『アクアリウムは踊らない』制作者・橙々さん×レトロ役・花守ゆみりさんインタビュー｜レトロは最初「のじゃロリ」キャラだった!?　ラストの“あの”名台詞に込められた想いとは？

「ホラー嫌いが作るホラーゲーム」のキャッチコピーでも知られるフリーゲーム『アクアリウムは踊らない』（以下、『アクおど』）。

作者である橙々さんが、一人で8年をかけて製作した制作秘話や、「RTA in Japan Winter 2024」でのプレイが「公開デバッグ」としてXでトレンド入りするなど、SNS等でも大きな話題を呼んでいるタイトルです。

そんな『アクおど』は、2025年8月1日（金）にNintendo Switch版が発売予定となっており、キャラクターボイスに加え、新規シナリオやイベントCGといった追加要素が盛り込まれています。

その発売も迫る中、制作者である橙々さんと、Nintendo Switch版でレトロの声を担当する花守ゆみりさんにインタビューを実施。花守さんと『アクおど』との出会い、そして「涙腺と戦いながら」行われたという収録時のエピソードなど、様々なお話をお聞きすることができました。

なお、本インタビューは、エンディングを含む『アクおど』本編のネタバレを含む内容となっておりますのでご注意ください。

オファーが来る前から『アクおど』のプレイ動画を見ていた

──今回の『アクおど』キャスト陣は、全員橙々さんからのご指名だったとお聞きしています。レトロ役に花守さんをキャスティングされた理由からお聞かせください。

橙々さん（以下、橙々）：元々、レトロの声は私の中で明確なイメージがあって、そのイメージに近い人の声を探しまくっていたんです。そのイメージが固まりすぎていた分、針の穴に糸を通すような状態だったのですが、花守さんの演技を聞いた瞬間に「この人しかない！」とビビっときて。オファーを出した後で、めちゃくちゃドキドキしながら返事を待っていました（笑）。

レトロ役・花守ゆみりさん（以下、花守）：まさか先生の中で、そんな厳密なオーディションが行われているとは知らなかったです（笑）。

──レトロ役は、中性的かつカッコいい声の出せる方、のようなイメージだったのでしょうか。

橙々：そうですね。カッコいい声は大前提で、その上で女性らしい繊細さも含め、心の動きを丁寧に演じてくださるような方が良いなとイメージしていました。そこにバッチリとハマったのが花守さんだったという形です。

（キャスティングについて）ファンの皆さんからの評判もめちゃくちゃ良くて、「イメージそのまま！」という声をたくさんいただきました。花守さんをはじめ、みなさんにお願いできて本当に良かったなと思っています。

花守：ご期待に応えられていると良いのですが……。

橙々：完璧でした！

──花守さんは、『アクおど』という作品に対してどのような印象をお持ちでしたか？

花守：実は、出演のお話をいただく前から、ゲーム実況をされている方のプレイ動画を見たことがあったんです。

水族館にホラーが合わさる、「綺麗」と「怖い」を掛け算したゲーム……それを8年かけて一人の方が作ったというインパクトのあるキャッチコピーを知って、絶対見てみたいと思って。それで、実況者の方の動画を見させていただいたのが最初の出会いだったと思います。

橙々：まさか、今回のお話の前から知っていただけていたなんて……嬉しいです。

花守：とても綺麗で切なくて、ちょっと怖くて、でも愛おしい物語と音楽に、一瞬で心を掴まれました。特に冒頭部分で、ノベルゲームのような形式でありながら、情景が自然と頭の中に流れ込んでくるような作品だと感じたのを、よく覚えています。

しかも、レトロ役のお話をいただいたのが、初めて『アクおど』を見たすぐ後のことで、タイムリーなタイミングだったんです。マネージャーさんから「ゲームのお話が来ています」と、資料を見せていただいた時点で即決でした（笑）。

──即決！

花守：というのも、その時には “あの”ラストシーンも見させていただいた状態だったんです。なのでレトロのお話をいただいて「絶対にやりたい！」と思いました。「これ、私がやりますって言ったら、すぐ決まるんですか？」って、確認しちゃったことも覚えています（笑）。

そのくらいとても綺麗で、自分の中でも宝物になるお話だと感じたのが『アクおど』への印象です。その分、しっかりと作品を彩れるように頑張らないといけないというプレッシャーはありました。

──収録はどのようなお気持ちで臨まれていましたか？

花守：レトロは、中盤くらいまで語られないことがたくさんあるキャラクターです。本当は話したいけれど、「スーズにとっては知らなくていいことだ」という、彼女の中で起こっている葛藤が少しずつ滲んでいくように演じられたら、と考えていました。

そんな「言いたいけど言えない」というレトロの気持ちに共感していました。私自身、最近ちょっと涙もろくなっているのもあって、涙腺と戦いながらの収録でしたね。

──ゲームのプレイ動画をご覧になっていたことで、収録がしやすかったと感じた部分はありましたか？

花守：職業病だと思うのですが、ゲーム実況を見させていただいた時も、画面を見ながら「こういう風に喋っていくんだろうな」とイメージをしていました。

改めてお仕事として役を任せていただけることが決まった後に、もう１回映像を見て、その時のイメージを再度組み立て直して役に落とし込んでいきました。