
『PUI PUI モルカー』『キャンディーカリエス』の見里朝希監督がミニチュアアニメ『ポップパップポルターズ』の魅力とMozu監督のすごさを語る! 「オバケたちと人間との関係の描き方が、すごくあたたかい」
お化けたちと人間との関係の描き方が、すごくあたたかい
──おふたりがこれまで触れてきたアニメ・エンタメで印象に残っている作品を教えてください。
Mozu:僕は父が漫画好きだった影響で、世代ではないのですが『オバケのQ太郎』や『怪物くん』など、藤子不二雄先生の作品をよく読んでいました。あとは『ドラえもん』や『ケロロ軍曹』など、リアリティラインが高い世界観で不思議なことが起きる作品が好きです。振り返ると、僕が手掛ける作品はそれらの影響を大きく受けている気がします。『ひつじのショーン』も欠かせないですね。CGで作っていると思っていたものが手で動かしていると知ったときは驚きました。
見里:小さい頃からカートゥーンネットワークでやっているアニメが好きで、よく見ていました。あとは『ピングー』ですね。高校生のころは『魔法少女まどか☆マギカ』とかが好きでよく観ていました。思い返してみると、ギャップがある作品に惹かれてきた気がします。大学生になってからは、ディズニー・ピクサー作品をひたすら見まくっていました。その頃から、キャラクターの動きや感情表現を観察するようにもなった気がします。その後は、『スパイダーマン:スパイダーバース』など、ただのCG作品ではなく、2Dセルルックとの融合も試みた作品に惹かれて。そういう手法をストップモーションにも活かせないかなと考えていました。
──アニメを作るうえで技術を学ぶのも大切ですが、おふたりの話を聞いていると、アニメを観たり、体験したりするのも大切なのかなと。
Mozu:そうだと思います。「こびとシリーズ」もそうなのですが、僕は「いそうかも」というのが好きなんでしょうね。逆に、すごく発想を飛躍させた展開は描けなくて。『キャンディーカリエス』は、僕には思いつかない発想です。
見里:逆に『ポップパップポルターズ』は、まさにMozuくんが言っていた「本当にあるんじゃないか」というコンセプトで作っているのが伝わってきて。ミニチュアのジオラマ人形の視点から見た人間がどう見えるのか、といったイマジネーションも豊富で、すごくリアリティがあるなと思いました。
Mozu:「あなたの家にもいるかもね」という感じを出したくて、色々とこだわりました。
──今回、せっかくの対談ですので、ぜひお互いに聞きたいことをぶつけあっていただければと思います!
見里:撮影の話を聞きたいですね。一度スタジオを訪問させてもらったことがあるのですが、マンションの一室でセットを作っていて驚きました。セットで部屋がぎゅうぎゅうなのに、めっちゃカメラが回り込むシーンがあるから、どうやって人間が入って撮影しているのか、気になって、気になって。
Mozu:あれは、人間がカメラを持ってベッドの下に潜り込んだり……と、本当に頭を一切使っていない力技です(笑)。
見里:でも、そういう人の手でやる、力技こそ、やっぱりコマ撮りアニメの面白さなんじゃないかなと。
Mozu:それはそうかもしれません。今回やってみて、コマ撮りアニメって、力技で解決できることが多いのがすごく面白いなと思って。「これ、どうする?」ってなっても、「なんか物を置けばいいじゃん、高くすればいいじゃん」で解決できることも結構あって、土壇場で生まれたアイデアがたくさんありました。その過程がすごく楽しかったです。
見里:人間も所々で登場するけど、あえて顔を隠すようなアングルにしていることで、キャラクターがより引き立っていて。あれはいい判断だなと思いました。
Mozu:人間はあくまでも脇役なんです。本当はもっと出番が少なかったんですよ。やっぱこの子たち(ポップ・パップ・ポルタ)が主人公で、人間は近くにいるだけなので。人間の存在感を薄くするというのは、こだわっていました。
見里:それでも、オバケたちと人間との関係の描き方が、すごくあたたかくて。そこにリアリティもあって。これがMozuくんの作品の魅力だなと改めて思いました。
Mozu:ありがとうございます。こだわっていた部分なので、触れてもらえてとても嬉しいです!
人間の手で直接作るというものが今後はすごい価値になると思う
──続いて、Mozu監督が見里さんに聞きたいことは?
Mozu:見里さんは、大きなスタジオでアニメ制作に関わっていますが、監督としての立ち回りとか、どこまで自分が入っているのか、教えて欲しいです。
見里:シリーズものに関しては、セル作画アニメと同じような感じで、自分は総監督みたいな役割で各話の演出さんや監督さんが作っていくものをチェックすることが多いです。それでもこだわりたいところに関しては、自分がアニメーターとして入ることもありますね。あとは、テンポ感が観客を飽きさせない重要な要素だと考えているので、編集コンポジット作業を自分でやることもあります。
Mozu:よくおっしゃっている「○秒以上の静止画がないようにする」とか、あとは恐らく、色味の部分も編集の段階で調整されていますよね。
見里:そうですね。大きなスタジオでやる場合、物量的に全体を俯瞰して見る側にどうしても回らざるを得ないのですが、すべてのスタッフに自分の考えをそのまま伝えるのは難しさもあって。言葉だけだとイメージしづらいこともありますから。
Mozu:『ポップパップポルターズ』は初めての監督作品だったので、スタッフの方々には大筋だけ「こういう動きでお願いします」と伝えていました。照明も担当の方にすべてお任せしていたんです。でも、その結果、僕の想像を超えるすごい映像ができあがりました。見里さんは、頭のなかでしっかりとビジュアルがあるんですよね。それをスタッフの方たちが全員で再現するという作り方なのかなと、聞いていて思いました。
見里:でも、自分の考えにも当然穴があるわけで。スタッフの方が出したアイデアやアドリブで作品が昇華したことも多々あります。『キャンディーカリエス』なんかは特に演出さんが好き放題にやってくださった作品で。完成した映像を観たときに自分でもビックリすることがあるんです。そういう驚きが心地よくて、楽しいです。
──改めて、お二人が思うミニチュアアニメ・コマ撮りアニメの魅力・面白さを語っていただければと思います!
Mozu:僕はまだ探究しているところで完全な答えは出ていませんが、やっぱり作っている側がすごく楽しいというのが大きいと思うんですよね。『ポップパップポルターズ』はスタジオも大きくなくて、自主制作や文化祭みたいな感じで、みんなでワイワイしながら制作していました。大の大人が寝転がって「こうやったほうがカッコいいじゃん!」とか言ってワクワクしている、それが映像にも乗るというのが、魅力なのかなと思っています。
見里:確かに、撮影しているその場で遊びを見つけようというのはあるかも。
Mozu:大人がやっているおままごとですからね(笑)。でも、だからこそCGとかのアニメにはない面白さが出ると思います。
見里:CGやAIが実写と区別がつかないようなものを短時間で生み出せる時代になりました。そのなかでストップモーションアニメもピンチなんじゃないかなという声が聞こえることもありますが、僕は逆に、人間の手で直接作るというものが今後はすごい価値になると思うんですよね。
──記事を書く仕事も、AIにいつか取って代わられるという危惧がありますが、だからこそ熱量のある記事や想いが今後は大事になってくると、個人的には信じています。
Mozu:そうですね。それはそうだと思います。
見里:面倒くさいことって、大多数の人はやろうとしないことなので。でも、それをやり通すことによって、しっかりとした個性が生み出せる。ストップモーションというのは、それをやりやすい手法のひとつだと思います。
Mozu:僕は人をビックリさせるのが好きなのですが、コマ撮りはAIやCGが発達すればするほど、ビックリ度が上がると思うんです。「こんなに手間かけるなんて」っていう驚きというか。そういう反応が僕はすごくうれしいですし、その反応がある限り、きっとなくならないんじゃないかと思います。
見里:人間の手で作ったものは不思議と温かみもありますからね。手をかけただけ、ちゃんといい作品になると僕は信じています。映像のクライアントからすると、安い値段でそれなりのクオリティのものを、という需要が今後は増えるかもしれません。それによって、ストップモーションっていう存在が徐々に薄れてしまう恐れはあります。だから、我々は諦めることなく、ストップモーションという手法を継続して発表し続ける必要があるんじゃないかと。ストップモーションの魅力を今後も発信し続けていきたいと思います。
[取材&文・M.TOKU]
作品情報
あらすじ
お菓子がいつの間にかなくなっている…?
実は、やんちゃないたずらオバケの仕業かも…
これは、とある家の壁の中に暮らしている小さなオバケの三兄弟、
ポップ・パップ・ポルタの
くすっと笑えてちょっとふしぎな物語。
キャスト
(C)MOZU STUDIOS・シンエイ/ポップパップポルターズ































