれしいけど、うれしいだけじゃない思いがあります」

──待望の『小林さんちのメイドラゴンS』(以下『メイドラゴンS』)が始まります。今回の主題歌「愛のシュプリーム!」に関しては、どのように作られていったんでしょうか。

佐藤:『メイドラゴンS』に関してはいろいろありすぎて、ようやく日の目を見るなぁという感じがあります。実はこの曲は2年前に作ったもので。

fhánaはこれまで配信含めていくつかシングルを出していますが、そのうちのひとつ、劇場版『SHIROBAKO』の主題歌「星をあつめて」よりも前に作っていたんです。

 

 
2019年の春にはテレビスポットを作っていて、年内に完パケの予定だったんですが、そこからいろいろなことが起こって……。

だからこうやって無事完成して万感の思いがあります。アニメを見させてもらったんですが、素晴らしいです。素晴らしいがゆえに、こみ上げるものがあります。

『メイドラゴン』はハッピーな雰囲気のドタバタコメディですけど、その一方でドラゴンと人間という違う種族の人たちの断絶も描いていて。そこには、今こうして人と人との距離が出来てしまっている時代にも重なるテーマが通底しているんですよね。

だから、このタイミングで放送されて、このタイミングでこの曲が世に出るというのは、何か意味があるのかもしれないなとは思っています。

towana:仮歌を録ったとき、監督からオッケーをもらっていたんです。その後、昨年の4月にレコーディングはしたんですが、今度はコロナで先がどうなるか分からないという状態になって。

京都アニメーションさんとしても『小林さんちのメイドラゴンS』はすごく特別な作品だと思うんですが、私にとっても、やっとこの曲を出せるんだという気持ちですね。

うれしいけど、うれしいという言葉では済まないような、いろいろな感情があります。

──この曲も底抜けに “明るい”“楽しい”曲なんですけど、それだけではない感情を揺さぶられるものになっていて。今お話を聞いていてもこみあげてくるものがあります。

towana:この曲を聴くといろんなことを思い出さずにはいられないんですよね。でもそういう前提を共有していない人からも「曲がよくて泣きそうになる」という感想をいただけているので、それだけじゃない曲のパワー、詞のパワーがあるのかなとも思います。

 

 
yuxuki:良い曲ですよね。作ってから寝かす期間が長かったこともあって、なんだかんだ今いちばん聴いてて、改めて「良い曲ができたな」って思ってます。この1年いろいろありましたけど、このタイミングで曲を出せるのも何かの縁かなと。リスナーの人がめちゃくちゃ待ってくれていると思うので、その人たちが喜んでくれたらいいなって。

──この曲が日の目を浴びることは、fhánaにとっても、fhána以外の皆さんにもとって大きな出来事だと思います。当時はどのような思いで作られたんでしょうか。

佐藤:『メイドラゴン』はfhánaにとっても特別な作品で。2期のオファーをいただいたときも純粋にうれしいなと思っていましたが「じゃあ、次はどういう曲を作ろう」というプレッシャーのようなものはありました。

実は最初に作った曲はボツになっているんです。(今回のような)ラップではなく、普通のポップスで、今思えば、守りに入っていたのかなと。「青空のラプソディ」で新しいチャレンジをしていたから、今回も挑戦しないとなと思っていて「そうだ、ラップだ!」って。

前年のツアーで「今夜はブギー・バック」のカバーをしていて、そこでtowanaとkevinがラップしたり、「僕を見つけて」のカップリング「Unplugged」でkevinがメインでラップをしたりと、徐々にkevinをラッパー化する計画が進行してたんです(笑)。そういうタイミングだったので、「じゃあラップいくか!」って新たな曲を提出したら「これでいきましょう!」と。

──当時のレコーディングのことで覚えてらっしゃることはありますか?

towana:ラップだったり、掛け合いだったりがあるので、10時間くらい掛かってしまいました。レコーディングは初めて緊急事態宣言が出た翌日だったんです。今よりももっと「この先どうなっちゃうんだろう」といった空気があったので、不安な気持ちもある中での収録でした。

しかもそこからライブができなくなってしまったり、無くなってしまったりで「歌えなくなってしまったらどうしよう」という不安があって。曲がリリースされるまでの間に、ふさいでいる時期も長くありました。

佐藤:その段階では「早ければ来年の春。夏にはアニメを放送できると思う」といった話を聞いていたんです。コロナによってさらに遅れることはあるかなとは思っていましたけれど、絶対に世に出るとは思っていたので、そこは信じて待とうと。

さっきtowanaがふさぎ込んでたって言っていましたけど、逆に僕は頭をフル回転させていて、テンションが上がっていたんです。いろいろな職業の人たちの生活が変わってしまいましたけど、「じゃあ今できることは何だろう」って。

オンラインライブをやろうとなったときもオンラインならではの面白さを追及したり、集まることが難しいのであれば宅録で4人だけで曲を作って配信リリースしたり。

最近は有観客ライブが少しずつ増えてきていますが、まだ声は出せないから、ファンのみんなからコーラスを募集して、それを合唱のようにした荘厳な曲を作ったりもして。ただ4月は緊急事態宣言中でしたし、世の中が早く元に戻らないかなって思っていました。

kevin:自分の歌に関して言うと、ちょっと気恥ずかしいところもあるんですよね。オンラインライブをするたびに、他の曲でラップをしていたので、今だったらもうちょっとこうするなって表現もあります。だから「初々しいな」じゃないですけど、聴いていてむず痒いところもあって、青い果実じゃないですけど──。

──今日は料理人のような表現が(笑)。

kevin:なんでも例えるヤツになってますね(笑)。今聴くと、ちょっとそういうムズムズした感じがあるんですが、それが嫌だとかでは決してなくて。1年でも変わるんだなとちょっと思いました。

──歌詞はおなじみの林 英樹さんが手掛けられています。何かリクエストなどはされたのでしょうか。

佐藤:もう林くんとは長いので、リクエストという感じではなくて。僕よく林くんとの関係性をマンガ編集者と漫画家に例えるんですけど、相談しながら調整していって、二人三脚で作ってる感じなんです。

林くんとは感覚が合うし、共通の価値観のようなものを持ってるからタッグが続いているんだろうなと思ってます。

──「青空のラプソティ」同様、歌詞の中に<花>が出てきます。『メイドラゴン』の13話「終焉帝、来る!(気がつけば最終回です)」の中にも花言葉が出てきましたが、花というのはひとつのキーワードでもあったのでしょうか。

佐藤:そうかもしれない。「青空のラプソティ」に<花束>という言葉が出てきて以降、結構使っていて「今回もきましたね」と。「愛のシュプリーム!」って愛と祈りの曲で、花ってその象徴だと思っているんです。1番の歌詞は2019年の時点に作ったもので。

『メイドラゴン』で描いている、愛と孤独、文化と文化の断絶──それに加えて、刹那というか。小林さんは人間で、トールはドラゴンで、小林さんはトールよりも圧倒的に早く死んでしまう。

トールの人生からすれば小林さんといられる時間って本当に一瞬なんだけど、その一瞬が永遠なんだよという、“瞬間と永遠”のようなテーマが「青空のラプソティ」にも入っていて、それが1番にも入っています。

その後、2020年にフルサイズを作った感じなんですよね。だから後半部分は、いろいろなことを踏まえての作曲であり、歌詞になっていて。

──後半に“讃美歌”という言葉が出てきますが、特に後半は、愛や祈りを浴びるような、不思議な多幸感に包まれます。

佐藤:いろいろなことを踏まえて、この表現に辿り着いたんだろうなと思っています。愛と祈りについての曲なんですけど、愛と言うのも、恋愛だけの愛だけじゃなくて、それも含みながらの、もっと広くて、深い意味での愛というか。でも楽しい曲でもある。それが逆に泣けるなぁって。作った人ではあるけれど(笑)。

──オープニングの映像に乗ったら、よりハッピーな雰囲気になるんだろうなって。オフィシャルTikTokアカウントにアップされた映像も、MVも、すごく楽しそうな雰囲気でした。

kevin:楽し気ですよね(笑)。

 

「愛のシュプリーム!」との鮮やかな対比

──カップリング「閃光のあとに」は夏の終わりの匂いが漂う、センチメンタルな1曲。作曲・編曲をyuxukiさんが手掛けられていますが、どのようなコンセプトで作られたんでしょうか。

yuxuki:歌詞的にはまさにその通りですね。閃光って要は花火のことで、花火大会が終わったあとの気持ちを表現するような曲にしたいなと思って、そういうテーマで歌詞を(林さんに)お願いしたんです。

「愛のシュプリーム!」が明るい曲なので、その対比も見せられたらいいなと思っていました。あと佐藤さんからの「シンセやカッティングを多用した、シンプルでダンサブルなロックを作ってほしい」といったオーダーがあって。

今は世界的にそういう曲がめちゃくちゃ多いんですよね。僕自身、そういう曲をよく聴いていたので、チャレンジしてみようかなと。今っぽいカッコよさを入れつつ、夏の終わりのような空気感を閉じ込めたいなと思って、少し涼し気なイメージで作っていきました。

──全体的にサウンドがオシャレですよね。歩くような、それでいて短いイントロも印象的です。

yuxuki:オシャレですよね(笑)。イントロの長さは狙って作っていて。歌を始まるまでなるべく早くして、細かく調整していきました。この曲は自分の家でシンセのプログラムからギターの録音までやっているんです。だから音選びから配置まで緻密に作りこんでいます。

──<世界の謎が解かれた様 注がれた真水を飲み干して 光と音が溶け合ったよ>という言葉からも伝わる通り、小説のような雰囲気もあります。

yuxuki:良いですよね。少し文学っぽい感じがいいなと思っていて。語りすぎないけど、言葉にパワーのある歌詞で。物語のような歌詞になってるのかなという感じがします。

 

 

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