『メガトン級ムサシ』レベルファイブ代表取締役社長/CEO・日野晃博さんインタビュー【第2弾】|シーズン1は2への序章にすぎない……! あの衝撃のシーンが生まれた裏話まで飛び出す!?
ものを作るということは背負うということ
ーー日野さんは総監督であり原案・シナリオなど手掛けていますが、これまでのクロスメディアプロジェクトとは違う役割はありましたか?
日野:自分でやる事が今までよりも多いっていうくらいですかね。
企画・キャラクター設定など世界観構築は全作やっているんですが、アニメを作る時に一話だけガッツリやって後は全体的なプロットを渡して別の構成の方にお願いすることも多いんです。社長業もあって全力でやるのが難しい部分はあります。中核となる部分を自分で作って、バトンを渡すというパターンは多いですね。
ただ『妖怪ウォッチ』以降から、レベルファイブの作品がすごく多くなっていて。いろいろ納得しきれてない部分があったとしてもプロジェクトを進めなくてはいけない。それに対してお客さんと同じ不満を持つ感覚があるところも正直ありました。
やっぱり商業作品って限られた時間の中で作るのが普通なので、当たり前のことなんです。
でも、ロボットものってすごく熱い人達が多い界隈なのは百も承知なので、『ガンダム』シリーズ以降で新しいロボットものを作るには、相当な覚悟を決めてやらなければなと思っていました。
なので、しっかり自分の中で納得の行く作品を作ろうと思いました。誰かに作ってもらう部分があってそこがもし納得できなくて、「そこは俺がやってないし」って言い訳しても本当にしょうがないので。
ブレそうなところは自分で引き受けようと。少なくとも今シーズンはちゃんとやりたいと思って、いつもなら人に任せているところも引き受けました。それが良いことなのか、悪いことなのかは一旦置いておくんですが、そういう作り方をしました。
ーー現に今もシナリオ書いていたとおっしゃってましたし。
日野:もちろんシナリオも書きますし、デザインに関することやロボット・街の構造、SFの仕組みみたいなものまで、すごくこだわってデザイナーに言ってます。
次シーズンに「ソロン」という街が出てくるんですが、その場所の構造図は何十回と書き直してもらってやり取りしていました。
お話をつくる事はもちろん個人的にこだわりをもって作っていますし、周りとセッションしながら作る部分でも相当「うるさいやつ」になると思います(笑)。
ただ、一回こういう作り方をしないと、自分が言い訳できない作品を世に出せないのかなと思います。継続することは難しいかも知れませんが、一度はこういう作り方をしたいと。
ーー日野さんの中でもチャレンジングな作品になっているんですね?
日野:そうですね。結果的にチャレンジのようになっています。
ものを作るっていうのは、過去作や色んなものを背負うことなんですよね。『妖怪ウォッチ』がどうだった、『イナズマイレブン』がどうだった、というのも、僕が代表的なクリエイターのポジションなので背負うんですよ。作品の方向性も、良いことも悪いことも背負うんです。
なので新しいものを作るときって、自分がトップのクリエイティブを司っている者として世の中に出すならば、その責任を果たすところまではやらないといけないよな、と思い始めて。でも、大変ですね。
ーーそうだと思います。
日野:会社の業務が20時くらいに終わったとしても、3時位まではシナリオのライティングをしたり、そのくらいハードな状態なんですけど、ストレスという意味では今までで一番軽いですね。
作業量に追われることよりも、納得しきれていないものを背負うほうが大変なんでしょうね。
ーーなるほど。作る楽しさも大きいのではないでしょうか?
日野:楽しいですね。作った気になってるのではなく、本質的に作品を作っているという感じかな。自分が判断を間違ったら、それが反映されてしまう怖さ、またその選択を面白いものにできれば作品も面白くなるというダイレクトに作っている感覚を今までで一番味わえてます。
ーーレベルファイブ的にも歴史的な作品になりそうな予感もします。
日野:そうですね。売上的にはこれからなので、今年いろんな面白い施策で大ブレイクできるような仕掛けをするつもりです。
ロボットものに関しては『ダンボール戦機』もヒットはしたんですが、『ムサシ』も代表的なものになってほしいなと思います。
ーー『メガトン級ムサシ』では、2Dの日常パートと、3Dの戦闘パートで描き方を変えていますが、このあたりの制作はどのように進めたのでしょうか?
日野:『ダンボール戦機』でも3Dでロボットを描く事はしていたので抵抗はありません。それでいて、2Dでも良いところはあるし、手描きでロボットを生み出す『ガンダム』シリーズの機微ももちろん理解しています。
その上でその選択って贅沢なんですよ。かなり開発費に余裕がないとロボットを手描きで生み出す事はできないんです。なので我々は自分たちの身の丈にあった選択をしています。
でも、そんな中でCGでやるって決めたからには、最大限にそれを生かした面白いものを目指しています。『メガトン級ムサシ』ではメガトンパンチの迫力とか鋼鉄の質感とか、CGだからこそできるメタル感みたいなものを表現しているので、選択は間違っていないと思います。CGであることがマイナスにはなっていないかなと。
ーー『メガトン級ムサシ』はゲームと同時展開していることも大きいかと思います。
日野:ゲームでもアニメでも「らしさ」を持っていますよね。うちの作品はどれもそうなんですが、ゲームとアニメに違いが出ないようにしているつもりです。
BGMも共用していますし、効果音や作品の雰囲気を作り出す部分も合わせています。ゲームは自分で操作して敵をガンガン倒していくのでアニメとはちょっと違うんですけど、アニメの中で流れている空気感っていうのは他の作品と同じように揃えています。
ーーなるほど。他にも気になっていたのですが、声優のキャスティングです。このあたりはどのように進めましたか?
日野:僕がどういう演技をする人なのか知っている人はリピーター的に採用してしまいますね。
ーー梶裕貴さんや竹達彩奈さんなどはそうですね。
日野:福山潤さんとかもそうですね。個人的にその演技だったり、その方のテイストが好きなんでしょうね。新しく出会う声優さんたちも入れていって、新しいものができていく感じです。
僕、実は声優さんに物凄く詳しいわけではないんです。なので新しい人の起用は詳しいスタッフの意見を聞いて、そこから案を出してもらい、声を聞いてオファーさせてもらったりしています。
ーー音響監督さんに紹介してもらう事はないんですか?
日野:『メガトン級ムサシ』ではあまりないですね。こちらで決めています。
もちろんおまかせするキャラもいたりするんですが、できるだけ主要なキャラはこちらで案を出すようにしてます。
ーーレベルファイブの作品は、豪華なキャストさんが毎回登場するのでなぜだろうと。誰でも主役ができる人ばかりだと思っていました。
日野:もちろんお金の問題もありますが、声優さんはお忙しい方ばかりなので、スケジュールが押さえられない事も多いんです。でも、うちは自社スタジオがあって声優さんの都合に合わせて柔軟にスケジュールを調整することができるので、忙しい合間に収録させてもらう事もできたりするんですよね。
普通ならスタジオと声優さんのスケジュールを調整しなければいけないので、有名な方が多くなればなるほどその調整が難しくなっていくんです。うちはスタジオのおかげで比較的楽にできるので、実現できている事だと思います。
なのでその強みを活かして、難しいキャスティングでもどうにかしたりしてますね。