
“勝てない”。それでも部活を続ける意味はある? 12年間バスケを続けた筆者のTVアニメ『アオのハコ』Season2 第26~28話レビュー
【第27話】才能と努力、それぞれの憧れ
千夏にキツい言葉を浴びせ続けたあと、一緒にいた男子生徒に連れられて帰っていった夢佳。後日、大喜はバドミントン部の先輩で、千夏とは中学時代からの知り合いである針生健吾に夢佳のことを聞きます。
千夏は小学二年生から夢佳と同じチームでプレーし、夢佳に追いつこうと毎日朝練をしていたそう。一方で夢佳はプライドが高く人に相談しない性格で、バスケを辞めた理由は針生にも分からないといいます。
才能に憧れた千夏、努力に憧れた夢佳
数日後、虫歯で歯医者に行った大喜は、受付でアルバイトをする夢佳と再会します。夢佳のこと、千夏のこと……様々な情報が一気に入ってきていた大喜は、つい「夢佳が部活をやめた理由」というセンシティブな話題に片足を踏み入れてしまいます。
夢佳が語った理由はアルバイトではなく「千夏のことが嫌いになったから」。そして「バスケも飽きたから」。しかも、それを千夏本人にも伝えたと言うのです。
苦い気持ちで家に帰った大喜ですが、ちょうど家から出てきた千夏と散歩に行くことに。歩きながら、話題は千夏と夢佳の出会いに移っていきます。
ジュニアチームの見学で夢佳のプレーに魅了された千夏。ドリブルもパスも上手くできないなか、夢佳との差は才能ではなく練習量によるものだと早くから感じ取り、練習を重ねていきました。
どんなスポーツでも、自主練は地味でキツいもの。バスケではシュートやドリブル、ハンドリングというボールコントロールの練習をひたすら繰り返します。夏の体育館はサウナ状態、冬は手がかじかみ、革製のボールに皮脂を奪われて指先が切れるのも日常茶飯事でした。筆者は3か月と続けられなかったので、小学生から自主練を習慣にしている千夏も、誰より長くボールを触っている夢佳も、恐ろしいほどの努力家に思えます。
努力が実り、千夏は初めてのユニフォームをもらいます。試合に出る権利を獲得した彼女でしたが喜びもつかの間、今度はチームメイトから追われる立場に。後から入ったのに……と悔しがるメンバーもいるなか、千夏の努力を知る夢佳は「努力できる力には憧れる」と認めました。
千夏は夢佳のプレーに、夢佳は千夏の地道な努力にそれぞれ憧れていました。「才能がある」と認められることは誇らしい一方で、期待や追われるプレッシャーも人一倍。それでも二人が頑張れたのは、憧れる人が隣で走り続けていたからなのでしょう。
夢佳がバスケを離れた本当の理由
帰り道、屋外のコートで小学生の1on1の相手をする夢佳と再び会った大喜。楽しそうな様子から、バスケそのものを嫌いになったわけではないようです。
彼女が嫌いになったのは「競う」こと。小学生の頃から才能を認められていた夢佳ですが、中学で自分より実力のある選手がたくさんいると知ったうえ、全国大会にも行けず、心が折れてしまったと言います。
プロになるわけでもないし、勝って笑えるのは強者だけ。夢佳のこの言葉に、筆者は痛いほど共感してしまいました。
筆者も小学生のころは県内上位のジュニアチームに所属していました。全国大会を逃し、中学ではもっと頑張ろうと思ったのに、待ち受けていたのは技術もフィジカルも敵わない選手たち。その中には中学からバスケを始めた人もいて、小一から続けていた自分との才能の違いに打ちのめされました。
辞める勇気もなく高校卒業まで続けたものの、ケガや風邪で練習を休める日は内心喜んでは「じゃあなんで部活してるんだろう」と罪悪感に駆られていました。最後の大会で敗退したときも、悔しさより「やっと終わった」という安堵のほうが強かったことを覚えています。
「高校までバスケしなくてもよかったかも」という小さな後悔があるからこそ、夢佳の気持ちはよく分かりますし、退部も間違いではないと筆者は思うのです。
しかし大喜は、それを「挫折からの逃避」だと受け取りました。夢佳に似た劣等感を何度も味わいながらも「一球を追うのが楽しいから」と努力を続けてきた大喜。そんな彼に夢佳が返したのは、強烈な平手打ちと「客観的に見ればいくらでも正論は言える」という苦々しい言葉でした。
ここまで明るくまっすぐなキャラクターが中心の本作だからこそ、夢佳の影が引き立ちます。正論だけでは頑張れないことを、改めて突きつけられました。挫折を経験した人には胸が痛い第27話でした。


































