『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』三日月・オーガス役 河西健吾さんインタビュー｜三日月はこれからもずっと何かしらで声を届けていきたいキャラクターのひとり

2015年10月にガンダムシリーズのひとつとして放送開始したTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』。

その放送10周年を記念して、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント -小さな挑戦者の軌跡-』および『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』新作短編「幕間の楔」が、2025年10月31日（金）より劇場で4週間限定で上映中となっています。

アニメイトタイムズではその公開にあわせて、三日月・オーガス役 河西健吾さんへのインタビューを実施。TVシリーズ放送当時の裏話はもちろん、新たな鉄華団の物語として公開された「幕間の楔」の収録でのエピソードや物語について存分に語っていただきました。

TVシリーズにおける三日月とオルガ・イツカの掛け合いにおける収録当時の裏話や、三日月というキャラクターや彼の操るバルバトスの印象などもお話しいただいています。ぜひご一読いただければ幸いです。

なお、公開後の掲載になるため、一部本編のネタバレが含まれています。鑑賞前にチェックされている方はご注意いただければ幸いです。

第1話「鉄と血と」には『鉄血のオルフェンズ』らしさが詰まっている

──特別編集版『ウルズハント -小さな挑戦者の軌跡-』ならびに新作短編「幕間の楔」が上映中です。10周年の節目に『鉄血』の新たな展開が見られたことについて、今の心境をお聞かせ願えますでしょうか。

三日月・オーガス役 河西健吾さん（以下、河西）：僕自身……そして他の出演キャスト陣もそうだったのですが、色々なところで「劇場版をやりたい」と声をあげ続けていました。それが放送から10周年の節目に叶ったというのが凄く嬉しいです。

スマートフォンアプリ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズG」で展開された『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』のお話は、「鉄オルG」をやっていないと見られなかったものでした。そんな作品を劇場の大きなスクリーンと音響で、10年間『鉄血』を追いかけ続けてくれたみなさんと楽しめる喜びがあります。

──河西さんは三日月が初の主役だったと記憶しているのですが、そんな三日月を演じられてからの10年間での変化はありましたか？

河西：アニメ作品で初めて主役を任せていただいたのは『鉄血』でしたね。やっぱり、『鉄血』から僕自身、色々な作品でお仕事をさせていただく機会も増えましたし、この作品で僕のことを知ってくださった方がたくさんいます。

最近では、放送当時は『鉄血』を視聴していなかったけれど、僕のことを他の作品で知った方がどんな作品に出演しているのか調べてくれて、「『鉄血』を見てみようかな」とおっしゃってくれたりもします。

──度々ラジオの「鉄華団放送局（通称：鉄ラジ）」が復活するなど、この10年の間にも様々な企画が行われていました。印象に残っている他の出演キャスト陣とのエピソードはありますか？

河西：10年経った今も『鉄血』に関わったキャストと他の現場で再会すると、どこかあの当時の空気を感じることがあります。最近だと「イベントやるんですね」とか「ラジオ復活するんですね」とか、一緒に関わるメンバーと話しています。そういった久しぶりだけど以前共演したが故の強固な繋がりは今も続いています。

──「幕間の楔」の収録の時にお話しされたことなどはありますか？

河西：久しぶりの『鉄血』のアフレコだったのですが、どこか緊張感がありつつ同窓会のような雰囲気がありました。後は、お互い久しぶりにキャラクターとして喋るので、気恥ずかしさみたいなものもあったりしましたね（苦笑）

でもテストをやってディレクションを受けたことに対して、いざ本番の収録に臨むともうキャラクターとしてみんなその場所にいる……本当に流石だなぁと。やっぱり10年一緒にやってきた面々だなというのは感じました。

──TVシリーズの放送当時を振り返って印象に残っているエピソードについてお伺いできると嬉しいです。

河西：毎週のアフレコ後にみんなでよくご飯に行っていたことを覚えています。ご飯に行くことは、もちろん他の現場でもあるのですが、あんなに熱く……それもかなりの人数で行っていたなんて、僕にとっては後にも先にも『鉄血』だけだったかもしれないなと。僕が出演した作品の中では、そういった機会が多かったのは断トツで『鉄血』ですね。

あとはTVオリジナル作品なので、毎週この後の展開はどうなるんだろうとか、自分のキャラクターの出番はいつあるんだろうとか、みんなでよく作品について話していました。

──今回の上映をきっかけに『鉄血』を改めてご覧になられる方もいると思います。そんな方たちにはどんなところに注目して見ていただきたいですか？

河西：世の中に理不尽なことって色々潜んでいると思うのですが、そういったものに直面した時に諦めずに頑張っていた子たちがいたことを思い出せる作品だと思います。リアルの自分の状況にも置き換えられるのかなとも思いますし、こういう場面で彼らだったらどうするんだろうみたいに、ご覧になっていただくことで自分が頑張るための力にしてもらえたら嬉しいなって思います。

──河西さんが印象に残っている『鉄血』の場面はありますか？

河西：やっぱり第1話「鉄と血と」ですね。あの第1話を見ていただけると『鉄血』がどんな作品なのかわかると言いますか。こんな作品なんだ、こういう物語が展開していくんだっていう要素が詰まっている感じがしています。

その中でも、第1話でバルバトスが地面から出てくるところは、横山克さんの音楽もあわせて盛り上がりがありますよね。絶望的な瞬間が好転する瞬間で、見ていてスカッとします。

──河西さんにとって三日月というキャラクターや、彼の操るバルバトスへの思い入れは、やっぱり強いものがあるのでしょうか？

河西：やっぱり初めて主役として演じたキャラクターですし、三日月はこれからもずっと何かしらの形で声を届けていきたいキャラクターのひとりだという想いはずっとあります。バルバトスについては、『鉄血』はパイロットとモビルスーツの繋がりも深いものがあると思っていて。友達でもないし家族でもない……ずっと共にいる戦友……でもないですけれど、「なんかずっと隣にいるヤツ」みたいな感じですかね。

──三日月にとってオルガの存在は欠かせないと思うんですが、三日月とオルガが関わるシーンで、特に印象に残っているものはありますか？

河西：やっぱり第1期でビスケット・グリフォンが亡くなった後の第22話「まだ還れない」でしょうか。オルガの心が折れかかっているところを、三日月が奮い立たせるシーンは中々熱いものがあったと思います。あんなにも歪な関係性も中々ないなと思いますし。

オルガが第6話「彼等について」で「あの目に映るオレは、いつだって最高に粋がって、カッコいいオルガ・イツカじゃなきゃいけねえんだ」と言ってましたが、オルガは常に三日月のことを気にしていて。そんなオルガを見て、三日月は「次は何をすればいい？」と問いかけるから、その度にオルガはそんな三日月に応えないといけなくなる。凄く危ういんですけれど、本当に一瞬でも止まったらおそらくどちらかがダメになるんだろうなっていう歪さをあの瞬間に感じたんです。

──そんな第22話「まだ還れない」の収録当時のことで、今も印象に残っていることはありますか？

河西：アフレコではテストをしてディレクションをいただいて、それを自分なりに落とし込んで本番をやるというプロセスを踏むのですが、今でも覚えているのはその流れの中で「今、凄く良い感じにお芝居が流れているな」と感じられたことですね。

でもそれを感じた瞬間に、僕が台詞を噛んでしまったんです。それで「ああ、やってしまった……」と思ったのですが、オルガ役の細谷さんは気にも留めずにそこに居て、次の台詞を言ってくれました。あの瞬間は作中とは逆に、僕が細谷さんに奮い立たせてもらったと思っています。

そこ以外でも、ずっと隣で色々やってくれているのを見ていましたし、そんな細谷さんのおかげで三日月として自由に立ち振る舞いができたというのは感じていました。