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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

賀予と謝清呈は異性愛者であると主張しており、男を好きになるなんてあり得ないと考えています。さらに、賀予は謝清呈を中年扱いし、逆に謝清呈は賀予をクソガキ扱い。
再会後の2人は刺々しいやりとりを繰り返しており、賀予はどうすれば謝清呈の落ち着きを完全に奪い取り、狼狽と屈辱に顔を歪ませられるのかなどと思案していたことも……!
私が賀予と謝清呈の関係性で最も重要視しているのは、賀予は“恋愛対象になり得ない”と謝清呈が認識していること。作者の肉包不吃肉先生は、“この時点では好きになり得ない”という心理に関しても筋を通しています。とあるきっかけから、賀予は謝清呈を激しく求めるようになりますが、体を交えても2人の関係性が大きく変わることはありません。
謝清呈はあくまで賀予の元主治医であり、ある意味、賀予の保護者のような立場。性格的には厳格で、固定観念が強く根強いているタイプ。謝清呈にとって賀予は自分の元患者であり、“ガキンチョ”でしかないのです。つまり賀予にとって謝清呈は、難攻不落の男──。
冷静に物事を捉える謝清呈は、恋愛に対しても性に対しても淡白。彼は“性”と“愛”をきっちり分けて考えている節があります。
賀予が体の関係を自分に求めたとしても、それは恋愛感情などではなく、単なる肉体的な欲求であると解釈していました。賀予の執着=恋愛感情に結びつけられず、賀予のめちゃくちゃな言動に「お前はいったいどうしたいんだ」と訝しむことも。
これに関しては、自分はストレートだと豪語する賀予もまた、謝清呈を求めてしまう自分に混乱。自身の抑えきれないほどの強烈な欲求を認めながらも、謝清呈を“好き”なわけではないと抗っていました。執着心や独占欲をあらわにしながら……!
賀予も“性”と“愛”を分けて考えていましたが、おそらく読者の誰もが突っ込みたくなるところだと思います。「賀予、あなたは謝清呈のことが“好き”なんだよ」と。
2人の初夜は謝清呈にとっては青天の霹靂でしたが、彼は鋼の自制心をもって屈辱に耐え続けていました。謝清呈が強靭で理性的だからこそ、抗えなくなって乱れていく姿に悶絶してしまいます。これは賀お坊ちゃんが夢中になるのも仕方がない。欲求に駆られて謝清呈を抱く賀予のあらゆる興奮ポイントに、正直共感を覚えます。
美しい男同士の絡み合いは、狂気的な熱と高い湿度をもって繰り広げられ、何ページにもわたってじっくり濃厚に描かれています。そして、体は限界なのに事後に弱みを見せない謝清呈がまた凄い。私は初夜のシーンでもう、沼の底にいました。実際は、その前から謝兄さんに狂わされていましたが。
それはさておき、どれだけ賀予が求めても謝清呈の心は揺らがない。謝清呈は体を暴かれることは許しても心を許すことはないし、トキめいたりもしない。ここが肝です。だからこそ、ささやかな変化を謝清呈の中に探してしまいます。ひとつも取りこぼさないよう慎重に。
賀予の甘くて熱っぽい言葉や仕草になびかない謝清呈ですが、それでもほんのわずかに反応を示すことがあります。だけど、都合良く絆されたりしているわけではなく、そこには何かしらのきっかけがあるのです。
それゆえに、私は謝清呈という人間に一層引き込まれていき、謝清呈の変化の兆しに敏感に反応してしまうわけです。今後、何が謝清呈の心を突き動かすことになるのだろう。彼はどんなふうに愛を知るのだろう、と。
現在『病案本 Case File Compendium』は第4巻まで刊行。私は第3巻で号泣し、第4巻の謝清呈のとある行動に激しく悶えました。『病案本』を読んでいると、自分の中に眠っていた何かが目覚めていくようで、本当にどうにかなってしまいそうです。そして、エンドレスサマーに心を寄せたくなりますね。第1巻や第2巻まで読んだ方には、そのまま第4巻まで読むことをオススメします。
そして、いよいよ第5巻&第6巻が2026年11月26日に発売予定。ぜひお見逃しなく!