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アクション監督・渡辺淳インタビュー【スーツアクターという仕事 アクション監督編:連載 第4回】

転機になった3つのキャラクター、アニメ表現を目指したアクションシーンへの挑戦──スーツアクター、アクション監督として活躍する渡辺淳さんインタビュー【スーツアクターという仕事 アクション監督編:連載 第4回】

スーツアクターとアクション監督、両立の難しさ

──アクション監督をやろうと思ったきっかけはあったのでしょうか。

渡辺: 「エターナル」をやっていた頃くらいに「次の主役は俺だ!高岩成二の次は俺だ」と思っていたんです。でも所詮それは “次の高岩成二“でしかないと思ったんです。

だったら、これが「渡辺淳」というものを目指そうと。「最初にやったのはあいつだと」「あいつが変えたよね」みたいなところを目指したかったですね。そこで、主役にこだわる感覚は少し消えました。

この仕事って、年齢と共に身体が衰えてきちゃうんで、いつまでも出来ないじゃないですか。そう思った時にアクション監督ってどうなんだろう、と考え始めるようになったんです。

主役もやってアクション監督も両方やれる人っていないって思ったんです。それこそジャッキーだと。そうして、両方やれる人になろうと思ったのがきっかけです。

Vシネマ『仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーエターナル』の撮影の時に、JAEの中で僕が一番上だったので、坂本浩一監督とJAEを繋ぐパイプ役をやらせて貰ったんです。

そこでアクションを付けた時、みんながまとまっていくことや監督の想いを具現化して、ひとつの画にする楽しさを感じました。性に合っていて、やりがいがある仕事だと思ったんです。

 

 

──今後、スーツアクターとして参加はされないのでしょうか?

渡辺: スーツアクターを辞めたわけではないので、やってくださいと言われればやりたいなとは思っています。アクション監督をやって6年経つんですが、体が鈍っちゃうんですよね。

スーツアクターとしてやっていた頃と比べると動けなくなってきていますね。もしスーツアクターとしてやるのなら、ちゃんと準備期間を作らなきゃいけないなと思います。

──スーツアクターとアクション監督の両立は難しいのですね。

渡辺:最初に思っていた“両方やる”ってことの難しさを痛感しています。ただ、個人的に一番嫌だなと思うのが、「アクション監督をやっているからスーツアクターはやっちゃダメ」というような考え方があるんですけれど、それは違うと思っていて。

アクション監督をやるって決めたから、それしかやっちゃダメっていうのは違うなと思っています。勿論特撮の場合一年間あるので、その期間集中しなければいけません。しかし、両立できるのであれば問題ないと思っています。半端な覚悟ではできませんが、主役でなくてもサブ、怪人でも僕はやりたいです。そこに優劣はないですね。

両方やるんだったら常に「いつでもいけますよ」って状態にしないと、今スーツアクターをやっている若い子達に失礼になるんです。ですが、元々ジャッキーみたいになりたいと思っていたので、アクション俳優としてやりたいなって気持ちはありますね。

 

「ただやってるだけ」になってはいけない

──アクション監督のお仕事について教えてください。東映特撮の作品は、監督(本編監督)、アクション監督、特撮監督がそれぞれ役割を持っていますよね。

渡辺:ざっくり言うとアクション部分を担当するのがアクション監督。全体を統括するのが監督(本編監督)になります。特撮監督というのは、ロボットが戦うシーンなどの巨大戦やモーションキャプチャーなどCGに特化したシーンを監督します。僕はアクション部分を担う仕事ですね。

──アクション監督と本編監督はどのように連携を取っていくのでしょうか?

渡辺:監督によってそれぞれですね。例えば杉原輝昭監督は、アクションシーンもアイディアやアドバイスをくれたりして、一緒に作っていきます。同じように作っていくタイプだと中澤祥次郎監督、上堀内佳寿也監督や山口恭平監督は似ていますね。

違うタイプだと柴﨑貴行監督は客観視をして、ポイントでアイディアをくれますが、基本はアクション監督を尊重して僕に任せてくれるタイプだったりします。渡辺勝也監督や加藤弘之監督は、「お任せします」ってタイプですね。

──撮影時は変身前のキャストのシーンから変身後アクションシーンに繋がっていますよね。

渡辺:台本を読んでアクションの部分だけを見るわけじゃなく、全体を見て、その中でどういうアクションがいいかを決めていきます。事前にコンテを作って、芝居の最後がどうなっているか確認して、監督とディスカッションすることが大事です。

──台本ではアクションシーンは詳細には書かれていないと聞きますが、どうやってアクションシーンを決めていくのでしょうか?

渡辺:台本ではアクションの詳細は書かれてないので、打ち合わせの段階で、一分くらいの尺に対して、これぐらいでやりましょうとか監督と相談して作っていきます。

アニメだと作画をするために詳細にアクションが書かれているのに対して、特撮はアクション部分をあまり書いていないところからアクション監督が膨らませているので、『爆上戦隊ブンブンジャー』の脚本の冨岡さん(冨岡淳広さん)も映像になった時に驚いていました。

あと、どのくらいアクションシーンを撮影するのかが大事ですね。撮影したのに使われないのはもったいないので。

そのシーンがどういう感情なのか、怒り爆発なのか、その前のシーンでダメージがあるのか。周りで他のキャラが戦いを見ているならその目線を入れると視聴者目線になりますよね。そういったことを考えてアクションを組み立てていきます。

 

 

──動画でコンテを作る「Vコンテ(ビデオコンテ)」について教えてください。渡辺さんがアクション監督になってから積極的に取り入れられた手法ですよね。

渡辺:僕が『仮面ライダーゼロワン』でアクション監督になった時に、他のドラマや映画でも普通にやっている話を聞いて、「じゃあ、こっちでもやってみよう」というところから取り入れました。

事前に字でコンテを起こして、そこからスーツアクターに動いて貰って撮影していきます。事前にVコンテを用意すると監督やカメラマン、美術さんにも共有出来るので、事前準備ができたり、と時間的には利点があります。共通認識を持つことができるのは大きいですね。

ここ何年かVコンテをやって来て、「ただやってるだけ」になってきたらダメだなと感じています。Vコンテ以上のものを作らないと意味がないですから。僕もプレイヤー側も現場で臨機応変に対応して、やる事が変わってもそれは問題ないと思っています。撮影現場でVコンテと同じことをやればいいというわけではありません。

撮影現場で、その場の緊張感があった方がいいこともあるので、作ればいいって訳でもないんです。解決するには時間とお金の問題もあるので、難しいですね。

 

 

──アクションシーンではCGのエフェクトが入ってきますが、Vコンテの時点で考えられるのでしょうか。

渡辺:CGのイメージを伝えるのにも、Vコンテは視覚化ができるので物凄く良いんです。例えば、僕の頭の中だけでこういう合成したいと合成の方に話してイメージを伝えるのはなかなか難しいですが、Vコンテの映像で人が動いている中で「ここで火が出ます!」みたいな指示ができると伝わりやすいんですよね。

──TVの撮影もあって、事前のVコンテの撮影もあるとかなり大変ですよね。

渡辺:アクションでも、監督と助監督のようにアクション監督にも補佐的な人が常にいると良いですね。特撮の現場でVコンテを確立したので、次にやっていくスタイルとしてはそこができるといいですよね。一人じゃ見切れない部分も出てくるので。

大きい映画だとアクション監督とコーディネーターが何人かいる体制でやっているところもあるので、それができるといいですね。

──アクション監督を始めてからコロナ禍に入り、様々な試行錯誤があったと思います。撮影環境の変化はありましたか?

渡辺:制限が増えてきています。例えば爆破ができなかったりで、ロケ地が限られてしまったりするんです。監督にとっては同じ場所で撮るよりも新しい場所に行きたいと思うので、撮影時間も含めて昔より厳しくなっていますね。

 

アニメ表現を目指したアクションシーンへの挑戦

──渡辺さんがアクション監督を務める作品では、武器や変身アイテムの演出も魅力的なシーンが多いと思います。どのように演出を考えられていますか?

渡辺:事前に相談して決めていて、プロデューサーから「このキャラにこの武器を持たせたいんだけど」って相談があって、そこから考えます。僕はいろんなアニメを見たり、ふとした瞬間に頭の中で「1回転がって、ここで武器を持って切って……宙に舞って……」みたいな(笑)。

──アニメを参考にする時はどんな作品をご覧になりますか?

渡辺:僕が好きな『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』も見ますし、流行っているアニメは見ますね。最近は『呪術廻戦』や『怪獣8号』を見ました。『ドラゴンボール』は世代的にも好きなアニメですね(笑)。

 

 

──作品によっては、アニメのようなアクションを取り入れられてますよね。

渡辺:例えば『王様戦隊キングオージャー』に関しては、撮影が始まる前から上堀内監督から「アニメみたいなアクションがやりたいんです」と相談されました。今までもアニメっぽいアクションはやったことがあったのですが、今までは「アニメを実写化した時のアニメ表現」で、今回は「アニメをやろう」ってくらいの勢いでいきたいと。

アニメのアクションってどう作ってるんだろうってところから考えて、撮影が始まる前にアニメの作画の方に話を聞きに行きました。アニメだと「いらないところは描かないんです」と言われて衝撃でしたね。

例えば、刀の素振りをする時に、振ってる途中は描かないと。僕らは振っているところがカッコいいと思って撮影していましたが、別角度からの切り口だなと思いました。

その話を聞いて『キングオージャー』では、剣で切っている時のコマを調整したり、剣の軌跡を入れたり、一瞬キャラクターの顔のカットを入れました。監督と編集の方と試行錯誤した一年でした。その編集によって、視聴者からは賛否あったと思うんですが、僕としては今後も新しい切り口の撮り方を探していきたいですね。

──ご自身がアクションを演出した中で印象に残っているシーンはありますか?

渡辺:『ゼロワン』からアクション監督をはじめて、6年で膨大なカット数をやっているので、個人的には思い返す暇がないくらいです。見返すと反省になっちゃうことが多いですね。

最近なら『ブンブンジャー』のブンブラック初登場のシーンで、工場の外でドローンを使って4人の名乗りを撮ったカットです。TVで映画みたいなことができました。スケール感が出せて良かったですね。

個人的に嬉しかったのが、『キングオージャー』でジェラミーのお母さんのネフィラが、過去にダイゴーグと戦うアクションシーンを撮った時に、中澤祥次郎監督から「すごいカッコいいね」と言って貰えたんです。上堀内監督からも「あれを見た時に、すごい嬉しかったんですよ」って言っていただいて。

「なんでですか?」と聞いたら「キングオージャーは1年間を通してアニメのアクションをやりたいと言っていたから、自分が監督ではない時にもアニメのアクションを踏襲してくれて、めっちゃカッコいいシーンになっていたのが嬉しかったんです」と言ってくださって、それを聞いた時は嬉しかったですね。

 

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