
京都アニメーションの積み重ねを、その先へ――TVアニメ『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』太田稔監督が目指す、“つながる”ためのアニメーション【インタビュー】
京都アニメーション最新作として大きな注目を集めるTVアニメ『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』が、7月5日(日)よりABCテレビ、TOKYO MX、テレビ愛知、BS11にて放送スタート、Netflixにて世界独占配信されます。
和風スチームパンクと銘打った世界観、印象的な背景美術、テンポの良い掛け合いなど、これまでの京都アニメーション作品とはひと味違う魅力を持ちながら、その根底には同スタジオが長年積み重ねてきた“ものづくりの精神”が息づいています。
今作が初監督となった太田稔監督は、本作について「何かひとつでも新しいものを届けたい」と語ります。一方で、「これまでの京アニを無視したくない」とも話し、新境地と先人たちへの敬意の両立を目指して制作に臨んだと明かしました。
初監督作品だからこその迷いと葛藤、それでもクリエイターとして「踏み込む」覚悟。作品を通して人とつながることへの思い、本作に託したテーマについて、たっぷりとお話を伺いました。
迷いと葛藤が生み出した初監督作品
──ジャパンプレミア舞台挨拶の登壇直後になりますが、お客さんの反応はいかがでしたか。
太田稔監督(以下、太田):皆さん良いリアクションをくださって、ちゃんと届いたのかなと思います。ただ、僕自身は気が気じゃなかったので、落ち着いて皆さんの反応を見られてはいなかったかもしれないですが……。
──「気が気じゃない」というのは?
太田:本作は、ロンドンやタイでも上映していますけど、日本語ネイティブの皆さんに、この作品を見ていただくのは初めてでした。よりストレートに伝わると思いますし、初監督をさせてもらう作品の初公開ということもあって、そこはやっぱり緊張しましたね。
──7月には地上波放送も控えていますが、同じような緊張感がありますか?
太田:そうですね、一生懸命作ってきた作品なので、良いところも悪いところも、自分でよく理解しているつもりです。だから、いざ皆さんに公開するとなった時に、どういう形で伝わるのかなと。すごく緊張します……(笑)。
──本作は全体的に勢いがある作品でした。監督ご自身も「よし、行くぞ!」という感じなのかなと思っていましたが(笑)。
太田:いや、僕自身はずっと緊張していますよ(笑)。多分、勢いがあるように見えている箇所は失敗を覚悟でやっているところじゃないでしょうか。
──そういう感覚だったんですね。制作も迷いながら進めていたのでしょうか。
太田:迷いはずっとありました。物語のロジックの部分はしっかり組み立てながら、考えながら作ってはいるんですけど、自分の仕事自体に満足するというか、自信を持てたことはほとんどなかったです。ただ、声優さんが声を入れてくださった時、瞬間的に「良かった」と思うことはありましたね。
──初監督作品だからこそ、以前とは感じることも見えるものも変わりそうですね。
太田:そうですね。やっぱり見える景色は違います。他の演出さんがどういう仕事の仕方をしているのかも、気になるようになりました。他の人の仕事にすごく興味を持つようになりましたね。
なにか一つでも、新しいものを届けたい
──アニメーションとして表現していく上で、どのような方向性を意識されていましたか。
太田:個人的な目標としては、何かひとつ、映像面や物語の面で、見た人に新しいものや視点を届けられる作品にしたいと考えていました。世界観も魅力的で、人間ドラマにも重きを置いているので、視覚的な部分もそうですし、キャラクターたちの関係やドラマも含めて。
──「新しいもの」ですか。
太田:例えば、全てをストレートに信じている百川稲子( CV:雨宮 天)と、全てを疑う坂本喜八 (CV:内田雄馬)がいる。「信じる」と「疑う」を象徴するような関係なんですよね。
そのテーマ自体が珍しいというか、面白いテーマを背負ったキャラクターたちだと思います。その「信じる/疑う」ということについて考えるだけでも、新しい視点が生まれるきっかけになるんじゃないかと思ったり。
──物事へのスタンスが、対称的なふたりですよね。
太田:当たり前のことかもしれないのですが、「信じる/疑う」のどちらかひとつだけでは人生ままならないですよね。少なくとも何かを疑っているうちは、物事に完全に支配されずに済みます。身を守るためにも疑うことは必要でしょう。ただ、前に進むためには信じることも大切。矛と盾みたいな関係なのだと思います。
──ふたりの関係性については、どのように描いていこうと考えましたか?
太田:自分と違う人とコミュニケーションを取ることは、人生を豊かにすることなのかもしれないなと思っていて。刺激し合える関係というか。喜八と稲子は「疑う」と「信じる」という真反対のテーマを背負って進んでいくので、その違いが活きるような関係性を描きたいと思いました。
物語の中では、家庭環境や時代も含めて、ふたりともかなり理不尽な目に遭います。理不尽は誰にでも起こり得る。皆さんにとって、このふたりが理不尽に立ち向かうためのヒントみたいな存在になってくれたら嬉しいです。
──そして、三添洋輔(CV:内山昂輝)がこのふたりの間に入ってくる訳ですが……。
太田:洋輔は欲しいものが手に入らなくて、ずっと駄々をこねているようなキャラクターなんです。「欲しいものが手に入らなくて苦しい」「苦しいくらい欲しいものがある」という経験は、たぶん多くの人が経験しているんじゃないかなと。嫌悪感のある悪役かもしれないけど、突飛な存在ではないと思っています。どんな物語やキャラクターでも、人間らしさを誇張して作られるものですから。







































