音楽
安彦良和が自作品の音楽を回顧する【インタビュー】

CD「安彦良和 アニメーション作品 音楽集」発売に寄せて――安彦良和が自作品の音楽を回顧する【インタビュー】

『蒼い人の伝説: ルウは風の中』での宮川泰

ーー『宇宙戦艦ヤマト』の宮川泰さんについては何か思い出がありますか?

安彦:今回のCDには、ラストシーンの原画も描かされた『さらば宇宙戦艦ヤマト』の音楽も入っているけど、当時はそこにどんな音楽が付くかなんて全く意識してなかった。その前のテレビシリーズをやっていた際にも、スタジオで「あ、宮川泰さんが通っていった」とチラ見したくらい(笑)。こっちは一介の絵コンテマンに過ぎないし、全然話す機会なんて無かったよね。だって、宮川さんといえばNHKの『紅白歌合戦』で毎年、「蛍の光」の指揮をしていた有名人でしょう。それと我々の世代だと、ザ・ピーナッツ。有名な曲はほとんど宮川さんだったんじゃないかな。

ーー他の作家も関わっていますが、「ふりむかないで」、「恋のバカンス」や「ウナ・セラ・ディ東京」など数々のヒット曲が宮川さんによるものです。

安彦:だから、とんでもない人なんですよ。直接会って話したのは『ヤマト』より大分後で、『蒼い人の伝説: ルウは風の中』のときです。こちらは恐れ多いと思っていたけど、気さくな人柄に触れて、これがまた驚いたんですよね。久石さんや服部さんもそうだけど、シンプルにすごくいい人。

ーー当時のエピソードはご記憶ですか?

安彦:お会いしたのは当時、赤坂にあった日本コロムビアのスタジオ。今は高層マンションになっている坂の上だね。『ヤマト』を企画した西崎(義展)の事務所がすぐ近くにあったから、通り過ぎる度に「ここがコロムビアなんだな」と思っていたけど、実際に中に入ったら、かなり年季の入ったスタジオでね(笑)。

ーー宮川さんとは、どういったお話をされましたか?

安彦:けっこう話をしたけど、あの方はとにかく話が面白い。『ヤマト』の話ももちろん聞きましたよ。「やりたい放題で、いくらでも予算を出してもらえるし、オーケストラを指揮して実に気持ち良かった」と言っていて、こっちは内心「毎年、『蛍の光』を振ってるのに!?」なんて思っていたんだけどね(笑)。

ーー『蒼い人の伝説 ルウは風の中』は、「ルウは風の中」と「赤い恋~Kiss evermore~」の2曲があり、いずれも90年代に発売された堀江美都子さんのCD-BOXが初出で、今回収録されている「ルウは風の中」は2度目のCD化になります。

安彦:これはもともと僕がアニメを引退した後、広告代理店の人間が持ってきた企画だったんですよ。小説も何本か書いていて、ほとんどは忘れちゃったけど、『蒼い人の伝説』は、初めて書いたライトノベルで愛着があったし、代理店といえば堅気の世界でしょう。しかも相手は最初の3話だけ関わった『星の王子さま プチ・プランス』の代理店プロデューサーで旧知の人物だった。それで「僕はアニメは辞めたから手を貸さないけど」と前置きした上で許可だけ出した。ただ、向こうは映像を作りたい気持ちだけはあったけど、これが全然そんな力なんてない(笑)。一方で、「曲は宮川泰さんに頼む」と聞いて「え、宮川さんなんてとても無理でしょ」と思ったけど、そうしたら、これはウソじゃなかったわけ。代理店の人間なんて、あちこちで遊んでいるから友人が多いんだろうね。時々そういうホントが入るから厄介(笑)。企画自体は結局、頓挫したけど、後々、この歌の件で、宮川さんの事務所から連絡をもらったことがあり、今も愛着を持っていることが分かって、それは嬉しかったですよね。

ーー歌手は堀江美都子さんでした。

安彦:歌手は最初、別の人だと聞いていたけど、堀江さんの歌声はやっぱり素晴らしかったですよ。

ーー安彦さんが企画をされた『わんぱく大昔クムクム』の主題歌も堀江さんでしたね。

安彦:作品ではご縁があったけど、残念ながら直接お会いする機会が無いままなんだよね。ただ、周囲の人間から「堀江さんはいいよ」という話は何度も耳にしていました。それこそ、アニソン界の草分け的存在のおひとりですよね。「わんぱく大昔クムクム」や「ルウは風の中」は、今、聴き返してみても「いいなぁ」と思いますよ。

『機動戦士ガンダム』~テレビから三部作の劇場版へ

ーー『機動戦士ガンダム』では、何か音楽にまつわる思い出はありますか?

安彦:音楽そのものよりも自分の仕事の話になるけど、2枚目のLP(※「戦場で」)が思い出深いですね。絵としての出来はともかくとして、やっぱりアニメレコードのビジュアル面でひとつの節目だったように思います。あの頃からレコードやCDのジャケットも描くようになったけど、特に注文を受けることもなく、こちらで勝手に描いて「いいでしょう?」とやっていた。最近は「キャラクターをたくさん入れてください」とか色々オーダーがあるから逆に大変(笑)。こちらのイメージだけで描くことが許されていた時代だったということだね。

ーー劇場版三部作からは、それぞれの主題歌も今回のアルバムに収録されています。

安彦:「哀戦士」と「めぐりあい」は井上大輔さんだったけど、一作目の「砂の十字架」は、作詞と作曲が谷村新司で、かなり高いハードルを越えたなと思ったのを覚えています。この取材の前に久々に聴き返してみたけど、歌手のやしきたかじんもなかなか上手いね。彼に決まった経緯を僕は知らないんだけど。

ーー恐らくレコード会社の関係で、谷村さんは楽曲提供に留まり、当時キングレコード所属だったやしきたかじんさんに決まったようです。

安彦:やしきたかじんは、当時会っているんだよ。別に打ち合わせをしたとかじゃなくて、たまたまユタカ(※日本サンライズ旧第1スタジオ1階にあった喫茶店)でマネージャーと一緒だったところに同席しただけだけどね。あの人は音楽業界の人間という感じが全然しなくて、それこそ、やさぐれた関西のおっさんみたいな(笑)。後に毒舌トークで「関西の帝王」になるなんて思いもしなかったよね。

ーー井上大輔さんについての思い出はありますか?

安彦:彼は富野氏の学生時代の知り合いでしょ。打ち上げパーティか何かで一度会っていて、富野氏が「僕のスタッフの安彦です」と紹介してくれた(笑)。そのただ一度切りでしたね。「砂の十字架」も良かったけど、今思うと、どうして最初から井上さんに行かなかったのかという気もするよね。

ーー「砂の十字架」はエンドロールで流れるだけでしたが、「哀戦士」と「めぐりあい」は劇中ともリンクしていて、明らかに使い方が変わっていますね。

安彦:そこも富野氏の意向だと思うけど、やっぱり知り合いだったから、ツーカーでいけたんでしょう。あの一連は『ガンダム』の歌の中でも、かなり印象深い部類に入るんじゃないかな。

ーーこうした音楽の使い方について、安彦さんはどのように思われましたか?

安彦:「哀戦士」が流れるジャブローの場面は、最初に観たときは「絵とくっ付き過ぎじゃないかな?」という気がした。アニメとベッタリの主題歌は、昔の『超電磁ロボ コン・バトラーV』や『勇者ライディーン』ならともかく(笑)、映画の主題歌って、作品とは遠からず近からずで、それでいて単体でも売れるものだと認識していたから。「実はアニメの主題歌」「え、そうなの!?」みたいなね。でも、「哀戦士」や「めぐりあい」は、いわゆるタイアップソングとは違うし、完全に映画のために書き下ろしていて、それが成功した秘訣じゃないかな。

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