マンガ・ラノベ
「プロジェクト・クロス・コネクト」smileさん×まころんさん クリエイターインタビュー

イラストレーターの作品を投稿した小説の表紙にできる「プロジェクト・クロス・コネクト」インタビュー。smileさんとまころんさんは、どんな想いで企画に参加を決めたのか?

現在、小説投稿サイト「ネオページ」(https://www.neopage.com/)にて現在行われている、作家とイラストレーターを繋ぐ企画となる「プロジェクト・クロス・コネクト」。

一定の条件を満たした作品は、企画に参加されている14名のイラストレーターさんから提供されたイラストの中から、好きなイラストを選んで小説の表紙として使用できるという企画となっています。

従来もネオページ公式から提供されたイラストを表紙として使用することができましたが、今回そこに多数のイラストが加わったことで、表紙のバリエーションが大きく広がった形となっています。

今回は、そんな「プロジェクト・クロス・コネクト」について、ネオページの運営側と、本企画に参加されたプロのイラストレーターであるsmileさんとまころんさんにインタビュー。

今回の企画がどのように始まって、お二人がどのような考えで参加したのか。さらに今後のプロジェクトやネオページが目指すところまで、様々なお話をお聞きしました。

smileさんプロフィール

Xアカウント:(@dsuV4sW8qYWHQVL
smileさんyoutubeチャンネル

・著書 「背景描き方大辞典
Colosoオンライン講座
・サンリオCharaforio「みんなでTRPGを作ろう!」イラスト制作等
・Ave Mujica、MV制作

まころん(makoron)さんプロフィール

Xアカウント:(@makoron117117

イラストレーター、風景画家。SNS総フォロワー60万人。

アニメ美術監督出身。2021年から空に浮かぶ海物語をテーマとして、自由に空を泳ぐ瑞々しい海の生き物たちと自然を描きSNSや個展で活動中で2024年には独自の個展を全国100箇所以上開催。

・『天空的画集』 台海出版社
・星街すいせい Midnight Grand Orchestra『ソリロキー』MV(全国イオンビジョンで放送)アートディレクター、バックグランド担当
まころん版画展

作家側からの要望から始まった「プロジェクト・クロス・コネクト」

――まず最初に「プロジェクト・クロス・コネクト」は、どういった発想から生まれた企画だったのでしょうか?

ネオページ担当:この企画は、日頃ネオページでご活動いただく作家様および読者様からのご要望点を受けて立ち上げました。とくに商業デビュー前の作家様からは「高品質な表紙イラストを自分で制作、手配することが難しい」というご相談を多数いただきまして、そのご意見を受けて、サイト開設当初より各種対応(例えばデフォルト表紙やフリー素材のご提供など)を進めてきました。

そこから「イラストレーター様とそのファンの力を小説創作の世界と繋げることができないか?」という発想が生まれ、いろいろと模索したところ今回の企画にたどり着きました。

プロジェクト・クロス・コネクト」は「イラストレーター様と作家様をコネクト」というテーマのもと、クリエイター同志にとってメリットのある環境を提供することを目指しています。

作家様にとっては創作体験の向上、イラストレーター様にとっては新たな発表・収益の場となればと考えています。

――お二人はどういった経緯で参加されたのでしょうか?

smileさん:自分は去年、ネオページの編集部さんから企画の招待をいただいたのがきっかけです。

自分が公開しているイラストの中から、「こちらが選んだものを今回の企画に使わせてもらえないか」といったオファーをいただいたのが最初だったと記憶しています。

――その時はどんな印象を抱かれましたか?

smileさん:その時のやりとりにはGmailを使っていたんですけど、最初「プロモーション」の方に入っていて、気づくのに結構遅れてしまった……という出来事があったのがまず記憶に残っています(笑)。

あと、やっぱり今はWEB小説のイラストって、今はAIが多いのかなという印象があったんです。今回の企画は、それをあえてイラストレーターの人にお願いしたいという作家さんの需要にも答えていこうというのは面白いなと思いました。

――まころんさんはいかがでしたか?

まころんさん:自分もほぼ同じような経緯ですが、自分の場合はメールアドレスを公開してなかったのもあって、XのDMでお誘いを受けたという違いはありました。

お話を聞いた時は、結構しっかりとした仕組みができていて安心できそうだったのもあって、チャレンジしてみたいという気持ちになったのを覚えています。

――ネオページさんから見て、利用されている作家の方々からの反応はいかがですか?

ネオページ担当:現在までいただいている反応は非常に好評です。多くの作家の皆様より喜びの声や、応援のメッセージを頂いております。

ただし、今回はまだ第一弾のイラストレーター様参加という段階であり、画像の点数やジャンルの幅には限りがあります。その点ではご要望もいただいており、今後は、さらに多くのイラストレーター様にご参加いただき、作品・表紙利用可能な画像のバリエーションを充実させていく予定です。

――参加されるイラストレーターの皆さまはどのように決まったのでしょうか?

ネオページ担当:「小説のジャンルに合ったスタイルや要素を持つイラストレーター様」を社内から募集し、選定のうえ、こちらから依頼連絡をさせていただきました。

条件面などの話し合い、調整を経て、結果、第一弾として14名のイラストレーター様にご参加いただくことができました。まだ前例の少ない挑戦企画である中で、ご賛同いただき、信頼を寄せてくださったイラストレーターの皆様には心から感謝しております。

――今後実装したい機能や、企画のようなものはありますか?

ネオページ担当:読者の小説体験や作家様の創作体験をより充実させるための新機能やイベントについて、現在いくつか構想段階にあります。

また、イラストレーター様関連機能についても、より使いやすくするためのアップデートを予定していますので作家・読者の皆様にはぜひこちらを体験していただき、ご意見をいただければと考えております。

小説の表紙は、その作品にとっての「顔」のような存在

――お二人はプロのイラストレーターとして活動されていますが、これまで主にどんなお仕事をされてこられたか教えてください。

smileさん:僕はコンセプトアートだったり、MVのイラストをメインに活動しています。

コンセプトアートは、世界観そのものを表現するためのものなので、細かい設定よりも大まかな世界観の方向性を示すようなイラストを描かせてもらうことが多いですね。他にもオンライン講座とか書籍とか、結構幅広く関わらせていただいています。

――具体的には、どんな作品や企画に関わられたんでしょうか。

smileさん:直近ですと、Vketというバーチャル空間のイベントにおける、『架空植物園エクソプラント』というワールドのアートとか、Ave MujicaさんのMVを担当させていただきました。

まころんさん:自分の場合は、主に空に泳ぐ海物語をテーマにした、個展とか展示会とかを開いたりしているんですけど、それ以外にも企業様と一緒に、日本の伝統文化みたいなものを海外に発信していくような活動をしています。

具体的なところですと、東京タワーさんとか、日本酒の山桜とか、傘を販売されてるオーロラさんとか、いろいろな企業様とコラボさせていただいています。

あと、自分は元々アニメーターとして美術監督をしていたこともありまして、MVとかの短時間のアニメーション制作なんかもやっています。


▲まころんさんの絵があるMV(YouTube再生リスト)

――読者の中には聞き馴染みのない方もおられるかなと思うのですが、アニメ制作における美術監督というのは具体的にはどんな部分を担当されるのでしょうか。

まころんさん:簡単に言うと、TVアニメを作る上でのキャラクター以外の部分を監督するみたいな役職ですね。背景とか小物だけではなく、キャラクターがいる部屋の構造とか、すべて込みでデザインするような形です。

――アニメに関われていた頃から、今のようなお仕事がしたかったのでしょうか。

まころんさん:きっかけは4年くらい前のコロナ禍で、その時に「外に出たい」とか「解放されたい」みたいな欲求が強くなってきたんです。今みたいな仕事がしたかったというよりは、もう純粋に「自由に絵を描きたい」と考えるようになったのが大きかったと思います。

コロナ禍で外出ができなくて、満足に空を見ることもできなかったので、自分で描きたいなというところから始まって。そこから空をどんどん描きたくなっていって、気付いたら周りの人達がついてきてくれていた……みたいな感じでした。

――お二人共、すでに沢山のお仕事されていますが、小説の挿絵を描かれたご経験はあるのでしょうか?

smileさん:実は僕はないです。

まころんさん:自分も初めてなんです。

――その上での現在の心境はいかがですか?

smileさん:そうですね。僕の場合、結構ジャケ買いみたいなのをするタイプなんですけど、小説って文字だけだとイメージが難しかったりするじゃないですが。

そういう意味では、小説の表紙って物語の顔のようなもので、作品の世界観を一番最初に伝える役割があると思っていて。

表紙で作品を読むか読まないか決めることもあると思いますし、喜びと同時に責任も感じているような感覚がありますね。

まころんさん:自分も似たようなところで、やっぱり物語の世界観や空気感をまとめて伝えることができるのが表紙のイラストだと思っています。

読者にとっては、その世界への“扉”みたいなものでもあり、その作品の世界に読者を案内するような存在でもあるのかなと。今は、そういう創作に関われる感動と喜びみたいな気持ちが大きいですね。

――お二人共、今回の企画にはどれくらいのイラストを提供されたのでしょうか。

smileさん:自分は21点でした。

まころんさん:自分はだいたい37点くらいだったと思います。

▲smileさん表紙イラスト例

▲smileさん表紙イラスト例

▲まころんさん表紙イラスト例

▲まころんさん表紙イラスト例

――たくさんのイラストを提供されていますが、自分の中で印象に残っているイラストはありますか?

smileさん:僕は一度描いたイラストって、大分印象が薄くなってしまうタイプでして……(笑)。

ただ、絵ではなく音楽なんですけど、アーティストのヨルシカさんが好きで、ヨルシカさんのメロディーラインや歌詞からすごく影響を受けた作品が多いですね。

――小説からインスピレーションを受けて音楽を作っているYOASOBIさんとは逆のアプローチですね。

smileさん:でもYOASOBIさんもめちゃくちゃ好きなんですよ(笑)。絵からよりも、言葉とか音楽とか、違う分野から受けた刺激で絵のアイディアが浮かぶってことは結構多いです。

やっぱり僕はコンセプトアートのような仕事が多いので、モヤっとした作品の雰囲気みたいなところを掴んで創作に活かすのは得意な方なのかなと、自己分析したりもしています。

――確かに、コンセプトアートってプロジェクトの初期とかに書かれることが多いので、断片的な情報からスタートしますよね。

smileさん:そうですね。そこから想像を膨らませないといけないので。まぁ、僕の場合はいらないものを足しすぎてしまって、後から削ることも多いんですけど(笑)。

――まころんさんはいかがですか?

まころんさん:自分も同じタイプで、特定の作品があるわけではないんですけど、実際に旅をして、その時に受けた感動とかを作品に落とし込んだりしているので、四季みたいなのがテーマになった作品が多いですね。

――風景のイラストって、見たもののそのまま書くのではなく、見た時に受けた印象みたいなものを形にしているようなイメージがあります。

まころんさん:そうですね。実際、まころんとして絵を書き始めたのも、そういう気持ちを絵で表現したいと思ったからなんです。なので現実の景色と比べると、言ってしまえば嘘をついているような部分もあるんですけど、それは意図してやっています。

あと自分の特徴としては、コンセプトアートとかなら、本来は書くべきような部分をあえてラフっぽくして、見せたいところを強調するみたいな手法も使ったりしてます。

……というのも、自分は全体のラフとか構図を決めずに、描きたいところから描き始めるというやり方をしているので、何も考えずにやると全体がごちゃっとなったりしちゃうんです。

だから引き算が必要なところを予め意識して、何を伝えたいのかが分かるような形でまとめるようにしています。

――smileさんも風景画を描かれていますが、どんなことを意識されていますか?

smileさん:自分の方も、やっぱりその時の自分が思った感情を誇張して表現するという点は意識しています。

「寒い」とか「暗い」とかだけじゃなくて、その感情をより膨らませて「孤独」みたいなテーマにつなげたり、構図や色でその感情をより分かりやすくするようなイメージですね。

――これまで小説を読んでいて、表紙とか挿絵を描いてみたいと思われた経験はありますか?

smileさん:それはまだないのですが、このシーンの背景は自分が得意な奴だな、みたいな分析をすることはありますね。ちょっと職業病みたいな感じかもしれません。

まころんさん:小説を読みながら「たぶんこういうシーンなんだろうな」って想像は結構していて、実際に描いたこともあります。

特定のシーンをイメージした挿絵とは違うんですけど、自分で合うと思った音楽も流しながら絵を描いてみたり、小説から受けたインスピレーションを元にイラスト書くことは、結構珍しくないかもしれません。

――今回の企画では、いろんな作家の方々がお二人のイラストを使われると思うのですが、自身のイラストが使われた作品を読んで、逆にインスピレーションを受けるみたいなことも起こりそうだなと。

まころんさん:それはありそうですね。実際、自分のイラストを元に文章を書いてくださった方も今までにいて、人それぞれ捉え方みたいなのが違っているのが面白いなと感じた経験をしたことはありました。

自分は言葉の表現が苦手で、その代わりに絵で表現しているところもあるので、「言葉にするとこんなに美しい文章になるんだな」って感動したりすることも結構あります。

・まころんさんのイラスト画像を表紙に使った作品
「隣に座ってもいいですか」

・smileさんのイラスト画像を表紙に使った作品
「呪われた巫女様」

――今後、今回の企画のために新規に描きたいみたいな想いはありますか?

smileさん:何もなしに描くのは難しいと思うので、もしなにかテーマみたいなものがあって、それに沿ったイラストを描くみたいな企画があったら挑戦してみたいですね。

まころんさん:自分も、予めテーマみたいなものが決まっているなら描いてみたいです。

smileさん:絵の方からスタートすると、絵の世界観に合わせて物語を作っていくという流れになりそうで。それはそれで面白そうだとは思うんですけど、やっぱり小説の世界観に合うようなイラストを提供していきたいという想いの方は強いですね。

――そういう意味では、今回の企画はかなり独特ですよね。100%自分のためのイラストというわけではないけど、誰かからオーダーがあるわけでもないっていう。

smileさん:そう思います。……ちょっといやらしい話になっちゃいますけど、もしイラストレーター側がたくさんイラストを使って欲しいなら、いわゆる皆が好きそうな雰囲気の中に、独特の癖みたいなのを入れたりすると良いんじゃないかと予想したりしています(笑)。

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