
付き合い始めた二人の“これから”を演じられる嬉しさ。第2期には相手を想うがゆえの切ないシーンもーー『阿波連さんははかれない season2』水瀬いのりさん&寺島拓篤さんインタビュー|転校生・玉那覇さんはこれまで作品になかった視点を持ったキャラクター
阿波連さんとライドウくんは、印象が実は逆なところが面白い
ーー第1期を振り返ってのお話も伺えればと思います。まずは第1期でキャラクターを演じる上で一番大切にしていたことを教えてください。
水瀬:れいなちゃんの感情表現は、気付く人、気付かない人がそれぞれいると思いますが、彼女の根底にはいつも優しさ、思いやりの気持ちがあって、それによって自分をちょっと控えめにさせてしまっていて。相手を傷つけたくない、巻き込みたくないという気持ちから来ているものなので、ただの不思議ちゃん、クールな子ということではなく、ちゃんとそこに体温があるというか、相手を思いやっているからこその行動だと考えています。
「れいなちゃんって、私が思っているよりも大人だな」と感じる部分がたくさんあって、第2期ではよりその包容力、温かさが増しているので、「れいなちゃんって、ものすごく視野が広いんだろうな」と感じる一面をより大切にしながら演じています。
ーー第1期では、徐々にライドウくんへの恋心が見えてくる部分も印象的でした。
水瀬:だんだん自分の中のフィルターじゃない部分、優しかったとか声をかけてくれた、だけじゃない部分でライドウくんに惹かれているというところと、クールなれいなちゃんが恥じらいを隠せないということが描かれていく中で、れいなちゃんのほうがライドウくんのことを「はかれない」と思い始めて、タイトルの意味が変わってくるのが面白かったです。
寺島:今のお話の通り、面白いのは二人が実は逆なところなんですよね。阿波連さんとライドウくんのキャラクターの意識の仕方というか。阿波連さんは視野が広いのに対して、ライドウくんはある意味、視野がすごく狭くて。ピンホールから覗いた“先”はめっちゃ広いという謎の存在なので(笑)。
彼を演じるときは、表面的な体温はあまり感じないように、という意識でやっていました。逆に妄想の中ではいっぱい花開いて、そこで体温を感じるように、観ている人が錯覚するからこそ、はかれないのは阿波連さん……と思っているけれど、実はライドウくんのほうがはかれない、という構図ができるのかなと。そこのメリハリを念頭に置きながら演じていました。
本当にライドウくんってかなり突飛なことを言っている不思議ちゃんなんだ、というところがキャラクターの面白みで、そこを存分に(妄想の中では)ライドウくんなりのフルパワーで出せるようにすごく意識していました。
ーーそういったキャラクター性は、第1期の最初の頃からしっかり掴めていたのでしょうか?
寺島:自分の感覚としては掴めていたんですが、「もっとやっていいよ!」と言われることはあったので、そのさじ加減が毎回ちょっとずつ違うというのが、絶妙に難しいところでした。あとは、流れで録っていくので、(妄想で)クライマックスを迎えた後、(現実で)普通に戻るというシーンは、ブレーキをかけるのが難しい部分でもありました。
ーー続いて、第1期で印象に残っているシーンを教えてください。
寺島:特に印象的だったのは、とにかくミートボールが詰め込まれるところです(笑)。最初にとても面食らったシーンというか。タイトル通り「阿波連さんって、はかれない人だな~!」と感じたシーンだったので、もごもご言いながら内心すごく驚いているというのは演じていて面白かったシーンですね。
水瀬:ライドウくんの妄想によって、想像もしていなかったれいなちゃんが具現化されるシーンですね。その「脳内妄想バージョン」のれいなちゃんを演じる機会もあったので、より印象に残っています。本来のれいなちゃんだったら「何だろう?」くらいにしか考えていないことが、(ライドウくんの妄想では)グワっと宇宙規模で広がっていき、それがあたかも真実かのように、点と点が結びつく、このすれ違いが見ていて本当に面白くて。例えば、ライドウくんが風邪をひいて、描写が変わるところ(第1期 第9話)とか。「イケメンって、こういうことじゃなくない?」と(笑)。
寺島:間違ったステレオタイプみたいな(笑)。
水瀬:ライドウくんの妄想に巻き込まれていることを知らないれいなちゃんが愛おしかったですし、演じていて笑わないようにするのが大変だったことを覚えています。
ーー他のキャラクターとの掛け合い的な面ではいかがですか?
寺島:第1期のアフレコをしていた頃はコロナ禍だったので、けっこうバラバラに録っていたんです。なので、第2期では会えて嬉しかったですね。
水瀬:私たち二人は固定で割と一緒に録ることができましたが、それ以外のキャラクターはオンエアで聴いて、という感じだったので、第2期で桃原先生が「あはれ」を感じて吐血するところなども実際に生で見て、「本当に花澤(香菜)さんから出ている声なんだ……!」と感動しました(笑)。
ーー今回、アフレコ現場でキャスト同士でお話ししていたことで、印象に残っていることはありますか?
寺島:ずっと某“夢の国”の話をしていましたね。「こんなイベントが~」とか「グッズが~」とか、みんなでキャッキャしていたら音響監督の阿部(信行)さんが「楽しそうだね〜」と必ず入って来てくれて(笑)。
水瀬:ちょっと先生っぽかったです(笑)。
第1期同様のシュールな笑いがありつつ、第2期には相手を想うがゆえの切ないシーンも
ーー第2期で初めて本作に触れる方もいらっしゃると思うので、改めてキャラクターの魅力をお聞かせください。
水瀬:れいなちゃんは小柄で華奢で守ってあげたくなる感じもありますが、実は逆にれいなちゃんに守られているような、すごく自分を持っていて、相手を想っている子だと思います。私も最初に原作を読み進めていたときは、「マスコット的キャラクターかな?」と思いましたし、実際、みんなの癒しにもなっているんですが、それよりもれいなちゃんは本当にしっかり者で、すごく家庭的だし、ちゃんとした女の子という部分が魅力だと思います。
「人は見かけによらない」を体現している子ですし、可愛いだけじゃなく、カッコよさも、独自のセンスも、夢に向かって突き進む根気もあって、「パーフェクトじゃない!?」というくらいのすごさを、第2期でも沢山感じていただけると思うので、感情表現というところだけではなく、その中にあるれいなちゃんの本当の気持ちについても、ぜひ注目してほしいです。
寺島:ライドウくんの一番の魅力は、やっぱり妄想力だと思います。とても妹がいるとは思えないくらい自分の世界で生きていて(笑)。でもその妄想の中だけで生きているのではなく、ちゃんと現実と向き合えるのが、彼の魅力だと思います。間違った妄想をしていたら、それをちゃんと「違った」と結論づけることもできますし、他人とのコミュニケーションの中でも、間違いを認めて訂正できますし。何事にも真っすぐ向き合っているところが彼のすごさだと思います。「間違っていた!」と思った結果が、更に間違っていたりもするんですけど(笑)、そこからさらに修正することもできるので。勢いの強さと柔軟さの両方を兼ね備えている、なかなか稀有な存在なのかなと。
ーー第2期では、阿波連さんとライドウくんが付き合っている状態から物語がスタートします。演じる上で第1期から変化させた部分などをお聞かせください。
水瀬:れいなちゃんが恋をするって、最初はあまり想像がつかなかったですし、ライドウくんとの距離感が実際に友達から恋人という風に変わっても、いわゆる王道のラブコメとは距離感が違うと思いました。
あの二人にしか見えないものがある中で、それがだんだん視聴者や私にも見えてくるぐらい、れいなちゃんがライドウくんを想う気持ちは、私が思っている以上に大きいと感じるシーンが第2期になって増えたと思います。れいなちゃんを演じていて、恋というジャンルで、胸が痛くなる、苦しくなるなんて、第1期のときは想像もつかなかった、というようなシーンが、第2期ではかなり畳みかけてきます。もちろん今までと変わらないシュールな笑いもありますが、相手を想う気持ちからの切ないシーンもあるので、そこは第2期になったことで新たに演じられた、れいなちゃんの一面だと思います。
ーー第1期でも徐々に見せる表情が増えていましたが、第2期ではまた新たな表情が描かれるわけですね。
水瀬:第1期から観ていくと、表情のグラデーションや、ライドウくんに対する心の開き方の中に、彼女の色々な葛藤があって、それを経て今の関係性があるということを第2期で感じられたので、すごく愛おしかったです。
ーー寺島さんは、ライドウくんを演じる上での変化についてはいかがですか?
寺島:演じる上で、もちろん心の中での変化はありつつも、第1期を観てきた方なら分かる通り、ライドウくんのほうが無表情なんですよね(笑)。なので、あまり表現として大きな変化はなかったです。阿波連さんのほうが急に顔が赤くなったり、慌てたり、落ち込んだりと、小さい(表情の)変化の中で、大きな(感情の)変化が彼女の中にある一方、ライドウくんはそれが全くと言っていいほど表に出てこない。二人とも内側の世界はとにかく広いんですけど(笑)。
恋愛の部分に関しては、言葉ではっきり言うことはあるんですが、感情表現として揺れ動いたりすることはあまりないのが、ライドウくんの凄さなのかなと。彼はこうと受け止めたら、それに真っすぐ向き合っていくタイプで、阿波連さんとの関係性もしっかり第1期で向き合ってきたので、ここからはその関係性をどう深めて、彼の中で変化が生まれるのか、はたまた生まれないのか、というところに注目して観ていただけたら嬉しいです。
ーー第2期の最初の収録に向けて、事前に準備したことや、苦労したことなどはありましたか?
水瀬:最初のアフレコの時に、第1期のそれぞれのキャラクターの音声を流してくださったので、「これにしっかり繋がるように」と思いました。あとはやっぱり一緒に掛け合いをすることで、れいなちゃんたちのいつもと変わらない日常が自然と呼び起されて、自分が第1期の収録をしていた頃にどんどん戻っていくような感覚になりました。
寺島:この作品は、第1期のときに「当たり前のようにやっていた」という印象があって、第2期でもそのまま当たり前のようにやったら、僕が当たり前のように歳をとっていたので、「ちょっと声が低いね」と言われてしまって(笑)。そこを戻す作業に苦戦した記憶があります。
ーーそういった些細な声の変化も、やはり音響監督さんには分かるものなんですね。
寺島:音響監督さんはあらゆる音を耳にしてきて、それを整える立場のお仕事でもあるので。そういったところを厳しくしっかり言ってくださるというのは、非常にありがたかったです。自分では気付けていない部分だったので、とても参考になりました。
ーー「声を戻す」というのは、どういった作業なんでしょうか?
寺島:大ざっぱに言ってしまうと“勘”なんですよね(笑)。「あのときの自分がやっていたライドウくん」という、当時は“当たり前”だったものを、「今はちょっと外側から観測しちゃっているんだ」と。自覚しているものと外から見たもののズレを合わせていって、音響監督さんの「OK」が出たらOKなんだと。ある意味、音響監督さんを頼りにさせていただいて、進めていきました。