
『楽園追放 心のレゾナンス』11.13公開前リレーインタビュー連載 第10回:アニメーションリード・川崎司【前編】|『蒼き鋼のアルペジオ』から『楽園追放』へ、CGアニメ黎明期を振り返る
『楽園追放 -Expelled From Paradise-』のすごさと、印象的だった宣伝方法
──キャリアについてですが、最近だと『がんばっていきまっしょい』のCGディレクターとして活躍されていましたね。
川崎:『がんばっていきまっしょい』ではスタジオに席を置いてやっていたんですけど、環境としては今回の現場と同じくツールも含めてゼロから作ったことが多かったです。
キャリアのスタートは小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント(SMDE)からなので、結構アニメ寄りにはなります。SMDEさんでは主に子供をターゲットとしたホビー系のアニメやコンテンツを作成していました。それはそれで充実していましたが、5年ほど仕事をしているうちに、例えばゴールデンや深夜帯のもう少し幅広い層に向けたアニメの仕事をしたいと思ったんです。
そこで一大決心してSMDEさんを退職し、サンジゲンさんに転職しました。当時は『ブラック★ロックシューター』とか『009 RE:CYBORG』のPVが世に出始めた頃で、すごいことをやっているなと思ったんです。サンジゲンさんではTVシリーズのCG作業のほかに、フルCGアニメとして『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』に関わらせていただきました。
サンジゲンさんを退職した後は2~3年周期でいろいろなスタジオを渡り歩きました。
ご縁があって『がんばっていきまっしょい』の監督・脚本の櫻木優平さんとお仕事させていただくことが多く、櫻木さんが所属されているところに行ったり、逆に櫻木さんから発注されることが多かったです。で、『がんばっていきまっしょい』が終わったあと、10年くらいアニメーションをちゃんとやってきていないなと思ったんです。ディレクションや管理業務が多かったので、もっとカットを作りたいと思い、フリーランスになろうと決意して今に繋がる感じです。
──そのあとに『楽園追放』のチームに入ったんですね。
川崎:タイミング的に『がんばっていきまっしょい』の作業が終わり、退職するタイミングで『楽園追放』のスタッフ募集があったんです。CGWORLDで求人を出していたと思うんですけど、エントリーはしたもののタイミング的にギリギリ応募が締め切られてしまった後だったようで、返事が来なかったんですよね。「これはダメだったのかな」と思ったのですが、ちょうど同じ時期に八木田さん主催のお花見会に参加させていただいて、その場に荻田さんもいらっしゃっていたのでご挨拶をして、「楽園追放の求人にエントリーをして作品も送らせていただいているんですけど…」というお話をしたんです。
──それはすごく大事なことですね。コネクションは大事ですから。
川崎:そこで名刺をいただいたのでご挨拶と共に半分売り込みとして自分のポートフォリオや職務経歴書をお送りして、「この先増員等がありましたらお声がけいただけると嬉しいです」的なやり取りをさせていただきました。その後はフリーランスで別のお仕事をしていたのですが、4か月ほど経った頃に追加人員を募集しようということになったみたいであらためて荻田さんからご連絡をいただきました。その後面談を経て作品に参加することになったという経緯です。
──CGアニメーターとしてフリーランスで活動するのも、技術があるからこそやっていけるのでしょうが、大変そうではありますね。
川崎:自分もフリーランスとしてちゃんと動くのは初めてなので、税金周りとかを自分でやりながらというのは大変で、みんなよくこんなことをやっているなと思いながらやっています(笑)。
──少し話は戻りますが、TVアニメをやってみたかったのですね。
川崎:そうですね。繰り返しになりますが広いターゲット層に向けたTVアニメという意味で。サンジゲンさん入社後に、深夜TVアニメのシリーズに関わりました。SMDEさんに居た頃から『おはスタ』 系列のショートアニメ等でセルルックのCGアニメは経験していたのでその延長線上ではあるといった感じなんですけども。
──CGアニメというところだと、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』の頃は、波が来ていたと思うのですが。
川崎:サンジゲンさんにいた頃はCGアニメの黎明期みたいな感じがあったんですよね。サンジゲンさんでは『009 RE:CYBORG』の後に『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』が出て、その後ポリゴン・ピクチュアズさんの『シドニアの騎士』が出て、どちらもBlu-rayの売り上げがすごく良かったんです。で、そのあとに『楽園追放 -Expelled From Paradise-』だったと思うんです。当時、いろんな会社がCGアニメをコンテンツとして出し始め、各社でしのぎを削った熱い時代だったと思います。各スタジオがいろんな表現・技術を模索して、ここからどう発展していくのだろう、みたいな期待がありました。
『楽園追放 -Expelled From Paradise-』は劇場にも観に行っていて、劇場販売のBlu-rayが欲しかったんですけど、売り切れていたんですよね…。その後、一般販売されたものを買い、当時出向していたスタジオにミニシアタールームみたいな、音響設備もそれなりに整っているところがあったので、そこを借りて上映会をした思い出があります(笑)。
──同業者として、どのあたりが印象に残っていますか?
川崎:印象に残っているのは表情の作り込みです。アンジェラがアップで叫ぶところだったり、感情を乗せるシーンは、顔をカットごとに3D上で修正して、さらに上から手で描いたりしていたんだろうなと。他のセルルックの作品でも似たようなことは少なからずやっていたとは思うんですけど、当時、顔見せカットの絵としての完成度が一つ先を行ってるように感じたのをすごく覚えています。
あと印象的だったのは、アンジェラの攻めたコスチュームデザインですね。露出が少なくタイトなスーツなので、干渉するものが少なくアニメーター視点では動かしやすそうだなと思いつつ、干渉しまくりのロングヘアだから、そこは大変そうだなと思っていました。でも、どのカット、どのシーンにおいても観ていて気持ちが良く、グラフィニカさんの魂が込められているというか。熱い想いが伝わってくる映画だったと思います。
これは余談ですけど、プロモーションでいろいろ新しいことをされていて、アニメーターの名前を前に出して、こういうカットを作りましたみたいなPVがあった気がします。あと、今は見れないんですけど、水島精二監督とグラフィニカのスタッフさんで、主題歌の「EONIAN -イオ二アン-」を歌っている動画があったんですよ。
──ありましたね! フラッシュモブみたいな。
川崎:観てない人からすると都市伝説のような話で、今は動画自体が消えてしまっているので証明もできなくて、幻だったんじゃないかと思ったりもしますが…とても印象に残っています。
──いや、はっきりと覚えています(笑)。
川崎:その動画の他にもイベントとかで、グラフィニカさんのメインスタッフの方が顔を出されていることがあって、一方的にお顔を認知していたんです。当時僕はグラフィニカさんの近くに住んでいたので、たまに近くのコンビニで、「あ、『楽園追放』の人達だ」みたいになっていました(笑)。今思い起こせば、八木田さんとも結構すれ違っていたかもしれません。
──そんなニアミスがあったのですね。作画アニメが主流の中、セルルックのような日本独自の進化を遂げている3DCGアニメの黎明期を現場で体感しているというのは貴重ですね。
川崎:それは思います。
──荻田さんが作画アニメから影響を受けているという話をされていて、板野さんからもいろいろ教えてもらったという話をされていました。
川崎:そうですよね。だから荻田さんや八木田さんはグラフィニカ出身なので、ちょっとまた魂が違うという感じがしていますので、それを知れたらなと思っています。
[文・塚越淳一]
作品情報
ムビチケ発売中!
楽園追放 心のレゾナンス
あらすじ
人類が肉体や地球を捨て、電脳世界ディーヴァで暮らすようになった西暦2400年。フロンティアセッターのハッキングを発端に、ディーヴァ捜査官アンジェラ バルザックの叛逆が起こる。事件時彼女にハッキングされ、地上に脱走した大勢の保安局のエージェントは、マテリアルボディと共に、パーソナルデータも収納するハードウェアを強奪。その姿・存在を地上に潜め、ディーヴァへの脅威と化した。
アンジェラにより、もたらされた”彼ら”の名は、
”フォールン”
ディーヴァからの捜索命令を受け、ガブリエル達エージェントは、フォールンの正体を追う。未だ地上に遺るナノハザードの影響を乗り超え、彼女達は、フォールン、そして、その謎に辿り着けるのか。
『楽園追放』の物語が、今、再び動き出す−。
キャスト
(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ2



































