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『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』今井一暁監督が「音楽」をテーマにした理由とは/インタビュー

コロナ禍を経て「音楽がなくなってほしくない」という想いが強くなった――『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』今井一暁監督インタビュー|子供たちが音を鳴らしてくれれば、音楽があり続ける未来につながるはず

3月1日(金)公開の「映画ドラえもん」最新作『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』。

物語は、音楽会に向けて、苦手なリコーダーを練習していたのび太の前に不思議な少女・ミッカが現れるところからスタート。ミッカは、のび太、ドラえもん、しずか、スネ夫、ジャイアンたちと一緒に音楽を奏でたことで、5人が音楽の達人(ヴィルトゥオーゾ)だと思い、自らが住む「音楽(ファーレ)の殿堂」へのび太たちを招き入れます。

ひみつ道具「音楽家ライセンス」を使って、少しずつ殿堂を復活させていくのび太たちですが、その間に、ミッカたちの故郷の惑星「ムシーカ」を滅ぼした謎の生命体「ノイズ」の魔の手が地球に迫っていて……? 音楽の未来、そして地球を守るため、のび太たちが冒険を繰り広げます。

今回アニメイトタイムズでは、本作の監督を務める今井一暁さんにインタビューを実施! 作品のテーマに「音楽」を掲げた理由や、見どころなどを伺いました。

 

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初めて演出を担当した「あやとり世界の王様に」のコンテに衝撃を受けた

――『ドラえもん』に関わるまでにどのような印象を持たれていましたか?

今井一暁監督(以下、今井):自然とお茶の間にあって当たり前に思っていたアニメですね。僕自身、毎週楽しんで見ていました。

――2010年からお仕事として『ドラえもん』に関わられるようになった時の感想は?

今井:元々、子供向けやファミリー向けのアニメに関わりたいなとずっと思っていました。なので『ドラえもん』のお仕事に誘っていただいた時は嬉しかったです。僕がやりたかったことのど真ん中でしたから。

基本的に1話完結だったので、1話の中で起承転結を作って、最後に子供たちを笑わせなくてはいけなかったんですが、演出をやっていて楽しかったです。オンエア後には「おもしろかったです」という反響もたくさんいただいて、やりがいも感じました。

――制作に関わるようになってから発見したことや、印象が変わった点などがあれば教えてください。

今井:他のTVシリーズの作品はだいたいが続きもので、その話数の中で決まったことをしなくてはいけないんですが、『ドラえもん』は1話で完結させるので、「シナリオにはないけど、こういうことをやったら最後がおもしろくなるんじゃないかな」という試みを初めてすることができて。それがすごくおもしろくて、そのまま今でも続いている感じです。

――基本設定さえ守れば、ある程度自由に作れるので、やりがいもあり、腕の見せどころでもあると。

今井:それが難しさでもあって、『ドラえもん』はたくさんの方に愛されていて、それぞれの“ドラえもん像”があるので、そこは外さないようにしながら、最後には笑わせなくてはいけないので。そういう意味で演出の技量が試されたし、すごく勉強させていただけたと思っています。

 

 

――『ドラえもん』のTVシリーズや映画の中で、お気に入りのエピソードや作品を挙げていただけますか?

今井:僕が初めて担当した『ドラえもん』のTVシリーズの演出回で、渡辺 歩さんがコンテを描かれた「あやとり世界の王様に」(2010年11月19日放送)です。

あやとりが得意なのび太が、「もしもボックス」で「あやとりができる人が偉い」という世界にしてしまうお話で、渡辺監督のコンテを最初に見た時の衝撃がすごかったんです。僕にとってはそれが『ドラえもん』のスタンダードになったし、このお話を演出できたことは、その後の僕の『ドラえもん』の指針になりました。

本当におもしろいコンテで、コンテからアイデアが溢れ出てきて、「すごいな。こんなに自由にやっていいんだ」と。「僕もこういう『ドラえもん』を作りたいな」と思いながらやっていますし、その時の渡辺監督のコンテは今も机のそばに、いつでも取り出せるところに置いてあります。

 

コロナ禍での体験から作品のテーマが「音楽」に。子供たちが音を鳴らしてくれれば、音楽があり続ける未来につながるはず

――今回、監督のオファーが届いた時、どのように作品のアイデアを構想されたのでしょうか?

今井:今回は初めて尽くしでした。今までは、お題がある程度固まったところでお話をいただいていましたが、今回は、僕が前回監督を担当した『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(2020年8月公開)の制作が終わったところで、コロナ感染拡大によって公開延期になったこともあり、思うところがいろいろあって。もし次にまた監督をさせていただけるのであれば、ぜひ音楽をテーマにした作品をやりたいなと思っていました。

ですが、イメージしているものをやろうとすると、今までの制作期間で作れるようなものではなくて。各所の方々が僕のわがままを聞いてくださったおかげで無事完成したので、本当に感謝しています。

――本作は音楽をテーマにしていますが、音楽の殿堂の描写や宇宙にまたがるお話など、スケール感が大きくて、ディズニー映画を観ているような感覚もありました。

今井:ありがとうございます。『ドラえもん』で音楽をテーマにすると言っても、ただ楽器を演奏しているだけでは子供たちはハラハラもワクワクもしてくれないでしょうから、「やっぱりドラえもんたちが冒険しないと!」と、最初に音楽と冒険をどう両立させていけばいいかを考えました。

 

 

――のび太がリコーダーをうまく吹けないところから始まりますが、誰でも小学生の時、リコーダーを吹いた体験をしているので、共感しやすいですよね。

今井:そうなんです。なのでそこをスタートにしたくて。子供たちが一番接していて、身近な楽器がリコーダーなので。学校の音楽室の雰囲気とかで、楽器や音楽を苦手に感じてしまう子もいると思うんですが、「リコーダーや音楽室の先には、広くてすごい世界があるんだよ」とこの映画で子供たちに伝えたいんです。

――子供から大人までリコーダーを体験しているので、家族全員がのび太に共感できるところがいいですね。

今井:日常から非日常に飛ぶのが『ドラえもん』の魅力だと思うので、本当に身近なものから始まって、最後も身近なところに落ちるという構成にしていて。ドラえもんたちも映画を見てくれる人たちも、大冒険はするけれど、最後はちゃんと日常に戻って来られるものになったらいいなと。

――「音や音楽がない世界」という概念は、この映画を観るまで考えたことがありませんでした。

今井:コロナ禍の時、みんなで一緒に演奏することができなくなったり、コンサートが中止になったりと、音楽がなくなったような感覚になりました。動画サイトや配信など、データとして音楽を聴くことはできても、みんなで音楽を演奏したり、生で音楽を聴く機会が失われて、「どうなるのかな? このまま(生の)音楽を聴くことはできないままなのかな?」という不安を経験したからこそ、「音楽がなくなってほしくない」という想いが強くなって。子供たちが音楽や楽器に興味を持って、音を鳴らしてくれれば、未来にも伝わっていくはずという想いがあったので、こういった作品になりました。

――どんどんスケールが大きくなって、まさかのび太のリコーダーが地球を救うことになるとは。

今井:「広げるだけ広げたけど、どうやって畳もうか」と(笑)。ですが、現実世界でも音楽があることで地球が救われている部分もあるんじゃないかなと思っていたので、スタートの頃からなんとなくイメージしていたものが、どうやったら最後のシーンにつながるのかを逆算しながら作っていきました。

 

 

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