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ゲーム『アイリス・オデッセイ パンドラの少女』レビュー

『アイリス・オデッセイ パンドラの少女』レビュー | 渋谷の地下に魔法の世界が広がる高揚感。一般人なのに覚悟が決まりすぎな主人公に度肝を抜かれる

2026年5月29日にSteamで発売された『アイリス・オデッセイ パンドラの少女』のレビューをお届けします。

 
※本記事には物語の2章(無料プレイ部分)までのネタバレが含まれているのでご注意ください。

 

 

ストーリーは想像以上にシリアスでダーク。現代異能モノで育った世代にはたまらない雰囲気が。

現代の渋谷を舞台に、行方不明になった兄を探す少女・風花と、魔法使いの犯罪捜査官・アイリスの冒険と心の交流を描くアドベンチャーゲーム『アイリス・オデッセイ パンドラの少女』(以下、アイオデ)。

本作は、アドベンチャーゲームでありながら基本プレイ無料のアイテム課金制(DLC)を採用しており、ゲームの序盤にあたる第2章までは誰でも無料でプレイできます。それ以降のパートは、有料のダウンロードコンテンツである「Complete Package」(2,980円)を購入することで遊べるようになるのが特徴です。

そんな本作を筆者もプレイさせていただいたのですが、とにかく「ストーリーが面白くて引き込まれた」というのが一番の感想。

これは良い意味で予想を裏切られた部分もあって、ストーリーのあらすじやビジュアルからは、「日常メインでたまにシリアスなバトルがある」くらいの、比較的ライトな雰囲気をイメージしていたんです。

しかし蓋を開けてみると、ストーリーは全体を通してめちゃくちゃシリアスで、ダークな設定も多く容赦のない展開が次々と襲ってきます。どちらかというとシリアスな展開の合間に日常シーンがあるタイプの作品です。

女の子同士のイチャイチャを目当てにプレイすると、ちょっと面食らうところもあるかもしれませんが、このシリアスなストーリーがめちゃ面白いんです。

息をつかせない展開が続く、エンタメ性の高い内容でありながら「死とは」「家族とは」みたいなことについて考えさせられる場面も多く、哲学的なテーマ性が両立しているのがすごいところです。

ビジュアル面もかなり気合が入っていて、序盤からイベントスチルがガンガン挿入されます。とくにバトルシーンは視覚的な演出が多めなので、普段小説をあまり読まないという人もスラスラと読める作りになっています。

ミステリーやサスペンスっぽいテイストもあり、読み進めれば進めるほど続きが気になる物語構成で、恋愛メインのアドベンチャーゲームとはかなりテイストが違っています。

これは個人的な話になるんですが、自分は主に2000年代くらいに流行っていた、現代日本を舞台にした異能バトルものに脳を焼かれて育った世代なので、その頃の作品に通じる雰囲気をヒシヒシと感じていました。あのあたりの時代のノベルゲームやライトノベルが好きな人には、たまらない雰囲気なんじゃないかと思います。

 

風花とアイリス、対照的な2人の主人公。近づいたり離れたりする関係性に注目

西園風花とアイリスという2人の主人公の魅力も重要なポイントです。

まず風花は、行方不明の兄を探している元孤児の少女です。「ロバの家」という養護施設で育ち、中学進学時に現在の西園家に引き取られました。彼女の義両親は周囲への見栄のために、外交官であるアイリスを家庭教師として雇っている……と、なかなかに複雑な家庭環境です。

養護施設で育った過去があるとはいえ、風花への第一印象は「平和な日本で育ったごく普通の女の子」という認識だったのですが、内面はなかなかに尖っているなと感じられたキャラクターです。

まず風花は、相手が建前で望む答えを瞬時に返して優等生を演じられる、かなり大人びたキャラクターです。その一方で、頭がいいからこそ嘘つきな大人を信用しない、隠れた反抗期みたいな時期でもあります。

『アイオデ』には、「パンドラ」と呼ばれる神々が封じられた指輪が登場し、その中の原初の神「ヘファイストス」が封じられた指輪を風花が手にしてしまったことがきっかけで物語が動きはじめるのですが、風花がすごいのが、これまで戦いとは無縁な生活を送っていたにも関わらず、覚悟の決まり方が常人離れしていること。

例えば2章では、ヘファイストスの指輪を狙う刺客であるゼピュロスが、風花が慕う義理の姉である西園ざくろを人質に取る展開が描かれるのですが、そこで風花はハプニングで指輪が抜けなくなっている演技をして、油断を誘ったところを騙し討ちするという作戦を取ります。

ゼピュロスも凄腕のエージェントであるため、結局その策は失敗するのですが、ゼピュロスが根っからの悪人ではないことを見抜いた上で、それを利用した作戦になっていて、咄嗟にその作戦を思いついて躊躇わずに実行できる、必要な判断を冷静に下せるタイプなんですね。

このあたりの大人びた感じは、風花がしっかり者で、施設では年上にすら「風花姉」と呼ばれているくらい頼られる立場の存在だったことが影響しています。

その点が、風花自身の本心を表に出すのが下手という欠点にも繋がっていたりして「もっと素直になれよ!」ともどかしさを感じたりする場面も。大人っぽさと子供っぽさが、絶妙な割合で融合しているキャラクターです。

一方、そんな風花と対照的なのが、もう一人の主人公であるアイリスです。

アイリスは表向きには「イースニッド」の外交官ですが、「巡礼観察官」と呼ばれる、魔法使いの犯罪捜査官という裏の顔を持っています。巡礼観察官たちの中でもかなりの実力者で、いわゆる「しごでき」系のヒロインなんですが、私生活は意外と抜けているというギャップがまずかわいい点。

その上で、ドライな価値観を持つキャラが多い『アイオデ』の中ではトップクラスの善良な心の持ち主でもあります。

かつての同僚が敵対した時も、ギリギリまで殺しを避けようとしますし、事件に巻き込まれた風花に対しても、過剰とも言ってもいいレベルで責任を背負い、助けようとします。

アイリスは巡礼観察官として多くの修羅場をくぐり抜けているはずなので、もっと冷酷でドライな性格になりそうなものですが、困っている人がいたらその人に共感して手を貸そうとする、まさに主人公らしいヒーロー気質を持ち合わせたキャラクターです。

ただ、アイリスが所属しているイースニッドは、決して清く正しい国というわけではないので、アイリスがもつ善性と、巡礼観察官としての立場が食い違う場面もあったり、立場と正義の葛藤というのも見どころの一つ。

アイリスはアイリスでかなりヘビーな過去があることも物語が進んでいくと明らかになることもあって、「この環境でよくこんないい娘が…」と驚くところもあったり、風花とは違った意味で常人離れしているキャラクターでもあります。

そんな正反対かつ、アクの強い2人ですが、あくまでも西園家が雇った家庭教師と生徒でしかないので、「特別仲が良いいわけでも悪くいわけでもない」という妙に現実味のある関係性からスタートします。

それから一度仲良くなったと思っても、実は心の奥まではさらけ出せていなかったり、近いようでどこか遠く、近づいたと思ったらまた遠ざかったりする2人の関係性は、本作ならではの特徴であり魅力にもなっています。

 

渋谷の地下が異界と化すワクワク感。2人の物語を眺めるプレイヤーの立場を逆手にとったシステムも面白い

本作の舞台となるのは、現代の渋谷。日常パートは地上の渋谷で展開しますが、魔法使い同士のバトルなどの非日常は主に地下で発生します。

よく渋谷駅は、その複雑な構造から「渋谷ダンジョン」と呼ばれたりもしますが、『アイオデ』の世界では旧銀座線のホームに秘密の通路が存在して、廃墟に繋がっていたり、「本当に渋谷の地下にダンジョンがあったら」という妄想が形になったようなワクワク感があります。

個人的に、現実の世界からの延長線として展開されるのが現代異能バトルの好きなところなんですが、『アイオデ』では、地下以外のパートでは我々がよく知る渋谷が忠実に描かれているので、とくにこのギャップが映えていました。

伝奇モノでは、こういった役割は「夜」だったりすることが多いんですが、『アイオデ』ではそれが「地下」に置き換わっている構造になっていて、地上と地下で、現実と異世界を行き来しているかのような感覚も味わえました。

また、前述した通り、『アイオデ』には「パンドラ」と呼ばれる神々が封じられた指輪が登場します。この指輪はストーリー的にも重要な位置づけですが、ゲームシステム側にも工夫がなされています。

ストーリー中、色の違う文字が表示されることがあり、文字をクリックすると、ヘファイストスたちパンドラがその単語や台詞に対応した説明や裏話を教えてくれる、TIPS的な要素を楽しめます。

面白いのが、ここでヘファイストスたちパンドラが話しかけているのは、風花やアイリスではなく我々プレイヤーだということ。

風花やアイリスの物語を眺めている、幽霊のような存在として、ゲーム内の世界観にプレイヤーが取り込まれているメタ構造になっているんです。

『アイオデ』はアドベンチャーゲームとしては珍しく、ストーリー中には選択肢が発生しません。一方でのパンドラとのやり取りでは、選択肢が出現し、正しい選択肢を選ぶとサブストーリーが解放されたりする遊びが用意されています。

プレイヤー自身は風花やアイリス本人ではないのでその行動に干渉できないので選択肢は出ない。対してヘファイストスたちとのやり取りは、プレイヤー自身に向けられたものなので、回答を選べるようになっている……というのがこの構造になっている理由だと考察できます。

個人的に、プレイヤーという存在をうまくゲームの世界観の中に組み込んだアドベンチャーゲームが好きなのもあって、個人的にツボにはまったポイントでした。

 

「この先はもっと面白い」という前提で無料体験を

そんな『アイオデ』について、まずは無料パートである2章までをプレイして……と言いたいところなんですが、個人的にとくに面白いと感じるようになったのが、DLCとなる3章以降でして、度肝を抜かれるような衝撃の展開と事実が次々と明らかになっていきます。

その後もどんどんシナリオが盛り上がるのもあって、「無料パートだけの人は、ここまでたどり着けないのか…!」というのに歯がゆさを感じたほど。

もちろん2章までの範囲も面白いのですが、そこから話が進むにつれどんどん面白さが増していくタイプの作品なので、「この先はもっと面白くなる」というのを前提にした上で、まずは無料パートをプレイしてみていただきたいです。

 

作品概要

『アイリス・オデッセイ パンドラの少女』

[発売日]2026年5月29日(金)
[料金体系]基本プレイ無料+有料DLC(2,980円/税込)
[ジャンル]現代ファンタジーアドベンチャー(ADV)ビジュアルノベル
[プラットフォーム]Steam
[プレイ人数]1人
[対応OS]Windows
[対応言語]日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)
[開発・販売]合同会社イースニッド
[プロモーション協力]株式会社フロンティアワークス(FW Games)

[キャスト]
アイリス:小原好美
西園風花:稲垣好
笠沙咲耶:根本京里
ミツバ:岡本綾香

[あらすじ]

「わたしは渋谷(ここ)で、家族を守りたい。」

渋谷に住む孤児の少女風花は、唯一の家族で行方不明の兄のミツバを探している。彼女は冒険の途上、自身に隠された魔法の力に目覚める。

凶悪な犯罪魔導師組織〈スカイシーカー〉を追う熟練の魔導師アイリスは、事件の捜査線上に浮かびあがった、組織に関係するこの兄妹に注目する。二人は関係を深め、やがて家族同然の間柄となる。

絆は、果たして待ち受ける陰謀を打ち砕けるのか。

風花とアイリス、2人の運命の出会いと、冒険を描く、現代ファンタジーADV開幕!
 
公式サイト
Steamストアページ
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SNSハッシュタグ: #アイリス・オデッセイ #アイオデ

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