青山吉能さんの新曲『Flowery』リリースの取材に行ったら、声優デビュー10周年を振り返る時間になった／インタビュー

母なる自分というか。俯瞰で見る自分

――ここからは、新曲の「Flowery（フラワリー）」についてお聞かせいただければと思います。思ったよりあの空気のままの仕上がりになりましたね。

青山：そうですね。特にワンコーラス目は、そのまま行かせてもらった感じです。「新曲出すか」みたいな気持ちがふわっとあって、「どんな曲にしようかな……特にない」というのが最初でした。そんな中でツアーが始まって、「こういう曲を歌いたいかも」という気持ちがようやく生まれたんです。それから、テイチクのスタッフさんと話し合って、せっかくならライブツアーで青山さんが得たものを曲に反映させようと。ライブツアーのコンセプトをもう一回洗って、色々なところに投げてくれて、コンペが始まって、ワーッと色々な曲を聴いて、「Flowery（フラワリー）」が生まれたという感じです。

――作詞・作曲はhisakuniさんです。

青山：作曲のイメージが強いので、リリックも書かれる方だとは知りませんでした。とても柔らかくて瑞々しい歌詞で、とても気に入っています。

――今回ツアーを受けてのものなんで、青山さんが書いたのかと思ったら、hisakuniさんなんですね。

青山：スタッフとhisakuniさんの間では何かあったかもしれないですけど、「私が書いたかな？」と思うくらい私の描きたい世界観だったので、「プロってすごいんだな」と本気で思いました。

――レコーディングはどうでしたか。

青山：余裕のあるレコーディングでした。3回ぐらい機会を設けていただいて、何となくキーをチェックしたり、曲の感じを固めたりするプリプロが1回、レコーディングが2回だったかな？　「Flowery（フラワリー）」という曲に対しては、「もう時間ないから」が一切なく、詰めたいだけ詰めて良いという感じで制作していただけたので、自分の中でも納得のいく仕上がりになりました。

――どの辺にこだわりました？

青山：この箇所とかではなく、全体像ですね。どの自分で歌ったら、この曲が一番映えるだろうということが、最初はなかなか掴めなかったんです。どの自分で歌っても「良いね」となっちゃって。全部に対してそう思っているから、Aメロは1の人格で歌って、Bメロは2の人格で歌って、でも合わせて聞くと「なんじゃこりゃ？」みたいな。

「それなら、2の人格に合わせて歌おう。でも、2の人格だとここがしっくりこない。統一しなきゃ。統一するってなんだ？」と。そこが迷路だったので、時間をかけて作ることができたのは、マジで良かったなと思います。

――最終的にはどのあたりに着地させたんですか？

青山：母なる自分というか。俯瞰で見る自分みたいなもので、物理的に全く動かずに、体を固定させて歌うというところに落ち着いた気がします。

――俯瞰した感じというのは、言葉にされると納得できます。

青山：あえて抑揚やフックとなる部分をつけずに、つるっと歌うみたいな感じは意識したかもしれないです。

――過去のユニット時代は、ディレクションが細かく入ることもあったと思うんですけど、今は自分で歌いたい方向性を決めるということも徹底されているんですね。

青山：そうですね。自分が出したものと受け取るものってちょっと違ったりするから、歌うたびにリプレイしてもらって、「自分は優しく歌ったけど、意外と優しくは聞こえてない」みたいな。その辺がすごく難しくて、「私が優しいと受け取っても、ディレクターはそう思ってない」とか。全員の共通認識のすり合わせが大変なんですけど、アーティスト活動においては、「青山吉能自身がこの曲をどうしたいか」という主体性が大事になってくるので、明確な意志がないと逆にふわついた曲になっちゃうなと。

――先ほどのお話のように「この曲歌いたいな」ということがないと、新曲は作れないんですね。

青山：そうなんです。マジでハマってない歌になるし、「ハマってない歌でもリリースできちゃう」が終わりの始まりというか。少なくとも青山吉能プロジェクトではそれを絶対にしたくないと思っているので、何回もレコーディングさせてもらえてよかったです。ぜひ一度聴いてほしい曲になっています。

――ところで、髪色も変えられたんですね。

青山：そうなんですよ。撮影の前日にオレンジにしたのですが、花系のコンセプトになると決まったときに、「オレンジにしよう」ということは前々から決めていました。他のスケジュールもあるので、オレンジにするタイミングをずっと探っていたんです。結果的にすごく良いタイミングで、思い描いていた通りになれて良かったです。

――オレンジという色はインスピレーションで決めた？

青山：「この世界に一番合う髪色なんだろう？」と考えたときに、もうちょっと明るいオレンジもあるし、緑がかったモスグリーンみたいな色もあるし、髪色って無限大なんですけど、一番は暖色系かなと。久々に全頭ブリーチして、5時間くらい美容室に座っていました。あの時間だけは無限に感じましたね。「終わらないな」って。