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アニメ『転生したら剣でした』リレーインタビュー第3回:高梨康治(Team-MAX)

『転剣』ならではの新たな挑戦――ブルガリアン・ヴォイス│アニメ『転生したら剣でした』リレーインタビュー第3回:音楽・高梨康治さん(Team-MAX)

2022年10月より放送がスタートしたTVアニメ『転生したら剣でした』。アニメイトタイムズでは、本作を盛り上げるべくリレー連載をお届けしています。

今回は、音楽を担当する高梨康治さんが登場。ここまで師匠とフランの激しいバトルが幾度となく描かれてきましたが、バトルを彩る重厚かつ壮麗な楽曲の数々はいかにして生まれたのでしょうか。意外な伝統音楽を採用したエピソードやバトル曲以外の楽曲についても制作裏話をたっぷり語っていただきました。

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メインテーマの歌詞はすべて“造語”で書きました

――最初に原作や資料をご覧になったときの印象はいかがでしたか?

高梨康治さん(以下、高梨):フランちゃん、かわいい! でした(笑)。

――ははは(笑)。

高梨:最初にコミカライズを拝見したんですが、本当にフランちゃんがかわいかったですし、ストーリーも面白かったので最後まで一気に読んでしまいました。特に、師匠の心情がよくわかったんです。

――師匠の心情、ですか?

高梨:インタビューで言うのも恥ずかしいんですが、自分も父親なので子どもの成長を見守る心情がよくわかるんです。奴隷の状態から始まり、冒険者として強くなって、仲間ができて、どんどん成長していきますよね? その姿に「こんなに立派になって……」と、どこか父性をくすぐられるところがあって。師匠にも感情移入して読ませていただきました。

作品のイメージを膨らませる“音楽の演出”にも注目

――音楽については、石平信司監督や音響監督のはたしょう二さんからどのようなオーダーがあったのでしょうか?

高梨:石平監督、はたさんとは『FAIRY TAIL』(’09)で初めてご一緒してから結構経つんですが、毎回、監督がお題をくださるんです。今回もまた「今まで聴いたことのないような音楽にしてほしい」とのことでした。

――難しそうなオーダーですね!

高梨:いろいろな作品でご一緒しているので手の内はバレているんですが、こうしてまた新しいものを作ってほしいと言われるのは、クリエイターとして非常にありがたいことです。今回はどういうものにしようかと気合いを入れて、原作を読みながらイメージを固めていきました。

こういったファンタジー作品によく合う音楽といえば、ケルト音楽です。それは『FAIRY TAIL』で実証できたと思います。今回はまた別の方向性を探ることにして、いろいろな民族音楽を参考にする中で、ブルガリアン・ヴォイスというブルガリアの民族音楽をメタル調にすることにしたんです。

――ブルガリアン・ヴォイスもなかなか馴染みがありませんが、それをメタル調にするというアイデアもすごいですね。

高梨:本場に行けばそういう音楽もあると思います。ただ、あまり聴いた記憶がなかったので、これを自分のサウンドの中に取り込めば新しい音楽が作れるのではないかと思い、実験的にメインテーマを作ってみたらすごく楽しくて。関係者の皆さんも喜んでくださって、この方向性でいけると確信しました。

『FAIRY TAIL』も『ログ・ホライズン』もそうでしたが、石平監督が出された課題に対して「見つけた!」となったときの快感はすさまじいものがあります。僕は自分をアーティストではなくエンターテイナーとして捉えているので、大事なのはどうやって音楽を楽しんでもらうか。リスナーやお客さんはもちろんですが、スタッフさんたちの期待に応え、楽しんでもらうのも大切なので、気に入っていただけて嬉しかったです。

――そのまま、メインテーマが確定したわけですね。

高梨:そうです。だいたいはオーダーが書かれたメニュー表(楽曲リスト)を最初にいただいて、そこから作り始めるんですが、今回はPV第1弾に合わせる必要もあったので、先行してメインテーマを制作しました。

――メインテーマは重厚なサウンドとコーラスの融合がとてもカッコよく、こうくるのかという驚きもありました。

高梨:ありがとうございます。自分の中に取り込んで昇華したものですから、正統派のブルガリアン・ヴォイスではないんですが、テクニカルな音楽よりもシンプルでわかりやすくキャッチーな音楽にしたいと常々思っているので、そういう意味ではイメージしたものが作れました。

――コーラスの歌詞は何語なのでしょうか?

高梨:あれはすべて造語で、自分で考えました。音に対してどの言葉だったらアタック感が強くなるか、「この音だったら“ダ”という言葉にしよう」といった形で、アタック感のいい言葉を探していくんです。言葉そのものよりも音の鳴り方、耳への馴染み方で選んでいます。

――また、本作の曲はメインテーマのアレンジや各キャラクターのテーマ曲をはじめ、バトル曲が非常に充実した印象です。

高梨:僕自身、バトル曲が大好きなので何曲でも作れるんです。「ネタ切れにならない?」とも聞かれますが、バトル曲に関してはならないです(笑)。バトル曲よりも日常曲のほうが時間がかかります。

それからバトル曲が印象的というのは、音響監督のはたさんのうまさが大きいと思います。実は、第1話の時点でメインテーマが3回使用されているんです。しかも、バリエーション違いのメインテーマを巧みに使い分け、例えば曲のピークがシーンの一番の盛り上がりにくるような形で調整されています。はたさんと石平監督のコンビのすごさは、音楽の演出によって作品のイメージを膨らませるところにあるのだと改めて気づかされました。

――確かに第1話の戦闘シーンもそうですが、全体的に音のハメ方が気持ちいいですよね。

高梨:気持ちいいですし、作っている側としては何より「大事に使えてもらえているな」と感じます。はたさんとだったら大事にしてもらえると最初からわかるので、楽曲制作もテンションが上がりますし、作りがいがあるなと毎回思います。

――第5話のアバン、師匠とフランが単独でダンジョンに潜ったシーンでもメインテーマのアレンジが流れていました。ここをはじめ、1曲を長めに取ることが多いですよね。

高梨:それもはたさんの特徴で、曲を細かく切らずに使ってくださることが多いんです。ピークから逆算して長めに音楽を引いてくれるのは、作り手側として嬉しいものです。あとはステム(楽器ごとのデータ)を使わず、ちゃんと1つの音楽として使っていただけるのもありがたいなと思います。

――メインテーマ以外は、どのような順番で制作されていったのでしょうか?

高梨:そこからはランダムでした。ふと思いついたものに取りかかったり、曲を作っているときに別の曲がひらめいてそちらに移行したりと、特に流れは決めなかったです。

――師匠やフランをイメージした曲が複数ありますが、キャラクター単位ではないということですか?

高梨:そうです。師匠だとバトル用の曲が最初だったと思います。そのあと別の曲を作って、また師匠のコミカルなテーマを作る際にバトルのときのメロディを使えないか考えていくという流れでした。

――各キャラクターのテーマを作られる際は、どういったことを想像しながら制作されるのでしょうか?

高梨:「え?」と思われるかもしれませんが、頭の中に設計図のような、“音でできた絵”のようなものが浮かび上がるんです。音が絵のように感じられると言いますか。その絵の断片、視覚で感じた音を組み合わせていくというやり方なんです。

――“音でできた絵”をカンバスにはめ込んでいくような感じでしょうか?

高梨:そうです。譜面上に音符を並べるイメージではなく、“描く”イメージなんです。師匠だったら剣が飛び回るイメージ、フランちゃんだったらスピーディに動くイメージ、そういうイメージと音が頭の中で組み合わさっていくんです。

――街の音楽のような日常曲はどのように制作されているのでしょうか?

高梨:日常曲はある種の定番があるので、その作品に合わせて日常曲に作品らしい色をつけていくイメージです。僕の場合、メインとなるバトル系の曲を作り、作品の方向性が定まってから作っていきます。メインディッシュを作ったあと、サラダで彩っていくようなイメージです。

 

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