声優・歌手冥利に尽きる夢のような2日間。作品・キャラクターへの想いを一身に背負い、水樹奈々が紡ぐのはヒーロー達の生き様――WOWOW特集記念「NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023」インタビュー

身体に染み付いた“フライング筋”が為せる、安心安定の空中絶唱

――ここまでお話を伺っていると、改めて「LIVE HEROES 2023」は、水樹さんのライブ史上、かなりコンセプチュアルで、集大成のような側面を持ったライブなんだなと実感しました。

水樹：そうですね。技術的にもそれぞれ求められる方向性が違うと言いますか、大変な部分があって。“-BLADE MODE-”は、主にストレートにフォルテシモが続くような楽曲が勢揃い。音域が幅広い中で転調もキメも多く、最後まで体力を保てるのかが試される構成になっています。だから、“-BLADE MODE-”は体力勝負。キーが高い、テンポが速い、パワーが必要……といったストレート勝負の連続を全力で攻め続けなくてはなりません。

また、“-LIGHTNING MODE-”の楽曲達は、表現の幅を求められるものばかり。ただ楽譜通りに歌えばいいというわけではなく、ドラマの作り方や繊細な表現、そこにバリエーションも必要になるので、しっかり声をコントロールしつつ、どういう表情を歌声に乗せられるかが肝になります。

曲としては全体的に優雅で穏やかそうに見えますが、心のうちで燃え盛っている内容のものが多く、その絶妙な温度感をキープできるように意識しています。なので、“-BLADE MODE-”とは違った意味で腹筋がプルプル（笑）。勢いで乗り越えられず、身体に染み込むまで歌い込まないと出せない表現がたくさんあって、技術的に難しい曲が多いんです。

――それぞれで柔と剛のような曲調になっていると。

水樹：はい。勢いだけでも、テクニックだけでも歌いこなせない曲が、それぞれ軸に据えられていて。ボーカリストとして、ここまで培った経験を試されるようなステージになったと改めて実感しました。

――そんな本公演ですが、WOWOWにて4月9日（日）には“-LIGHTNING MODE-”、5月4日（木・祝）には、“-BLADE MODE-”が放送・配信となります。映像でじっくり見てほしい場面をピックアップするなら……？

水樹：すべて……と言いたいところですが、やっぱり1曲目の登場シーンでしょうか。2日間とも、同じビルの上から登場する演出になっていましたが、楽曲が持っている世界観によって、まったく別の見え方になるという対比をぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。

他にも先ほどお話いただいた“柔と剛”のように、同じ衣装、同じセットの中で歌っていても、全然違うライブに見えるところも面白いですし、この「LIVE HEROES」ならではなところだと思います。

本編ラストは、幕間のショートムービーからの流れでヒーローのイメージの真っ赤な衣装を着ているのですが、“-LIGHTNING MODE-”では、女神的と言いますか、包み込むような柔らかさを感じられるパフォーマンスになっている一方、“-BLADE MODE-”は、どこか闘神のよう（笑）。持っていないはずの剣が見え、背後から炎が燃え盛っているように見えます（笑）。

特に色濃く表れるのは、テーマとなった作品が続く冒頭と後半の怒涛のラッシュ！　映像でじっくり体感していただきたいです！　楽曲に対する想い、作品に対する想いが爆発しているので、まるでライブ会場にいるかのような臨場感で、それぞれ異なる愛の形を受け取っていただけると嬉しいです。

あとは……と、見どころを全然ひとつに絞れていないですね（笑）。

――とんでもないです！　あれだけ密度の高いライブですし、一言じゃ語り尽くせないくらい、見どころだらけですよね。

水樹：そうなんです！　あとはやはり、久しぶりのフライングも見ていただきたいです。水樹と言えば飛ぶ、というイメージが、声優界ではいつの頃からか定着していて（笑）。

これまでもいろいろな飛び方をさせていただきましたが、今回は背景のセットとマッチする形で、高層ビル群を縫うように上下左右に激しく動いて飛んでみたり。（「LIVE FLIGHT 2014」の神奈川公演で披露した）3Dフライトとは違いますが、舞台上という限られた空間内を目一杯に活用した面白い飛び方になっています。

また、私の中で“フライング筋”という筋肉の成長も感じられて……（笑）。

――当日のMCでもお話にありましたが、改めてその“フライング筋”とは……？

水樹：フライングしながら歌うのは地に足がついていない分、本当に大変なんです。でも、久しぶりのフライングを通して、飛びながら歌うコツというか、飛んでいるときの感覚が“フライング筋”として身体に染み付いていることを初めて実感できました（笑）。

当日、観に来てくださった声優さんから「ロングラン公演で毎日のように飛んでいるベテランの舞台役者さんみたいだった」と最高の褒め言葉をいただいて本当に嬉しくて。きっと、安心してみなさんに見ていただけるフライングになっていると思いますので（笑）、ぜひ放送でご確認ください！

――“フライング筋”の活躍、放送でも楽しみにしております（笑）。そして、7月2日（日）の青森公演を皮切りに、夏のツアーが7都市12公演で開催されます。千秋楽が有明アリーナの3Days公演と、また新たな挑戦も盛り込まれていますが、夏に向けた意気込みをお聞かせください。

水樹：ちょうど先日、キックオフのミーティングを行いました。セットリストの初稿が出来上がったり、演出のアイディア出しが行われ、まだ多くは言えませんが今回も楽しいツアーになりそうです！　アリーナやホールなど、それぞれのステージで楽しんでいただけるような構成を考えています。

アルバムやシングルが出た後のツアーではないので、本当に幅広い楽曲の中からの選曲になります。選択肢が広い分、セットリストを組むのは大変でしたが、また面白いコンセプトを考えていたり、夏にピッタリな構成になっているので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。みなさん、お待ちしています!!

★近日、上坂すみれさんに最新ライブを中心にお話を伺ったインタビュー記事を掲載予定！お楽しみに！

[ライブ写真：kamiiisaka　インタビュー写真：小川遼　取材・文：鳥谷部宏平]