
転機になった3つのキャラクター、アニメ表現を目指したアクションシーンへの挑戦──スーツアクター、アクション監督として活躍する渡辺淳さんインタビュー【スーツアクターという仕事 アクション監督編:連載 第4回】
ベテランと若手が互いに刺激し合うことのできる環境
──スーツアクターはどうやってキャスティングされるのですか?
渡辺:役と合うかをまず考えて、キャスティングが始まります。どんどん若い子たちを入れて、みんなを触発してやっていけたらいいなと思うのですが、ベテランはベテランで必要なので毎回キャスティングは難しいですね。
今回『ブンブンジャー』では若手の米岡(米岡孝弘さん)や尾野(尾野透雅さん)のキャスティングの提案をさせてもらってます。米岡は『仮面ライダーギーツ』で、監督陣からの評価が高く、キングオージャーでのゴーマも良かったので、今年はキャラクター側で一年頑張ってもらいたいなと。
尾野に関しては、中国武術やシアターGロッソでの経験もあって、アクションが凄いとは聞いていました。こちらでは何よりカメラの前で芝居もたくさん経験できるので、そこにもチャレンジしてもらいたくお願いしました。
そういう人たちが入ってくることによって、ベテランの人たちも「頑張らなきゃ!」って思って欲しいし、若手の子たちがベテランの人たちを見て「自分はまだまだだな」と思って頑張って欲しいですよね。
さらに敵のボスにベテランが入ると締まるんですよね。今回は敵キャラで、おぐらさん(おぐら としひろさん)が、宮澤(宮澤 雪さん)の良さを引き出してくれたんです。宮澤も新たな引き出しがいっぱい見えたと思います。
二人はいつも何かできないかを模索していて、隙があると見せてきてくれますね。アクションがあまりない分お芝居でしっかり表現しないといけませんから。
現場でよく悪巧み(笑)を二人でしているのを見かけます。宮澤もおぐらさんに遠慮なく突っ込んだりできるのは、おぐらさんがしっかり受け止めてくれるからだと思います。サンシーター人気は現場でもすごいですからね。やはりそこはお二人の演技が評価された結果だと思います。
宮澤はこれを自信にして今後もどんどん挑戦してほしいですね。サンシーターはこのお二人にお願いして本当に良かったと思っています。
──ベテランの方の活躍も若手の方にいい影響があるんですね!
渡辺:僕が選ばなきゃならない立場なので責任はあるんですが、やるのは本人たちなので、プロなら引き受けた以上やらなきゃダメだよ、と。役の数は決まっているし、次も僕がアクション監督をやるかもわからないので。
厳しいかもしれませんが、みんながそれぞれの席を取らなきゃいけない意識を持ってやらなきゃいけないんです。
日本のアクションは世界で通用するのだと実感
──海外のお仕事(『Power Rangers Cosmic Fury』)では、セカンドユニットの監督としても活躍されていますが、日本と現地での作品制作の違いについて教えてください。
渡辺:やっていること自体はそんなに大きく変わらないですね。向こうのスタイルっていうのはあるんですけれど「やりたいようにやって、日本でやってきた感じでやってくれ。じゃないと君を呼んだ意味がない」と向こうの人から言われました。顔面パンチとか剣を刺したりがダメなどの規制があるので、そこは注意が必要でしたね。
日本と比べると、向こうは一人一人がしっかり役割を持っていて、僕が指示を出さないと何も動かない。照明は照明の仕事とか、衣装は衣装の仕事という感じです。それぞれが自分の仕事をしっかりこなしている印象ですね。
予算も違いますね。セカンドユニットの監督としてアクションシーンを担当したのですが、メインユニットの監督は芝居部分をしっかり担当して、僕はアクションに集中できる感じです。それが同時に動いているので、2組の撮影チームが並行して動いていましたね。
──海外でも『Power Rangers』だけでなく『スーパー戦隊シリーズ』のファンも沢山いますよね。
渡辺:海外のスタントマンの方で、携帯の待受画面が昔の戦隊の画像で、「なんでこの待受なんですか?」って聞いたら「好きなんだよ!地元で有名で、これを見てスタントマンになりたいって思ったんだよ!」って言われて。そういう話を聞くと世界で通用するんだと実感しました。
──ファンからの感想や応援はどんなものが嬉しいですか?
渡辺:スーツアクターとしてやっていた頃は、「見てます!」「アクションがすごく好きです!」って言われるのは嬉しかったですね。僕がイベントをやった時に、子供がおもちゃを持って来てくれるのは「やっていてよかったな」と思います。
子供が作品を見て真似して、何か影響があれば嬉しいですし、親御さんと一緒になって家族で楽しんでくれたら番組として夢があるのかなと思います。
ヒーローショーでも、その場に来てくれた子供たちにとっては本物のヒーローなので、TVでもヒーローショーでも楽しんでくれると嬉しいです。
──ご自身がアクション監督を務める作品の反響のエゴサーチはされますか?
渡辺:アクション監督をやるようになってからは、全体的に作品がどう見られるかを気にするようになりましたね。SNSはよく見るんですけれど、良い意見は見ていて良かったなと思いますが、悪い意見はこうした方がいいって正解を言ってくれていると思っています。
悪い意見を言われたら、次にそういうシチュエーションになった時に、その意見も取り入れて自分の中で昇華したいなと思うんです。
──渡辺さんはSNSでファンとの交流にも積極的ですよね。
渡辺:毎日SNSを更新するようにしています。いただいたコメントにも目を通しています。SNSは全世界に発信することになりますが、永徳や高田JAPANがやっているように、自分も限定的にファンとの交流ができるといいなと思っています。
様々な経験を通して、特撮の現場を盛り上げたい
──他のアクション監督から影響を受けることはありますか?
渡辺:谷垣健治さんや下村勇二さんのように、日本でもすごいアクション監督がたくさんいますよね。あと舞台をやっている方たちもそうですよね。僕は舞台の経験があまりないので、舞台の方の発想や見せ方はすごいなと思います。
映像とは全然違うと思うので、舞台やシアターGロッソの演出もやってみたいと思うんですよね。特撮じゃないドラマだったり映画だったり、全然違う現場にも行ってみたいですよね。僕の名前がもっと世間の方に認知されることで、特撮を知らない方達にも「他の作品は何をやっているんだ?」と特撮にも興味を持ってもらえるんじゃないかと思ったりします。そこからスーツアクターという仕事や特撮という世界が広まればいいなと。
──「アクション監督あるある」はありますか?
渡辺:常に何か考えることじゃないですかね。物を取る時に、カッコいい撮り方って何だろうって考えますね。カッコいいアングルって定石は決まっているので、別の切り口は何だろうって。
それくらい考えないと新しいことは生み出せないんです。1日休んでいても、ふとした瞬間に何か考えますね。子供を見た時に、何のおもちゃを持ってるか気になっちゃいますね(笑)。
──最後にこれからご自身が目指されることを教えてください。
渡辺:スーツアクターやアクション監督が、自分たちからどんどん出ていくってことは必要かなと思っています。小さいところの積み重ねだと思うんです。ファンの皆さんの声がたくさんあれば、事務所にもニーズがあるとわかって貰えて、いろんなことが動くと思うんです。
また、海外でも仕事したいなと思います。海外の魅力っていっぱいありますよね。他の現場も経験して、最終的には特撮の現場を盛り上げたいです。
──本日は貴重なお話をありがとうございました!
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