転機になった3つのキャラクター、アニメ表現を目指したアクションシーンへの挑戦──スーツアクター、アクション監督として活躍する渡辺淳さんインタビュー【スーツアクターという仕事 アクション監督編:連載 第4回】
企画連載「スーツアクターという仕事」は、様々な特撮作品やヒーローショーで活躍するスーツアクターさん達に焦点を当て、第一線で活躍する方々にお話を伺うという企画。
前回の好評を受け実現した今回のインタビュー第2弾では、スーツアクターとしてキャリアを築き、現在はアクション監督としても活躍する方々に取材を実施しました。
連載第4回となる今回は、現在放送中の「爆上戦隊ブンブンジャー」でアクション監督を務める渡辺淳さんが登場。スーツアクターとしての話はもちろん、アクションシーンを演出する立場から見る撮影の面白さや苦労、そしてキャリアの転機について伺いました。
連載記事
プロフィール
■渡辺 淳 わたなべ じゅん
6月21日生まれ。身長175cm。
スーツアクターとして2012年『仮面ライダーウィザード』で仮面ライダービーストを演じて以降、2014年『仮面ライダードライブ』仮面ライダーマッハなど2号ライダーを多数演じて人気を集める。
2019年『仮面ライダーゼロワン』から2021年『仮面ライダーリバイス』まで令和仮面ライダーシリーズのアクション監督を務める。
2023年の『王様戦隊キングオージャー』でスーパー戦隊シリーズのアクション監督に起用され、現在放送中の『爆上戦隊ブンブンジャー』ではアクション監督だけでなく監督も務める。
https://x.com/GeminiJun621
『これをやりたい!』衝撃を受けたブルース・リーやジャッキー・チェンのアクション
──この世界に入ったきっかけを教えてください。
渡辺淳さん(以下、渡辺):最初はブルースリーの映画を見て「すごいカッコいい!」って思ったのがきっかけだったんです。そして、中学生くらいの時にジャッキー・チェンを見て衝撃で、「これをやりたい!」と思ったんです。そこでアクションの仕事があることを知りました。
「中学を卒業したら、僕は東京に行ってスタントマンになるんだ」と親に言ったんです。親は驚いていましたが。「できれば高校行ってほしい」と言われ、高校を卒業したらすぐ(東京に)行くと言っていました。
高校の部活では体操部に入りました。基本的なことしかできませんでしたが、バク転とかバク宙が出来たので、やって良かったと思います。高校卒業して養成所に入って1年、夏頃に参加した『仮面ライダー龍騎』の撮影が最初の現場でした。
最初は本当に大変で、右も左もわからず、やりたいと思っていたことと違ったりして。キャラクターとしては『仮面ライダーファイズ』のラビットオルフェノクが初めての役でしたね。
──幼少期に好きだった特撮ヒーローはいますか?
渡辺:子供の頃に見ていたのは『仮面ライダーBLACK 』や『仮面ライダーBLACK RX』で、戦隊は『光戦隊マスクマン』、『超新星フラッシュマン』、『電撃戦隊チェンジマン』あたりです。
スーツアクターとして転機となった3つのキャラクター
──スーツアクターとして演じたなかで印象に残っているキャラクターを教えてください。
渡辺:自分の中で転機になった3つのキャラクターがあって。「轟鬼」(※1)、「エターナル」(※2)、そして「マッハ」(※3)です。個人的にこの3人のキャラクターは印象深いです。
※1 仮面ライダー轟鬼:2005年『仮面ライダー響鬼』に登場するギター型の音撃武器を使う仮面ライダー。
※2 仮面ライダーエターナル:2010年『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』に登場する悪役ライダー。変身前の大道克己を松岡充(SOPHIA)が演じ、大きな話題に。
※3 仮面ライダーマッハ:2014年『仮面ライダードライブ』に登場する主人公・ドライブを助ける2号ライダーとして活躍。
「轟鬼」は、自分が初めて演じた仮面ライダーというのもあったんですけれど、その年に結婚して子供も生まれる時期で。「やらなきゃ!頑張るぞ!」という強い思いがあった時期だったんです。
「エターナル」は、スーツアクターを10年くらいやった後で、映画のゲスト枠の仮面ライダーを演じることになって、SOPHIAの松岡さんと一緒にやるということもあって気合が入りましたね。
高校の頃、SOPHIAをよく聞いていたドンピシャの世代だったんです。その頃はスーツアクターとしても「高岩成二(※4)を引きずり降ろすぞ!」って時期で(笑)。おかげさまで「仮面ライダーエターナル」がすごく人気になって、僕自身も評価されたなって思っています。
※4 高岩成二(たかいわ せいじ):1994年『忍者戦隊カクレンジャー』ニンジャレッド役で、初めて主役のスーツアクターを担当。2001年「仮面ライダーアギト」から2018年「仮面ライダージオウ」まで18人の主役ライダーのスーツアクターを担当し、“ミスター平成仮面ライダー“と呼ばれる。現在はアクション指導をしつつ、俳優として活躍中。
今年5回目になる「高岩祭」は人気ゲストも加わり12月14日にLOFT9 Shibuyaにて開催。配信チケットあり。
──『仮面ライダーエターナル』は、今でも絶大な人気がありますよね。
渡辺:この前も『仮面ライダーガッチャード』の時に「エターナル」が出ていましたよね。実は直前まで「エターナル」が出ることを知らなくて。橋渡(橋渡 竜馬さん)がやっていて、「エターナルやらせて貰います」ってわざわざ挨拶をしに来てくれたんです。
スーツアクターをやるのかなと思ったら、変身前もやっていて驚きました。彼も好きなキャラクターで大事にしている、とその後のインタビューで読みました。「エターナル」をすごく大事にしてくれていて嬉しかったですね。
その後、松岡さんのライブを見に行った時に、松岡さんとも「またやりたいね」って話をしていたんです。何年経っても大事にしてくれるキャラクターになったのはすごく嬉しいですね。
── そして「仮面ライダーマッハ」に繋がるわけですね。
「マッハ」は、僕の演技を好きになってくれた人が増えて嬉しかったですし、自分をさらけ出して『こういう役も演じられるんだ』と芝居の幅が広がった役でした。本当に役得だったと思います。
当時「マッハ」を演じていた頃は、一番痩せていて。というのも、白でスタイリッシュなデザインに合わせて体重を落としたんです。食べ物にも気を使っていました。
──「追跡、撲滅、いずれもマッハ」のポーズはインパクトがありましたね。
渡辺:あのポーズは僕が考えてアクション監督の石垣 広文さんに相談して決めたんです。名乗りを初めて撮る時に、最後の「マッハ」のポーズの、指をキランとするポーズをやるかどうか、ギリギリまで悩んでいたんです。本番前にアクション補助の藤田慧と話したら、「ありでいいんじゃないですか」と言われてあの形になりました。
稲葉くんとは現場で会うとよく世間話などしてましたね。後ろから急に肩揉んだりして、「淳さんですね」って言われて「違います」とか、こっそり稲葉くんの荷物の上にお菓子置いといて「淳さんですね」「違います」とかやってました笑
もちろんお芝居の話もしてます! 稲葉くんは本当に僕のアクションやお芝居をよく見ていてくれて、「あの時の動き好きです」とか「あのお芝居の雰囲気好きです」とか現場であうと伝えてくれてました。
二人で作り上げたマッハでした!!