
「悲しみを得ることでしか生きられない生き物が人のことを好きになった時に、愛を諦めるか、自分の命を諦めるか」──原作・そらるさんが想う『絵物語 空腹の怪物』と制作秘話【インタビュー前編】
「とりあえず読んでみてほしいなと思っています」
──『空腹の怪物』の楽曲が今回、暁佳奈先生とハナさんという豪華な布陣で絵物語になります。企画が始動したとき、どのように思われましたか?
そらる:結構前からだったと思いますが、いつか絵本を出したいという話をしていました。『空腹の怪物』はプロットの段階で、しっかりお話として書いていたということもあって、この楽曲はテーマとしても、キャラクターのデザインも、ちょうど良いんじゃないかと思っていて。自分から「やってみたい」という話をしました。
今回の最終的な着地点は、絵本ではなく絵物語。少し形は変わりましたが、自分個人としての仕事って、曲とプロットを作った時点でだいたい終わってしまうんです。暁佳奈先生、ハナさんのお力で、自分の想像以上のものにしてくださったので、一人の読者としてしっかりと楽しめるものになっていました。
文章に関しては、自分で書くかどうか迷っていたんですけど、やっぱり作品としてより良いものになることが重要だと思ったので、文章も含めてこの形で作品として出すことができて、すごく嬉しく思っています。
──改めて暁先生の文章、ハナさんのイラスト・ビジュアルの魅力を教えてください。
そらる:文章としての面白さはもちろん、設定からの肉付けの仕方だったり、表現の方法がさすがの一言といいますか。きっと普段、暁先生が描かれているものに比べると、文章量としてはそこまで多くない方だとは思うのですが、そのなかで物語の立ち上げから盛り上がる部分の作り方だったり、設定に基づいた肉付けの方法に説得力がありつつ、かといって、映像として公開されている物語との乖離もなくて。一番最初にいただいた文章から、ほとんど修正がないぐらい素晴らしかったです。
そらる:イラストに関してはMVの制作時に物語の落としどころなどに合わせて“空腹の怪物”のデザインを大きく変更していただきました。実は最初はもっと怖い感じだったんです。
映像に関しては、もはや自分よりハナさんの方が正解だなと思っているので、自分からはあまり言いませんでした。ハナさんの方が映像としての理解が深くて、その映像に合わせて自分が歌詞を変えたりすることもあるぐらい、しっかりと世界を作ってくださるんです。
──ある種、二人三脚といいますか。
そらる:そっちが変わったら、こっちもというか。いただいたものからイメージが膨らむこともありますね。
──制作中の暁先生、ハナさんとのお話で印象に残っているものはありますか?
そらる:最初に打合せさせていただいた時は、アルバムのことや「空腹の怪物」についての情報をお伝えさせていただいて、質問いただいたことに答える感じでした。自分から多くの希望・要望は伝えていなくて。文章に関しても絵に関しても、二人の方がずっと専門的で引き出しが広いので、自分が下手に伝えてそれを狭めないのがいいかなと。
本当にプロットを読んでいただいて、映像を見ていただいて、生まれた疑問に答えるぐらいだったと思います。
──ちなみにどのような質問が?
そらる:どうだったかなあ……。そもそものアルバムの作りが「二人の登場人物は変わらず、でも世界は変わる」という特殊なものなんです。最終的に、夢を見られなくなった後で物語が解決するようなストーリーだったので、その説明をよくしたのを覚えていますが……色々とご質問をいただいたと思いますが、あんまり覚えてないです……(笑)。
──暁先生の文章に対して、そらるさんはどのような印象をお持ちでしたか?
そらる:暁先生の作品に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がありますが、自分も原作やアニメを拝見しており、純粋に面白いと思っていました。なので今回のお話を受けていただけるとなった時はすごく嬉しかったです。どういうふうに仕上がるのかすごく楽しみだなと感じました。そこはもうファン的な目線で、最初から(出来栄えなどに)あまり心配はなかったです。
──同じようにハナさんのイラストに対する印象もお伺いできればと思います。
そらる:ハナさんには、アルバムやミュージックビデオなど、色々な場所でお世話になっています。他のイラストレーターさん……もちろん優秀な方ばかりなんですが、特にハナさんは伝えた材料から映像化した時の解像度が高いといいますか。
ちょっと偉そうな言い方になってしまいますが、歌詞ってほんの一部なんですよ。
── 一部?
そらる:すごく大きな物語があったとしても、歌詞にできるのは精々数文字。そぎ落としてそぎ落として、不必要な部分、あるいは必要な部分も削らなきゃいけない。入れたい言葉よりもリズムや(言葉の)ハマリ、音としての気持ち良さを優先しなければいけない瞬間もあるのが歌詞だと思うんです。
それを膨らませてキャラクターを考えるだけではなく、どういう人間と付き合っていて、どんな服を着ているのか――その世界でどう”生きているのか”まで考えて作ってくださっているのだと強く感じます。そんな特出した素晴らしさが、今回の作品にも存分に活かされているなと。自分が細かく指定しているわけではないんです。ハナさんが考えてくださった部分も多くて、助けられています。ある種、創作のパートナー的な位置づけかもしれません。
──ありがとうございます。今回の絵物語の発売に際して、改めて注目ポイントをお聞かせください。
そらる:今まで自分が出したものは、自分で全部文章を書いていました。当然といえば当然ですが、今回は文章に関しても、絵に関しても、自分がファンといえる方に書いていただいたものになっています。自分としても一生大切にしたいですし、素晴らしいものにしてくださったと思っているので、とりあえず読んでみてほしいなと思っています。
【インタビュー:西澤駿太郎】
『絵物語 空腹の怪物』情報
原作:そらる
作:暁 佳奈
絵:ハナ
2026年6月5日(金)発売
アニメイト特典:A4サイズクリアファイル
通常版
定価:1,980円(税込)
作品紹介
そらる作詞曲「空腹の怪物」が絵物語に。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「春夏秋冬代行者」シリーズの暁佳奈が新たな視点で小説化。MVイラストを担当したイラストレーター・ハナが絵を手掛ける。
あるところに、他者の悲しみでしかお腹を満たせない怪物がいました。
空腹に耐えきれず、人里に下りては村を荒らす怪物を鎮めるため、ひとりぼっちの少女が生贄として捧げられることになりました。
「怪物さま、あたしを食べますか」
楽曲「空腹の怪物」では語られなかった、“もうひとつ”の物語――
“後日譚”としてそらるが書き下ろした詩も収録。





























