“何気ない日常の一瞬の空気”を切り取ることで、キャラクターの生を描く。『劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク』連載インタビュー｜監督・畑博之さん×脚本・米内山陽子さん

アプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ！ feat. 初音ミク（『プロセカ』）』が、待望のアニメ映画化！『劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク』が、2025年1月17日（金）より公開中です。

劇場版の公開を記念して、アニメイトタイムズではボカロP・スタッフインタビューを実施。本稿では、監督・畑博之さんと脚本・米内山陽子さんが登場です。

セカイを巻き込む大きなコンテンツとなった『プロセカ』。その『プロセカ』の軸であり、これまで多くのクリエイターとともに歩んできた“歌姫”・初音ミクが銀幕デビューを果たす本作。そのコンセプトは、まさかの「歌えないミク」というものでした。そんな本作に込めた制作陣の想いや、タイトル決定の裏話などについて語っていただきます。

そして『プロセカ』オリジナルキャラクター＋バーチャル・シンガーが大集合する本作で、畑監督と米内山さんが描きたかった“何気ない”空気感とは。

「歌えないミク」・“閉ざされた窓のセカイの初音ミク”がいても不思議ではないだろう、と思っていました

――本作のタイトルにもある「歌えないミク」というコンセプトですが、本当に鮮烈だなと思っていました。

脚本・米内山陽子さん（以下、米内山）：実はこのコンセプトは、私が脚本として制作に参加する前から決まっていたものだったんですよ！

初音ミクはやはり、広く歌姫として認識されていますし、「歌える」ことが大前提だと思っていたので、彼女が「歌えない」というのは強く心を惹かれるコンセプトだなと思います。（脚本の）お話をいただいた瞬間から、「どのようにストーリーを膨らませていこう？」と考え始めました。

監督・畑博之さん（以下、畑）：（初音）ミクさんは多様な存在なので、「歌えない」という特殊な存在がいても不思議ではないだろう、と思っていました。ずっと「歌えない」ままだと存在意義として問題ありますが、「歌えない」から「歌える」に至るまでの成長を描けるので、面白いコンセプトなのではないかと思っています。

――「歌えないミク」という文言は、本作の心臓部分でもあるタイトルにも採用されています。こちらのタイトルについて、制作秘話などがあればお聞かせください。

畑：セガ、クリプトン（・フューチャー・メディア）、Colorful Paletteのみなさんと行った会議でタイトルについて話し合ったのですが、最初はピンとくるものが出なかったんです。なので、各社、思いつく限りの候補を集めて、その中から考えていきました。

最終的に現在のタイトルに決まったのは、Colorful Paletteの近藤（裕一郎）さんの鶴の一声からだったと記憶しているのですが……そうでしたよね？（笑）

米内山：そうでしたね！　私も5つくらい案を出した記憶があります。

畑：集まった案の中から、複数を組み合わせて今の形になったんですよね。

米内山：そうそう！　やはり「ミク」という言葉は入れたいし、「セカイ」も必須だし……のように、タイトルに組み込みたい文言や大事な要素を吟味しつつ、候補が絞られていきました。