
それぞれの感情が溢れた有マ記念。一瞬のきらめきを美しく、儚く、危うく、魅力的に――アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』高柳知葉さん(オグリキャップ役)、大空直美さん(タマモクロス役)、優木かなさん(スーパークリーク役)、花守ゆみりさん(ディクタストライカ役)インタビュー
実は一番の常識人?「静」と「動」を合わせ持つディクタストライカ
――ディクタストライカは、小内忠トレーナーから言われていたように“お人好し”ですね(笑)。
花守:結構ギャップのある子ですよね。目つきも相まって一見すると「とっつきにくい、ちょっと孤高の人なのかな?」と思わせておいての、なんだかんだ1人でいることがないウマ娘で(笑)。みんなが話しているとやってくるし。その“お人好し”はどこから来るのかというと、やっぱり「最高の環境で自分の限界と向き合って、最高の走りをしたい」という、走りに対する探究心や欲求なんじゃないかなって思いながら演じてきました。
孤高に見えて、人との繋がりも持てる。「静」と「動」を持ち合わせているタイプなんです。普段はちゃんと対話をするし、なんなら繋ぐこともできるような会話をするけど、“走る”となった瞬間に獰猛さと鋭さが顕著に現れる。そういうギャップを常に持ち続けている子だなって。ある意味、一番の常識人じゃないかなと思います。
――日常の会話では、第14話の「マヨラーじゃねぇよ」ってツッコミも好きです。
花守:オグリに対して、ちゃんとツッコミを入れますよね(笑)。
高柳:教室にいるときはタマと一緒じゃないし、ベルノ(ベルノライト)とは受けている授業が違うみたいだし。オグリは1人だと大変なことになっちゃうから、隣にツッコんでくれる人がいないとバランス取れないんですけど、クラスにおいてその役割は間違いなくディクタでした。
――なんだかんだ気にかけてくれますからね。第20話の併走でオグリにヒントを与えなかったら、オグリは有マ記念でもまだ“領域《ゾーン》”に入れなかった可能性もあるわけで。
花守:行動すべての根幹に、さっき言った「常に最高の環境で最高の走りをしたい」という欲があるんだと思います。自分の強さの鍵を惜しまずに相手に渡して、きっかけを与えることができるのはディクタの矜持であり、走りにかける貪欲さが出ているなと。
同時に、彼女の中では、自分が精神的に参っていたときにずっと走り続けてくれたオグリの存在が大きかったんですよね。一緒に走ったことはなくても、見せ続けてくれた走りがあるからこそ、いまも燃え続けている心がある。有マ記念という最高の舞台が整ったことは、ディクタの中で最高に熱かったんじゃないかなと思います。
――その矜持や熱さがディクタらしくて格好いいです。
花守:有マ記念でスタートを失敗しても、それを一切ハンデとして捉えず、「いまあるもので、全力でぶつかるだけ。いまは最高の状態なんだから」と感じられる。走ることに120%全てを賭けて戦える場に立っていて、アドレナリンどころじゃなく「とにかく楽しい! 走りたい!」という気持ちでいっぱいだったと思うんです。だから、限界を踏み抜いて悔しがる言葉は、なんか線香花火の最後を見ているようにも感じましたね。
原作で『白い稲妻篇』を読んだとき、ディクタ的にここはすべてを置いていく場所だなと思ったんです。この一瞬のきらめきをいかに美しく、儚く、危うく、魅力的に演じられるか。その思いで現場に行き、皆さんの熱い芝居を聞いて、自分も高みに持っていきたいと全力を出し切りました。ディクタと同じように燃え尽きたというか、ちゃんと走り終えることができたので、個人的にもう思い残すことはない、と言ったら怒られちゃいますね(笑)。勝利という願いが叶うことはなかったけど、全部出し切ったのが(演技に)乗っていたらいいなと思っています。
――完全に乗っていましたよ。ディクタが領域《ゾーン》に入ったときの演技とか鳥肌ものでした。
高柳:ブースで聞いていても本当にすごかったです。発するエネルギーが尋常じゃなくて。
優木:「どっかから血が出ているんじゃない? 大丈夫?」って。
花守:「全部置いて行くぞ!!」って気持ちでしたから。それも、皆さんのお芝居と演出があったからだと思います。現場の空気が最高にピリピリしていて、演じるのが超楽しかったです。
大空:うん。楽しかった。
優木:みんな仲間でライバル感がすごくて、いい意味でピリピリしていたよね。
花守:本当に、常にいまの自分が出せる限界を置いていこうと思うことができたのは、この現場ならではの空気のおかげです。
感じたまま自然と言葉になった「ありがとう」
――鳥肌モノといえば、第21話でのタマモクロスの「ヌルいなぁ」からのセリフも怖いぐらいしびれましたね。
大空:そう言ってもらえて嬉しいです。
高柳:第1クールの頃に受けた取材で、「遥かなる強大な山でなければならない」って話していたよね。
大空:私、その言葉をずっと背負っていて。オグリにとっての最高のライバルでありたいし、オグリから見た背中が「遥かなる強大な山」であらねばならないとずっと思っていました。
高柳:間違いなく、ずっとそうだったよ。
大空:役者としてもそこに到達したくて……目一杯背伸びをしながら、タマに負けないように頑張らなきゃなって演じていました。必死でした。みんなのおかげで、私もいまのすべてを置いてくることができたと思います。見どころを聞かれて「みんなのお芝居です」って言葉が出てくるぐらい、本当にみんなのお芝居が最高すぎて、演出も最高で、楽しい現場でした。
――素敵なセリフはほかにもいっぱいありますが、第22話ラストのオグリキャップの「ありがとう」もすごく印象的でした。
大空・優木:あれ良かった〜!
花守:テストのときから「こんな落とし方されたら泣いちゃうな」って思いましたもん。完璧でした。
高柳:嬉しい。オグリって言葉数が多い子ではないから、ひと言ひと言が全部ピュアで、心にある言葉を真っ直ぐ言葉にできるんです。この「ありがとう」はオグリが歩んできた道のりをそのまま表していると感じて、出会った人たちのことが走馬灯のように脳裏によぎったというか、自然と出てきました。
実は、テストでやってみて「最後だからもっと盛り上げた方が良かったですか?」と聞いたんです。そうしたら音響監督さんが「いや、いまのがいいです」と言ってくださって。小手先のテクニックや「こうしたらいいかな」というエゴや下心が入ったら、彼女の純粋な言葉ではなくなる。オグリがすごくピュアでいてくれるから私もピュアに言葉が出せるというか、その瞬間感じたまま出る言葉でいいんだなって。
花守:言うことないって言われていましたよね。
高柳:アフレコが始まるまで、『シンデレラグレイ』のオグリをどう演じたらいいのか、自分の表現の力に対する不安や迷いもあったんです。でも、いざ始まってみたら、自分が積み重ねたものをそのまま出せばいいんだなって、すごく実感したアフレコ期間でしたね。
――皆さんの素晴らしい演技が、さらなる魅力や熱さを生んでいたとすごく感じます。
優木:みんな格好良かったでしょ?
大空:「お気に入りのウマ娘を教えてください」って質問されるとすごく困るぐらい、みんな格好良くて。スポットが当たった瞬間にその子の背景や心情がビリビリ伝わってくるから、好きにならざるを得ないんです。
高柳:全員が最高です! 物語としてはオグリキャップを軸として描かれていますけど、現実世界の競馬と同じように、それぞれが間違いなく誰かにとっての主役になっているんです。それを『シンデレラグレイ』ですごく実感しました。
花守:わかります。それぞれが物語を背負って走っているから、誰も負けて欲しくない。
優木:私にとってはクリークの物語なんですよ。それをアニメでちゃんと演じさせてもらえたのが、めちゃくちゃ嬉しいです。
高柳:構成上、描かれる尺の違いはありますけど、間違いなく彼女たちそれぞれの生きてきた瞬間を感じ取れる。だからこそ、アニメになって色がついて動いて、お芝居がついたときに、ますます全員を好きになってしまうんです。ウマ娘だけじゃなくトレーナーも含めて「こんなの好きにならざるを得ないでしょ」って作品になったなと思いました。
























































