
「逃げたっていい。その先で、また会えたら」ReoNaが“あなたと一対一”で届けたAOM presents Cheer Concert『ReoNa -よりみち-』ライブレポート
2026年9月26日(土)、東京・アニメイトシアターにて、AOM presents Cheer Concert『ReoNa -よりみち-』第2回が開催された。
本公演では、豊島区に在住・在学する小学生から高校生、大学生、専門学生を無料で招待。池袋に本店を構えるアニメイトと、文化に触れる機会を広げながら未来を担う子どもたちへ多様な体験を届けるまちづくりに取り組む豊島区。その想いに賛同するReoNa。三者がつながることで生まれた取り組みである。
開演前には、豊島区長・高際みゆき氏から「この『よりみち』という温かな場所が、参加される皆さんにとって自分らしくいられる安心の場になり、日々の生活に新たな輝きや一歩を踏み出す勇気をもたらしてくれることを確信しております」というメッセージが寄せられた。その言葉を受けるように、ReoNaは「あなたと一対一、寄り道する時間」と呼びかけ、アコースティック編成で全8曲を披露。友人との距離、自分らしさ、逃げること、それぞれの旅路。学生の今とも重なる言葉を、歌とMCを通して届けていった。
アニメイトタイムズでは、この日のライブのレポートに加え、終演直後のReoNaにインタビューをお届けする。『よりみち』だからこそ生まれたセットリストや、10代の頃に抱えていた思い、「逃げる」ことについて聞いた。まずはライブレポートから。
“あなたと一対一”で歩き出す、ReoNaのよりみち
桜があしらわれたステージに現れたReoNaを学生の観客が温かく迎え、ギター・山口隆志、キーボード・荒幡亮平とのアコースティック編成で最初に届けられたのは、神崎エルザ starring ReoNaの「step,step」。
誰もがそれぞれの人生という舞台では主役でありながら、うまく歩くためのルールに合わせようとしたり、自分にはまだ早い大きな靴を選んでしまったりする。学校生活や友人関係、勉強、進路など、それぞれにさまざまな思いを抱える学生に〈サイズの合ってない自分はもう脱ぎ捨てて踊ろうよ〉と、軽やかな歌声で届けていった。
ここで改めて挨拶。そして「行かなきゃいけないところ、やらなきゃいけないこと、いっぱいあるかもしれないけど、今この時間だけはすべてを忘れて、お歌と、あなたと、一対一、よりみちする時間を楽しんでいただけますように」とReoNaが話せば、温かな拍手が起こった。
普段のReoNaのライブには、歌と言葉にまっすぐ向き合うからこその独特の緊張感が漂っていて、しんと静まり返る時間も多い。もっともその緊張感や静謐なひとときもReoNaのライブの魅力なのだが、この『よりみち』には近しい道を歩く者同士だからこその親密さが在る。ReoNaの歌声、表情も終始柔らかい。
「FRIENDS」の前には「どんなに仲が良くても、どんなに大切に思っていても、分かり合えないことだってあるし、それぞれの道に別れていってしまうこともある。そんな友だちにあてた、手紙のようなお歌」と語る。
ReoNa自身、10代の頃に一緒に過ごした友人との思い出をもとに紡いだ歌へとつないでいく。誇張ではなく、一人ひとりに視線の結びながら歌っている姿も印象的で、“あなたと一対一”で歌を届けるという『よりみち』及び、アーティスト・ReoNaのライブのあり方をそのまま示しているかのようだった。
ここでReoNaの愛猫であるちくわ、さしみ、わさびの話に。「おうちに猫ちゃんいる方?」と問いかけると、客席から手が上がる。いつものライブとは違って観客とダイレクトに言葉を交わしながら話が広がっていくのも『よりみち』ならではの一幕。キーボードの荒幡も最近猫を飼い始めたことが明かされ「猫仲間になりまして」とReoNa。黒い服を着ていると毛が目立つこと、家を出る直前に抱っこをすると服が大変なことなどを話しながら、猫、犬以外の生き物と暮らしている人がいるかを尋ねていく。
そこから話題は、ReoNaが以前飼っていたメダカとエビのことに。小さくカラフルだったエビが、世代を重ねるうちにだんだん大きくなっていったというエピソードに、客席から「ふふふ」という笑いが起こった。
愛すべき隣人たちと暮らす日々の中で、自分の弱さや不器用さも、少しだけ違う角度から見つめられることがある。「たとえば、自分の中ではなかなか見つめづらい、自分の弱いところだったり、なかなかうまくいかないところだったり、不器用な部分だったり。そんなものも猫と重ねてみると、なんだかやわらかく、優しく包んでくれるような、そんな気がします」。そう話して「恥の多い生涯を送ってきました」と、ポップな「猫失格」へ。
山口がスライドバーを使い、アコースティックギターから猫の鳴き声にも聞こえる音や、「猫ふんじゃった」の馴染み深いメロディも響く。ReoNaファンにはおなじみの楽曲だが、そうしたユーモアや遊び心がいつも以上に人懐っこく響く。ちなみに荒幡にとっては、猫と暮らし始めてから初めて演奏する「猫失格」でもあったそうだ。
ここまでは会話をするかのように、日常に潜む絶望や不器用さを軽やかに歌ってきたReoNa。ライブ中盤から少しずつ色合いが変わっていく。
「あなたに会いたくて、会いたくてたまらなくなる。誰か、いますか?」と問いかけたReoNa。目を合わせること、触れて体温を感じること。「ただいま」「おかえり」を交わせること。そして、会いたいと心から願える相手がいること。それを“当たり前という奇跡”と表し、TVアニメ『きみが死ぬまで恋をしたい』より「Amore」「それは魔法でした」を届けた。切実な愛を歌った2曲が手を結び、ライブはそれまでとはまた違う表情を見せていく。
それぞれの道を歩く巡礼者へ
ライブはいよいよ後半戦に。「本当の自分って誰なんでしょうか。本当の自分って、一体誰が決めるんでしょうか」と語りかけて始まった「unknown」では〈あなたらしく生きれないとしたら〉〈それは優しいあなたのせいじゃない〉と、今の自分を責めることなく受け止めていく。
学校にいるときの自分。友達と遊んでいるときの自分。働いているときの自分。家族と一緒にいるときの自分。そのどれもがあなた自身で、何も間違っていないと優しく伝えていく。
自分を傷つけてまで頑張り続ける必要はないこと、最悪の選択をしてしまうくらいなら「逃げたっていい」と話して始まったのは、傘村トータのカバー曲「敗走」。ありのままの自分を否定せず、ときには逃げることも選択肢のひとつだと、その歌声で背中を押していった。
あっという間の一時間。「ReoNaのライブにアンコールはありません。次にお届けするのが今日最後のお歌です」と告げ、ReoNaはステージに飾られた桜へ目を向ける。ラストに選ばれたのは、桜に自身を重ねた神崎エルザ starring ReoNaの「ALONE」だ。
花が咲いているときには多くの人が見に来る。それでも、花びらを散らし、葉をつけ、やがて枯れ木のようになれば、誰も気に留めなくなる。「誰も見ていないなら、誰にも期待されていないなら、きっとそれは自由だ」。それぞれがそれぞれの旅を歩く中で、同じ日に、同じ場所で出会ったこの時間。再びそれぞれの生活へ戻っていく前に、「ALONE」が伸びやかな歌声で届けられた。
ReoNaにとって大切な存在である神崎エルザの楽曲で始まり、神崎エルザの楽曲で終わった『よりみち』。ReoNaは、最後にもう一度、冒頭と同じように「あなたと一対一」と口にした。
「これからもまたこうして同じ時間の中で、同じ空間の中で、あなたに一対一、受け取っていただけますように」。ひとつの『よりみち』を巡って、またそれぞれの道へ戻っていく。この公演だからこそ、最初と最後の言葉が呼応することに、特別な意味を感じた。
旅の道のりは違えど、皆、人生の巡礼者であることには変わりない。ReoNaの豊かな歌声と別れの言葉「じゃあな」は、同じように迷いながら進む同志へまっすぐなエールのように響いた。
【インタビュー:逆井マリ 写真:中井智久】




































